あなたはウマ娘である。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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使い古されたネタ、でもあれいい曲よね……

 

 

あなたはウマ娘である。異論は認めない。

 

 

 

あなたにとって一生に一度だけのクラシック期間も終わり、今後数十年は伝説として謳われるであろう有馬も終わった。正月明けでごたごたして、実家に帰っても珍しく怒られなかったあなたは先日『領域』の事故でゲートを爆破した。

 

今回は自分を含めた自爆であったことと、『領域』での事故と言うこともありおとがめはなかったあなたであるがもちろん『領域』の公式戦での使用は安定して使えるようになるまで禁止された。当たり前である。

 

 

あなたとしてもこの『領域』のランダム性、というかガチャを回す快感に呑まれてしまっているのでほぼ毎日自分からゲートに入って『領域』を展開している…………

 

 

なんてことは全くなく、『領域』の発動条件を弄っていつでもどこでも好きな時にガチャが引けるようにしやがりました。まぁ彼女としても初回で大爆発をかました経験が怖かったのか沖野氏が近くにいるところで練習してますよ?

 

でもでも沖野氏からすれば素晴らしい第一歩。これまで全く練習に参加しない上に、問題ばっかり引き起こす。しかも夏合宿などのイベントごとに出席するにはするが練習せずに遊び惚けているし怒ったり練習させようとするととんでもない被害を巻き起こすただの問題児を押し付けられていた彼。でもでもほっぽり出したら出したでさらに被害が拡大しそうだし、これでも成績残してくれてるから彼女のおかげでスピカというチームが存続出来ているわけで、……全く以ってどうしたらいいんでしょうね?

 

そんな問題児が、たとえ自分が爆発した後に助けてくれる人が欲しかったため近くで『領域』を練習してるだけだとしても、彼からすれば練習しに部室近くに来てくれるだけでも感涙ものです。おら沖野、メニューやるからそこにある好きなもん全部頼め、奢りだ奢り。

 

 

 

ちなみにですが、これまでのあなたちゃんのガチャ結果の中で特筆すべき事項を述べておきますのでお時間ある方はお読みくださいませ。

 

 

1回目:爆弾

 自身を巻き込んでゲートごと爆発四散。ワザマエ!

 

8回目:クトゥルフのタコさん

 隣にタコさんが召喚されるが沖野氏と名刺交換して帰還。

 

15回目:黒塗りの高級車

 どこからともなく黒塗りの高級車があなたにぶつかってきた。キレたあなたがターフに埋めた。

 

19回目:シンザン会長愛用の胃薬

 粉状のお薬。とりあえず沖野氏にあげた。

 

22回目:ゲッター炉心

 緑色に輝く不気味なエンジン。爆発寸前だったので大樹のウロに放り込んだ、消息不明。

 

23回目:こち亀全200巻

 上から落ちてきたため頭を強打、その後コミックに埋もれた。現在スピカ部室に安置。

 

28回目:入浴中のミホシンザン

 裸で出てきたミホ。近くにいた沖野氏はビンタされて吹っ飛んだ。不憫。

 

33回目:なんだか千円札の人に似ている人

 3がつく数字の時だけにおかしな人になるネタを披露して帰っていった。現在落語家さん。

 

37回目;なんかキラキラした石

 落ちてきた瞬間ナイスミドルで赤と金色の鉄の男さんが現れチーズバーガーと交換、おいしい。

 

40回目:ゲート

 カプセルを開けた瞬間に破壊された。

 

44回目:SCP-■■■

 AKクラス:世界終焉シナリオが発生したためこのテキストは処理されました。571。

 

48回目:前世のあなた

 ウッマ状態で遊びに来ました。周囲のウマ娘のウマソウルが暴走しました。会長が倒れました。

 

 

 

と、まぁこんな感じですね。正直なんでこの世界がまだ形をとどめているのか理解できないような存在がやってきたような気がしますが、気のせいだったのでしょう。現に今この物語が始まったときと何の変わりもない世界が広がってますし。

 

大樹のウロ目指して宇宙のかなたからインベーダーさんがやってくる気配や地下にいる恐竜帝国の皆様が壊滅した気がしますが地球は平和です。平和なはずです。あと指パッチン紫おじさんは絶対こっちに来ないでください。それと財団もあなたから収容違反を許さないでください。最悪Kクラスシナリオが徒党を組んでやってきますよ?

 

 

 

 

 

「うん、まぁ、なんだ? 改めて書き出したものを見せてもらうと色々とヤバいな、お前さんの『領域』。……それといくつか黒塗りされて読めないのがあるけどこれなんだ?」

 

 

……知らない方がいい奴。トレーナーも消えたくないでしょ?

 

 

「……本当に何呼びだしたんだお前。頼むから人間で何とかできる奴で頼むぞ、ホント。……さて、今回はダート、それもGⅠのフェブラリーステークスだが調子はどうだ? 俺から見たら大丈夫そうだが。」

 

 

おう! 体の調子は大丈夫だぜぃ! 昨日マルゼンお母ちゃんとケーキバイキング食べてきたから気分上々、元気百倍! これならエジプト行きの飛行機にも乗れるぜ!

