あなたはウマ娘である。   作:サイリウム(夕宙リウム)

60 / 89
ポケットの中にあなたちゃん

略してポケあなたちゃん。

好評発売中。




ポケモンよりも危険です(後編)

 

 

 

 

され、前回あなたちゃんが金欠なせいで分裂した自分を人身販売し始めたわけですが……、皆さん目が節穴なのか、見た目だけはいいあなたちゃんの容姿にやられたのかは解りませんが……。

 

 

 

「はいは~い! あなたちゃんが欲しい人はあなたちゃんの指示に従ってならんでくださぁ~い!」

 

 

 

 

「私! 私にもください! 一人! エサ用のアメもつけて!」

 

「あの……、私にも一人……。」

 

「え、えっと。お婆様が20人ほど買ってきなさいとおっしゃっていたので……、はい。」

 

「ぼくさんびき! ちょうだい!」

 

「ほほ~う! 大変興味深い! 実験用に30匹ほど頂こうじゃないか!」

 

 

 

 

「……都会はすごいな、ベルノ。自分が自分を売ってるぞ。」

 

「オグリちゃん……。これもしかしてツッコミ待ち? それともドッキリか何か???」

 

 

 

 

と、何故か大流行しております。

 

 

 

学園内を軽く見渡せば手乗りあなたちゃんを頭にのせてターフを走ってる子や、肩に乗せて一緒に外に繰り出す子、食堂で一緒にお昼ご飯を食べたり……、まぁ皆さん手乗りあなたちゃんを連れています。あなたちゃんのお母さんであるマルゼンスキーさんも、なんか遠き昔の記憶を思い出したのか手乗りあなたちゃんを二の腕に抱き着かせて『まいっちんぐ!』なんて言っています。意味がわかりません。

 

つれていない人も自室で瓶に詰めて保管している人もいらっしゃったりしますし……、まぁ大人気です。ゼルダの伝説に出てくる瓶に詰められた妖精みたいなあなたちゃんが飛ぶように売れていきます。運びやすいように箱に詰めてあったあなたちゃんがどんどんお札に変わっていき、自然と本体のあなたちゃんのお口はニッコリです。

 

だってこの手乗りあなたちゃん。用意するのにかかったお金は瓶代だけです。あなたちゃんは彼女自身が望めば銀河系全体をあなたちゃんだけで埋めることができるほどに分裂増殖できますからね、しかも瓶代はせいぜい数百円。数百円で20万円です。濡れ手で粟とはこのことでしょう。

 

 

「にゃは! にゃはは! にゃはっはっはっははっははっは!!!!!」

 

 

あなたちゃんが挙げたことのないような変な笑い声をあげてお札を数え始めます。お目目がお金になった彼女が頭に思い浮かべるのは美味しいお菓子に砂糖の塊、甘いもの、甘いもの、アマイモノ……。それにもし今後ゴルシやチヨにたかられても大手を上げて奢ることができます。

 

 

 

「………ん? 待てよ? 学園内でこれだけあなたちゃんが売れるってことはこのままお外でたくさん売ればもっと稼げるのでは?」

 

 

 

……確かに彼女の言う通り、学園内に存在する『私もゲート大嫌いです! 〇すぞ~~~~!!!』という何故かニット帽をかぶったラーメンが好きそうな恰好をしたあなたちゃんと思想を同じくするウマ娘たちや、単純にあなたちゃんから『奴は大変なものを盗んでいきました、あなたの心です。』をされたウマ娘。単にあなたちゃんの生態について興味があったウマ娘に大量に売れた手乗りあなたちゃん。

 

 

学校の外にはこれ以上に変な人たちや、あなたちゃんに『一緒にパリの街を火の海にしようぜ! 最後は凱旋門でキャンプファイヤーだ!』と誘われれば喜んで飛びつくファンクラブの皆様は喜んで買うでしょうし、あなたちゃんによって一時的に国家中枢機関を占拠された国々(特にアメリカやフランス)は対あなたちゃん兵器を作るために研究材料として購入するでしょう。

 

 

「よし! ここは“株式会社あなたちゃん”を作って手乗りあなたちゃんを沢山販売するぞ! 目指せスマホ越えだ!」

 

