あなたはウマ娘である。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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サメはちゃんと処理すると美味しいらしい

 

 

 

「え。シリウスが、負けた……!?」

 

 

 

あなたちゃんとミホシンザンの熾烈な戦いがあなたちゃんの勝利に終わった後。トレセン学園は夏合宿の時期が始まっていた。去年まではあなたちゃんは『あついし行くの面倒くさい、やすむ』と行って勝手に涼しめの北海道にわざわざヒグマと相撲をとりに行っていたが、今年はゴルシもいるし、理性ちゃんが主導権をうまく奪い取って参加の書類を提出したため嫌々参加中である。

 

場所はトレセンと提携している宿泊施設で昨日まで皆さん来るべき秋シーズンに向かって頑張っていたのですが……、何やら今日は皆さんしょんぼりしています。通りすがりの伝説の超サイヤ人であるブロッコリーさんが『しょんぼーりです。』と言っていた気がしますが無視しましょう。

 

 

あなたちゃんはそんなことも気にせず早朝から昨日ゴルシちゃんに教えてもらった新種のカブトムシ、『ニジイロコーカサスヘラクレスオオカブト』を捕まえに行こうとしていたのですが……、宿泊施設の玄関前でまだ日が出ていないのにもかかわらず黄昏ているミホシンザンを発見。

 

さすがにライバルがそんなことしてたら声かけますよね、ということでお話聞いてみたら昨日の夜に私たちの同期でもう一人のライバルであるシリウスシンボリが何かのレースで負けてしまったようです。

 

 

 

「え、あんた見てなかったの……? 昨日私らみんな夜更かしして見てたんだけど……?」

 

 

 

そんなことを言われてしまうあなたちゃん。だってあなたちゃんお日様沈むとすぐ眠くなっちゃう野生児だから……、多分レースの存在を教えてもらったなら他ならないシリウスなので最後まで応援できることはできるでしょうが、翌日寝ぼけたあなたちゃんが何をやらかすか解りません。最善でも海の水が干上がるでしょうから寝ておいて正解だったかも? です。

 

 

「あ~、そうか。……とりあえずこれ見てよ。私たちが昨日遅くまで見ていたレース、おかげさまで全く寝れなくてさ。今海眺めてた。」

 

 

そうやって渡された彼女のスマホ。あなたちゃんは携帯という文明の利器を所有したことはありませんが、理性ちゃんが右腕の所有権を奪い取って動画を再生してくれます。そこにはKGVI & QESと呼ばれるレースに出走しているシリウスの姿がありました。

 

カメラ越しのため正確な情報、所謂存在感や彼女の『領域』の脅威度などは測ることができませんが、その肉体の仕上がりと顔から伺える闘志はあなたちゃんの本能を唸らせるほど。もしこの状態の彼女が宝塚記念に出走していれば目覚めたばかりの化け物は全身に血が巡る前に食い殺されていたであろうものです。つまりあの時点のミホとあなたを超えているということなのでかなりの仕上がりだということが理解できますね。

 

 

 

 

 

(KGVI & QES、私らに関連深い凱旋門に並ぶ欧州三冠の二つ目、芝の最高峰レースの一つ。……宝塚記念が6月後半で、KGVI & QESが7月後半なのを考えると一月の差があるけどシリウスの仕上がりは見事なものだよね。これなら大抵の奴には勝てるはずなんだけど……)

 

 

そして、レースが始まる。シリウスはいつも通り後方からのレース。走り方も、レースの進め方も何も問題はない。実況で今日の仕上がりは別物だとか、日本ウマ娘を背負っているなんて言われているがそこに疑問は生じない。このままなら何事もなく普通に勝ちそうなものなのだが……。

 

 

そう思った瞬間、シリウスの顔にかかる影。最終コーナーを回って長い直線に入った瞬間、彼女の後ろで待機していた薄い緑とピンク色のラインが入った勝負服の“彼女”が飛び出してきた。驚愕そして焦燥と順に染まるシリウスの顔、それとリンクする私。

 

 

「『このまま仕掛けるのが遅れると負ける』」

 

 

その“彼女”に追いつけないことを恐れたシリウスもかなり早めのタイミングで始めるスパート。周りもそれに釣られたのか全体的に勝負を仕掛けるのが早い。

 

 

(でも、この判断は間違いじゃない。正しい判断なんだけど……。)

 

 