 

 

「十中八九その飛行機落ちるからやめとけ。それともちろんだが『領域』は使うなよ? 個人にだけ被害が行くものであればお前さんのことだから無傷で帰ってこれそうだけど、周りに被害及ぼすのはマジで駄目だからな? フリじゃないからな?」

 

 

おkおk! 今日は久しぶりのダートダァ! 「最近勝ちに見放されてる」って調教師のおじさんが絆コマンドくれたから勝てるっしょ!

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

皆様はご存じであろう。

 

固有スキルのことを。

 

 

 

固有スキル、この世界における住民たちには『領域』と呼ばれるそれ。

 

そのウマ娘にとって象徴的な状況に至った場合、自身の能力を格段に上げるもの。

 

 

全てを抜かし、勝利を積み上げてきたシンボリルドルフは三人を抜くことで速度を格段に伸ばし、ナイスネイチャは最終局面にて三番手であった場合能力を上げる。そのように自身にとって型にはまった状況、そこから自分の勝利に向かって走り抜けることができる状況。そこで強くなる、速くなるのは道理である。

 

 

では、“あなた”はどうであろう。彼女は逃げと追い込みを使用するが、別にそこが彼女にとっての『勝ち方』、ではない。マルゼンスキーのように逃げ、その背中の大きさを見せるのでもなく、ゴールドシップのようにゆっくりと、しかし鮮烈にすべてを抜き去るものでもない。

 

 

 

 

“あなた”の象徴。

 

 

 

そう、ゲートである。

 

 

ゲートが開く瞬間こそあなたが一番輝ける瞬間。その開く音と共に始まるあなただけの世界。

 

“あなた”の固有スキル発生条件は『ゲートが開く』ことのみ。

 

 

 

 

申し訳ないがもう一つここで考えてほしいことがある。

 

君たちは育成中に彼女たちの固有スキルが発動しなかったことはあるだろうか? 彼女たちの『領域』が発生するその条件下にありながら発生しなかったことはあるだろうか?

 

継承で受け継がれたものでなく、彼女だけの固有スキル。それが発動しなかったことはあるだろうか?

 

 

 

 

答えは否である。

 

 

 

固有スキルは条件がそろった場合“確定”で発動する。

 

 

 

もう、おわかりですね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、まもなくレースが始まります。フェブラリーステークス、ダート1600の旅路。』

 

 

『いま、スタートです。』

 

 

 

 

 ガコン&シュピン!(カットインの音!)

 

 

 

 

「あ、ヤベ。」

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

一通りの作業と言いますか、ガチャ用の演出を終えまして。あなたちゃんが『あの飛び上がって回転しながらガチャ用のコイン投げつけるの腰に来るわ……、省略できないのかな?』などと君まだ中学生ですよね? ということを考えながらガチャのカプセルを開封。いつものように広がる世界。

 

 

光が収まり、そこにあった世界は…………、

 

 

「団長! 車の用意出来ました!」

 

 

親の顔より見た廊下。正確に言うと2017以降急激に見る回数が増えた例の廊下だった。

 

 

「あっ(察し。)」

 

 

オレンジ色の天然パーマの頭をした背の低い少年がこう発言する。

 

 

「なんか静かですね。街の中にはギャラルホルンもいないし本部とはえらい違いだ。」

 

 

あなたから見て左にその少年。こちらからは赤紫のスーツの背中しか見えないが、絶対にあの特徴的な髪型を持つ彼であろう。我がシンボリルドルフ先輩のルナマークである髪と交換しても違和感のないトサカを持つ男性。

 

 

「ああ。火星の戦力は軒並み向こうに回してんのかもな。」

 

「まっそんなのもう関係ないですけどね!」

 

 

楽しそうに会話する二人についていきながら、自分の服装を確認するとやはりいつもの勝負服の上に緑色の作業服らしきものを羽織っている。オイオイ、鉄華団じゃねぇーか! (コンプライアンス的にこのまま私この世界に居座ったら)死ぬぞ、オイ!

 

 

「上機嫌だな。」

 

「そりゃそうですよ!みんな助かるし、タカキも頑張ってたし、俺も頑張らないと!」

 

 

正直そろそろタカキは休め。

 

 

「ああ。(そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺たちが立ち止まらないかぎり道は続く)」

 

 

あなたを後方につれ、私たちはもうお決まりとなった玄関口に出る。先には装甲車を止めて私たちを迎えに来ているチャド。ポケットに手を入れたまま団長はゆっくりと階段を下りていき……、

 

 

 

<来週は夕方5時00分からお送りします>

 

 

 

通りの先の方から聞こえる急ブレーキの音。その先に視線を向けてみると黒塗りの車。あなたは嫌な感じがしたのと最近改定されたコンプライアンス的に撃たれると違反したことになり自身がいる世界そのものが公式によって破壊されるので隠れることにした。よくオルガが『おい、おい、そこに身を隠せる壁あるんだしそこに隠れろよ。』の場所である。……え? オルガを助けたりしないのかいだって? だってオルガですし……、どうせあなたちゃんみたいにすぐ復活するでしょ?

