あなたはウマ娘である。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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しーずんすりー
すぐさま復活あなたちゃん


 

 

「ねぇねぇ会長! それでね、それでね!」

 

「ははは、落ち着きたまえテイオー。私はちゃんと聞いているとも。」

 

 

放課後、もう少しで日も暮れそうな時間帯。練習終わりの休憩なのか学園内の木陰で休む二人。トレセン学園の生徒会長であり、生きる伝説でもあるシンボリルドルフと、まだ模擬レースデビューをしていないのにも関わらずトレーナーのスカウトの話がなくならない才女トウカイテイオー。

 

どこか親子、元気な娘とやさしい母を思わせるような空間を作り出す二人。そんな二人を陰から見つめるウマ娘が一人。

 

 

「うぅ、私も混ざりたい……。」

 

 

名前はツルマルツヨシ、少々体の弱さが目立つウマ娘である。模擬レースにてトレーナーさんは見つかったものの、その体質からうまくいっていない彼女。とぼとぼと今日の練習もうまくいかなかったなぁと思いながらの帰り、たまたま憧れのルドルフ会長を見つけたわけだが……。

 

(いっつもお忙しいルドルフ会長が暇そうなこの機会、逃したら次お話しできそうなのはいつになるか! ……でも。)

 

今、彼女と話しているのは“あの”トウカイテイオー。こんな私とは比べ物にならない才女、そんな輝かしい彼女と話している輪の中に私が入っていくのは……。

 

 

「ツヨシちゃん?」

 

「ふぁあ! ま、マルゼンスキー先輩!」

 

 

そんな落ち込んでいたツヨシの後ろから優しい声、なんとそこにはマルゼンスキー先輩がいた。ルドルフ会長と戦いほぼ互角かそれ以上と言われる彼女。所謂“推しが違う”のでチヨノオー先輩みたいにはならないけど憧れの一人。そんな人がどうして私なんかに?

 

 

「落ち込んでそうだったからつい声かけちゃった。もしかしてお邪魔だった?」

 

「い、いえ! そんなことないです!」

 

「そう? ならよかった。」

 

 

そう言いながら朗らかに笑う先輩。どこか偉大な母性を感じさせるその笑顔をさっきまで感じていた劣等感をほぐしてくれる。まるで母の手の中で眠るような、そんな感覚。

 

 

「ん? あぁなるほど。そういうことね。ツヨシちゃん?」

 

「はい、どうかしましたか?」

 

「ルドルフちゃん仕事貯め込んじゃう人だからお話できるのは今日だけかもよ? イケイケのウマ娘ならチャンスはびっちし決めなくちゃね! それに……」

 

 

先輩が視線を動かし、私もそれにつられる。するとその先には優しい笑顔を浮かべたルドルフ会長と「こっちこっち~!」と手招きするテイオーさん。

 

 

「ほら、いってらっしゃい?」

 

「は、はい! ありがとうございます!」

 

 

マルゼンスキーに一礼し、手招きする二人の方に走っていくツルマルツヨシ。新しい家族の形がそこにあるのかもしれない。

 

 

「うん! カンペキね! ……にしても、ちょっとこれは便利というかなんというか。反応に困るわね。」

 

 

そう言いながら頭の中に浮かぶ言葉をゆっくりと消していくマルゼン。このマルゼンスキーのウマソウルは例の名前を呼んではいけないあの人こと“あなたちゃん”やその産駒である“YOUの一家”などのウマ娘の原作である“馬”という生物から直接魂を引っ張ってきて人間の体に収めるタイプのウマ娘、所謂“脱法ウマ娘”ではない正規のウマ娘なのだが諸悪の根源である奴と交流しすぎたことにより前世の親子関係が漠然と解ってしまうようになった。

 

今回のツルマルツヨシに話しかけた理由もたまたま彼女とルドルフの前世が親子だったことが分かってしまったからであり、その二人があんまり話せないのもかわいそうだからと思ったのが理由だ。

 

 

「便利なことはあるのよ、でも。ねぇ?」

 

 

この能力というかスキルというか、これは消すことはできるのだがほぼパッシブスキルであり初めて会ったウマ娘に対してはほぼ完全に発動してしまうようになった。それで見てしまったのは自分の孫である。

 

前世なのはわかっているのだが如何せんまだ結婚すらしてないのに孫、ウイニングチケットやライスシャワーが孫。ちょっと来るものがある。

 

 

「いや子供でもよ、子供でも結構ダメージあるのによ!? 孫って、孫って……。」

 

 

そしてこの世界にはあなたちゃん産駒の孫、曾孫世代までウマ娘になってきているのだ。となるとマルゼンスキーからすれば曾孫に曾々孫。自身の娘からそう紹介されたときにひっくり返らなかった自分を褒めてあげたい。それぐらいのショックだった。

