デジタルがその手に持つメモリ、地球の記憶から"幸福"という要素を抽出されたソレがベルトへと差し込まれる。その瞬間ハピネスメモリはどこかへと転送されて行き、それに連なる様にデジタルの意識も刈り取られてしまう。
メモリが転送された先は、スカルのベルトの右側。慣れた手つきでそれを押し込んだ彼女は、もう一本のスカルメモリをベルトへ差し込み、開く。
その瞬間、電子音と共に広がるオーラ。スカルメモリが持つ純粋な"死"のオーラと、ハピネスメモリが持つ"幸福"のオーラが現出し、打ち消し合い、単純な風となりベルトから打ち出される。
「「 変 / 身 」」
彼女たちの声に合わせ、瞬時に展開されるのは生体装甲。メモリが持つ地球の記憶をそのまま引き出すのではなく、ベルトという制御装置を介して装甲へと変化させる。他のガイアメモリのように肉体に突き刺した時に生成される装甲よりも、何段も強化されたそれは瞬く間に彼女の体を包み込み、変身が完了する。
先ほどまでそこにいたはずの長身のウマ娘は消え去り、立っているのは灰と桃に分かたれた仮面の戦士。
「人呼んで、仮面ライダー。」
そう呟きながら、先ほどまで手に持っていた白い帽子を被り直した。
◇◆◇◆◇
「はッ!」
彼女たちは屋上から飛び上がり、そのままターフへと着地する。目の前にいるのは自分たちの世界で過去に戦ったドーパントたち。そのどれもが一筋縄ではいかなかった相手であり、守り切ることが出来なかった被害者でもある。そんな怪人たちは三名、そして背後にはガイアメモリを世界中にばらまく財団Xの下級戦闘員が変身するマスカレードドーパントが複数。決して侮れない相手だ。
(デジタル、感じる?)
(……いえ、何も。知性らしきものは見えますが、"波動"はありません。普通のドーパントとは違うみたいです。)
本来、ドーパントというものは変身者が存在する。普通の人間がガイアメモリを使用することで変身するのがドーパントだった。『ハピネスメモリ』に強い適性を持つアグネスデジタルはメモリを使用することで、その人物が持つ心の動きが何となくではあるが感じることが出来る。彼女がいう"尊みの波動"を検知することで、そのドーパントの弱点や簡単な感情などを読み取ることが可能なのだ。
しかしながら現在彼女が目の前にいるドーパントたちから感じられるものは真っ新な"無"、どんなドーパントであっても人間を素体とする以上"波動"は必ず存在する。それがないということは……、目の前にいる者たちは何者かによって生成された疑似ドーパント。変身者を必要としない雑兵ということが伺えた。
(何かの陽動という可能性が高い、ですが放置するわけにもいきませんしタキオンさんのサポートを受けられない以上広範囲の索敵は不可能です。なので……)
(いつも通り倒せばいいってこと?)
(Exactly!)
脳内で会話を終わらせた二人は、改めて怪人たちと相まみえる。
「仮面ライダーW、一応名乗っておく。そんな大勢でやって来て明らかに見学ではないみたいだが……、何の用だ?」
「ほう! 仮面ライダー! 抵抗してくるような戦力はないと聞いていたが……、その腰のメモリ。貴様もドーパントというわけか!」
中央にいたMを冠するメモリ、マグマのドーパントがそう返してくる。彼以外の者が構え始めた当たり戦闘を避けようとする意志はない、それと同時に情報提供者、もしくは親玉がいることが考えられる。爆発と共に瞬時にこの場に出現したことから、空間転移系のメモリかそれ以外の異能・技術の持ち主が相手側にいることは確定している。
「貴様一人に対してこちらは30名以上、よくある日曜日の番組であれば正々堂々と一対一にするのだろうが……。わざわざ数の差を放棄するほど私は愚かではない!」
「……理解しているとも。」
「その意気や良し! せめてもの手向けよ、一切の手加減なしで葬ってやろうッ!」
