あなたはウマ娘である。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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きのうはたい焼きを食べたので初投稿です。




大接戦、クレイジーダービー

 

 

東京優駿、日本ダービー。

 

一生のうちに一度しか出られない競走者にとって特別なレース。

 

一国の宰相になるよりも勝つのは難しい。

 

勝てればもうトレーナーをやめてもいい。

 

 

 

このレースを走るウマ娘たちにとっても、それを支えるトレーナーにとっても、それを見る人々にとっても特別なレース。

 

 

2年前は龍が舞い降り、去年は皇帝が頭角を現した。

 

 

出走するのは三強から二人。

 

 

 

シリウスシンボリ。皐月賞は残念ながら出走できなかったが、実力は申し分ない。トライアルの青葉賞を圧勝しダービーへの意気込みは十分。皐月に出れなかった分だけ、彼女は闘志にあふれている。

 

 

もう一人は皐月賞ウマ娘。ケガで回避してしまったミホシンザンを大外からの追い込みで撃破した彼女。逃げと追い込みという極端な戦法を好む彼女、その勝ち方から三年連続三冠ウマ娘の誕生か? と一部ではもてはやされている。

 

まぁよく彼女を知る人からすれば『こういう期待されている時に何かやらかすんだよねぇ』と言われるだろう。

 

 

しかも彼女。皐月賞後から金欠で憎きゲートを一つも破壊出来てないし、少々太り気味だったこともあり、トレーナーと保護者であるマルゼンスキーから食事制限を受けている。マルゼンスキーからの指図は別に気にならないそうだがトレーナーは違う、スイーツが禁じられたイライラエブリデイだった。

 

 

 

 

 

 

 

ま、簡単に言うとストレスたまってますねぇ!

 

 

 

 

 

ポルナレフが大量発生したレースが、今始まる。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

『……ということで、本日はダービーと言うことで観客席の方も大盛況。まったくスキマが見えないという感じですね。それだけこのレースが注目されているということでしょうか?』

 

 

『そうですね。やはり日本ダービー、ということもあるのでしょうが最近人気が爆増している皐月賞ウマ娘の彼女を見に来ている方が多いのでしょう。ミスターシービー、シンボリルドルフという巨頭が受け入れる下地を作り、彼女が爆発させたという形でしょうか? ……まぁ爆発のさせ方はアレでしたが。』

 

 

『ちょっと狂ってる子は受けやすい、ということでしょうか? ……いえ、失礼しました。ではパドックの方を見ていきましょう。』

 

 

 

と、言うわけでダービーである。なお、別にあなたは狂ってるとか言われても気にしないし、あなたのファンもアンチもあなたのことを狂ってると思っているので別にどうということはない。

 

インタビューで白目向きながら飛び跳ねたり、特技『ゲート落とし』を披露したり、公衆の面前で『苦いのいや!』と大泣きしたりのすでに醜態をさらしまくっている。べつにどうと言うことはないのだ!

 

 

そんなことを考えながらパドックの裏で芋虫みたいに匍匐前進をしているウマ娘。あなたですね。

 

 

 

最近金欠でゲートを壊せなくなり、ストレスが溜まっているせいか、食事制限を課されたせいで脳に糖分が足りていないせいか、それとも元々おかしかったのかは解らないが、パドックの裏で自分の出番を待っているウマ娘たちの股の下を潜ろうとしているあなた。

 

ダービーという大舞台で緊張している参加者たちの緊張をある意味ほぐす、という敵に塩を送る行為であるが、それ以上に『え、なにこれ? なんで私の股の下潜るの!?』という困惑もプレゼントしているので差し引きゼロ、というかマイナスである。場外戦術は駄目ですよ~!

 

 

あなたからすれば急に匍匐前進したくなっただけであるのでそんな気はないというのが幸い? やはり狂人の思考を常人に理解させるというのは不可能である。

 

 

 

「あ、あの~、今日は一枠一番ですので……、最初はあなたですので……、登場していただけると……。」

 

 

 

そんな感じで遊んでいたら職員の方が無茶苦茶戸惑いながら話しかけてきた。当たり前ですな。

 

ま、最初なら仕方ないということで立ち上がろうとするあなた。

 

 

 

 

 

 

そこであなたに電流走る!