 

しかもキャラが濃い。私から見てこども、彼女たちから見て親や祖母や先祖。まぁキャラが濃い理由もわかるのだがそれでも受け止めるのに時間がかかる。というかまだ消化しきれてない。聞いたことのある財閥系ウマ娘の家系に連なる子や私の名前の一部を継いだ子、「明らかにこの子の血縁じゃん」な子。みんなキャラが濃くてゲート嫌い。

 

 

「……はぁ、まぁ退屈しないと考えればまぁいいのかな?」

 

「あ! マルゼンスキー先輩~!」

 

 

顔を上げるとそこにはこちらに向かって走ってくるサクラチヨノオー、この子と私、あと例の子とゴルシちゃんでよく家族、家族って言われる。その次女に当たる子だ。

 

 

「どうしたのチヨちゃん?」

 

「いえ! 先輩が見えたので走ってきちゃいました!」

 

「ふふ、そっか。なら寮まで一緒に帰りましょうか。」

 

「はい!」

 

 

ま、あんまり気にし過ぎてもいけないわね。

 

今はこの時間をゆっくり楽しませてもらいましょ。

 

 

 

 

「てぇへんだ! てぇへんだ! 号外! 号外!」

 

「あれ? なんでしょう?」

 

「ゴルシちゃんが……、紙。新聞かしら? それをまき散らしながら走ってるわね。」

 

「後ろからエアグルーヴさんが鬼の形相で……。」

 

 

鬼嫁化エアグルーヴに追われながら号外を配るのは我らがゴルシ、空に放り投げながら学園中を走り回ります。でもなんで板前さんの恰好をしながら走ってるんでしょう?

 

 

「あら、風に乗って……。」

 

 

飛ばされてやってきた号外には大きくこう書かれていました。

 

 

『300m級ウマ娘巨人“YOU”あらわる! アメリカワシントンからまっすぐ府中に向かって進行中! 現在千葉ネズミーランドで観光中か!』

 

 

「あぁ、またあなた先輩ですか……。」

 

「最近見ないと思ったらこんなに大きくなったのねぇ……。」

 

 

アメリカから来たはずなのにお手手には武器の代わりのエッフェル塔、頭にホワイトハウスの帽子。お洋服は勿論いつもの水色勝負服のあなたちゃんがナントカマウンテンの頂上でピースをしている写真がでかでかと乗せられた号外。なんとインタビューではこのまま学園まで匍匐前進して進む模様。

 

 

「グーグルマップでアメリカの世界地図になんか一本線引かれてると思ったら先輩のせいだったわけですね、これ。」

 

「ふふっ。」

 

「あれ? どうかしました?」

 

「いや、ね? なんだかすごく私たちらしいな、って。」

 

 

そういうと靴の紐と蹄鉄を確認し、軽い準備体操を始めるマルゼンスキー。

 

 

「ちょっと千葉まで走ってお仕置きしてくるわ。それが終わったらパリに行って塔を返して、アメリカでホワイトハウスも返して、小さくなって府中に戻ってくるわ。晩御飯までには帰ってくると思うから留守番よろしくね!」

 

「あ、はい! わかりました!」

 

 

マルゼンスキーから“ふん!”と気合の入れる音。瞬間彼女から赤いオーラが勢いよく湧き出し軽く地面を蹴ると浮き上がり始める。そのままドラゴンボールのような効果音と共に空を駆けていったマルゼンママ。手を振って見送るチヨノオー。

 

 

 

今日もトレセン学園“は”平和なようで何よりです。

 

 

 

 

「……テイオーにツヨシ。お願いだから二人はあぁならないでくれよ。これ以上胃が可笑しくなるのはつらいんだ……。最初のころのまともなマルゼンはどこに行ったんだ……、なんでウマ娘が空飛べるのぉ……。」

 

「か、カイチョー!?」

 

「しっかりしてください会長!」

 

 

おっと、ルドルフ会長の胃腸は平和ではないようで。会長と言っても胃腸カイチョー、とはいきませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は流れ……。

 

 

 

 

 ガタンゴトン

 

 

 

 

電車の心地よい揺れと暖かい日差し。

 

睡眠をむさぼるのに適した環境、知らずの内に眠ってしまったようだ。

 

 

 

 

「見て、お母さん! ウマ娘さんだ!」

 

「こら、寝ているのに起こしちゃたら悪いでしょ!」

 

 

 

「あ、すいません! 大丈夫ですよ!」

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん! お名前は~!」

 

 

 

 

 

「私、スペシャルウィークって言います!」

 

 

 

 

 





かかったなアホが! 稲妻十字空烈刃(サンダークロススピリットアッターック!)


ということで


しーずんすりー、アニメ時空編。始まります。
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