あなたはウマ娘である。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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あ、あ! 困りますお客様! 困りますお客様!
日刊ランキング一位とか嬉しすぎて困りますお客様ァ!


狂ってる奴ほど基礎スペックが高い

 

「今回のレース、三番人気に推されていますがどのような心境でしょうか!」

 

 

「そうですね、やはり応援してくださる方々に感謝でしょうか。ただ、少々悔しい気持ちもありますので次はもっと上を、多くの方に応援していただけるように努めていきたいと考えております。」

 

 

「一番人気であるミホシンザンさん、二番人気であるシリウスシンボリさんとは学園内での模擬レースからライバルという噂を聞きましたが本当でしょうか!」

 

 

「あら、そうなのですね。私としてはお二人とも確かに意識する相手ではありますが、ちゃんと話したこともありませんので……、学園ではお二人ともお忙しいでしょうし、このレースのパドックで少しお話しできればなぁと思っております。」

 

 

「これまでのレースでとてもゲートが嫌いな印象を受けましたが!」

 

 

「確かに嫌いです。あの狭い空間に押し込まれるの、皆さんも嫌ではないでしょうか? 係員の方には申し訳ないのですがどうしても目の前にあってしまうと……、お恥ずかしい限りです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう。」「元気そうね。」

 

 

「お。ミホシンザンのトレーナーさんに、おハナさんじゃないか? どうかしたのか?」

 

 

「いや、こっからクラシックでもやり合うことになるだろうし、ちょっとした挨拶をな。おハナさんも同じだ。……それにしても沖野。記者さんの後ろにいていいのか? 普通今受けてる愛バの後ろにいるもんだろ?」

 

 

「まぁそれはそうなんだが、指示だしするのにはこっちの方がいいと思ってな。ちゃんと職員の方に許可取ってるぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、それよりも私。聞きたいことがあるんだけど。」

 

「うん、俺も。」

 

「実は質問受ける側なんだろうけど俺もあるんだ。」

 

 

 

 

 

 

「「「あいつ、誰?」」」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

ウェーイ! ピスピース! そんなことを思いながらインタビューを受けているウマ娘。

 

 

もちろんあなたである。

 

 

 

今現在あなたは中国四千年の歴史の中で確立した秘技、猫かぶりを実践している最中である。まぁこれがとっても楽しいのだ。

 

 

「では、今回のレースの意気込みを!」

 

 

記者の方からの質問。いつものあなたであれば『びっくりするほどユートピア!』と叫びながら飛び跳ねただろうが今日は違う。イメージするのは最強の自分、今のあなたには知りようのないパクパクさん……、メジロ家に相応しいお嬢様の礼儀正しさをトレースしたあなたに死角はないのである。

 

 

「はい、応援してくださる皆様のためにも。いつも以上の実力を出し切り、結果が出せるように調整してきたいと考えております。」

 

 

そう、完璧な返答である! 脳内のあなたはベッドの上で奇声を上げながら除霊の儀式のために叫び回っているが、傍から見れば良家のお嬢様が微笑みを浮かべながらはきはきと質問に答えているだけである! これはあなたの親御さんもニッコりだろう。まさに完璧な猫かぶりと褒めてやりたいところダァ!

 

 

 

「では最後に何か一言お願いします!」

 

 

 

おっと、あなたが自分のなりきりにほれぼれしているところ、もう終了の時間のようだ。何か一言……、ふむ。普段のあなたならば『URA関係者各位に申し上げる。わたしはマフ……』ってな感じでゲートを生み出した連邦政府に対して反省を促したかもしれないが、今は真面目に猫かぶり。無難に返していくことにしよう。

 

 

「応援してくれる方々やお世話になっているトレーナーに恥じない走りができるよう、邁進していく所存です。」

 

 

 

完璧である。

 

 

 

 

 

 

なお、インタビューのあとに「なんか変なものでも食べたのか? 調子が悪いのか?」などとふざけたことを抜かすトレーナーがいたため、いつものようにターフに埋めようかと思ったあなたであったが、面白かったのでホープフルS当日までお嬢様のガワを被ることにした。

 

 

「どうかされましたかトレーナー? 私はいつも通りだったと思いますが……。あ! もしかして先ほどのインタビューで不手際があったのでしょうか、大変申し訳ございません。」

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーの脳は破壊された。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

「シンザン会長! 大変です!」

 

 

 

ここは、トレセン学園生徒会室。

 

日々、学園をさらに良くするため驀進している生徒会メンバーが集う場所であり、学園内で引き起こされる摩訶不思議な現象に対する駆け込み寺的な場所でもある。なお、解決できなかった案件として深夜に徘徊する謎の全裸ウマ娘などが挙げられており、日々の努力は伺えるのだがあなたのせいで解決率が凄く低下している。

 

 

 

今年に入ってからとんでもない問題児として学園を騒がせているあなたのおかげで今日も大盛況。この部屋の主であるシンザン会長が最近胃薬に手を出したとかで噂になっていたりするが……、おっと。今日はいつもと違うようです。

 

 

「会長! 大変なんです!」

 

 

