無個性でアーマー纏ってヒーローしてもいいですか? 作:サイリウム(夕宙リウム)
どうも。無個性ながらヒーローを目指している重威イスズと申します。どうか、よろしく。
さて、前回目指せアイアンマンという目標を立て、自身に溺愛中の母に上目づかいを行うことで専門書群を買いあさったわけだが……、今のところそこまでうまくいっていない。
前世の記憶、自身につながる記憶が一切ない、つまり前世で学んだ一般常識+オタク知識ぐらいしか役に立つ記憶がない以上、単に精神性だけが成熟している5歳のガキが急に専門書を読んだとしても、すぐにあのスーツを作ることができますか? と、問われればNoなわけで。
言語的な問題はないのだが、そういった知識が根本的に足りないためネットでいろいろと調べながらなんとか読み解いている次第である。なので別に文字の羅列を読んでいるだけであって、全部理解しているのではないからそこまではやし立てないで頂けるか、母様。
「うぅん! 読めてるだけですごいんですもの! だって私漢字どころかひらがなでさえ教えてないのよ! それなのにいつの間にか覚えてるし……、やっぱりうちの子は天才、神童だわ!」
……先ほどから、というか読み始めてからずっとこの感じだ。確かに前世の記憶のおかげでそういった言語的な問題は気にしなくてもいいのだが、前世という飛び切りのズルをしているみたいでなんだか褒められていると申し訳なくなってくる。せめて天狗にならないよう気を付けなければならない。
さて、興奮する母を置いておいて、この「ヒロアカ」世界における現在の科学技術を述べていこう。まず結論であるが、私の目指すアイアンマン、彼の作り上げたそのスーツをヒロアカ世界の現在における技術で作成できると聞かれれば、答えは部分的には可能、というものになる。
部分的に、というのは彼の作成したスーツの外装、装甲部分、およびジャーヴィスなどのAI、頭部装甲に映し出されるディスプレイなどの機能は現在進行している科学技術、もしくはこの数年のうちに試作品が完成できるかもしれないというレベルであり、おそらくそれを流用することで実現が可能である。これによりかなり甘めの試算であるが、私が雄英を受験する10年後までにはアイアンマン作中にあったマーク2のナンバリングをもつスーツの複製は今挙げた部分のみ私の手で可能であると考えられる。
そして、部分的に不可能な部分。それは動力源だ。まぁ作中でもオーバーテクノロジーの産物であったため致し方ないのかもしれないが、作中におけるアークリアクターに類似、もしくは代用できそうな動力源の存在、もしくはその源流といえるようなものが全く持って存在していない。
これはとってもマズい。この私が住む世界において科学技術の発展が人々の個性に基づくものであったせいか、動力源、内燃機関などの小型化の技術がマジでない。確かに強力な個性があれば、それを動力源にすることで補えるのだろうが……、マジで開発されてないし、研究すら発見できなかった。
おそらくだが人類の個性発現のせいで宇宙開発が遅れたのと同じようにこういった小型で、発電所並みの電力供給を可能とする機器の開発が後回しになった、もしくは必要なくなったのだろう。
個性黎明期において、異常存在である個性に対抗するため何かそういったものが開発されてもよいものであるのだが……、あったとしても今の社会によって闇に葬られたと考えた方がいいのかしれない。
……致し方ないが、あのアイアンスーツを再現するのにアークリアクター、もしくはそれに準ずる動力源の開発は急務。正直ヒーローになる、という目標がアイアンスーツを作り上げるになってきているがまぁいいだろう。あれカッコいいから自分で作りたい。
前世は技術畑の人間だったのか、それとも私の好みがそちら側なのかは解らないが、新しいものを作るとなると心が浮足立ってくる。学はないが、夢はある。なぁに時間は10年あるのだ。作中でトニーはテロ組織に捕まっていた中で、ろくな設備がないような洞窟でマーク1を作成したのだ。悠々と親の庇護下でのんびりしている私にできないはずないだろう。
よし、とりあえずは私の研究を手伝ってくれるトニーのジャーヴィス的存在を私も作ろう。優れたAIに成長させるためにはかなりの時間を要するし、早い方がいい。それに想定通り、作中のような能力を持ったAIが出来ればリアクターの研究もやりやすくなるだろう。