マグマドーパントがそういった瞬間、彼の手から極大の火炎球が生成されこちらに放たれる。そして運の悪いことに私の射線上、背後にはまだ学園の生徒がいる。相手が出現した位置がそもそも練習中のウマ娘達の前だったのだ、非難するのが遅れてしまっても致し方ない。故に、取れる選択肢は受け止めるのみ。
そう判断したWは、灰色の体。スカルメモリの力を引き出している方の面を前面にだし、その火球を受け止めようとする。"スカル"は、"骸骨"、すでに死んだ骸を意味している。例えどれ程の高火力であろうと、死者にダメージは通らない。どれほどの痛みがその体に振りかかろうとも、すでにHPは0なのだから。
スカルが覚悟を決めその大火球を受け止めようとしたとき。
背後から眩い光と共に光線が放たれる。
大口径の黄色い線は一瞬にして火球を飲み込み、消し飛ばした。
「な、なにッ!」
マグマドーパントが驚きを口にする、それもそのはずだ。ドーパント同士の戦いにおいて油断は死につながる、故に最大火力をもって目の前の仮面ライダーを名乗る不届き者を消し飛ばそうとした。しかもあえて避けられぬように背後に逃げ遅れたウマ娘がいる射線を考慮し、放ったのだ。倒せないにしてもダメージは与えられるはずだった。
しかしながら、現実は違う。目の前にいる仮面ライダーによる反撃ではない。それよりももっと奥、背後からの光線により火球が消し飛ばされてしまったのだ。
「も、もしや! 唯一力を持つ存在として言われていた……ッ!」
徐々に光が晴れ、先ほどの光線を放った相手の輪郭が見えていく。トレセン学園が誇る白と薄紫の制服、そして茶色い頭髪。頭の上に冠するのはウマ娘の象徴である耳。
「もしやあなッ………、誰ぇ?」
「はッあ!? あんなバケモンと一緒にすんな!」
茶色い髪に茶色いしっぽ。そう! どこにでもいるモブウマ娘である!!!
「なんかよくわからんけど、あっちがワルモノだってことは何となく解った! 私たちが助太刀するぜ、仮面ライダーとやら!」
「え……、あ、はい。どうも。」
「にしてもさっきお前『抵抗してくる戦力はない~』とか言ってたけど……、どんな目ん玉してるんだお前?」
彼女がそういった瞬間、彼らはようやく知覚する。すでに自分たちが囲まれているということに。見渡す限り、ウマ娘。どこにでもいるような、なんの変哲もない彼女たち。さっきまでレースに勝つためにここで修練に励んでいた者たちだった。
そして、驚くべきことにココにいるすべてのウマ娘が、戦う力を保有していた。
先ほど火球を消し飛ばした彼女は両手に黄色い光弾を生成しており、彼女の背後にいる多くが様々な色のエネルギー弾の生成を完了している。そして少し目をずらせば胸に輝くトレーナーバッチを付けた筋骨隆々の金髪の男性に率いられたウマ娘たち、そのすべてが特殊な呼吸法によって両腕から稲妻の様なものを生成している。
「え、なに、それ?」
説明しよう!
この世界において一時期あなたちゃんはとてつもないデマを流したことがある! そう! 『ビーム打てなきゃデビュー戦に出れない!』というデマ! 本来であればだれも相手にしない様なものなのだが、運が悪いことに彼女たちはあなたちゃんが口からビームを撃っているところを目撃し! 同期であるゴルシが簡単にビームを撃っているところを目撃し、信じてしまったウマ娘達である!
それにあなたちゃんに対抗するために当時の生徒会長であるシンザン会長もビームを撃ち始めたため、信頼性はさらにアップ! スカウトされる前にトレーニングを担当する教官に『どう頑張ってもビームが撃てないですぅ!』と泣きながら相談しに行った子たちである! 悩んでいるウマ娘を放っては置けない教官は一緒になって練習した結果……、彼女たちは成し遂げたのだ!
ウマ娘達全員に宿る"ウマソウル"、この余剰エネルギーを光弾として発射する技能! その威力は個々人によって差が出るが最低でも30㎝の鋼鉄を簡単に打ち抜けるほど! そんなドラゴンボールの世界から来たようなウマ娘! 総勢120名!
