実力が足りなかったので、トレーナー辞めた 作:俺が!俺が悪いんだよ!
最初にここに戻ってきた理由は、トレーナーを辞めるためだった。
しかし秋川理事長やたづなさんの説得に負け、トレセン学園の雑務の仕事に就いた。
なぜこの時、俺はそれを引き受けたのだろう。
この学園に役立たずの俺の居場所なんてないだろうに。
理事長室から出る時、理事長が重々しく口を開けた。
「・・・報告。シンボリルドルフは、今は生徒会長になっている」
「へぇ・・・それはすごいことですね」
「彼女も君のことも心配していた!1度会ってあげてくれ!
「・・・理事長」
理事長の重たい扉を開ける。
「俺にその資格はありません」
その時の理事長の顔は、忘れられない。
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「・・・生徒会室前のポスト」
早合点した自分を恨む。
よくよく考えたら生徒会室前にポストなんてなかった。
素朴な封筒を見てみると、小さく文字が書かれてあった。
『会長さんに直接届けるように』
・・・なるほど。
どうやら俺は罠に嵌められたらしい。
彼女と出会う可能性はなるべく削除しておきたかった。
俺にそんな資格は無いのだから。
「直接じゃなくて生徒会室に置いておけばいいか?」
「もう少し暗くなってから行くか?急ぎの仕事ではないと言っていたし」
「なんの話だ?」
「うおっ!?」
突然後ろから声をかけられた。
驚いてズレた帽子を直しながら振り返る。
「驚いた・・・突然後ろに立たないでくれ」
「廊下の真ん中で棒立ちしているのが悪いだろう」
「ごもっとも」
そこに居たのは副会長、エアグルーヴ。
いつも険しい目付きで俺を見てくる。
「何かあったのか?」
「少し考え事を・・・あっ」
そうだ、彼女は生徒会副会長じゃないか。
「これから生徒会室か?」
「そうだが・・・」
「この手紙、会長に届けてくれないか?」
封筒を差し出すと、エアグルーヴは首を傾げた。
「手紙?自分で行かないのか?」
「少し仕事が立て込んでいてな、これから急ぐんだ」
嘘はついていない。
この時期は仕事が立て込む。
「そうか・・・わかった、責任をもって届けよう」
「本当か!助かる!」
エアグルーヴは封筒を受け取った。
良かった、これで俺が直接彼女に会うことは無さそうだ。
「誰からの手紙だ?・・・この文字は?」
『会長さんに直接届けるように』
エアグルーヴは封筒を観察して、文字を見つけてしまったようだ。
少し雲行きが怪しくなってきた。
「そ、それは・・・」
こちらが口ごもっていると、エアグルーヴは大きくため息をついた。
「なるほど。大方、誰かから手紙を運ぶように頼まれたのだろうな」
大体の事情を当てられてしまった。
「なぜ直接会長の元に行かないんだ?元々貴様は会長担当の」
「トレーナーだった」
エアグルーヴの話をさえぎる。
「足を引っ張るだけのトレーナーだったんだ」
「・・・何?」
「7冠しか、あげれなかった。俺が不甲斐ないばっかりに」
「7冠・・・しか?」
エアグルーヴは信じられないと言った顔をしている。
「ルドルフは世界一のウマ娘、無敗で10冠も夢じゃなかっただろうさ」
「俺がトレーナーじゃなければな」
偶然、俺と彼女の考え方が似ていたからスカウトに成功した。それだけだった。
俺のような二流三流のトレーナーがついたばっかりに・・・
「待て!どこへ行く!まだ話は終わってない!」
ふらりと歩き出そうとした時、袖を掴まれた。
「手紙は頼んだ。直接渡してくれ」
「だからそれは貴様がやらないと意味が無いだろう!」
袖が破けそうなほど強く握られている。
何故こんなにも引き止める?俺が渡して、それで何が変わるんだ?
「俺が、ルドルフと、会っていいはずがないだろ!!!」
合わせる顔がない。会っていいはずがない。
ルドルフは決して俺を責めることはないだろう。
7冠を取れたことに感謝するだろう。
そしてあの笑顔を見せるんだ。
だから俺はその笑顔を受け取ってはならない。
受け取る資格はない。
俺という人間がその感謝を受け取ってはいけない。
「貴様・・・は・・・」
いつの間にかエアグルーヴは俺の袖から手を離していた。
チラリと見てみると、下を向いて、震えているように見える。
「今まで、会長がどんな顔をしていたか、知らないのか!!!!」
「突然居なくなって、戻ってきたと思ったらトレーナーも無断で辞めた!そんな貴様に対して!!」
「会長が、何を思っているか!!!」
「わからないのか!!!」
わかるとも。
だから離れるんだ。
ルドルフにそんな顔をさせたなら、尚更俺は離れないといけない。
「このっ・・・たわけがっ!」
ふと周りを見ると、騒ぎすぎたからか野次ウマの生徒が何人か集まって来ている。
今は放課後で人数も少ないから、ここでの会話が広がることはないだろうが、やや不安になってきた。
「・・・手紙、頼んだぞ」
返事も待たず、移動する。
手紙を直接届ける。そんな簡単な仕事も失敗した。
それもルドルフに会うことになるからという子供のような理由で放棄した。
人間としても、俺は最低だったらしい。
合わせる顔がない、彼女に申し訳ない、
なんだかんだ言いながら、それは多分ただ言い訳しているだけだ。
ルドルフに拒絶されるのが怖くて、逃げているだけだ。
そんな自分が許せなかった。
ルドルフを敗北させる
↓ ↓
自分の能力がないからだと気づく
↓ ↓
自分が悪いというマイナス思考に陥る
ライスシャワーより酷いマイナス思考。