あなたはウマ娘である。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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あなたちゃんが真面目に練習し始めたせいで、あなたちゃんができる行動の120割が制限された気がしました。



ルビで呼び捨てにしてるの気が付いてないミホ

 

 

 

時は舞い戻り、春の天皇賞の直後。

 

 

『11番上がる! 上がるが! ……届かない! 届きません! ミホシンザン加速! ミホシンザンだ! ミホシンザンだ!』

 

 

『ミホシンザン抜け出した! ミホシンザン抜け出した! 並びません! 並ばせません! 影すら踏ませない! 追いつけない! 追いつけない11番! そのまま寄せ付けずゴールイン!』

 

 

『一着にミホシンザン! 後続に一バ身ほど付けまして強さを見せつけました! 一着はミホシンザンです!』

 

 

 

「うッっしゃあ! みたか!」

 

 

その瞳に確定の真っ赤なランプが灯り、勝鬨を上げるミホ。菊花賞での勝利、有馬記念の先着、そして春の天皇賞での勝利。これで三連勝になる。

 

視線は自然と彼女に向かう。顔は……、笑っている。笑っているのだ。

 

 

とても、とても面白そうに。これまで見せていた彼女の笑顔、幼子が浮かべるような無邪気なものでもなく、諸悪の根源が浮かべるようなものでもない。

 

競走者の顔。挑み、競い合い、高みを目指すための顔。私が見たかった彼女の顔。

 

 

『領域』を手に入れ。過去の自身と繋がるまでは彼女にとっての普段の顔が、競争者としての顔だと思ってた。顔や態度からは察することができないけど彼女にも火が灯っていると思っていた。

 

でも視点を得てみればどうだ? 覗いてみればどうだ? 

 

そんなものはどこにもない。このレースに参加していたすべてのものが持つ勝利への渇望、心を燃やすための火種。そんなものは全部なくて、残っているのは燃えカスだけ。彼女にとってレースに対する意欲はほとんど存在していなかった。

 

 

 

元々、何を仕出かすか解らない。どんなものを持って来るか解らない。私が出走する春の天皇賞で一番警戒すべき、そして優勝争いになるのが彼女だけだった。だから情報を集めるために、それと個人的にあいつの頭の中がどうなっているのか気になっていたから『領域』で見た。

 

見えたのは何も存在しない暗い空間、ひどく冷たく冷え切った空間、私の『領域』の一部である太陽(シンザン)で全く明かりも暖かさも与えられない空間。何もないただ暗黒が広がる空間でただ一人そこで眠っているアイツ。暗すぎて表情も見えなくて、全く動かない。まるで死人みたいだった。

 

とてつもない不安を感じた。『領域』を閉じ、もう一度見直す。同じ景色。

 

 

何かにすがるように見た、可能性の一つとしてある彼女以外も全部同じ可能性。同じチームのシービー先輩……、は旅行中なので同じクラスの子達を見た。どの世界も明るかった。生き生きと世界を彩るものがあった。その中心には精神世界の持ち主が必ずいた。

 

 

居てもたってもいられなくなり、『領域』を初めて展開できた時に感じた私たちの根源。おそらく私たちの魂がある場所に接続できるかと試してみることにした。私たちウマ娘という存在の謎に近づく行為だが全く気持ちは上がらなかった。とにかく何故アイツの世界があんなに暗いのかが知りたかった。普段は世界を楽しみぬいているような奴なのに心はあんなに冷たかった理由を知りたかった。

 

 

自分の『領域』、精神世界で座禅を組み、視点を頭上の太陽(シンザン)と同期する。そして見る先は自身の魂。……見えたものは信じられないものだった。

 

 

牛をもっとスリムにしたようなフォルムの四足歩行哺乳動物。私の魂に記憶された姿、所謂前世の姿はそれだった。

 

 

うん、正直驚いたさ。なんだかアイツのせいで一度こんな動物を見た記憶があるけどとてもじゃないけど現実世界じゃ正気を保てない。今は太陽(シンザン)のおかげで情報だけを受け取れているけどなかったら私は狂っている。