「ふむ、まぁ落ち着きたまえ。たしか君は風紀委員の……、まぁ君が来るということはあらかた彼女のことだろうな……、あ、お腹痛い。

 

 

「そ、そうなんですけど大変なんです!」

 

 

「大変なのは解ったが、内容が見えない。ゆっくりと話したまえ……、お腹キュルキュル言ってる……

 

 

 

そうやって風紀委員のモブ娘を落ち着かせる威風堂々たるシンザン会長。なお、ウマ娘の耳はとてもいいため先ほどからストレスでなり続ける彼女の胃の音や、お小言は丸聞こえである。悲しいなぁ……

 

 

「そ、それが……、アイツがまともなんです!」

 

 

「…………一応聞こう。アイツとは……、私の唯一の楽しみであったケーキバイキングを行う店でいち早く入店し、そのすべてを平らげてしまったアイツかね? 楽しみにしてたのになぁ……

 

 

「い、いやそれは知らないんですけど……、でもたぶん同じやつです! と、とにかくなんか大変なんで来てください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わりましてあなたの教室近くの廊下。曲がり角の柱のところでコソコソと隠れだす風紀委員のモブ娘と我らが会長。彼女たちが隠れて様子を伺うのはもちろんあなたである。

 

 

 

「あ、おはようございます。髪飾り変えたんですね、よく似合ってて素敵です!」

(あ、そういえば今日の晩御飯何食べよう)

 

 

 

「先輩! 髪にゴミついてましたよ! 取っておきました!」

(まぁ私が付けたんですけど)

 

 

 

「あぁ、今日は私が掃除当番でしたのね。失念しておりまして大変申し訳ありません。」

(くっ! お排泄物ですわよ! 猫かぶりのせいでサボれませんわ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……誰だあれは?」

 

 

 

シンザンは目を疑った。いつの間に自身の目玉はガラス球になっていたんだと驚くほどに目の前の出来事が理解できない。

 

 

「アイツ……、だと思うんですけど……」

 

 

「いや確かに容姿からみてそうなんだろうけど、え? え? 明日世界滅亡するの? え?」

 

 

 

シンザン会長。非常に混乱しながら最後の晩餐は何にしようか考え始めた時、あなたの顔にうっすらと影がかかる。誰かが来たようだ。

 

 

 

「あ、あれは! ゲート保全財団!」

 

 

え、何それ……、こわ。 うむ、知っているのか風紀委員君。」

 

 

「はい! あれはアイツが発足させたゲート撲滅委員会に反する団体です! 委員会の方がゲートを破壊し、その存在をこの世から消し去る団体とすれば財団は全くの別! ゲートを保護し、保全し、のちの世につなげるための団体です! しかも委員会は一人なのに対して財団はなんと6人もいます! おそらく今日は全員で抗争を仕掛けに来たのやも!」

 

 

 

「えぇ……」

 

 

シンザン会長、理解できず。実は会長もゲートそこまで好きではないので撲滅はやり過ぎだけどなくてもいいかなぁ、と思っているので保全しようとする意味がまぁ解らない。それとは別として校則に『勝手に団体を発足させない』というものがあるので『後で生徒会として消す団体』の脳内メモにゲート保全財団の名前が追加された。もちろんあなたの委員会も記入済みである。

 

まぁ名前からして仲が悪いのだろう。財団の連中はメンチ切ってるし……、アイツは微笑みを浮かべている? 何故だ?

 

 

 

「まぁまぁまぁまぁ! 財団の皆様よくぞお集まりで! 今日は何かありましたっけ? あ、そうそういつか言おうと思っていたのですが、わたくしあなた方とは決して相容れることはないでしょうが、

その精神性には敬意を払ってますの!」

(ゲートは殺す、慈悲はない。今度お前らの血肉で耕したニンジン、美味しくいただいてやるよ! 学園中のゲート破壊したあとでなぁ!!)

 

 

 

 

「……いやほんと誰?」

 

 

「いつもなら口から火を噴きながらとびかかりそうなんですけどねぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(お、シンザン会長も見に来てるじゃん。これは後が楽しみですなぁ、二ヒヒ。)

 

 

 




後半のシンザン会長の部分は消すか消さないか迷った結果消しませんでした。まぁあり得た平行世界の一つみたいな感じで流していただければと。



あなた

かなりいろんな次元から毒電波を受信してそうなあなた。あなたの目標はトゥインクルシリーズで優秀な成績を収めるとかそうゆうことではなく、毎日を面白おかしく過ごすことである。真面目なんて言葉など似合わないし、似合わせたらいけないのだ。

あと後でどんな手を使っても勝たなければいけない相手として財団がリストアップされた。あなたの戦いはすべてのゲートを破壊しつくすまで終わらない。


トレーナー

今までのあなたと猫かぶってるあなたとの落差が激しすぎて脳が破壊された。なお、あなたの親御さんは理解しているので『こいつまた何かやらかすつもりだ』と察している。




未だ現実かどうか把握できないほどうれしすぎるのですが、ぴょー様に“あなた”のイラストを描いていただきました!

“あなた”の勝負服と“あなた”のインタビューの様子です。私はうれしすぎて脳が破壊されたのであなたも破壊されてください。



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