あなたは医学的、生物学的に見てウマ娘である。
先日“あなた”ちゃんが目から発したビームによって丸焦げにされた沖野氏が不安に思ったのか、それとも一般の方々が疑問に思ったのか解らないが、とあるTV番組の企画の一つとして“あなた”をウマ娘研究の聖地である『ウマーバード大学』と協力して精密検査を行うというものがあった。
皆が皆、本当にこいつはウマ娘なのか、何か別種の生き物ではないかと思っていたのである。
しかし残念ながらどこをどう調査しても結果は白。あなたちゃんは正真正銘のウマ娘なのだ。たとえ番組の最後に『存在がおかしかった』とまとめられたとしても気にしないのだ。むしろ誉め言葉なのだ。
ま、そんな細事は置いておいてもう一度タイトルを見てほしい。『あなたvsゴルシvsサクラチヨノオー』である。そう! あのトレセンで一二を争う問題児、ゴールドシップがついにトレセン学園にエントリーするのである!
そしてあなたちゃんの一年後輩にタマモクロスや金髪の方のゴルシことゴールドシチーがいることからその次の世代はオグリキャップの時代。ということでサクラチヨノオーやメジロアルダン、スーパークリークやヤエノムテキが入学してくるのである! ゴルシちゃん同世代だったんですねぇ……、ま、彼女学年不明ですけど。
これを読んでくださっている読者の方々ならもう周知の事実であるが“あなた”ちゃんはマルゼンスキー産駒。そしてサクラチヨノオーもマルゼンスキー産駒。このウマ娘時空では全く血縁なんて存在してないが、前世のウッマの記憶を色濃く受け継ぐあなたちゃんにとってはそんなの細事。自分の知らない妹ちゃんが入学してくると知ると、テンションが上がっている。
しかも勝手に弟子入りさせたあのゴルシちゃんまで入学してくるではないか! これはまさにトレセンという最上級の遊び場に最高のお友達がやってくるのである!
もうテンション爆上げである。あたまパーリーピーポーエイリアンである。
今日から新学期なのだが、朝からご機嫌な朝食として謎の合金によって強化されたはずのゲートを三つも素手で破壊し、口から怪光線を吐きながらターフを駆け巡り、今年度のジャパンワールドカップへの出走登録を済ませるぐらいである。
普段は通常のゲートを一つ素手で壊すか、強化されたゲートにて壊れるまで『領域』を使い続けるかの二通りだったのを考えるとそのご機嫌度がどれほど大きいかわかるだろう。
新入生からすれば眠い目を擦りながらも、ワクワクのトレセン学園。これからどんな生活が始まるのだろうかとルンルンスキップで登校したら、校内のターフで口から怪光線を吐きながら走っているあなたがいるわけである。在校生からすれば最低でも“あなた”の奇行によって一年間鍛えられた猛者。『あ、今日はビーム吐いてるじゃん。色からして朝は苺を食べたな?』みたいな感じでスルー出来るのだが新入生はそうはいかない。ほんの数か月前までは小学校に通っていた彼女たちである、すわ中央のエリート集団の中で戦い抜くには口からビームでも吐かないといけないのかと錯覚するわけである。
しかも一部のクラスではとある葦毛が『お、師匠今日もやってんな。……私にもできるかな?』などと言いながら手から国民的アニメでドラゴンのボールを探す奴の代名詞である『か〇はめ波』を打ち出したからシャレにならない。葦毛の彼女は師匠みたいに口からはまだ無理か……、と残念そうに言っているが見ている側からすればそんな場合ではない。
もしかするとここに在籍している中央のエリートたちはビームを普通に打てるのでは? 先輩らしき人が普通に口から打ってるのに周りはそれを当たり前のように受け入れている! しかも同級生の中でもうビームを打てる奴がいるではないか!