 

 

 

 

 

人間の構造的に匍匐前進、腹を地面に向けた状態から立ち上がろうとするときに取る次の状態。

 

それは四つん這いである。両手が地面に設置され、両膝も地面に接している。

 

 

ここであなた、思い出す! なんかこの体勢懐かしいぞ!

 

 

ウマ娘になっても消えない野生というべきか、生まれ変わっても消えないUMAというべきか。

 

あなたは自分が思うように曲げた両膝を伸ばし! 両手両足を地面に接してしまったのである!

 

 

 

 

気付いてしまったのだ! 親御さんが血のにじむ努力で何とか忘れさせた原初の記憶! 野生の習慣!

 

 

そう! 馬は四足歩行!

 

 

 

あなた! 思い出しちゃった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、最初は一枠一番一番人気と素晴らしい数字となっていますこの子。皐月賞………、って、え?』

 

 

 

ふんすふんす!

 

鼻息大きく四足歩行のエントリー!

 

 

 

『え? えぇ? え? な、なんと言いますか、四足歩行で歩いてますね? えぇ?』

 

 

 

ぼく、おうまさんなのだ!

 

きょうはおつきのひとと、うえにのるひとはいないみたいなのだ! かるくてらくちん!

 

 

 

『なんかそのままパドック回ってますね……。』

 

 

『練習してたのか、ってくらいキレイな四足歩行ですね……。』

 

 

 

お~! ひとがたくさん! でもさくがないねぇ。なんでだろ? いつもあったよね?

 

 

 

 

「おチビちゃん! おチビちゃん! どうしたの!」

 

 

『あ~、あれはマルゼンスキーのようですね。今日はパドックの方まで見に来ていたようです。何やら彼女に話しかけているようですが?』

 

 

 

あ! おんなのひと。きょうのあいぼうさんかなぁ?

 

う~ん。でもなんだかなつかしいにおいもするねぇ~。なんだかおかあさんみたい。

 

 

 

「どうしたの!? しっかり!? 目が大変なことなってるわよ!?」

 

 

 

なんか、おかおたたかれてるなぁ。なんでだろ?

 

………あ! そういえばへんなのきてる! にんげんさんがきてる、“ふく”みたいなの! いつもこんなのきてないからおこられてるのかな?

 

 

じゃあ、ぬいじゃえ!

 

 

 

 

「ちょ! ちが!!」

 

 

『か、カメラさん止めてえぇ!!』

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

あなたは、記憶喪失ウマ娘である。

 

 

何故か理由は全くわからないが、パドックで匍匐前進していたところから記憶がないのである。確か職員さんに『そろそろ出番ですよ~』と呼ばれたことは覚えているのだが……?

 

 

気が付けばゲート前に続く地下道にわざわざ持ってきたのであろう椅子に座らされていた。目の前に心底心配そうにこちらを見つめるマルゼン姉貴と困惑しきったポルナレフ(沖野氏)がいた。

 

 

「よ、良かったぁ~。やっと正気に戻ってくれた。もうおチビちゃん! 心配させないでよ!」

 

 

 

え? えぇ? わたしまたなんかやっちゃいました?

 

 

「覚えてないのね……、よし。あ~んして。」

 

 

? あ~ん。あ、おいちい

 

 

「小さめのアメちゃんよ。すぐにゲートインだからそれまでに舐めちゃいなさい。さ、頑張って!」

 

 

? は~い。……あ、そういえばトレーナー? なんか今日は作戦あんの?

 

 

「……いや、今日好きに走って来い。体になんか変なことはないんだよな?」

 

 

うん。いつも通りでござるが……? 本当になんか私やった?

 

 

ま、いいや! 行ってきま~す!

 

 

 

 

 

 

 

 

【UMA娘移動中】

 

 

 

 

 

 

 

『あ、間に合ったようですね。一枠一番。無事お色直しが終わったようでゲート前にやってきました。』

 

 

『このまま来なかった場合、失格となっていたので一安心ですね。時間も定刻通りのゲートインが出来そうで一安心です。あとは彼女がゲートに入ってくれるだけですね。』

 

 

 

お? いつもより他の出走者のみんなの、私を見る目がヤバいぞ? なんかこれまでは動物園のふれあいモンスター、って感じだったのが明らかに春先の変質者見る感じなんですけど?

