「シンザン会長! 大変です! あ、あとご結婚おめでとうございます!」
「……胃薬飲むからちょっと待って……、うむ。何かね。あとまだ婚約だから誤解しないように。」
トレセン学園生徒会室、いまだ部屋の主がシンザンである時代。何か問題が起きると担当者が駆け込み、シンザン会長の胃腸がストレスで『ギュリィィィイイイイイ!!!!!!』とまるで怪鳥の鳴き声のように泣き叫び、会長が胃薬を呑みながら対応する時代。
なんだか作者がネタに困ったときの駆け込み寺のようになってきた生徒会室でまた何か動きがあったようです。『怪鳥がごとき会長の胃腸! ふふッ!』となんだか興奮し始めたルナちゃんをなだめながら覗いてみることにいたしましょうか。
「そ、それが! 昨日の停電のせいで食堂の食品管理用冷蔵庫が故障! 内部にあった生鮮食品系が全滅しました!」
「おうふ。」
「それと運が悪いことにちょうど食品の搬入時期と重なってしまったみたいで……、今日、食堂は食材不足で営業できないそうです!」
先日、“あなた”が連れて来た四足歩行娘じゃないウマ(前世のあなた)のせいで発生した深刻なミーム汚染。ウマ娘の持つウマソウルが暴走して生徒たちが四足歩行で歩き出したり、文字通り道草を食べだしたり、服を脱ぎだすというトレセン崩壊の事件を何とか解決したシンザン会長。
もうその時点で進化したはずの【シンザンストマック Mk-2】がストレスにより増加した胃酸のせいで決壊、あふれんばかりのストレスの次の標的は脳に行ってしまいコンデション【胃痛持ち】【片頭痛】を手に入れた会長。その痛みのせいで何とか正気を保っていた彼女だったが保健室では完治できず病院送りにされてしまった。
そんで最近退院してお腹も【シンザンストマック Z】に進化したはずなのにまたシクシク痛み出すお腹。なんで昨日停電起こったんですか神様!
「ふふ、『トレセン学園全敷地ネオンだらけにしちゃおう!』計画を未然に防げなかった私の落ち度がここで現れてしまうとは……、あぁすまない。後でこの銘柄の胃薬を買ってきてくれ。」
実は昨日、問題児であるあなたちゃんはジャパンカップも終わりそろそろクリスマスシーズンがやってくるのを察知。マルゼン姉貴が去年教えてくれたピカピカ光るクリスマスツリーをトレセン学園全体に付けることでキレイしよう! と思ったので勝手に実行に移した。
深夜の12時くらいから初めて校舎、寮、ターフなどなどに電飾をつけまくって深夜2時に起動。あなたちゃんは小学校で教えてくれる理科の基本である電線の配列を理解していなかったうえに、学園のコンセントから電気を引っ張ってくるのではなく何故か近場の発電所から勝手に電線を引いて電気を付けようとしていた。
うん! 案の定配線を間違えたせいで電気がそのまま一回転。ショートしちゃったんですよね。
そのおかげで東京丸々大停電。深夜だからよかったものの発電所は大混乱に陥りました。騒がしさと駆け込んでくる電話によってネムネムだったシンザン会長もたたき起こされ問題の解決に走ることとなりまする。
ま、簡単に言うとあなたのイタズラで東京一帯が停電。その後始末にシンザン会長が何故か駆り出されたわけです。うん、意味わかんねぇな! なおあなたの賞金によって電力会社様方に賠償金を払ったためまたあなたちゃんのお財布&通帳はすっからかんです。JWCの賞金も消えたよ! やったねトレーナー!
「いや、そんな場合じゃないですって! 昨日の停電のせいで近隣住民の方々もそんな感じで幸いスーパーとかは非常用電源があったみたいで何とかなってるみたいですけど、この付近で私たちが食べれる食材がないんです! スーパーとかは近隣住民の方々に優先販売して、お店とかは軒並み臨時閉店! それに学園にはほとんど何も残ってないです!」
「……備蓄用のコメや小麦、乾麵などの保存用食品は?」
「何も知らない生徒たちが朝練に出かけて! その後食堂によって全部食べられちゃいました! マジで何も残ってません! すっからかんです!」
シンザン会長、もうそろそろ限界です。違う世界では緊張によって高まる胸の動悸が“キングエンジン”ともてはやされることもあるそうですが、シンザン会長の胃もそれと同じくらい絶叫しております。さすがトレセン学園一の苦労人は訳が違うぜ!
後の生徒会長であるシンボリルドルフよりもスペックが高く、最近マシになったとしてもエアグルーヴ閣下のような働きはできないカブラヤオー副会長(人見知り)。しかも頼りになりそうな理事長先生はあのちびっこのお婆ちゃん、お年のせいでめったに学園に来ません。つまりシンザン会長一人だけです。そのせいで回ってくる仕事はほとんど彼女が応対しますし、解決率と顧客満足率は驚異の域です。ま、そのせいで依頼がまた増えるんですけどね!