純真無垢で、レースに懸ける情熱は人一倍強い彼女たち。噂は噂を呼び、なんだかオカルトチックであった『領域』の存在がシンザンによって現実のものだと証明された前例がある。目の前でビームを打つ先輩や同級生も普通にいた。私たちが知らなかっただけでもしかするとビームを打てないとレースに出してもらえないのではと勘違いし始める新入生たち。
本来はここに在籍する新入生すべてがライバルであるのだが、この『ビームを打てないとレースに出られない』という命題は非常に難敵。ここで先輩の誰かに泣きつけばよかったのだろうが、あと数年すればライバルになる先輩にわざわざ前提条件のビームについて話を聞きに行くのは……、と遠慮してしまった彼女たち。しかも悩んでる最中に座禅を組みながら空中飛行する“あなた”ちゃんと完全にブチギレて彼女だけの世界を展開する『領域』を発動しながら全力猛追するシンザン会長との逃走劇を見てしまった。
『や、やっぱり! トレセン学園で生き残るにはあれぐらいすごいことできないといけないんだ! その一番初めがビームだったんだ!』とさらに勘違いが加速する。
とある生徒がトレセンにおいてトレーナーが見つかるまでトレーニングなどを見てくれる教官に対して、泣きながらもうどうしようもないという顔で『どうやったらビーム打てるんですか……、私! どんなに頑張っても打てなくて!』と最後の方はもう“これ以上学園に居られないかも!”という不安に押しつぶされて、号泣しながら相談しに行くという事件が発生。
この事件のおかげで現在の状況が発覚し、学園側として公式に『レースの出走にビームとかそういうのは一切関係ありません! あの子がおかしいだけです!』と発表するまでこの勘違いは続くわけだが……、まぁそれは別のお話である。
夜な夜なみんなで集まってビームを打つ練習をしたり、ビームを打ってる漫画やアニメを研究したり、滝に打たれながら精神統一を図った子がいたりしたけど別のお話!
さて、時間を戻しまして新学期初日の放課後! 本日はなんと新入生たちの交流を目的とした模擬レースを行うようです。本来ならこういったレースなどは忙しい新学期初日ではなく数日明けてからやるそうですが、今年はなんだか日程が合わない様子。だったらもういっそのこと初日にやってしまえばいいんじゃね? というナイスなアイデアによって企画されたレース。
新入生の皆さんもレースと聞くとウマ娘の血が騒ぐのかウキウキしています。しかもレースと聞けば新学期初日は午前中授業という利点を生かしたウマ娘ちゃんたちが集まってきますし、新たなメンバーをゲットするなり!と沖野氏をはじめとしたトレーナーさんたちも集まりました。もうこれでは選抜レースみたいなものですね。
ま、そんなお祭り騒ぎにあなたちゃんが遊びに来ないはずもなく。あのハチミースタンドで入手した“あなた”専用の1ガロン容器に入れてもらったハチミーを呑みながら観戦です。なお、これはテンション上がりまくって朝から大量破壊をやらかしたあなたちゃんがもうこれ以上何もしないように沖野氏が買い与えたものです。基本的にあなた甘いもの食べてる時は大人しいですもんね。しかも今日はマルゼンスキー姉貴がミスターシービー姉貴のハワイ旅行に付いて行っちゃってるんでブレーキ役がいません。だから1ガロンのハチミーを用意しておく必要が、あったんですねぇ。
『さぁ、これより新入生による交流レースが始まります!』
おっと。そろそろ始まるみたいですよ? ほら、あなたちゃん。自分で持ってきたニンジン食べるのおやめ? 後輩ちゃんたちのレースが始まりますよ。 え? お腹いっぱいになったから寝る? いったい何のために見に来たんですかあなた……。
『……が注目ですね。そして4枠7番にサクラチヨノオー。あのサクラ家から送り込まれてきた新星! 憧れの人はマルゼンスキー! 残念ながら思い人は現在海外旅行中ですが頑張って欲しいものです。そして最後に4枠8番にゴールドシップ。先ほど急遽行われた事前インタビューによるとゴルゴル星からやってきたシークレットプリンセスゴルシ様とは私のことだぜ!、とのことです。噂によるのあいつのお弟子さんとのことですが……、今はただ何も起こらないことを神に祈るだけです。では! 以上8人で交流レース第7Rを始めていきます。』
お! お? おいおいあなたちゃん。あなたの半弟? 半妹?とお弟子さんがレースに出走するみたいですよ。おきてくださ~い。