 

なにかやらかしたんかなぁ? 匍匐前進ぐらいならせいぜい『檻の中にいるチンパンジー』を見る目だろうし。明らかに私が記憶なくしている間になんかあったな?

 

 

「あ、あの? 色々と大丈夫、ですか?」

 

 

お、どしたんシリウス。そんな敬語使って。いつも通りでよいZOY!

 

 

「あ、あはは~。ちょっとそれはキツイというか。まだあなたのこと理解できてなかったというか、理解できると思ってた私が愚かだったというべきか……。」

 

 

? やっぱ私なんかやらかした? さっきトレーナーもマルゼン姉貴も教えてくれなかったんだけど?

 

 

……こんなところで変な嘘つく子じゃないし、ホントに全部忘れてる? というか覚えてない? じゃああの時正気じゃなかった? いやそれはそれでやばいんだけど……、うん! もう気にしない!」

 

 

お? ならええんやけど。

 

 

「じゃ! 直前だけど宣戦布告! 家がらみのことは感謝してる。……でも、このレースは別! 皐月に出れなかった分だけ、このダービーであなたと競い合う! 全力で! そんだけ!」

 

 

何かを吹っ切るように全部吐き出したシリウスは言い終わるとすぐに自分の位置に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

うん。本当はゲート開く瞬間に目の前の扉とか蹴り飛ばしてやろうと思ってたけどや~めた! ちょっとだけマジで走ろっと!

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、全員ゲートに収まりまして……、スタートです。』

 

 

 

『先頭は今回はキレイなスタートを決めました一枠一番一番人気。先ほどは画面を花畑にして申し訳ありませんでした。続きまして6番、半バ身ほど開きまして4番……』

 

 

シリウスシンボリは考えていた。

 

ライバルたちに勝つ方法を、ずっと。

 

 

お家騒動で皐月に出れず、ろくな練習もさせてもらえずにずっと家にひきこもるしかない日々。部屋の中でもできる筋力トレーニングだけを現実から逃げるように続けていた日。東条トレーナー、おハナさんから送られてきた小包。

 

中身は私を含めたクラシック三強のデータ。そして私たちが出走したレースのすべての映像だった。

 

『これを見て、意識を前に。振り返らず前に。』

 

資料の端っこに小さく書かれた二人分の文字、『頑張って』というその言葉だけがそう私に言い聞かせてくれているようだった。分家のトップ、あの人たちは私が外部に情報を漏らしてるんじゃないかと思ってて私から送る、送られる荷物に検閲が入っていた。それを知っての二人分の4文字。

 

 

とても、嬉しかった。

 

 

そもそも本家と分家がもめてる理由や、私が出走できない理由も聞くだけでノイズになるだろうから耳に入れてなかった。それなのに私のことを監視しようとする奴らを心の中で笑いながら、食い入るようにレースを見返す。

 

 

その中で、一番見たのはやっぱりホープフルS。あの逃げ方。

 

私が負けてしまったあのレース。ずっと、ずっと繰り返し見た。

 

 

 

 

 

 

 

だから、さ。“その逃げは、もう見た”

 

 

 

たぶんだけど逃げてくる。確信じみていた。解っていた。

ダービーで、アイツは逃げる。

 

解っているなら対策も立てれる。

 

 

逃げられても差し返せるように脚を溜める、下がり過ぎない、ルートを把握する。

 

青葉賞で勝負勘は取り戻せた。

 

 

 

 

 

『さぁ、重バ場のレースとなり、コーナー付近はかなり荒れております。あえてそこを進むか、外を回るかが決め手になってきそうです。依然先頭は一番、その外に6番、2馬身離れまして………、2番人気シリウスシンボリは後方集団の先頭に付けております。前から後ろまで約15バ身、ペースはやや速めと言ったところ。』

 

 

 

 

 

重バ場の中のレース。ダートも出来るらしいアイツにはそこまで影響はない。

でも、すぐに切り替えられるほど走り慣れてない。

 

