仮面ライダーあなたちゃん! 前回までの三つの出来事!
ひとーつ!
なんか気が付いたらあなたちゃんの名前がないなった! このままじゃ大変!
ふたーつ!
時間が徐々に巻き戻る異常発生中! 動き始める仲間たち!
そしてみーっつ!
別並行世界からやってきたスカルとデジタルが仮面ライダーWに変身! でも現地一般人の方が強い!
「ん!?」
また、世界が切り替わる。急だ。
先ほどまでは部室からターフへ向かう道を歩いていたのに、何故か私は校舎の中に突っ立っていた。急いでいつも懐に収めている自身の学生証を確認すれば、そこに書かれている学年は"高校一年生"。また、一年巻き戻っている。
先ほどまでの記憶は皆とターフに向かっている途中奥の方で騒ぎが起こっていたので様子を見に行ってみようとゴルシが発言した直後、私もそれについて行こうと歩き始めた瞬間私は学園の校舎の中にいた。時刻は朝ではなく、夕方。窓から見える景色は茜色に染まっている。
(…………早い。)
高校三年生から、高校二年生まで巻き戻るのにかかった時間はおそらく半日。そして次は一時間も経っていない。私が今日意識を取り戻してスピカの部室にいた時から、チームのメンバーや親しい友や家族と会話して、ターフへと向かう時間。経過した時間はほんの少し、これから考えられるのは"巻き戻り"の猶予時間も加速するという仮定。まだ"仮定"でしかないためたまたま今回だけ早かったという可能性もあるが、私に残された時間が残り少ないことは確かだ。
(感覚的にわかること、それは私が"トレセン生"でなくなった瞬間すべてが終わるということ。)
自身を表すはずの"あなたちゃん"という『記号』にはトレセン学園の生徒、という意味も付随している。その要素が今の私と共有している数少ないポイント。自身の根幹とも呼べる"呼び名"が不安定、もしくは壊れている今。共通点を失ってしまった瞬間、私は二度と元に戻れなくなってしまうかもしれない。
私のアイデンティティの消失、"あなた"の消失が何をもたらすかは全くの不明。私から消えた"あなた"が誰かに付着し新たなあなたちゃんとして覚醒するか、行き場を失った"あなた"が消滅してしまい、連鎖的にこの世のすべての存在が消滅してしまうかのどちら。私の名に込められた"二人称"の力は全てに当てはまり、影響を与える。それすなわち私の失敗は世界の消滅を意味する。
(探さ、ないと。)
問題の解決のためには、切っ掛けがいる。けど何の手掛かりもない。そして今の私には『自分はあなたちゃんであると言い切れない』という状態。元々使えていたはずの"邪神あなたちゃん"としての権能、邪神としての基本的な能力からウマ娘を超える圧倒的な身体能力などが現在使用不可能となっている。残っているのはせいぜい"ウマ娘"という範疇に収まる程度の力のみ。
体の感覚的に走る程度ならまだ何とかなるだろうが、心の奥の魂がある部分に問いかけようとしても何も帰って来ない。領域は勿論それに付随した技能など全部NG。反応さえあればそこから自身の根幹を立て直し、そこから元の自分に戻ることも出来そうだと思ったのだが……。無理そうだ。力さえ取り戻せば、世界が巻き戻っている現象やその変異のタイミングをこちらで認識することが出来ないという問題、この両方が一瞬にして取り戻せるというのに。
(それに、私を呼ぶ声も……。)
さっきから、いや"去年"の世界からずっと誰かが私を呼んでいるような感覚がある。周りを見渡しても誰もいないし、声も聞こえない。けれど大事な二人が、私を呼んでいる様な気がする。"去年"の段階ではまだ弱かったが、"今年"に入った瞬間その声の大きさはよりしっかりしたものに成った。未だどこから自分のことを呼んでくれているのか解らないが、確実に"そこ"にいる。
「合流できれば、何か変わるかもしれない。でも……。」
私を呼んでいるのは、誰だ?
