異世界転生者殺し 改良版   作:青色のラピス

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第二話

黒い青年が廊下を歩む。

黒いと表現した通り青年は髪も瞳も着ている服も全て黒色で統一されている。

しかし、陰気だとか暗いというマイナスのイメージを抱かせることはなく、整った容姿と彼自身から感じ取ることのできる覇気からむしろプラスのイメージを引き出すことになっている。

 

彼が歩む廊下の壁に人工的な明かりはなく、窓から差し込む星の光が彼を照らす。

やがて一つの大部屋の前につき、扉を開ける。

部屋の中には大きな円卓と椅子が10脚配置されていた。

 

椅子はどれも素晴らしい装飾が施されており、施された装飾は一つ一つ異なっている。

配置された椅子には誰も座っておらず、それは他のメンバーがまだ来ていないということの証明だった。

 

青年は決められた席に座り、仲間たちが来るのを待つことにした。

数分後、ドアが開き、新しく誰かが入って来る。

 

『おや、今回こそは私が一番かと思いましたが……。やはりあなたに先を越されてしまいましたね。』

 

部屋に入ってきたのは一人の魔法使いだった。

2メートルほどの長身と手には魔杖を持っていた。

全身を覆うほどのローブをまとい、顔には仮面を被っている。さらには手袋をつけており素肌の一切をさらしていない。

声も発することなくテレパシーで意思疎通するため男か女か判別することすらできない。

 

「ああ、今回も俺が一番乗りだ。これでもギルマスだからな。」

 

『別に私たちの前ではそんなに肩肘張る必要はないんですが……。』

 

「そうだぜ、そいつ何回言っても聞きやしねえからな。」

 

二人が声をした方を振り向くとそこには新しくやってきたメンバーが立っていた。

ジャージを着て、スニーカーを履いている。

この世界では珍しいなんてものではない服装をしていた。

年齢も十代後半ほどで青年と呼べる風貌をしている。

 

『確かにそうですが……。それでも言い続けなくていい理由ではないでしょう。』

 

「おいおい、お前たちは俺を一体何だと思っているんだよ……。」

 

彼らがそれぞれ決められた席に座り、全員がそろうまで雑談を続けていた。

 

 △▼△

 

最初に青年が着いてから三十分ほど経ってから全員が揃った。

 

「よし…、全員揃ったな。『神の反逆者』最高幹部『ベストナイン』の皆、この会議に参加してくれることに感謝する。」

 

そう彼らは転生者を中心として構成されたギルド、世にも名高き『神の反逆者』である。

それにこの会議に参加しているのは最高幹部たる『ベストナイン』と呼ばれる九名の構成員、そしてギルドのトップであるギルドマスターのみなのだ。

メンバーは以下の通り

 

《金獅子》アルバート・ゲイル

『神の反逆者』のギルドマスターであり、世界最強の呼び声も高い戦士の一人である。

 

そして最高幹部たる『ベストナイン』は――

 

《聖女》ディアナ・イングラム

女神教の敬虔な信徒であり、神官。

神官というだけあって回復魔法や支援魔法、神聖魔法を得意としている。

そしてそのレベルは《聖女》の二つ名に違わず圧巻の一言に尽きる。

 

《錬金王》張春秋

東の王朝の貴族、それも錬金術の名門の出身である。

元々は理系の大学生で白衣を愛用していたため、こちらの世界でも再現したものを着ている。

錬金王の名は伊達ではなく、数多の魔道具やポーションを開発し、このギルドを支えている。

 

《鋼の元帥》杉浦信次郎

東の王朝よりも東にある東海連合の出身。

彼単体の戦力は低いが、神髄はそこではない。

異名の通り彼は軍団を率いたとき、その力を十全に発揮することになる。

 

《腐界の主》シュバルツ・ブラック

アルバート・ゲイツの次にこの部屋に入ってきた人物であり、普段は己が作り上げたダンジョンで研究に没頭している。

そのため世間への露出が少なく、詳しい情報を知る人は少ない。

 

《冒険者》シャーロット

『ベストナイン』唯一の現地人である。

とある国のスラムで育ち、世界一の金持ちになるという野望を持つ少女である。

 

《逆襲者》シーザー

いかなる逆境でも諦めず、敵を打ち破ってきた男であり、その戦いぶりから《逆襲者》と呼ばれるようになった男。

暗緑色の軍服をまとい、右目には眼帯をしており、僅か二十代でありながら歴戦の将と思わせる雰囲気を醸し出している。

 

《究道者》ロイ・クロスロード

世界最高と謳われるカルバラ魔導学園屈指の天才。

多くの魔法を習得し、わずか十三歳の頃に《賢者》の称号を与えられている。

魔法以外の分野にも精通しており、正真正銘の天才。

 

《デリバラー》西条裕也

ジャージを着てスニーカーを履く彼は転生者ではない。

かといってシャーロットのように現地人というわけでもない。

偶々この世界にやって来た異世界人である。

体は鍛えられており、空手やボクシングの経験者であるがこの世界では役に立たず、後方支援に徹している。

 

