あなたはウマ娘である。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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デビュー戦、とりあえずは

あなたがチームスピカ(現在人数不足のためチーム崩壊の危機)に所属してから3か月近く経過した。あなたはトレーナー指示のもと練習し、また隠れて山道を走っていたため詳しいことは良く知らなかったがスカウトは散々な結果であったらしい。

 

 

 

まぁそんなことはあなたにとってどうでもいい。トレーナーが仕事に失敗しただけである。あなたは失敗から何か学んでくれればもういうことはない。

 

 

「いや、なんでそんなに慈愛の目で俺見るの!? …………それで? 今日がデビュー戦なわけだが調子はどうだ?」

 

 

モチロンかんのぺきである。頭のどこかで「これ以上ないといってもいい、完璧な仕上がりですね。」と前世の調教師の声が聞こえたぐらいである。それにしても解ってるくせに聞くとはトレーナー。もしや不安なのか?

 

 

「……まぁ、そうだな。いつだってレース前は緊張する。でもお前さんが全く緊張してないせいで少々空回りしてる、ってのもあるかもな。」

 

 

なるほど。確かにあなたはとてもリラックスしている。風呂上がりの牛乳を所望したいぐらいに。これは前世で何度もレースを走った、ということではなくあなたの性格によるものであると考えられる。

 

あなたはトレーナーを安心させるために決意を持った目で頭に手を乗せようとした……が、手が届かなかったので肩に手を乗せた。

 

 

「そうか……。うし、なら勝ってこい!」

 

 

 

勿論である。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

場面は切り替わって現在ゲート入り前。あなたはゲートが嫌い過ぎるので現実逃避の代わりにあなたを含めた今世代有望株、ミホシンザンとシリウスシンボリのことを考えていた。

 

あなた含めてこの三人に今のところ接点はない。この三人ともクラスが違うのもあるが、模擬や野良を含めて同じレースを走ったり、練習したりすることが無かったからである。

 

 

ミホシンザンはシービーが所属しているチームで頑張っている。

シリウスシンボリはルドルフが所属しているチームで頑張っている。

 

あなたはトレーナーの目を盗んで山登りをしていた。

 

 

ミホシンザンとシリウスシンボリの両者ともチーム専用の練習場で練習しているので会いにくいし、あなたにいたっては学外で山遊びに興じていたので接点の持ちようがない。

 

そもそもあなたは学内で大変評判の悪いスピカに所属しているので、周りに対してよく思われていない。トレセン学園におけるスピカの評判は『足を触ってくる変態トレーナーがいて、そのトレーナーは真面目に指導してくれない』である。そこにほぼ自分から入っていき別にそのことに対して後悔しているなどのそぶりをみせないあなたである。あなたもスピカトレーナーと同じように変人奇人なのではないかと思われ、クラス内でも距離を置かれているのである。

 

 

まぁ長々と述べたが、あなたには友人と呼ばれるようなものはいない。つまりボッチである。

 

 

今の時代よりもう少し後、シンボリルドルフが生徒会長である時代ならば会長自身が「こんにちは」しに来てもおかしくはなかったが彼女は今三冠に向かって邁進中であり、現在二冠を達成し菊花賞に向けて調整中である。同じチームであるシリウスシンボリを気にかけることはあったとしても、違うチームであるあなたに対して気にかける余裕は彼女になかった。

 

 

ゲートの前で現実逃避していたあなただったが、急に背中を押されて我に返る。どうやらレースが始まるようである。あなたはゲートに親を殺されたのかと思われるレベルでゲートが嫌いであるが、このまま暴れて出走停止になるのは少々頂けないと思い、暴れるのをやめた。

 

もし暴れるとしたらもっと大きな場。GⅠレースとかで暴れようとあなたは思ったのである。できるだけ滅茶苦茶にしてやる寸法だ。

 

 

 

と、未来に対して犯罪予告をしていたところ、目の前のゲートが開いていることに気が付いた。

 

また出遅れたのである。

 

 

 

あなたとしては「あ、前もこれやったな。」と思ったがレースはもう始まっている。走ろうか。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「あぁ! またあいつ集中してなかったな!」

 

 

「あら、ゲート練習はしてなかったの?」

 

 

観客席。上の階しか場所が開いていなかったのでそこから見ているが、初めて彼女のレースを見た時と同じように、ゲートが嫌なあまりレースに関係のないことを考えていたせいでまた出遅れたのだろう。

 

 

「いや、しようとしたんだが……。あいつ絶対に練習に来なくてな。」

 

 

「あぁ……。学園での噂もあるし、あなたも苦労してるのね。」

 

 

「おハナさん……。」

 

 

隣にいるのはスピカのトレーナーである自身と同期である東条ハナ。初年度からシンボリルドルフを担当し三冠に王手をかけている。ちなみに同期なのに「おハナさん」呼びしているのはなんだかそうしないといけない気がしたから。最初は彼女も違和感を感じていたようだがいつの間にかに彼女の教え子にもそう呼ばれるほど浸透している。

 

ちなみにあなたの変人、奇人のうわさは結構広まっていたりする。寮内で裸で発見されたり、何かマルゼンさんと朝帰りしてたり、共用のターフの上でお昼寝してたり、学生運動ならぬゲート撲滅運動を勝手にしていたりと色々である。

 

ちなみにゲート撲滅運動は参加者のみならばあなた一人であるが、結構賛同者はいるようである。まぁ基本的に現生徒会長のシンザン率いる生徒会チームやいつのまにかあなたの担当みたいになっているマルゼンスキーによって対処されている。

 

 

 

 

「まぁそんな顔されてもおごらないけどね。しかも前のツケ、早く払いなさい。」

 

 

「うぐっ!」

 

 

 

こんなじゃれ合いが出来ているのも、アイツの実力が周りと比べて非常に高い位置にあることが二人とも解っているから。いくら出遅れが酷くても勝者は決まっている。

 

 

 

『圧勝! 圧勝です! 盛大な出遅れで最初はどうなることかと思いましたが、見事一番人気に応えました! 二着との差は6馬身! 後方から華麗な追い込みを魅せてくれました!』

 

 

 

「あの追い込みで得意策は逃げっていうんでしょ……。まったくどんなパワーしてるのやら。」

 

 

「ほんと、なんでなんでしょ。わたくしにもサッパリ。」

 

 

「あなたはもっとしっかり指導しなさい。ほら、早く行った行った!」

 

 

 

そう急かされながら俺はアイツの控室に向かう。

 

アイツにとっての初勝利。ちゃんと祝ってやらないとな!

 

 

……あとどうやったらゲート練習できるか考えないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おハナさん。」

 

 

「ん? ルドルフか。どうした。」

 

 

「いや、私も負けられないと思ってね。……それと、私以上にそれを思い知らされたようだ。シリウスは先に帰って練習するようだよ。」

 

 

「そう、……か。なら私たちも早く帰ろう。お前も菊花賞が控えている、この夏で差をさらに引き離せ。」

 

 

「モチロンだとも、トレーナー。」

 




あなた

残念ながらボッチである。
残念ながらゲート嫌いである。


シリウスシンボリ

ミホシンザン以外のライバルを再確認した
ゲートは……、うん。まぁ好きじゃないけど……

シンボリルドルフ

前にシービー、後ろにあなた達。彼女は当分退屈しないだろう。
あなたのことを一時期サーカスの出し物みたいに見ていたことは秘密である。
だって、ねぇ?
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