「懐かしいですよねぇ、みんなで河川敷に並んで空に向かって『波ッア!』って言い続けた日々。」
「ま、おかげさまで"ソウル"を可視化できるようになって全員『領域』覚醒済み。」
「そんな私たちを戦力としてカウントしない? はッ! 嘗められたもんだね!」
次々と声をあげる彼女たち、確かに自分たちは『学園内に置いて弱い』。レースにおいても、戦闘においてもだ。故に"モブ"の名を甘んじて受け入れている。しかしながらこいつらに戦力外として言われるのは話が別だ。明らかに力をもってこっちに危害を加えようとしているのに、どう考えても私たちより弱い。ウマ娘という性質上かなり温厚な彼女たちであったが、これまでの努力を無視される様な行為には人一倍敏感であった。
「然り! 彼女たちは皆すでに戦士である! 皆が積み上げてきた努力を侮辱するなど! このダイアートレーナーが許さん!」
「ダイアーさん!」
「師範! その通りです!」
そんな彼女たちの想いを、トレーナーとして髪を逆立てた大男が代弁する。どうやらかなり生徒から慕われているようで、彼の言葉に賛同する声が多く上がる。しかしながらそれがドーパントたちの逆鱗に触れてしまった。明らかに危険な光弾を生成しているウマ娘と違い、彼は何も力を行使しているようには見えない。そしてそもそも男性、ウマ娘ではない。
最初の標的にされるのは、致し方のないことであった。
「ッ! ならばまず貴様から地獄に送ってやろう!」
「あ、危ない!」
激高したマグマドーパントから放たれた火球は、吸い込まれるように男に向かって飛んでいく。咄嗟に声をだしたスカルであったが、火球の方が何倍も速かった。マグマのガイアメモリ、そのメモリが引き出す力は名の通り溶岩そのもの。その構成によって温度はまちまちであるが、過去にスカルたちが戦ったマグマドーパントは1000℃を優に超える火球を用いて戦っていた。そんな高火力の火球を喰らってしまえば生身の人間などどうしようもない。
だがそれは、普通の人間の話である。
「噴ッ!」
「な、何ィィィイイイイイーーー!!!」
彼は、その火球をまるでナイフでバターを切るかのように手刀で両断して見せた。
「このダイアー、過去の敗戦より学び、鍛錬を続けてきた。自身の武を過信し、相手の能力を見余ったが故の敗戦!」
彼の脳裏に浮かぶ記憶、武道のブすらしらぬ様な男に負け、木っ端微塵にされたあの日のこと。この世界において元居た世界の師や友たちと再会した時のこと、過去を乗り越えるために修行に励んだ日々。ウマ娘という存在と出会い彼女たちの情熱に惹かれたあの日のこと。そして"あなたちゃん"と呼ばれるどうしようもない化け物との闘争の日々。
「故に!」
「なッ! 奴が分身した!」
地面を蹴り、空へと飛びあがるダイアー。過去において不可能だった空中での高速残像の生成、それを用いてマグマドーパントへ突貫する。マグマ以外のドーパントたちも空中に浮かぶダイアーに攻撃を仕掛けるが、そのすべてが残像。彼と彼らの距離は徐々に近づき、ついにマグマドーパントの眼前まで彼は移動する。そして、放つのは渾身のドロップキック。
「ヌッ! ウォォォリィィィアアアァァァ!!!」
しかしながら、その攻撃はマグマドーパントによって防がれてしまう。両足を両手でしっかりとつかまれ、大きく股を開かれてしまうダイアーさん。まさに絶対絶命というほかない。その状況に思わず笑みを浮かべてしまいそうなマグマドーパントであったが、彼の強化された視力は口角を上げたダイアーの顔を発見してしまう。
「かかったなアホが! 喰らえぃ!