そのまま速度を上げ、一瞬だけ“彼女”と並ぶシリウス。……しかしながら“彼女”は驚異的な二度目のスパートをかけて縮まった差をもう一度広げる。そのまま逃げ切ってゴールイン。結果としてシリウスは二着、後続もかなり追い込んできていたので後着の子達との差は大体アタマ差とかクビ差。

 

 

だからこそ目立つ一着の驚異的な強さ、称えられる名前。

 

 

 

 

『ダンシングブレーヴ』

 

 

 

 

過去の現役では一度だけ聞いた名前、その後に何度も聞くことになった名前。

 

 

(はは、まぁそりゃいるか。……懐かしいねぇ。)

 

 

ヨーロッパ最強の名を、史上最高の評価を、得た“勇者”

 

 

 

(はてさて、どうします本能。別に私はどっちでもいいよ? 無難に国内でそこそこの成績収めてゆっくり隠居生活でも送ろうかい? こっちじゃ繁殖なんかないし文字通り好き勝手出来るけど?)

 

 

 

はは、何馬鹿なこと言ってるの。やるに決まってるでしょ。

 

 

 

(だろうね。……さて、昔勝ったんだ。もう一回勝つなんて楽勝でしょ? シリウスの敵討ちもあるし。これはかなり本気で取り戻さないといけませんねぇ。)

 

 

 

 やる。

 

 

 

 

 

 

もうすでに化け物の心臓は目覚めている。

 

古来より勇者は化け物を倒し、その勇名を世に轟かせるが……

 

 

 

勇者の最期を飾るのも、“化け物”だ。

 

 

 

さ、世界最高峰の門でも破壊しに行きましょうか。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「沖野! 次!」

 

 

「あぁ……。じゃああのタイヤ引きながら砂浜ダッシュで行こう。」

 

 

「おけまる水産!」

 

 

 

 

ゴルシが冗談で教えた謎のカブトムシを捕獲する予定だったあなたちゃんであったが、過去の強敵ダンシングブレーヴを発見したことにより、予定を急遽変更。ゲート嫌いで毎日おやつ感覚で破壊するあなたちゃんは歴史的価値のある凱旋門に目をつけたようです。……ホントに壊さないでよ?

 

ちなみに昨日の深夜にアニメ一期の凱旋門賞、『ブロワイエが来た!』みたいな感じで『ダンシングブレーヴが来た!』みたいなことをしていた他参加者の皆様。ダービー馬で海外の重賞いくつも取ってるシリウスなら初の欧州GⅠをやってくれるのではないかと期待していましたが……、惜しくも二着。みんなで泣きながら夜更かししてました。

 

沖野氏もその例外でなく、悔し泣きしてたおハナさんを慰めるために明日も練習があるのにもかかわらずお高いお酒の蓋を開けました。まぁそのせいでほぼ一睡もしてないんですが……。

 

 

「まだ朝日が昇りかけてる、って時間にたたき起こされて練習、って……。まぁ監督者いないところでケガとかされても困るから声かけてくれるだけでも成長なんだろうけど時間よ。」

 

 

そんな愚痴を言いながらどこで手に入れて来たのか大リーガー育成ギブスを装着したあなたちゃんが巨大タイヤ引きを砂浜で行っています。若干寝ぼけているので気が付いていない沖野氏ですがあなたちゃん(本能)が自分の意思で練習してるなんて世界崩壊レベルです。もし素面できちんとした睡眠を取っていれば核シェルターの購入を決定したぐらいでしょう。

 

 

「うわ、マジかよ。師匠(本能)真面目に練習してるじゃん。……しかも世界壊れる兆しないじゃん、世界の法則が、崩れる……」

 

「あれ、今日は大きくなってないのにちゃんと練習してるのね。偉いわね~、おチビちゃん。」

 

「よし! 先輩も頑張ってるし! 私も頑張らないと!」

 

 

そんな風にあなたちゃんが真面目に練習していると、他の方々もぞろぞろとやってきました。中学一年生なのにとんでもない恵体を手に入れたゴールドシップ。昨日バブル言葉を教えちゃったせいであなたちゃんをバブリーにしちゃったマルゼンスキー。背後に何故かオレンジ髪の少年の幻影が見えるサクラチヨノオーです。タカキはそろそろ休め、あと団長! 車の用意出来ました!