 

過去の記憶、その私/俺は皐月賞を勝利し、ダービーはケガで出れず、菊花賞は勝った。そしてルドルフ先輩に惨敗する有馬記念。そこからは日経賞から一年近いケガ。天皇賞を勝ててもまたケガ……。そんな人生、いや馬生だった。

 

その記憶にアイツはいなかった。私が取れなかった皐月賞を勝ったはずのあいつの姿はそこになかったし、アイツの雰囲気を感じさせる奴もいなかった。

 

 

 

視点を得るだけでなく、過去の自身と太陽(シンザン)を経て同期したことで流れ込み、理解した記憶。そこにアイツはいなかった。

 

 

……何が起こるか解らないけどアイツの魂と繋がってみることにした。

 

 

何故か頭上に浮かぶ太陽(シンザン)から『え、マジでやんの?』という意思が感じられたがまぁ気のせいだろう。どれだけ時間がかかるか解らないので自腹を切ってアイツと一緒にスイーツバイキングに行くことにした。『ミホ、目ぇ怖いんですけど』と言われたがそんなことを気にしてる場合じゃない。

 

太陽(シンザン)の視点をもってアイツの精神世界に入る。アイツの魂の危険度がどれほどのものか解らないので太陽(シンザン)の出力を最大まで上げて私に掛かる悪影響から守るための防壁を強化する。そして、彼女の奥、魂の奥底まで……

 

 

 

 

 

彼女の魂に残されている過去の記憶、そんなものはなかった。

 

いや正確には過去と今私たちがいる世界との記憶が地続きだ。

 

 

私の場合、魂に刻まれている記憶は過去と今とで境界線が引いてあった、かなり強い力を加えても思い出すことが出来ない強い防壁があった。彼女にはそれがない。私たちの記憶の最初がウマ娘としてのものなのに対して、彼女の始まりは馬としての始まり。

 

 

情報として、その記憶を見ていくうちに私の魂とは違う出身だということが分かった。彼女の過去の記憶に私は存在しているが、私の魂はその存在を否定している。いやその強さは認めているが彼が走った時代にこのような奴はいなかったと叫んでいる。挑んでみたかったという声も聞こえる。

 

アイツの一生、走ってからの引退。繁殖、そして死。そこからまた始まるウマ娘としての生。

 

 

 

大体わかった。

 

 

 

 

アイツはもう終わった気でいるんだ。もう引退してからもうずっとそのままなんだ。それでもう一度始まったはずのウマ娘としての一生が馬としての感覚がおかしくしているんだ。

 

まぁ、私らで言う幼子の3,4歳ぐらいで走る馬にしてみれば今の私たちの15歳ってもうお婆ちゃんなのはわかるんだけどね。もう一度火を付けるはずのレースが過去走ったものと全く同じものになってしまえば燃えるものも燃えないってわけか。いままでアイツが練習してなかったのも自分がもう走り切った存在だと考えているからこそ、というわけか。

 

……いやアイツのことだから単に面倒とかそんな理由か?

 

 

 

 

え? どうした私? うん?『馬の俺としてもあのいいレースをする奴と戦ってみたい。あっちの世界で負けたのをやり返す』? 確かにね、今の状態で闘争心がないって言うんだったらそりゃ本気になればすごいだろうとも。

 

それに私としても今までのレースがそんな状態で負けてたと知ったら自分が許せない。そんな気の抜けた奴に一度だけでなく二度も負けた私は何なんだって話だし、私の言うように彼女の本気と競い合ってみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

……うん、そうだ。過去の私がケガで出走できなかった今年の天皇賞に勝って、もう一度アイツの心に炎を灯してやる。それで本気になった奴と戦って勝つ。

 

それが私のもう一つの目標。

 

 

 

天皇賞でもだめなら何度でも打ち勝ってやるつもりだったけど、この天皇賞でアイツの顔が変わった。あぁ、次の宝塚が楽しみだ。

 

 

本気になったお前を、絶対に打ち負かしてやるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってなことがあったみたいですけどアレ実際何なんです? あの暗くてクソ寒そうな空間。ミホちゃんガチでビビってましたよ? んで自分の夢を叶える延長線であなたちゃんの心に火を付けようとしてくれてましたし。

 

 

(え、何それ知らんねんけど……、こわ……)

 

 

い、いやいや。湯呑片手にそんな顔されても困りますからね!? しかも絶対あなた知ってるでしょ!