選んでも、選ばなくても、速度は落ちる。

コーナーは鬼門。

 

 

 

ミホなら対応できずに速度を落とす。

それかコーナーの端を選んで避ける。

 

 

 

 

 

私? 残念だけど、大得意なんだ。

 

 

 

 

 

『さぁ最終コーナーに先頭が入り始めたところ! ここから誰が仕掛けるのか!』

 

 

『バ場状態が悪くなってますね。もはやダートです。ここを避けていくでしょうから位置争いが熾烈になりそうですね。』

 

 

 

 

お前は、速度を落として曲がるよね。走ったレース、全部見たけど荒れてるバ場はなかった。学園内の設備も使ってなくてほぼ自主練。重バ場の条件下で、コーナーでできるだけ減速しない方法、重心を傾けたままでの位置取り、やろうと思えば学園で練習できること。やってないから、慣れてないよね。

 

 

 

『先頭はそのまま……! 上がってきた上がってきましたシリウスシンボリ! ぽっかり空いた内側を攻めてきた! 先頭は依然一番! 差は3バ身程!』

 

 

 

 

こっから! ここからだ! 最終直線! 差はほんの少し! 脚は十分残ってる!

 

 

 

 

「追いつく!」

 

 

 

 

『外からシリウスシンボリ! シリウスシンボリ! 内に一番! 抜かせない! 並んだまま! 並んだまま!』

 

 

 

 

「負けるかァああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

『並んだまま! そのままゴールイン! 大接戦だぁ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

写真判定、ハナ差で勝ったのは

 

 

 

『今! 確定のランプが光りました!』

 

 

 

シリウスシンボリ、私だ。

 

 

 

 

 







あなた

初期案では前世のあなたに乗ったあなた(ウマオンザウマ娘)で登場する予定だった。そっちの方が面白かったですかねぇ? こっちの方がよさそうならまた夢落ちかなんかでやりますね。
ストレスがたまり過ぎて原始回帰しちゃったのだ。服を脱いだ時、衝撃過ぎて間に合わなかったマルゼン姉貴に色々と隠してもらった後、そのまま地下道に引っ張ってこられてようやく正気に戻った!

あとあなたの親御さんテレビの前で気を失ってますけど大丈夫でしょうか……?



シリウスシンボリ

大得意な重バ場で勝負した上に、ゴルシワープを先取りしてやってやった。ただ皐月賞を指を咥えて見ていたわけじゃない! 君が! ダービー馬だ!


マルゼンスキー

自分がかわいがってる子がダービーに出る! ということでウキウキしてパドックに向かったら明らかにおかしいおチビちゃんがいた。なお、あなたがイタズラしてる場合口や目が笑っているのだが、今回はガチで正気を失ってた(ぐるぐるお目目)。とりあえず無事に走り抜けてくれたので安心した。。


沖野トレーナー

あなたちゃんの体に異常がなかったし、話した感じいつも通りだったのでゴーサインを出した。横に走りたくても走れなかった人がいたからかもしれない。たぶんストレスが溜まっててあぁなってるんだと思うけどなして? そんなにゲート壊したいの?


ポルナレフ

あ、ありのまま。今、起こったことを話すぜ!

おれはやつのレースを見に来ていたと思ったら、出走者がいきなり服を脱ぎだしたんだ。幸い近くにいたマルゼンスキーのおかげですっぽんぽんは避けられたが……

な、何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起きているのか解らなかった!
頭がどうにかなりそうだった! 催眠術だとか俺の頭が狂ったんだとか、そんなちゃちなもんじゃ断じてねぇ!
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…




ウインディちゃんなのだ! 今回は面白くかけてるのか不安なのだ。大まかな進行は決めてるけどそれに肉付けするネタがなくなってしまったのだ。更新頻度が落ちるかもしれないのだ。ごめんなのだ。ネタが下りてくるようにシラオキ様にお百度参りしてくるのだ。あとハムタロじゃないのだ。

次回からはみんながいろんなところに喧嘩売り始めるのだ。地方とか海外とか行き始めるのだ。やばいの送り込んで申し訳ないのだ。ぶたないで欲しいのだ。




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