カンカンと響くチョークの音。黒板には大きな三角形が描かれている。
「ご存知の通り中央のレースにはこういった格付けがあります。皆さんはここ最高格付けであるGⅠの出走勝利を目指して頑張りましょう。そして今年からクラシック級になった皆さんは栄誉あるクラシック3冠レースに挑戦できますそれは……」
教壇に立つ女性が言葉を紡ごうとした時、生徒の中から挙手がされる。
「皐月賞、日本ダービー、菊花賞です」
「わぁ、すごい!ヤエノムテキさんよくできましたね 」
……日本ダービー。
思い出すのはカサマツの地でのこと。中央に行くことが決まり、そのために荷造りしていた時のこと。
『中央へ行くとなったら今度は【目指せ! 日本ダービー!】だね!』
『ニッポンダービー??? なんだそれ。東海ダービーの親戚か、ベルノ?』
『し、親戚ではないかなぁ?』
『……まぁ東海ダービーは走れなかったからな。代わりに日本ダービーの一着を北原にプレゼントするか!』
『ア、アンタ……、何言ってるか分かってんの……?』
『一着ってオグリちゃん……。』
なるほど、あのダービーか。
うん、思ったより早く叶いそうだな。
ふんすふんすするオグリをよそに進む授業。
「このクラシックレースは少し特殊で事前にクラシック登録というモノが必要になります。」
そう言いながら懐からまとめてある紙束を取り出す彼女。何やらかなり詳しく書いてあるようだ。
「先日皆さんに提出していただいたこちらですね! いわば書類審査のようなものでこれを期限までに提出し、な、い、と………」
何かを思い当たる教師。お目目はんぺんのオグリ。
急いで手元の資料を確認する担任だったが……
「オグリさん……、クラシック登録しましたか……」
「なんだそれは?」
かなりプルプルしながらプルプルする教師。もうプルプルゼリーである。おいしそう。
「……えっと。それ……、クラシックレース出れないです………。」
「え???」
ーー第564R “YOU”が存在する意味ーー
“中央諮問委員会 ”
「え~今日はなぜ呼び出されたか解るかねルドルフくん?」
高級そうな調度品が置かれるこの部屋の主は、自身の椅子に深く腰を下ろしながらやってきた皇帝を見つめる。その横に少し小太りの男性がおどおどしながら皇帝に向かってそう話しかける。正直この人いらなくない……? 最近知り合ったニンジャ君からもらった壁紙を使って身を隠していたあなたちゃんはそう思った。
この部屋の主である彼女の机に置かれたその新聞には『オグリキャップをダービーへ!! トレセン学園生徒会長シンボリルドルフも署名!!』と大きく書かれている。いくらURAに勤めていてもわざわざ紙面で買うことがない、そう思うわせる程にこわもてな彼女だ。かなりこの件について考えることがあったのだろう。
「えぇ、御無沙汰しております委員長。」
「この騒動にあなたが首を突っ込んでくるとは意外ねルドルフ。」
「私なりに三思後行した結果です。」
「……であれば理解しているでしょう?」
そろそろ隠れるのもめんどくなってきたあなたちゃんは透明化してルドルフの前でパソコンを開く。最近お気に入りのパティシエさんが豪華なお菓子をつくる動画を見るのだ。ルドルフ新会長と査問員会の委員長が真面目な話をしていてもあなたちゃんは通常運転なのだ。
「中央でも最も由緒ある格式高いレース、それが日本ダービー。」
「ゆえに誰でも出走資格があるわけではない、生まれた時から頂点を志し相応の勝利を積み重ねたエリート中のエリート。そんなウマ娘にのみダービー出走に値する品格が備わる。」
「ルドルフあなたのようにね。」
「中央に来たのは2ヶ月前、生まれも育ちも地方の片田舎、ましてやクラシック登録すらしていない不心得者……」
「これを認めればクラシックのルールそのものが瓦解する。」
厳しい顔でそう伝える委員長。少しだけ顔をゆがませるルドルフ。お腹が減ってきたので懐から近場のお菓子屋さん買ったケーキを広げるあなたちゃん。さっきおどおどしていたおじさんが『あれ、なんか甘い匂いしない?』と思ったがさすがにこんな真面目な話の中で関係ないことを言う勇気はない。
あなたちゃんはモンブランを食べるが!