◇◆◇◆◇
ウマ娘、それは神秘の存在。
人とは違う耳を持ち、尻尾がある。
身体能力は驚異の域であり、人の英知を集めた車を笑いながら追い抜かす。
彼女らは皆、見た目麗しく男性からも女性からも人気が高い。
人々から好かれ、身体能力も高く、人からチヤホヤされやすいそんな彼女たちにも避けられない定めがある。
そう、名前だ。
彼女たちのウマ娘としての名前は彼女たちが母親のおなかの中にいるとき、母の頭の中に名前が下りてくることで決定する。その下りてくる時期はまちまちであり出産直前だったり、新たな命が芽生えた時だったりする。
余談になるが海外では神から与えられた名前と言うことでとてもそれが大事にされるが、古来より本当の名を明かすと呪いなどがかけられてしまうと恐怖を持っていた私たち日本人は人としての名前とウマ娘としての名前、二つ持っていたりする。駿川たづな氏がそう……、いや、忘れてくれ。
下りてくる名前はターフやダートを彩る彼女たちに相応しい名前であるが……
時たま、いやクラスに一人ぐらいの確率で思わず聞き返したくなるような名前を授かることがある。
ところ変わって日本の府中。
中央トレセン学園。その空き教室にて不定期でひっそりと行われる集会があるらしい。
なんでも主要なメンバーたちに紹介された者たちのみ参加できる特殊な会であり、その存在を知るものはそんなに多くない。
しかしながら、人づてに調査を進めていくと面白いことが分かってきた。
なんでも、その集会に参加する者たちは決まって『珍名』・『奇名』をもつウマ娘らしい。
「と、言うワケでぇ! 我ら、珍名奇名同好会も"ウマチューブ"というドリームオーシャンへと飛び込むことにいたしました!」
そう高らかに宣言するのは珍名奇名同好会の会長、競走馬の変な名前と聞かれれば五指に入りそうな彼女。『スモモモモモモモモ』である。自分でもよく"モ"の数を間違えて書き過ぎたり、面倒になって"スーモ"という緑色の毛むくじゃらの名前を借りたり、たまにバグってス+モ^1024と表現されたりするウマ娘である。ほら、よくあるアニメ初登場時に端の方に出る名札。あそこモがはみ出して画面外言ってるでしょ? あんな感じ。
「ま~、ドリームと言いながら屍の血で染まったレッドオーシャンだけどね~。そ~れをドリームというならいいけどさ~。」
元気よく宣言するスーモの発言に水を差す彼女、スモっモを桃髪の桜餅とするならば、こちらは単純な餅。そう登録名『モチ』の名を冠するウマソウルを受け継いだウマ娘である。名は体を表すのか、さっきからずっと顔を机に付けてほっぺを融けるように突き出している。ウマ娘ではなくモチ娘かと勘違いされそうなほど体が柔らかいというか、弾力に溢れているのが彼女だ。なお胸はない。そっちの弾力は皆無である。現実は非情。
「モチ? もう撮影始まってるニャよ。編集で何とかできると言ってもそれやるの私だからシャンとするにゃ。」
そう窘めるのは『ネコパンチ』という名をもって生まれてきたウマ娘、ウマ娘なのに語尾に"ニャ"と付けるネコの一族、そしてネコシリーズの最高傑作と名高いウマ娘とは彼女のことだ。短めの耳をぴくぴくと動かしながらモチに注意を飛ばす。その声にモチだけでなくスモモノモーモも姿勢を正した当たり、パワーバランスは確実に彼女に傾いているようだ。
「は、はいっ! というわけでパンチ姉の激励もあったことですし! 我ら同好会が何をしているのか! そこからご説明していきましょう!」
「モチたち、珍名奇名同好会はよく言えば『名前のことでお困りのウマ娘の悩みを解決する』会。悪く言えば『なんか変な名前で苦労してる奴らと傷を嘗め合う』会~。」