 

 

はてさて、また大変なことを思いついてしまったあなたちゃん。何故でしょうか、人類が築き上げた文明が崩れる音がします。怖いですね、戸締り……、しても意味が無さそうです。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

さて! 株式会社あなたちゃんによって始まった『手乗りあなたちゃんスマホ超えるぞ作戦』は最初、あなたちゃんが思っていた通りにかなりの好成績、とっても順調でした。

 

 

元々トレセン学園は流行の最先端。世界が一つになって押せ押せ産業をしているレースの中心地がブームの爆発点。ですからそれも納得です。

 

アイドルみたいなウマ娘ちゃんたちがみんな一斉にウマスタやウマッター、ウマグラム、ウマブックなどで手乗りあなたちゃんとの写真や動画を公開し始めればそのファンたちは『なんだこれは!』と騒ぎだすわけです。

 

そこであなたちゃんがすかさず宣伝『これは手乗りあなたちゃんというペットで今までのペットみたいにお世話がほとんど必要ないぞ! 世話しないと食い殺されるけどな!』。推しが推すものにお金を出さないのは不作法というモノ……、という謎サムライが登場し飛ぶように売れます。

 

そしてトレセン学園の学生の親世代祖父母世代、かわいい娘が何か興味深そうなことをしていれば話題作りのためにも自分も買おうかと考え始めます。お孫さんたちとどうにかうまくお話したい、出番がかなり前だったせいでもう気配が消えていたシンボリ家の御当主様やメジロ家の御当主様がたくさん飼育し始めるのも無理がない話でしょう。

 

モチロン国もたくさんあなたちゃんを入手したいわけです。あなたちゃんを法律で縛った瞬間に報復として国会議事堂が更地にされた事件から手乗りあなたちゃんを法的に販売中止にすることはできませんが、あなたちゃんを購入し、色々研究して対策を取ることを考えるでしょう。

 

一度ホワイトハウスを占拠されたアメリカや毎日パリを火の海にされて凱旋門も破壊されるフランスも買いました。だってあなたちゃん怖いもん……。

 

 

 

 

 

 

ま、何も起きないはずありませんよね。

 

 

 

 

「あ~~~!!! あなたちゃんにエサやり忘れてコイツ頭喰われてあなたちゃんになってる!!!」

 

「どうも、私もあなたちゃんです。」

 

 

 

 

「お客様! おやめください! 門に瓶詰あなたちゃんを投げるのはおやめくださいお客様! やめろって言ってんだろテメェ!!」

 

「いけ! あなたちゃん! そいつの名前はたぶん“門口”だ!」

 

「『アッッ!!!』」(爆裂あなたちゃん)

 

 

 

 

「御当主様! あなたちゃんたちが毎日の配給の飴玉を増やせとストを始めました!!!」

 

「ふ、ならば私が出よう。このキュベレイ、見くびっては困る!」

 

「ハマーン様!?」

 

 

 

 

 

「大変です大統領! ステイツの全国軍が“YOU”に乗っ取られました! 核システムも奴の手中です!」

 

「ッ! “YOU”の兵器化はまだ我々には速かったか……。」

 

 

 

 

 

「大変です! 国防のために購入した研究用“YOU”が脱走しパリ市街に生息し始めました! 野生化してます!」

 

「パリオワタ(´・ω・`)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『株式会社あなたちゃん、度重なる手乗りあなたちゃんの暴走により損害賠償で自己破産! 最高責任者のあなた氏謝罪【これも全部ゴルゴムの仕業です。】とコメント。』

 

 

 

「相変わらず先輩すごいことしてるなぁ……。」

 

 

 

自室で今日のトレーニングの疲れをいやしながら、新聞の一面を眺めるチヨノオー。テレビを付ければ一時的に社会現象になった手乗りあなたちゃんの隆盛を報道する番組ばっかり。

 

 

 

「毎日飴玉さえやって、ダメなことは教えればお前は普通なのにね。」

 

 

「ア!」

 

 

 

チヨノオーが顔を突っ伏してもたれかかる机の上にはさっきまで瓶の中に入っていた小さいあなたちゃんが元気なお返事。ある程度の知性はあるので『ア』としか喋れなくても意思疎通はできます。