 

 

「うん、知ってるよ。ってかあの真理の扉の外。」

 

 

あ、なるほどぉ。確かにまだ描写されてない部分でしたねあの扉の奥。……うん? 扉の外?

 

 

「ん? 外だよ? こっちが内側。」

 

 

……?????

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

チーム・スピカ トレーナー室

 

 

 

「あぁ、お茶はおいしいし、空は青くてキレイ。いい日だなぁ……。」

 

 

言わずと知れた苦労人、沖野氏。最近の彼は少し疲れたお顔をしていますが、お目目はくっきりばっちり。とっても澄んだお目目です。

 

それもそのはず、なんせ今まで沖野氏があなたちゃんのために考えたトレーニングメニューを全部お絵描きのための裏紙にされてきましたし、内容を見てくれることはあってもそれを実行してくれたことは一度もありませんでした。

 

いつも勝手にどこかに遊びに行くし、帰ってくるときは必ず問題事をお土産としてもって帰ってくる。学園にいるだけで気が付けばかなりの大ごとを引き起こしていたりするし、生徒会から課された未提出の反省文とかもう山になっている。まぁ生徒会側も毎日何かしら問題が起きていたので途中から反省文というモノ自体が形骸化していたけども……。毎日色々大変だった。まだGⅠを勝ってくれてるのがほんの少しの救いだった。あとマルゼンは彼女の面倒を見てくれて本当にありがとう。

 

 

そんなあなたちゃんが天皇賞からようやく、やっと、待望のちゃんとした練習を始めてくれたのである。もう沖野氏感涙しちゃったぐらいにはいいことだった。毎回あなたちゃんが真面目に練習しただけで世界が崩壊し、三女神様がグロッキーになりながら復旧しているという事実を知らない沖野氏からすればもう天にも昇る気持ちだろう。

 

練習するおかげであなたちゃんが拘束される時間が長くなり、引き起こされる問題も自然に少なくなる。そしてトレーニングメニューを作ったら作った分だけ練習してくれる。あと新しく入ってきたゴールドシップもなんだかよく解らない練習をしているが、あなたみたいに学園が傾くような問題は引き起こしていない。とっても仕事にやりがいがあるのだ。

 

 

 

「よし! まだあいつらは授業中だし、今のうちに今日のメニューを煮詰めてしまおう! アイツは最近勝ちきれてないし、宝塚はとっておきたいだろうからな! それにゴルシも未だ本格化中で成長期! 何の練習してるか解らん時があるがいつか必要になったときのために考えておこう!」

 

 

 

最近彼の周りでいいことがあったせいか、若干キレイな沖野氏になっている彼はこのいい天気の中、頑張ってお仕事を始めるそうです。頑張ってくださいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ま、あなたちゃんはそんなにやさしくないですが。

 

 

「た、大変だぞ沖野! あれを見るんだ!」

 

 

 

急に部室に駆け込んでくるおハナさん。キレイな沖野氏の首根っこをつかみ、引っ張って連れてきたのは学園の校庭。そこには授業中のはずなのに二人で『いい仕事をしました!』ってな顔で工事服を着た二人。グッジョブで沖野氏を迎えるあなたちゃんとゴルシちゃんですね! それよりもまず目に入る巨大な黒く、円形の門みたいな空間のゆがみ。授業ほっぽり出して二人で何作ってるんですかねぇ?