「えぇ理解しております。」
「……わからないわね。」
「あなたはたった1人の娘のためにルールを変えろと言っているようなものなのよ?」
「ですからそうを申し上げているのです。」
そう、声に力を込めて答えるルドルフ。次のケーキであるショートケーキを食べ始めるあなたちゃん。目を見開く委員長。いつの間にか額に『肉』と落書きされているおどおどおじさん。
「……は? ちょっとルドルフくん……。」
たぶんルドルフの目線は目の前の委員長しか見ていないのだろう。ほっぺたにお花まで書かれたおじさんがうろたえて声を挙げるがそんなもの聞こえてないのだ。
「品格とは何でしょうか? 中央の在籍期間? 出身や血統? レースの実績?」
「断じて否です。」
「彼女は己の立場を理解した上で走り続けた。その姿を見た観衆は皆示し合わせてでもなく彼女のダービーを願った。」
「…………。」
ルドルフの語気に気押されたのか黙ってしまう委員長。若干視線が隣のおじさんに向いており、口が引きつっているがそんなの知らない。いつの間にか透明なあなたちゃんが勝手に広げたおやつのお皿やお茶の容器がたくさん委員長の机に広がってても知らないのだ。
「それこそがオグリキャップという存在の唯一無二の品格。それを下らない規則で潰すのはあまりにも愚蒙です。」
さすがにそこまで散らかされると頑張って話していたルドルフちゃんも気が付く。気が張っていた委員長のお部屋がいつの間にか生クリームなどのお菓子の甘い匂いに包まれている。新会長の頭の中には例の三文字が浮かび上がるがここで指摘した瞬間に爆破される可能性がある。
ここは我慢してお話を進めるしかない! シンデレラグレイはルドルフちゃんの双肩にかかっているのだ!!
「あの……、くだらないはさすがにいい過ぎじゃ……」
「ずいぶん肩入れするのね。何があなたをそうまでさせるの?」
「……夢なんです。」
「トレーナーが、スタッフが、ウマ娘が、何よりトゥインクルシリーズを愛するファンが。歴史に残る大スターの誕生を望んでいる。」
「……私自身も。」
「お願いしますオグリキャップを走らせてください。」
「日本ダービーに」
そう言いながら頭を下げるルドルフ。お腹がいっぱいになったのか委員長の机の上いっぱいに広げたおやつのお皿をそのままに、透明化を解除して布団を敷き始めるあなたちゃん。新会長がオグリのために頭を下げている後ろでお昼寝である。こいつあなたちゃんか? ……あなたちゃんだったわ……。
「ルドルフ、顔をあげてちょうだい。」
「あなたの気持ちがよく分かった。トゥインクルシリーズを憂う想いも……、ね。」
「それを踏まえた上でわれわれの結論は 」
「それでもノーです。オグリキャップのダービー出走は叶わない。」
「じゃああなたちゃんが世界更地にするけどいいの?」
急にルドルフの後ろでナイトキャップ被ったあなたちゃんが話しだします。お手手にはもちろん『地球破壊爆弾』が一つ。要求を呑まらなければ爆破するぞの構え。
「きょ、許可します。」
お堅い委員長でも世界を盾に脅迫されたら頷くしかないのだ! あなたちゃんだし! あなたちゃんだし!
「うむ、よろしい、ねぇねぇルドルフ。こういう交渉は棍棒外交ならぬあなたちゃん爆弾外交が有用だぞ? 今後もあなたちゃんを連れていけ。」
「…………一瞬真面目に検討してしまったよ。はぁ、なんでトレセンはまともなやつが少ないんだろう? シンザン会長も引き籠ってしまったし……。」
「あ! そういえば結婚式来週だって! スピーチ何言うの?」
ーーオグリキャップ! 日本ダービー出走決定!!!ーー
タイトルの答え
URAをあなたちゃんを使って脅しましょう。
久しぶりなのだ。シンコウウインディずんだもんハムタロさんなのだ。だいぶ前にリストラされたけど復活するのだ。次回には消えてるかもしれないけど次回予告とかそういうのするのだ。
次回は皐月賞で何があったのかをチヨノオーちゃんメインでやっていくのだ。あなたちゃんはいつも通り暴れるのだ。
強欲なシンコウウインディずんだもんハムタロさんは感想と評価とお気に入り登録を要求するのだ。次話が欲しかったらすぐさま評価するのだ。