「色々と強い言葉なんだけど成績に繋がらなくて悲しい、とか。この名前のせいであのキャラクターに連想されて変な弄りされる~とかのお悩みが多いニャね。例を開けるとすれば、『オヌシナニモノ』ちゃんが『なんで疑問形なんだよ! こっちが知りてぇよ! 私は誰なんだよ!』とガチギレしながらやってきたこともあったニャ。」
ま、その怒りをバネにして最近5連勝してるすごめのウマ娘にゃけど、と続けるネコパンチ。名前に関するお悩みを聞き、その解決策を一緒に考え、実際の成績の向上につなげるバネにしたり、その子の知名度向上に努めるのが彼女たち同好会。最近はそれぞれの用事で忙しく活動が出来ていなかったが、今日から再始動ということで気合を入れているようだ。
因みに顧問はポテイトーズ先生(外国語担当)である。たまに食堂で自分の名前を叫ぶ元気な伯爵令嬢お婆ちゃんの先生だ。
「では早速今日のゲストをお呼びしていきましょう! どうぞ!」
◇◆◇◆◇
いや、今は考えてる場合じゃないと頭を振りながら思考を白紙に戻す彼女。
とりあえず今の自身に情報が全く足りず、呼んでくれている相手がだれでどこにいるのかも解らない状況。声というか反応の数から人数が二人であることは理解できるが、それだけで相手を思いつけるほど私は賢くない。"あなたちゃん"であれば直感だけで相手の名前と場所を思いつくことが出来たのかもしれないが、今の自身は真なる"あなた"ではない。
地道な調査、視界に入るものすべてを片っ端から調べていくしか方法はない。
「では早速今日のゲストをお呼びしていきましょう! どうぞ!」
ということで近くにあった空き教室のドアを勢いよく開ける。なんかどうぞ、って言われたし。
"あなたちゃん"のエントリーだ!
…………やっぱ違和感あるな。
そんな適当なことを思う私と対照的に、完全に空気が凍る同好会メンバー。実は彼女たちもこの世界の住人ではなく、別世界からやってきたウマ娘なのだが全く自覚はない。彼女たちが"対現実改変"などの適性を持たなかったが故に何も気にせず日常を送っていたのだ。まぁ確かに彼女たちが住む世界と、この世界が非常に似通っていることも理由だと考えられるが……。今は関係がない。
重要なのは、彼女たちが"あなたちゃん"という存在を理解していることである。あなたちゃんは偏在する故に、彼女たちの世界にもコイツはいるのだ。
例え自身のアイデンティティ、その根幹をなす"ウマソウル"が行方不明になろうともあなたちゃんはあなたちゃん。その見た目は何も変化していない。戯れでトレセン学園の門を破壊しつくし、おやつ間隔で凱旋門を爆殺し、公式のキャラガチャに未だ自分が実装されないことにキレ世界を滅ぼす大邪神あなたちゃんである。
そんな奴が目の前に現れた時……。まぁ、うん。
「にょモモモモモモモモモッ!!!!!」
「もっちぃぃぃぃいいいいい!!!!!」
「ちょけプリィィィィイイイイイ!!!!!」
先ほどまで行儀よく座っていた椅子から飛び上がって部屋の隅に向かって緊急離脱、阿鼻叫喚が可愛くなるような叫び声と共に顔から色々な液体を垂らしながら声を上げてしまう三人。まぁそれも仕方ない話、彼女たちの戦闘力が100~1000の天下一な舞踏会で優勝できるレベルとすれば、完全体あなたちゃんの出力は超化などのバフを付与していない通常状態で300億。どうあがいても勝てるわけがない。
なお現在の超弱体化あなたちゃんでも300万、前回現れた一般モブビーム打てるウマ娘で10万程度である。なんだこの世界。
「ん? なんかお前ら見たことあるな……?」
そう言いながら記憶を探る彼女、この体に宿る記憶には彼女たちの顔は存在しない。しかしながら過去に"あなたちゃん"の分体からフィードバックされた情報に彼女たちの姿があったことを思い出す。つまりこのウマ娘達はこの世界の住人ではない。