 

先日、マルゼンお母さんと妹のチヨノオーちゃんの脳を破壊してしまったあなたちゃん理性Ver.でしたがさすがの対応力で『まぁあなたちゃんだし、急に別人格が備わって身長とか大きくなってもおかしくないね』となっているので大丈夫です。ゴルシの方はもう一人のボク(理性)とデュエルしてたので元から問題なし。

 

 

 

「トレーナー! 砂浜ダッシュと今日予定のトレーニングと、日課のゲート破壊終わらせた! 合宿所にあるの全部塵に返しちゃったから補充しといて! んで、次何やんの!」

 

 

「えぇ……、とりあえず謝りに行こう、な?」

 

 

「解った! 遊泳ね! 泳ぐぞ~ぉ!」

 

 

「あ! いいないいな師匠! ゴルシちゃんもバナナボートでサーフィンする!」

 

 

「……とりま、一緒に謝りに行った方がいい? 沖野ちゃん?」

 

 

「た、助かる……。あ、チヨノオーはこれ今日のメニューだから。目通しといて。」

 

 

「わっかりました! 頑張りますよ、おー!!!」

 

 

 

そう言いながら、スピカのトレーナーさんと自身のトレーナーさんが合同で考えてくれたらしい今日のメニューを受け取るチヨノオー。軽くそれを目に通しながらこの宿泊施設を管理している方のところに謝罪に行くマルゼンスキーと沖野氏を見送ります。

 

 

「うむむ。やっぱり結構ハード! まぁ8月末にデビュー戦控えてるしその一週間前は流すだけにしてくれるらしいけど……、うん! 頑張らないと! ん? なにか落ちてる?」

 

 

学園指定の水着に身を包み、裸足で今から砂浜を走ろうとするサクラチヨノオー。どうやら何か足にあたった様です。どうやら何かの紙束のようですね。

 

 

「何だろ……、ん。あの先輩のメニューか。」

 

 

どうやらあなたちゃんがその辺に投げ捨てたトレーニングメニューのようです。さすがはあなたちゃん、いつの間にかに砂浜に不当放棄とは……、通報しておきますね♪

 

 

「うわ。なにこの練習量。これ一週間分かな……」

 

 

 

 

 

 

 

「え。 今日の分だけでこれだけの量を……! しかもさっき終わったて言ってた……。」

 

 

それまで向かっていた紙の束から視線は砂浜に。この朝早い時間帯では練習を始める人たちばかり、マルゼンスキー先輩に起こしてもらった私たちはほとんどこの砂浜に一番乗りだ。それなのに砂浜にはたくさんの人たちは練習したであろう無数の足跡たち。まったく同じサイズの足跡が無数に、何回も同じ場所を繰り返し走ったことを教えてくれる。

 

 

「かなり深くまで抉れてる……、すごい踏み込み。これをいつの間に……」

 

 

昨日、先輩は遅くまで起きられないので日の入りと共に就寝していたが、私たちはシリウス先輩の海外レースをリアルタイムで見るために結構遅くまで起きていた。応援が終わった後に外には誰もいないこと、先輩の部屋から聞こえる寝言から私が就寝する時間に寝ていたことは解ってる。……あのあとすぐに起きたとしてもできる練習量じゃない……。

 

 

 

時刻はいまだ早朝。キレイな朝日がよく見える時間帯です。夏の砂浜というとっても暑そうな場所ではありますがまだ日が上がり切っていないおかげか、それとも近くに海があるおかげか。何故か海中から出現した人食いザメと格闘を始めたあなたちゃんを見るサクラチヨノオーの体は冷えてゆくのでした。

 

 

 

 

 

 






あなた

全身に大リーガー育成ギプス(あのバネバネしたやつ)をはめて遊泳を行った。なお、水着を着るのは肌にくっつく感じが嫌なのでずっとジャージを着ている。つまりジャージのまま海に飛び込んだ。なお、一度サメに丸のみにされたが内部から爆破して脱出した模様。人食いザメの残骸はみんなで調理していただきました。


ゴールドシップ

焼きそば食べながらバナナボートに乗ってサーフィンをしました。師匠と違ってちゃんと水着を着ている。エライ!


マルゼンスキー

スピカじゃないけど周りからスピカだと思われているお母さん


サクラチヨノオー

スピカじゃないけど担当トレーナーが合宿にこれなかったので一時的に参加中。あなたちゃんの恐ろしさに気が付いてしまったか……。まぁ仕方ない。


沖野氏

最近大人しくはなってきたけどその代わりにあなたちゃんのお遊び(トレーニング)に付き合わないといけない&その被害に対して謝りにいかないといけないのでトモ触ってる余裕がない。妖怪トモスリスリは休業中です。


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