《名無し》のロロ

他のメンバーが『神の反逆者』設立前から一緒に行動していたのに対し彼だけは『神の反逆者』設立後から行動を共にしている。

謎そのものと言っても過言ではない人物である。

 

―――の九人となる。

 

全員を見渡し、彼が再び言葉を紡ぐ。

そして、世界の行く末を決める会議が始まった。

 

 ▼△▼

 

「で? 一体何が起こったっていうの?」

 

《冒険者》シャーロットが苛立ちを隠さずに質問を投げかける。

 

「おいおい、どうしてそんなに苛立っているんだよ…。」

 

「何故苛立っているのか?ですって?! 決まっているわ! せっかくダンジョンを見つけていざ攻略しようとすれば直ぐに招集をかけられたのよ!!」

 

「「「…………。」」」

 

そこにいる全員が呆れた顔をする。

いつものこととはいえ呆れてしまうのだろう。

 

『……彼女のことは置いときましょう。それで? 何があったのですか?』

 

「ああ、行方不明だった三人が見つかった。……村を襲っていたらしい。」

 

そこにいるアルバートとロロを除くメンバー達が絶句する。

確かに彼らは英雄と称えらえるだけあってどこか一般人と異なる価値観を持っている。

しかし、外道というわけではない。わきまえるところはきちんとわきまえるのだ。

 

「見つかった三人の名前は――

 

「《蒼炎》のヴァイス、《蟲使い》のバルギス・テミスそれに《黄金剣》の李政だ。……村は酷いありさまだった。おそらく全滅だろう。」

 

ロロがアルバートの言葉を引き継ぐ。

動揺する他のメンバーを無視して言葉を続ける。

 

「後、近くに女神の関係者らしい女がいたな。…確か魔女って名乗っていたな。後村人らしき男が一人だな。」

 

「女神の、だと?」

 

ロロが静かに頷き、周りの動揺がさらに広がる。

 

「……なるほど。やっと動き出したというわけですね。」

 

「ああ、おそらくはな……。では、改めて聞こう。『神の反逆者』の目的は何だ?」

 

「決まっています。この世界における全ての元凶――真の女神の討伐。それ以外にありますか?」

 

《聖女》ディアナ・イングラムが立ち上がり、はっきりと宣言する。

他のメンバーもそれ以外ないという顔つきでいる。

 

「ねえな。……しっかし解せねえな。なんでヴァイスの奴が裏切ったんだ? あいつはそんな奴じゃなかったはずだぞ。」

 

「確かにね……。ヴァイスは確かあなた達と同じ転生者だっけ? それにロイとは同郷だったでしょ。」

 

「そうですね……。同じカルバラ魔導学園で学びました。彼の炎魔法は本当に見事でしたよ。それに女神についてですが私たちと同じだったと思うのですが……。」

 

『あの腐れ女神のことです。どうせ洗脳でも使ったのでしょう。』

 

「洗脳って…。いくら何でも……。」

 

「いや、あのド腐れならやりかねないな。それにアレは女神だ。思考回路なんて俺達人間とは一から十まで違うさ。」

 

「腐れ女神のことは置いときましょう。それでこれからどうするのですか? 私達を呼んだのです。何か対策でも立てていくべきでしょう。」

 

「ああ、今のところは魔女と名乗る女神の関係者の調査だ。彼女達の監視はロロがしてくれているからな。……事を構えるにはまだ準備不足と言わざるを得ない。今までの仕事に加えてになるが頑張ってくれ。」

 

『了解ですよ。監視はロロがしているのですか。なら大丈夫ですね。しかし、そうなると我々の手出しは却って邪魔になってしまいますね……。』

 

「そう落ち込むなよ。今回は俺が適任なだけだ。」

 

『……そうですね。では任せたことに全力を尽くすとしましょう。ところでヴァイス達はどうするのですか?』

 

「一応、場所は把握しているが…。拘束するか?」

 

「いや、魔女とやらの実力が知りたい。だから彼らには生贄になってもらう。」

 

アルバートを除くメンバーが全員驚愕する。

実態が不明とはいえ罪を犯した仲間を売ると堂々と宣言したのだ。

仲間思いで甘ちゃんと定評のあるアルバートが、だ。

 

「……いや、反対ってわけじゃねえけど…。なあアル、お前無理してないか?」

 

「そうよ。いつものアンタらしくない。何かあるなら言いなさいな。」

 

西条裕也とシャーロットが心配そうな声色でアルバートへ言葉を投げかける。

しかし、アルバートは問題ないと言わんばかりの表情を崩さずに大丈夫だとしか言わなかった。

その後もつつがなく会議は進み、終わった。

 

 

――歴史が再び動き始めようとしてる。

朽ちたと思われた歯車が再び動き出したのだ。

その果てがどうなるのかは誰にも分からない。

回した歯車を含む機械を誰も知らないからだ。

どう動くのか、どこまで動くのかを、誰も知らないからだ。

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