 

あ、ちなみにゴルシちゃんはどこでやってきたのか飛び級済みなので今年は授業受けなくてもいいみたいです、すごいですよね。うん? あなたちゃん? ……実家に帰るのがとっても怖いってさ。

 

 

 

「な、なんじゃぁこりゃぁ!」

 

 

 

その声が引き金になってしまったのか、急激に膨張をはじめ、すべてを飲み込み始めるなぞのワームホール。なすすべもなく吸い込まれる沖野氏とおハナさん。あなたちゃんとゴルシちゃんはすでに自分から吸い込まれました。

 

 

 

はてさて、どこに繋がってるんでしょうね。作者も見当がつきません、これは困った困った。

 

 

 

 

 










(ぶち込もうとしたけど一部キャラの世代がまだ入学してないのと、そもそもこの続き考えるの私? いや難しくね? 書けないよぉ……、ってなったので番外編にもできなかったかなしきけものを供養するために読者の皆様に見てもらって続きを考えてもらおう! え? もっと頑張れ? それは本当に申し訳)ないです。の、コーナー!!!



『さぁ始まりました、真冬の空に浮かぶ美少女たち。なんで上に行くほど寒いのにこの時期にやるのか、運営側の考えがちょっと理解できませんが始まってしまったからには一着が確定するまで終われません。史上初のウマ娘による空中レース、東京レース場の上空には航空自衛隊によって浮かべられた特注ゲートとゴール板がホバリングをしております。』


『グレードⅢ、名称【天馬特別記念】、空2400というレース史上初めてとなる枠組み、芝でも砂でもない空。一体全体どんなレースが繰り広げられるのか、実況のわたくしはスタートした方がみんな無事に帰ってこられることを祈っています。』


『では選手紹介に向かいましょう。』


『一番、『あなた』。最近覚えた空中浮遊術、舞空術みたいなのを引っ提げて参戦です。先ほどからも空中パドックで座禅を組みながら遠心分離機のごとき回転を披露しています。人気は三番人気となってしまいましたがどんなレースになるのか解らない怖さがあります。オッズはニンジン34.3本。』


『二番、『ゆるキャン△のテント』。テントが飛ぶわけねぇだろ、いや飛んだぁ! でお馴染みのあのテントです。あなたちゃんの領域展開にて別世界から持ってこられた未知のテントですが地面接地面にブースターが搭載されているので速度は出そうです。騎手は春の天皇賞を快勝したミホシンザンと海外で奮戦中のシリウスシンボリが務ます。二人ともさっきから顔を真っ青にして震えていますが大丈夫でしょうか? 『ここから出して』の幻聴が聞こえるテントは五番人気でオッズはニンジン86.7本となっています。』


『三番、『ゴールドシップ』。お父さんから受け継いだ黄金製の錨を振り回し、ヘリコプターのごとき回転力で今回の空中レースに挑みます。1時間前に購入した空想科学読本から手に入れたタケコプターの知識を生かし、師匠との直接対決に向かいます。錨の重さがかなりのネックとなりそうですか、ウマ娘の身体能力でカバーできるでしょうか? 四番人気に収まり、オッズはニンジン52.2本。』


『四番、『シンザン』。やってきました我らがシンザン、やってきました我らが神様。伝説がこのトンチキレースに挑んでしまいます。人気は勿論一番人気でオッズは驚異のニンジン1.2本。もはや出来レースとなりかけています。今回の浮遊方法はなんと彼女の『領域』で自身の足元に透明の足場を作って出走するとのこと。まぁ神様だから何が出来てもおかしくない。』


『五番、『マヤノトップガン』。おそらく今回一番持ってきてはいけないものを持ってきちゃった彼女。空中レースと聞いた瞬間に『マヤ、解ちゃった!』の一言を残し、出走登録だけをすまして行方をくらましていた天才児は、なんとアメリカのお父様に戦闘機をおねだり。お下がりの『F14Aトムキャット』に搭乗してこのレースに出走です。にしても彼女の人気は二番人気でオッズはニンジン9.2本となっているところから、シンザン会長は戦闘機にも勝てると思われている様子。ちょっとマヤ意味わかんない。』



『以上5人? で行われるGⅢ【天馬特別記念】が今、始まります。トウショウボーイは泣いていい。』
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