 

 

車から飛び出す黒服たち。その手には自動小銃らしきものがあり、その銃口はこちらに向いた。

 

 

ダダダダダダダダダダッ! という音と共に放たれる銃弾たち。

 

 

「うっ、ぐあっ!」

 

 

黒人の面倒見のよさそうな男性、チャドが肩に銃弾を受ける。

 

とっさのことに逃げ遅れたライドをかばうために団長が彼の壁となるために前に出、抱える。

 

 

「団長? 何やってんだよ? 団長!」

 

 

何発も背中にあたる銃弾。やはり近くから見ても急所を外れている。やっぱりあの黒塗りの高級車に乗ってた暗殺者さんたち素人だったんじゃね?

 

 

「グッ、……………、ウオォォォォォオオオ!!!!!」

 

 

大声と共に懐にある銃を手に取り、翻って三発ほど放つ団長。その最後の一発が奇跡的に暗殺者の一人に当たる。

 

 

「ぐっ!」

 

 

仲間の負傷を重く見たのか、それとも対象に重大なダメージを与えたと判断したのか、撤退を始める暗殺者たち。急発進で響くタイヤの音。

 

 

「はぁはぁはぁ…。なんだよ、結構当たんじゃねぇか。ふっ…。」

 

 

銃を撃つために伸ばされた腕が力なく落ちる。呼吸音の高まりと心配そうにそれを見る団員達。あとさっきから何故か笑いをこらえようとして下を向いて蹲ってるせいで悲しんでるようにも見えるあなた。

 

 

「だ……、団長……。」

 

 

舗装され、丁寧にタイルが埋め込まれた歩道に広がる赤いシミ。その中心である彼から徐々に広がり元の色を塗り潰していく赤。

 

 

「あっ……あぁ……!」

 

 

その声を聴いてからついていた膝をゆっくりと上げ、立ち上がろうとする団長。

 

 

「なんて声出してやがる……、ライドォ!」

 

 

もう耐え切れなくなったあなたはタイミングよく詠唱開始、流す曲は勿論<フリージア>。

 

 

「だって……、だって……。」

 

 

 

 

 

「俺はぁ、鉄華団団長オルガ・イツカだぞ。……こんくれぇなんてこたぁねぇ。」

 

「そんな……俺なんかのために……。」

 

 

ゆっくりと立ち上がり、ふらつきながらも前に歩もうとする団長。

 

 

 

「団員を守んのは俺の仕事だ。」

 

「でも!」

 

 

 

その光景を直視できないのか、泣き崩れるチャド。

 

 

「いいから行くぞ!」

 

 

<漂う宇宙の、どこか遠く>

 

 

「皆が待ってんだ。それに……。」

 

 

<祈り通ずる惑星があるとしたら>

 

 

(ミカ、やっと分かったんだ。)

 

 

<僕らはそこへ向かうのだろうか>

 

 

(俺たちにはたどりつく場所なんていらねぇ。)

 

 

<今は信じた道をただ進め>

 

 

(ただ進み続けるだけでいい。止まんねぇかぎり、道は続く)

 

 

 

 

 

 

「謝ったら許さない。」

 

「ああ分かってる。」

 

 

 

 

<希望の花、繋いだ絆を>

 

 

「俺は止まんねぇからよ。」

 

 

<今僕らの胸の中にあるから>

 

 

「お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!」

 

 

<消して散ることはない、生きる力>

 

 

<希望の花、繋いだ絆を>

 

 

「だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。」

 

 

<力にして明日を強く咲き誇れ>

 

 

<戻る場所なんてない>

 

 

<辿り着くべき場所へと>

 

 

<迷いのない旗を高く掲げて>

 

 

<今を生きていく>

 

 

 

 

 

「あ、ライドにチャドさ。団長アレ急所外れてるし応急処置したら助かるんじゃね?」

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

『えっと、スタートしてから何秒か経ちましたが……、4番未だ出てきませんね? どうしたのでしょうか?』

 

 

「あ、戻ってきた。」

 

 

 

 

なお、レース結果としては1600と短いこともあり、5秒近くゲートで放心していたあなたは4着だった。

 

 




あなた

オルガが死にかけてる横でフリージアを歌い切った。やったね。後ろからくる二人は絶対困惑してると思う。みんなも感動のあのシーンを見返そう!
なおレースに負けたのは1600で短いのに5秒もロスしたから。でも3000くらいあったら勝てた気がするとは本人談。


ミホシンザン

トレーニングの汗を流すために速めにお風呂頂いてたらあなたの『領域』に呼び出されて全裸で沖野氏の前に……、沖野氏を気絶させる強烈なビンタをお見舞いした後、今回は結構ガチ目にあなたに対して怒った。致し方ないよね! ミホとミカって似てるよね。お前もそう思うだろミホォ!


オルガ・イツカ

昔見た静画のようにウマ娘世界に転生してミホノブルボンのトレーナーになる異世界オルガ新章突入……、ということもなく普通に応急手当を受けて生き残った。これであのクソシナリオともおさらばというわけさ。
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