私はその筋の専門書から読み進めることにした。
「そういえば、いまのたぶれっとだけではきのうがたりないかもしれないな。ぱそこんをかってもらえないかきいてみるとしよう。こうせいのうなものがいいな。」
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【父、重威 工事の視点】
「ミスター・マシン、助けてくれてありがとう!」
「あぁ、いつでも呼んでくれよ! 気を付けて帰るように!」
都市部とは違い、住宅街。それもベットタウンとなるとやはりヴィラン関連の事件は少なくなってくるな、などと呑気なことを考えながら先ほど助けた男の子を見送る。
ほとんど日課に近いパトロールを行っていた時、高い木から降りられなくなっていた子供がいたので救助した。こういった小さい事件では私たちの給料は上がらないが、心は豊かになる。
「家族のため、娘のためを思って拠点を移したが案外こっちの方がいいのかもしれないな。」
同じ学校を卒業した妻とチームを組み、都市部で活躍していた私たちは子供が出来たことを区切りに今の地方、住宅街が多くある付近に自宅とヒーロー事務所を移した。
ヒーローとヒーローの結婚は探せば結構あることだが、その子供が人質になったり、そのヒーローに恨みを持つヴィランに狙われるというのは非常によく聞く。サイドキック時代の友人がその被害を受けてしまったということを聞いた私は、妻と娘を連れてこの街にやってきた。
私の個性を見込まれてか、都市部での犯罪でお声がかかることもあるが、基本はこの街のパトロールをする。自分の家族も住むこの街を守ることは、家族を直接守っているような安心感も得ることができるし、人の多い住宅街でパトロールに精を出すのは犯罪の抑制になり、評判もいい。
「それにしても、さっきの子はイスズぐらいの年齢だろうか?」
そんなことを口ずさみながら、胸のポケットにある家族写真を取り出す。
愛すべき妻と娘、それと私が映っている写真。
娘のイスズは、無個性と診断されてから非常に精力的に動き始めたと思う。あの時の衝撃、そして彼女の機転、その考えに至れるほどのこの社会に対する理解。とても5歳児とは思えない。なんだかそういった個性なのではないかと思ってしまうぐらいだ。
別に、それがどうかしたというわけではない。私としては変わらず彼女のすべてを愛し、応援するつもりであるし、妻も溺愛しすぎている気がするが同じだろう。
先日、無個性であることが判明し、彼女の機転と担当してくださった医師の御好意により「個性:思考強化」として届け出を出した後、私は彼女にあることを聞いてみた。イスズなら私たちよりも冷静に物事を考えているだろうと確信して。
「イスズ、今の君の夢は何だい? この前までは私たちみたいなヒーローになりたいと言っていたが、今はどう考えているのか、私たちに教えて欲しい。」
「……いぜん、ひーろーです。そうこえたかだかにせんげんできればよかったのですが、うまくいかないものですね。ですがあたらしいもくひょうはあります。あるていどかたちになるまでは……、まっていてほしいのですが、いいでしょうか?」
「……そっか。うんいいとも! 私たちはいつまでも待つよ。でもなにか手伝えることがあったらいつでも言って大丈夫だからね! ……あとそんなにかしこまった話し方しなくてもいいんだよ?」
「しょうぶんですので。」
まぁ、ちょっと硬いのは五歳で娘の甘える姿が見られなくなっていて残念だが彼女はすでに乗り越えている。新しい目標が出来ているようで何よりだ。
「うん、私も負けないように頑張らないとね!」
あとがき
主人公:重威イスズ
雄英入学試験まであと10年近く、それまでにアイアンスーツ:マーク2を作成するのが彼女の予定。まずはAIの知能の成熟に時間がかかるそっち関連から始める様子。でも一番の目標はスーツの根幹アークリアクター!
父:重威工事
ヒーロー名は安直にミスター・マシン。機械化の個性を持つ一児のお父さん。イメージはトランスフォーマーよりオプティマス。変形はしない。冷静に考えている風に見せかけてやっぱり娘を溺愛中。妻のあかりがイスズのために専門書や高性能のPCを買い与えているのを知り、イスズのためにもっとお金が必要だと感じ始める。都市部でのチームアップなどの仕事が増えた模様。