『ちょっと大外のゴールドシップがもたついたようですが、全員ゲートに収まりまして……、今スタートしました!』
あちゃ~、あなたちゃん寝たままレース始まっちゃいましたよ。え~と? チヨノオーちゃんはうまくスタートして先行位置、前から三番目くらいに付けましたね。それで問題のゴルシちゃんですが……、やっぱり最後尾のようです。まぁパチモンのあなたちゃんと比べればゴルシは正真正銘の追い込み馬。
今の彼女に固有スキル、もしくは『領域』に似たレース中盤からの驚異的スパートが可能かどうかわかりませんがどっちにしても楽しいレースになりそうです。
『さぁレースも中盤に差し掛かりまして、ちょうどいま先頭が折り返し地点を通り過ぎました。』
お? あなたちゃんが寝ているのでニンジンとか拝借してたらレースももうそんな感じですか。ゴルシちゃんがちょっとずつ加速しておりまする。中学一年生ながらも本格化途中であることを十分に生かした驚異的な加速。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
『最終コーナーをめぐりまして飛び出してきたのはサクラチヨノオー! サクラチヨノオーです! そして外から外からゴールドシップ!』
並んでる……、チヨノオーちゃんの方が位置有利なかんじか。若干チヨノオーちゃんの顔から疲労が見えますがなんとしてでも勝つという闘志が見えますね。んでゴルシちゃんの方は……、あら。こちらの存在に気付いているようです。ウインクされちゃいました。あらイケウマ娘。惚れちゃいますわ。
『そのまま並んでゴールイン! チヨノオーの体勢有利か!』
お~! パチパチ~。チヨノオーちゃんがうまく逃げ切りましたね。ま、今回のレースは2000mでしたしゴルシちゃんにとっては短め。あの名優ステイヤーの血が流れてるんですからもう1000mぐらいは欲しいところでしょうか。でもでもあなたちゃん関係者がワンツーフィニッシュなのはいいことですね。あなたもそう思うでしょ?
そう言いながら振り返るナレーターさん。しかしながらそこにいたはずのあなたちゃんは見当たりません。空っぽになったハチミーの容器だけが物寂しく置いてあるのでした。
『……ん? もうレースは終わったんですがチヨノオーとゴルシがスピードを緩めませんね? そのまま速度を保ったまま走ってます?』
「おらぁ~! 待て待てチヨすけ! そろそろゴルシちゃんに捕まれってんだい! お前だけ師匠の妹キャラとかずるいぞ~! ゴルシちゃんも混ぜろや!」
「な、なんで! なんで私追いかけられてるの! なんで! あと私一人っ子!」
「待てよチヨすけ~! おとなしくゴルシちゃんと一緒に“妹シスターズ”結成しようぜぇ? あとチヨすけ、オマエも鬼にならないか?」
「もうレース終わってるのに~~~!!!」
スタミナは限界、しかしながら止まればなんかやばいことをしてきそうな同級生のゴールドシップ。もうこのまま憧れのマルゼンスキー先輩と会わずに力尽きてしまうのかと思った瞬間! 逃げるサクラチヨノオーの顔に掛かる影!
その雰囲気から感じる懐かしくも暖かい波動! 母の波動!
(も、もしかしてマルゼンスキー先輩が助けに……!)
そう思い、顔をバっと上げるチヨノオー。しかしながら……
残念! あなたちゃんでした!
これは失敗チヨノオー、感じた母の波動は彼女に流れる半分の血だけ! しかも性格的に後ろから追ってくるヤバいのと同じ! もしくはそれ以上だ!
マズいぞチヨノオー! 前門のあなた! 後門のゴルシだ! どっちも門嫌いだけど!
あなた、チヨノオー、ゴルシの順で一直線に並ぶながら疾走する三人。いくらチヨノオーが逃げ出そうとしても後方から不沈艦が見ているので逃げられない状態! ここであなたから発せられる指令!
「目標発見! ゴルシ! チヨノオー! ゴルシ! ゴルシ! あのシンザン会長にジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!」
「ふぇ!」
「「「がってん!!!」」」
小さくも甲高い悲鳴を上げるチヨノオー。そして後ろから聞こえる重なった声に驚き振り返ると何故か分裂して三人に増えているゴールドシップ。
そして前を見直せば入学式の時に壇上に立って挨拶をしていたシンザン会長がその先にお立ちになっているではないか!