波紋法によって強化されたその手刀は、確実にマグマドーパントの脳天を突き刺し、貫く。緩んだ拘束から抜け出したダイアーは飛びながら後方へと下がり、ゆっくりともう一度構え直す。彼の視線の先には、ゆっくりと後ろへ倒れゆくマグマドーパントの姿があった。
「グワァァァァあああああああ!!!!!」
悲鳴と共に、爆散。
「ふんっ、アレが防がれようと二手三手と策を講じていたのだが……。拍子抜けよ!」
そう言いながら未だ構えを解かないダイアー、そしてその教え子であるウマ娘の波紋使いたちも戦意を露わにしていく。呼吸法というアプローチから勝利を目指した彼女たちも先ほどのビームを収めた者たちと比べ全く劣っていない。確かに瞬間的な火力においては後塵を拝する身ではあるが、総合的な戦闘力であれば彼女たちの方が上だ。
「ッ! 不味いぞコックローチ! ここは引くべきでは!?」
「しかしアノマロカリス! 我らにはすでに退路など……」
仲間の一人がやられたことで明らかに動揺し始めるドーパントたち、しかしながら彼らには退路など最初から存在しない。彼らの生みの親とも呼べる存在求められたことは"ここにいるだけ"で達成している、後は自由にしていいということだったので自分たちの"元"になった意志を実行しているだけだった。その再現された意志が生き残ることを望んでいる。しかし、すでに自分たちよりも強力な力の持ち主が大量にいて、その者たちに囲まれているという現状。
そして、さらに状況は悪化する。
「ッ! この音は"彼女"たちか!」
「これは……、キャタピラ?」
デジタルが声を零しながら音のする方へと首を向けると、そこにはこちらに向かって全速力で進んでくる戦車集団。そして、その先頭の車両から顔を見せるのはこの学園に置いて頂点に立つ存在。
「……エアグルーヴ、先輩!?」
「トレセン学園戦車部総隊長、及び生徒会長エアグルーヴ! ただいま現着した! この者たちが不審者とやらか!」
そう言うや否や首元に装着しているインカムで指示を出すエアグルーヴ、瞬く間に現着した戦車たちが隊列を組み終わり、全ての砲台がドーパントたちの方へ向く。その一糸乱れぬ動きから戦車道に邁進する彼女たちの並々ならぬ努力の跡が見える。
そもそもウマ娘にとって戦車道はあまり好まれないスポーツである、大半の戦車が自分たちよりも遅い存在である上固い装甲のせいで風を感じることが難しい。またコレは一部例外の話ではあるが、何故自分よりも弱い存在に搭乗せねばならないのか、という意見もある。そのためエアグルーヴが過去に失われたトレセン学園戦車道部を復活させるまで、トレセンに戦車があることすら知らぬものが多かった。
ではなぜ彼女が戦車を求めたかというと……、ひとえにあなたちゃんのせいである。日々学園の備品であるゲートを破壊し、外に出れば門やゲートと名前の付くものを壊して回る。凱旋門やゴールデンゲートブリッジがいい例だ。そのためあなたちゃんの抑止力となるためにエアグルーヴが考えた力、それが戦車だった。彼女自身名家の生まれということもあり、戦車道に対して造詣が深かったのもあるだろう。
「全車"対あなたちゃん専用特殊粘着弾"装填用意ッ! 明らかに埒外の者どもだ、遠慮はいらん!」
「2号車、装填完了!」
「3号車右に同じ!」
「4号車いつでもどうぞォ!」
「5号車、完了。」
「我らが学園に喧嘩を売った事、永遠に豚箱で後悔するといい! 撃ェ!!!!!」
「ね、ねぇスカルさん?」
「なぁに、デジたん。」
「これ私たちいらなくないですか?」
「うん。……かえろっか。」
◇◆◇◆◇
「いやー、やってるなぁ、おい。」
ターフから少し離れた場所、模擬レースなどでトレーナーたちが観戦するときに使う高台。時期が時期であればトレーナーやウマ娘達で賑わっている場所であるが、今日は何のイベントもない日。誰かから呼び出されたわけでもないのにこの場にやってきた彼女たちしかここにはいない。
「また変なのが紛れ込んでるね、可愛いものだけど。」
楽しそうに笑みを浮かべながら手すりに体重を預けるウマ娘、その名をミホシンザン。"あなた"という化け物と戦いながら自己を確立し、神を称える巫女としての地位を確立したウマ娘。自分たちの"ソウル"の出どころを理解しているせいか、いま世界に起きている異常を一部ではあるが正しく理解している数少ない存在である。