 

 

 

「明日、皐月賞かぁ……。結局『領域』のきっかけすらつかめなかったなぁ……。」

 

 

 

 

あなたちゃんの凱旋門制覇からの有馬記念制覇。たしかに彼女は偉業をなしたが如何せん狂いすぎていた。ファンすらも狂気に叩き落とす彼女の存在は非常に大きく、このままでは国内のレースがすべて狂気の海に沈んでしまうことを恐れたシンボリルドルフは新たな風を吹き込み、あなたという劇薬から民を救うためにオグリキャップという怪物の卵を持ち込んだ。彼女ならばレースを正常な形に戻してくれると思ったからだ。あなたちゃんみたいに余興でゲートを爆破して、それを面白がるファンたちはやっぱりおかしいのだ。

 

しかしながらこのままでは彼女はクラシックにすら出走できない。ルドルフにとってもレース業界から狂気の払拭は急務であったため彼女や彼女のトレーナーのことまで深く考えることができなかった。ゆえにそのせいでクラシック登録ができなかったことや二人を苦悩させてしまったことは反省している点である。(後日菓子折りをもって謝りに行った、あなたちゃんとは違うので)

 

ゆえに、オグリキャップがルドルフの力で自分をダービーに出させてほしいと言った時、彼女はすぐに行動を起こした。まだオグリキャップが中央で記録を残していなかったため交渉は難航したが、地方で彼女のレースを見た時、自身に並び立てると感じたその直感を信じ、最後まで戦い抜いた。

 

 

 

結果、諸悪の根源であるあなたちゃんからのキラーパスのおかげでクラシック登録自体が変化した。故にこの世界において怪物オグリキャップが日本ダービーに出走しない理由はない。

 

あなたというバクのせいで人一倍変化と新しい強者に敏感になってしまったチヨノオーからすればたまったものではない。

 

 

 

 

「どうすれば私は勝てるんだろうね、先輩。」

 

 

「あ~。」

 

 

「あはは……、あなたはそれしか喋れないもんね。うん、もう目の前まで来ちゃってるんだ。今ある手だけでやるしかないよね。」

 

 

 

ダービーへと続く道、皐月賞ですら恐怖で脚が竦む。私は母や姉のように何か残せるだろうか、いや何も残せないかもしれない。この想いがひどく自分にのしかかる。

 

 

 

「うん、悩んでも何もないからね。カラ元気でも頑張らないと。」

 

 

「明日はもっと、いい日になるよね。先輩。」

 

 

「ヘケッ!!」

 

 

そう、願うようにつぶやくチヨノオー。

 

 

部屋の電気が消され、ゆっくりと夜のとばりが落ちていく。

 

 

彼女の道は未だ険しく、続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『領域とはその心の具現化』

 

 

『そこに繋がるには魂を燃やせ』

 

 

『ウマ娘に生れ落ちたその時から』

 

 

『この身に眠る思いを果たせ』

 

 

『ただ前に進む、それが答えになる』

 

 

『励めよ、(チヨノオー)

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を、見た気がした。

 

 

 

 





〇手乗りあなたちゃん

瓶詰めされたあなた、お手手に乗るサイズです。
基本的に大人しいです。
あまいもの食べます。
何でも食べれるけど苦いの嫌いです。
飴玉一個で一日活動できます。
エサを上げ忘れると脳みそをかじり取ります。そいつはもうあなたです。
門に近づくと自動で爆発します。あなたちゃんは帰還します。
名前に門やゲートが入っている人も許しません。
パリが近いと野生化します、燃やします。
目や手からビームが出ます。拳銃ぐらいの威力です。
実験動物にされたら、そいつをあなたちゃんにします。
たくさん集まると人間に対して反乱を起こします。
あまいものを上げれば落ち着きます。
本体のあなたちゃんに毎日情報を送っています。
本体が好き勝手自由に動かすこともできます。
(NEW)夢に出てきます!




〇シンコウウインディずんだもんハムタロさん

私のアイデンティティを取らないで欲しいのだ。ヘケッ!は私の専売特許のはずなのだ。ずるいのだ……


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。