シンザン会長、そろそろこの世代に生まれて走る以外の才能をくれた神様を恨んでしまいそうです。三女神サマはとばっちりで泣いてしまいました。
「……と、とりあえずトレセンと専属契約を結んでいる農家様方に食材を分けていただけないか連絡してくれ、連絡先はそこの棚にあるからそれで。私は古米、古古米でもいいから余っているかどうか掛け合ってみる。」
「わ、わかりました!」
絶え間なく襲ってくる頭痛と腹痛に耐えながらなんとか指示を出す会長。しかし今日はなんと運の悪いことか、また問題が駆け込んできました。神様は会長の耐久力テストでもやっているのですか?
駆け込んできたのは『着ぐるみだと何かと嵩張るよね!』ということで仮面をつけだしたカブラヤオー副会長。今日は不気味な紫の縦一本がチャームポイントの真っ黒仮面のようです。
「大変です会長! 今日の食堂閉鎖と近所の商店街が軒並み閉店なのを知った生徒たちがデモ隊を結成して学園を占拠し始めました! 朝ごはんを食べられなかった生徒たちで結成されているようでありみんな飢餓で頭がやられてます!」
そういえばなんか今日騒がしいなぁ、と思っていたが、なんとデモが起こっていたのか! そうひとりでに納得するシンザン。もうそろそろ頭が異常を受け付けなくなってきたぞ。
「ゔぇ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!゙!゙!゙」
「お腹空いたお腹空いたお腹空いたお腹空いた」
「ゔま゙ぴ゙ょ゙い゙ゔま゙ぴ゙ょ゙い゙!!!」
「オデ、オマエ、パクパクスル!」
脳内であったこともないメジロマックイーンが『わ、わたくしの安寧の日々は……』と求めるものを探し出し、これまたあったこともないスペシャルウィークが言ったこともない迫真の演技で『あ゙げ゙ま゙ぜん゙!!!』するのを幻聴する会長。うん、たのしいね!
「と、とりあえずそれは私たちじゃ対処できないので警察のウマ娘対策機動本部に掛け合ってもろて……、一応食材の入手に対処し始めると言っといてください。……あとそろそろ私隠居していい? 次代はシービーかマルゼンかルドルフでお願いします。」
「わ、わかりました! 連絡してきます! あとたぶんこのままだと断られると思うので無理では?」
「そっか……、救いはないのですか……」
数多くの伝説をたたき出した花々しい現役時代、生徒会長になって“あなた”が出現した苦労多き生徒会長時代、淡い恋心で初恋だったトレーナーさんに私の思いを受け入れてもらえた婚約時代。人生の浮き沈みが激しいことを何となく理解してた彼女はこれが沈みの時期なのかと戦慄しはじめたころ……
「大変です会長!」
また誰かがやってきた。
「三大欲求の一つが満たされないと暴走し始めたウマ娘たちが、デモ隊と違うところで暴れ始めました! 自分の愛トレーナーさんを捕まえてうまぴょい&うまだっちをしようとしています! 止めに行った同志たちもピンクの覇王色にやられて飢えたジャッカルみたいになっちゃいました!」
瞬間、胃酸の排出量がガチャのR排出量並みに大爆発、Z化したはずの会長のストマックを破壊し穴が開きました。
「う、う~ん……」
会長、病院送りです。
チュンチュン!
朝日の暖かい光と共に雀が新しい日常の始まりを告げます。
久しぶりにお寝坊してしまった彼女は自分の髪としっぽについた寝藁を眠そうに取り除きながら時計を確認。急いで教室に向かう準備を始めました。
でもでも、とっても楽しい夢を見たみたいでニコニコしています。
笑顔なのは、いいことですね。
あなた
古来よりこのようなやり方を夢落ちというそうです。今日は本当に機嫌が良かったらしく、クラスのお友達に彼女にとって純金よりも価値が高い砂糖を気前よく分けていたそうです。まぁ受け取った側は何があったのかヒヤヒヤしていましたが。
なお、ホントにURAのあなたをこっちに連れてきた模様。本人は『ほら馬畜生、今の私はこんなにいい生活してるぞ!』と単に自慢したかっただけの模様。UMAの方も『ほーん、ならついていってやるぜい。あ、なんかうまいもん奢れよ』と興味津々。
つまり、夢の一部は本当だったんですよね……
贖罪不足ですってあなたちゃん
シンザン会長
何故か今日は朝起きた時から震えが止まらなかった。大事を取るため今日はお腹にやさしいおかゆを食べた。シンザン会長の胃のレベルが上がった!
次回はやっとこさ有馬記念ですタイ!
……ウィンディちゃん? 彼女はハムタロさんとずんだもんと悪魔合体してしまったので分裂するために療養中です。しばらくお待ちください。