ロワコンペ   作:川尻浩作

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とりあえず今日書き終えた分まで投稿しました。後でまた更新しますので気長にお待ち下さい。


悪の華

一人は泥を見た。

ロクデナシの父親からの虐待に泥を啜りながら生きてきた男。

その環境は彼が生まれ持ったドス黒い悪性を促進させる一因となった。

結果、彼はその悪性を遺憾なく発揮し、遂には人間という壁すらも越えてのけた。

吸血鬼として生まれ変わった男の望みは変わらず、頂点への渇望、それがもたらす絶対なる安息。

しかし、男の末路はその因縁がもたらす破滅であった。

その姿はまさしく囚人。

長きに渡って消えぬ因縁、男の引いたその血の定めに囚われ、遂には男を死へと追いやったのだ。

 

一人は星を見た。

女はとある破綻者の模倣品であった。

模倣故に、彼の者が抱えし破綻は女の中にも残り続けていた。

まともな人間の抱く感動には無縁であり、他人の苦痛に愉悦を覚える悪性が。

彼の者は罪を犯した。

その破綻を、悪性を形作った大罪を。

彼の者が犯した罪は逃避。未知なる領域より生ずる恐怖への拒絶。

それが彼の者が初めに犯した悪行であった。

それらを受け継いだ女は。

数多の出会いを経て、傍観者へと道を定めた。

彼女もまた囚人。

恐怖より生まれし目に見えぬ鎖。破綻した彼女は永遠に縛られ続けるのだろう。

 

男がかの殺し合いに招かれたのは野望の果てし今際の瞬間だった。自らの身体が崩壊して行くのを知覚しながら。そんな筈がない、と否定しながら。

運命という檻から男は地にぶちまけられた己の血に、泥を幻視した。

 

女がかの殺し合いに招かれたのは何気ない一時のことだった。まるで都市を表したかのような煌めく星空。静かに紅茶を嗜むひとときに。

鎖に囚われた女は空を見上げ、眩く輝く星を見ていた。

 

二人の囚人が鉄格子の窓から外を覗いていた。

一人は泥を見た。

一人は星を見た。

 

◆◆◆

 

暗がりに包まれた刑務所。

その牢獄の一室にて一人の男が目を覚ました。

 

黄金色の頭髪に透き通るような白い肌。

その耳たぶには黒子が3つ。

彼の眼差しは心の奥深くを揺さぶるように氷ついている。

男とは到底思えぬ妖しい色気を纏ったその男は今静かに殺戮を催すその一歩を踏み出した。

 

◆◆◆

 

黒で覆われた衣服に、頭髪に、所々金色が混ざった出で立ちをした女。

この異常なる殺し合いを目の当たりにして尚、その佇まいからは動揺が微塵も伺えない。

女が目覚めたのは食堂であった。

とりあえず女はあたりの探索を始めることにした。

 

--此処にも紅茶が或れば善いのだがな。

 

ぽつり、と呟いた言葉は開けた食堂の空間に横たわる静寂へと溶けていった。

 

◆◆◆

 

 

こつ、こつ、こつ、と静寂に包まれた刑務所に足音が響き渡る。

獲物を求める男の鳴らす足音は一定に、そしてゆったりと、余裕を感じさせられる足取りである。

 

確かに男の野望は破れた。

しかしながら、男は未だに自らに対する絶対的な自信を削がれていない。

それどころかさらにその自信は高まっている。

男が破れた理由は単純明快。

その驕り故のことだ。

もしも男が始めから全力で相手をねじ伏せてしまえばどうということはなかっただろう。

事実、始めの男と相手には天と地ほどの差があった。

その精神が放つ拳も、速度も、能力も。

その全てを男が上を行っていた。

ならば今度こそ。

男の全ての力を以て。

成長する間もなく。

 

「このDIOが今度こそ、あの忌々しいジョースターの血統を完全に絶やしてやるぞッ!!!」

高らかに自らの勝利宣言を上げる男--DIOは無様にも地を這う宿敵の姿を想像し、その愉快さに思わず失笑した。

 

 

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