彼女がその事実に行き着いた後、周囲を確認する。どうやら動画撮影をしていたようだ、スマホカメラで撮影していたようで、未だ録画が回り続けている。もし彼女たちがこの世界を自分たちの世界と認識しているのならばこんな行動はしていないだろう。私が入ってきた状態でこんな悲鳴を上げたことを考えるにこの子たちは外れだ。
「あびゃびゃびゃびゃ」
「も、モチは食べても美味しくないモチですぅ!」
「ちょけ、ちょけぷりぃ」
「……うん、ごめん部屋間違えた。というかなんでネコはトゲPになってんの?」
「…………あ、あなたちゃん大邪神様が謝った!?!?!?」
「お、おわりだぁ! この世界は滅びるんだァ! 助けてヒーロー! あ、ダメだどうあがいても勝てないィ!」
「ぷりぃ……。」
「か、帰るね~?」
「気持ちは解らなくないけど、ちょっと騒ぎ過ぎじゃないの? ……あっちの私が何かやらかしたのかもだけど。」
そんなことをつぶやきながら彼女は空き教室を後にする。多分あの子たちを落ち着かせようと近づいても逆効果だ、声を掛けるのも駄目だし、触るのもNG。自身の悪名と彼女たちの記憶によって形成された"あなたちゃん像"が彼女たちの精神を破壊してしまうだろう。"元の自身"であれば逆にそれに興味を抱き壊れない程度に補強しながら遊び倒す可能性もあるのだが……、今の彼女にはその選択肢を実行に移すほど鬼畜ではなかった。
とにかく、現在自身が探している"自分を呼ぶ声"の持ち主は彼女たちではない。そもそも人数が違うし、あそこまで怖がってしまう対象を自分から呼び出すほどあの三人組の肝は座っていないように見えた。いち早い復帰を願いながら自身は自身の調査を進めることにしよう。
「……かといってやっぱり一人でしらみつぶしに探し回るのは効率が悪い。多分相手もウマ娘なんだろうけど……、それが学園にいるとも限らない。もっと大勢で探すべきだ。」
過去の自身であれば分身したうえで全世界に出現させるという技で一瞬にしてそれを可能にできたのだろうが、この力も"あなたちゃん"という名に込められた力だ。"名前"の無い自身には使えない。
かといって他人に頼るのも難しい。さっきの三人組のように恐慌状態に陥ってしまう可能性や、そもそも私の悪名のせいで手伝ってもらえない可能性。エンカウントした瞬間にレースを挑んでくるどこぞのポケ〇ントレーナーみたいな奴らのことを考えると闇雲に声を掛けるのは得策ではない。そうなるとやはり……、自身に耐性を持ちながらも頼み込めば頷いてくれそうなチームメイト。『スピカ』の人間に声を掛けるのが最適だろう。
もしかしたら私に呼びかけ続けている者たちのことを知っているかもしれないし。
「うん、そうと決まれば早速行動に移そう。まずはゴルシが出現しやすい部室に……。」
そのように思考を纏め、動き始めようとしたところに自身の耳が足音を聞き取る。"あなたちゃん"の時であれば宇宙の反対側から自分の名を呼んだとしても聞き取るぐらいの聴力はあったのだが、今じゃ一般的なウマ娘程度の能力。ほんの十数m先の曲がり角の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
スペシャルウィークだ。
「それでね、グラスちゃんがね~。」
誰かと会話、おそらく同世代である黄金世代の者たちについての話をしながらこちらに近づいてくる彼女。しめた! スペシャルウィークは紛れもなくスピカメンバー! しかも比較的まともな方だ! 狂気にまみれた普段の自身はいざ知らず、名前のない私にとってあのチームが全力で暴発した時のノリは身に余る。スぺなら食事が関わらない限り変なことにはならないだろうし、普通に頼めば性格的に急用がない限り断わることはないはず! 手伝ってくれたお礼に一食分奢ると付け加えれば財布と銀行口座を生贄に捧げる事にはなってしまうが、快く手を貸してくれるはず!
(そうと決まれば早速……!)
「……って言われたの。面白いよね、
世界が止まる。
……今、彼女はなんて言った?