「ふふふ、たかが中等部三人でこのシンザンが倒せると思うなよ! こっちは三か月愛娘のミホと一緒にいられたおかげで元気いっぱいだ!」
片手を天にかざすパフォーマンスを行った後、こちらに突撃してくるシンザン会長。彼女の『領域』を部分展開したのか片手には持っていなかったはずのハリセンが握られている。それと『愛娘』の発言から彼女の脳内では自分と愛しのトレーナーさんとの間に生まれたミホシンザンという家族関係が出来上がっているのが丸わかりだが今更であろう。
「ぶ、ぶつかる!」
「甘い!」
チヨノオーがあなたとシンザン会長が接触するか否かというところで叫ぶ。真っ向からの衝突事故という凄惨な情景を思い起こし、思わず目をつぶろうとした瞬間天馬のように飛び上がる会長。
そしてそのままあなたちゃんの顔面を踏み台にしてさらに空へ!
「「「し、師匠を踏み台にしたァ!!!」」」
ギャグマンガのように陥没したお顔をさらしながら倒れるあなた。そして肝心のシンザン会長はその優れた身体能力を以ってチヨノオーの頭上を越える!
(あ、黒……)
自分の頭上を飛ぶ神がいるなら見上げるのは必然。ただ単に新入生のレースを見に来ていた会長のお洋服は制服。つまり何も防壁がないのである。
そしてそのままあなたちゃんを踏み台にした会長はチヨノオーを超えゴルシの前に着地! そこから舞がごときハリセンさばきで分裂したゴルシちゃんをまとめて一閃!
ゴルシ星に伝わる忍術・影分身も神馬シンザンの前では無力! ゴルシ! 破れたり!
「ぐぇ!」
蛙のような断末魔を上げて倒れ込むゴルシ。しかしながらよく見るとあなたちゃんもゴルシもオルガで『とまるんじゃねぇぞ……。』してるのでそんなに痛くなかったようです。ただのお仕置きでよかったね。
……ん? あなたちゃん顔陥没してませんでした?
「確か……、サクラチヨノオーだったかね? 大丈夫だったかい?」
「あ、はい。ありがとうございます。(黒……)」
「まぁなんだ? 今日のことは災害にでも見舞われたとでも思って忘れるといい。」
「あ、はい。(黒……)」
「にしてもまたヤバそうなのが入ってきたな……、これ次期の生徒会大丈夫か? シービーには逃げられてしまったし……。」
「あ、はい。(黒……)」
「おっと、すまない。君には関係ない話だったな。先ほどのレースは見事だった。今日はよく休むように、ではな。」
「あ、はい。(黒……)」
「黒………………。」
その後、あなた&ゴルシがフリージアから復活するまで硬直しているチヨノオーの姿が目撃されたとかされなかったとか……。
おしまい。
あなた
楽しかった。
寝ている時にナレーターさんがニンジンを拝借していましたが、ダークライさんに頼んで現実世界から精神世界に持ってきてもらってます。なお、傍から見たらあなたちゃんの背中から出てきた黒い靄みたいな触手がせっせと積み上げられたニンジンを背中から吸収しているように見える。
サクラチヨノオー
正直かなり驚いたが、終わってみればなんか楽しかった。レース終わりにあなたちゃんのおごりでゴルシ希望のラーメン食べに行った。おいしかったです。
それと当分の間、シンザン会長の黒が忘れれらなかったようです。
ゴールドシップ
ゴルゴル星からやってきたお姫様。ゴルシ流忍術でワープもできるし分身もできる。ビームも出せる。あなたちゃんと学園で遊べたのでその日はずっとご機嫌でした。
三人で一緒に行ったラーメン屋は今後結構お世話になるところのようですよ?
シンザン会長
黒。
あなたがラーメンにやけどしてて、チヨノオーちゃんが口いっぱいにラーメン啜ってて、ゴルシちゃんが『大将このラーメンうめぇな!』ってお箸で指さしながらみんなで仲良くラーメン食べてる画像欲しくありませんか? 私は血反吐が出るほど欲しいです。