「劣化コピーみたいだけどな。」
それに答えるのは、シリウスシンボリ。椅子に腰かけながら腕を後ろに回し、姿勢を崩しながら言葉を紡ぐ。彼女もミホシンザンと同じ世代であり、彼女と同様に鎬を削ったウマ娘だ。例の彼女のように完全なイレギュラーでもなく、ミホのように別世界を完全に認識した訳でもない。ただ他の普通のウマ娘と同じように努力し、前に進み続けてきたのが彼女である。
「あ、解るんだ。」
「そりゃあお前らみたいな非常識を相手にするためにずっと"見続けた"からな。」
「なるほどねー。」
過去を思い出しているのか、楽しそうに笑いながらそう返すミホ。"あなた"を含め彼女たちはすでに引退を考えるような年齢になっている、体の衰えはまだ来ていないがそろそろ後輩たちのために席を空けてもいい年齢でもあった。ウマ娘の世界は華やかなものではあるが、その分散るのも早い。そんな世界故に。
濃厚な時間だったからこそ、全て終わった後にはとてつもなく長く、輝かしいものに成ってしまう。少し思い出しただけで、それに付随した記憶が溢れてくる。まだ成人していないような年齢なのに、老人みたいな考えをしている。そんな自分に面白さを感じたのか、ミホはより笑みを深めた。
「それで? お前も解ってんだろ、コレ。」
「うん、時間が進んでる。そして進んだそれが巻き戻ってる。さっきの私もコレも、そもそもおかしい。本来はこんな異常すぐに三女神さまが直してくれるんだろうけど……。」
「管理者不在、って奴か。あいつにちょっかい掛けられ過ぎて休業中か?」
あいつ、すなわちあなたちゃん。この世界における三女神は他世界の『人間を虐めるの楽しー!』とか、『神と人間の価値観って違うもんね、シカタナイネ!』という神ではなく、『おちごとつらい、やむ』な方々である。あなたちゃんが星をぶっ壊した時の後片付けと修繕、銀河系を崩壊させたときの後始末、間違えて全生命体をあなたちゃんにしちゃったときのリセット。あげればきりがないほどあなたちゃんのやらかしを直していく方々である。
あなたちゃんを排除して仕事を減らそうにもあなたちゃんは二人称を司る存在でもある、彼女が消滅した場合すべての二人称が当てはまる存在が消し飛ぶので、もちろん三女神も対象内。封印しようにもあなたちゃんは偏在するので電子ジャーに閉じ込めたと思ったら三女神のおやつを強奪して勝手に食べている始末。ゴルシに走ってくれと頼み込んだかの騎手様のように、お願いだから今日ぐらいは何もせずにじっとしてくれと懇願する様な三女神がこの世界の神であった。
「どうだろ……、あの方々だったらそれこそ過労死寸前デスマーチしてでも世界を正常に戻そうとするだろうけど。それにあの子も鬼じゃないし、三女神が寝込んでる時に夜襲を仕掛けたりはしないでしょ。」
「……まぁそこら辺の分別はあるからな、あいつ。ま、くわしいことは本人から聞くのが早い。」
どうせ私らがここにたまたま集まった、ってことはアイツも来るってコトだろうよ。と続けるシリウス。同期でずっと鎬を削ってきた相手だ、あいつの性格ぐらい熟知してるし、それはあっちも同じ。何となくで同じ場所に集まっているなんてよくある話だ。
「っと、話をすれば、だな。」
背後から聞こえてくる人の足音、人よりも優れた聴覚を持つウマ娘な彼女たちは、この場に訪れようとする最後の1人の方へ向く。
「遅いじゃねぇか、あなッ……」
「最初に来るべきじゃない、あなッ……」
「あ、あの~。理事長知りません? あの人『決定、学園内に回転ずし全チェーン店誘致ィ!』って言いながら勝手に決済して、現在逃走中なんですけど。」
そこに現れたのは、大邪神あなたちゃん……、ではなく緑の悪魔たづなさん。どうやら理事長を探しているようだ。というか理事長? 回転ずしはいいですけどちょっとやり過ぎじゃないですかね……? え、どのお店にもそれぞれの良さがあるし、どっか一社だけを誘致したら贔屓に視られかねない? まぁそれはそうですけど……。
「しらねぇっす。」
「すいません、見てないです。」
「あ、そうでしたか~。お話し中ごめんなさいね? じゃあ失礼します~。」
「……普通ここにアイツ来る流れじゃなくね?」
「なんであなた来うへんの……?」