いや、現実逃避をしている場合ではない。確実に、彼女は今。スペシャルウィークは、
それが、『スペシャルウィーク』なはずだ。
しかし、彼女は
この事実に気が付いた時、ようやく私は気が付くことが出来た。
足音が一つしかないこと、そしてこの曲がり角の先に存在するウマ娘の力が、とてつもなく強いこと。
今の自身と比較してではない、まだ自身に"あなたちゃん"という名があったとき。自身が持つすべての力を発揮した時と比べても、この先にいる彼女の方が強い。何をどうしても、勝てる道筋が浮かばない。そんな相手。
そして、自身にはそんな異常ともいえる力を手にした"スペシャルウィーク"に、一人だけ心当たりがある。
(ま、まままマズい! "あなたちゃん"は確実に彼女にヘイトを買ってる! アルスぺちゃんの投稿が止まった理由は色々あるけど、その一因としてあなたちゃんグループの存在が関わっていることは決定的に明らか! 名前がある時でさえ逃げ延びるのに精いっぱいなほどの戦力差なのに今の私が対面してしまえば跡形もなく消え去ってしまう! に、逃げなky)
彼女の存在を知覚し、判断を下すまでの時間は瞬きほどの時間。力を失った自身で出せる最速、もしかすると力があったときの自身よりも素早く行動に移せたかもしれない。自身の判断も、行動も、速度も、何一つ責めるべき点はなかった。
しかし。
私の肩に、手が乗せられる。
「ひさしぶり、ですね。あなたちゃん?」
「ひ、ヒィッ」
彼女にとっては私の最速など、欠伸が出るほどに遅いという事実を失念していたこと。そしてそもそも同じ世界にいる以上、いや相手にこちらの存在を知覚された以上、もうどうにもならない。潔く諦めるしか術はないのだろう。
ほんの少しだけ口角を上げ、
青く半透明な自身の姉を引き連れた彼女。
アルティメットスペシャルウィークが、そこにいた。
『いやほんと、久しぶりだよね。あなちーは元気してた?』
「ア、ハイ。オカゲサマデ、元気ニヤラセテモラッテマス。ハイ。」
「何の集まりか忘れちゃったけど楽しかったよね~。カナリアちゃんも……、あ! そうそう、さっきカナリアちゃんにも会ったんだよ!」
(゚∀゚)アヒャ
……ッ! や、ヤバい。脳みそが溶けてジュースに成っちゃうところだった。
ま、まずいぞ! アルティメットスペシャルウィークことアルスぺちゃんはホントにまずい。完全体あなたちゃんの通常戦闘力が300億、そして大邪神パワーをフルで発揮して300兆まで跳ね上げることは可能だ。けどアルスぺちゃんは通常体であなたちゃんのフルパワーを軽く凌駕する。や、やばいんよぉ! 生涯公式戦で負けなかったという逸話と三女神全員殴り倒したって逸話でバフ掛かりまくってんだよぉ!
「それでね、あなたちゃん。ちょっと聞きたいんだけど……。」
「ア、ハイ。」
「別に私たちをこの世界に呼んでくれるのはいいんだけど……、コレ? どういうこと?」
少しの沈黙の後に、自身の持つ力のすべてを覇気に回して発現するかのように私に問いかけるアルスぺ。彼女の指の先には、戦いの末に生き返ったはずの姉の姿。スペシャルウィークにとって全てともいえる実の姉、オースミキャンディが霊体化して宙を浮いている。それでようやく思い至った。あ、地雷踏んでる、と。
三女神の戯れによって姉を失った彼女は、紆余曲折、様々なことを経験しながら神の課した試練を突破し姉を取り戻すことを成功させる。そして三女神の想定以上に成長したスぺは悪逆非道で邪知暴虐な邪悪三女神を殴り&蹴り飛ばし再起不能状態にした。まぁつまりこの世界に来る際何らかの理由で彼女の姉が"巻き戻っている"こと。そのことについてキレていらっしゃるということだ。
トラブルメイカーのあなたちゃんを疑うのは間違いないけど今回はマジで違うんですぅ!
「あ、あああああああの!」
「ん~?」
背後からは怒りのせいか真っ赤なオーラが立ち上り、鬼の顔の様なモノを形成し始めている。口角はわずかに上がっているが、顔が全く笑っていない。あ、ガチギレでござる。この世界もう終わりや。気分はさながらテーブルの横に置かれたペッパーミルの中にある胡椒。ちょっと手を捻るだけで世界事粉々にされちゃうんだァ!
「ピギッ(破裂音)」