大日本帝国悪鬼討伐部隊 騎馬隊 戦闘記録   作:黒煙草

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大日本帝国悪鬼討伐部隊 騎馬隊隊員【鬼脚】ナリタタイシンの戦闘記録

別に何か優れてるわけじゃない

 

《N!右方向から来ます!》

 

末脚を褒められただけで、体が弱いことに変わりはない

 

《N、一旦下がって!》

 

いつ死んでもいいって言われたら

 

《N……ナリタタイシン!!聞いてますか!》

 

今を選ぶかな

 

《N────》

 

「うるさい、今逝くから」

 

 

悪鬼の殲滅は騎馬隊達にとって日常だ

 

走って競い合う?

学園で授業受ける?

皆で仲良くお弁当食べる?

放課後残って自主練する?

 

そんなことは一切ない

 

「他に敵は?」

 

駆逐することだけが、日常だ

 

《N!補助駆動輪及び武器の摩耗が激しいです!可動域限界を超えています!!下がって!!》

 

「そう、それで?悪鬼は?」

 

《居ませんから!下がってください!!》

 

私は勝負服で耳を澄まし、瓦礫になった建物の先からかすかに聞こえた物音を拾う

 

「嘘つき、いるじゃん」

 

《……っ!居ませんから!》

 

「居るのに無視して下がったら、あんたが始末書書くのよ?」

 

《構いません!あなたの命を優先します!!》

 

どれだけ言っても、オペレーターは言葉を選び、下げらせるだろう

 

馬鹿なヤツだ、このままだと私の寝起きが悪くなるというのに

 

「やだね」

 

誰もいないのに、目の前にオペレーターがいると思いこんでベッと舌を出す

 

《N────》

 

無線を切り、辺りを見渡す

 

居る、デカいのが、2、3匹──……

 

「私を殺してくれよ、醜悪」

 

私は目を青白く輝かせた

 

「私を殺してくれよ、【ネメシス】」

 

 

 

 

ウマ娘に宿るソウルに、”固有技”が存在する

 

【総大将】スペシャルウィークは余程の敵でないとそれを発動せず、隊員クラスになると常に発動する

 

私はさっきからずっと、発動していた

 

[rb:固有技 > ネメシス]]が発動し、効果が切れるとまた発動

 

メリットは末脚の強化

デメリットはそれに伴う疲労、疲弊、ソウルの摩耗

 

使い続ければ、ヒトになる

 

今ヒトに成れたら、悪鬼に潰され、死ぬだろう

 

でもそれが願いだから、ずっとずっと、使う

 

「ぁあ”!これで終わりぃ!?」

 

口が汚くなるのは効果の副作用か

それとも、元の性格か

 

 

笑みが自然と溢れる

 

今、目の前に複数敵対してるのはBクラスの図体のでかい悪鬼

 

並大抵の隊員クラスでは重傷程度だが、私は違う

 

「アンタらとは違うことをっ!知らしめてやるっ!!」

 

『ヴァォォォォオオオオ!!』

 

【ネメシス】による末脚強化からの、先端が反った鎖付きの短刀による一突き

しかしそれは、悪鬼の爪が火花を散らせ、武器の短刀を止めた

 

「ぐ、ぅ!」

 

ヒトを無残な死に仕立て上げる爪を、えぐり、私は丸太のような腕、肩と刻み抜ける

 

「どうっ、だ、ぁっ!」

 

しかし、2匹以上いるのだから

 

別の悪鬼から、目の前に振り抜かれる巨岩のような拳が、腹に打ち込まれた

 

「ゲェっ、はっ、ぁっ……!」

 

振り抜かれた拳をモロに受け、吹っ飛ばされた

 

ぶつかったのは瓦礫で、私はクッションにして衝撃を和らげる

 

 

 

 

痛い、でも四肢は動く

 

痛いのは、生きてる証拠

 

息ができるのは、動ける証拠

 

動けるのは、殺せる証拠

 

「あ”あ”あ”あ”!!!」

 

 

 

追撃の拳を飛躍して避けると、ナリタタイシンは悪鬼のうなじに先端の反り返った短刀を投擲、刺さる

 

柔らかい部位故か、深深と刺さったのを見て鎖を引く

悪鬼がよろけると同時に、空中にいたナリタタイシンはよろけた悪鬼に接近した

 

「武器は、2本持っとけとか……余計なお節介だっての!」

 

それはウィニングチケットの言葉だったろうか

それはビワハヤヒデの言葉だったろうか

 

 

首根元を、腰に備えていたもう一本の鋭利な刀で一閃し、悪鬼を切断した

 

「ハァー……ハァー……あと、にた……ぇ?」

 

膝を着いて息を整えながらも振り返ると、Bクラスの悪鬼が4、7、10と増えていく

 

「は、ははっ! アハハハハッ!!」

 

なんて日だ

 

こんな素敵な日に巡り会えるのなら

 

「もっと!早く!!」

 

強制起動停止寸前の『補助駆動輪』のパワーを120%引き上げる

 

元々貧弱な身体付きを補助するためのものだったが、120%というキャパオーバーと【ネメシス】による身体強化で

 

私は────

 

────音を超える

 

 

『ヴル?』

 

「遅い」

 

厚い胸板にあえて突っ込み、私一人分が通れる穴を作る

 

ドバァン!

 

その音で一体屠る頃には2体目、3体目と殺していった

 

「だって遅いから」

 

駆動輪がスパークする頃には、5体

 

「だって鈍いから」

 

【ネメシス】の発動限界を超え、鼻血を流す頃には7体

 

「だって脆いから」

 

体が動かなくなる頃には────

 

 

 

 

ナリタタイシンの眼前に広がるBクラスの悪鬼の群れ

 

総数、1000以上

 

ナリタタイシンは殺しすぎた

今回の悪鬼は仲間思いであり、個体一つ一つが死ねば、ワラワラと、どこからが現れる体質を持っていた

 

「……」

 

目から血が

鼻から脳髄液が

手は疲労による骨折

脚は動かない

 

倒れ込んでいるナリタタイシンは、息ができていた

 

「……」

 

まだ殺せる

 

出来なければここで死ぬだけ

 

「……ゲヴッ」

 

口から血が出る

内蔵をやられたのだろう、ウマソウルによる傷の治癒が働いてる感覚はあるが、治りが遅い

 

「……ヒト、か」

 

ウマソウルの摩耗、消滅はヒトへと変貌する

 

この場で成ってしまえば、待つのは”死”のみ

 

『1人で突っ込むなよ!』

 

馬鹿みたいに叫ぶウィニングチケットの声を思い出す

 

『タイシン、お前はいつも独りじゃないからな?』

 

心配する姉御肌のビワハヤヒデの声を思い出す

 

こんな時に限って、馬鹿みたいに3人組で悪鬼の討伐任務に受けていたことが懐かしくも、悲しく感じてきた

 

「……バ、カッ……みたい……」

 

声に反応して、悪鬼が拳を振り下ろし────

 

 

 

 

「タァァアイ、シィィイィィインン!!!」

 

悪鬼の拳が、ウィニングチケットの拳とぶつかった

 

「……?」

 

「死んじゃダメだ!!タイシン!!!」

 

「ガブッ……な、んで……」

 

足音がひとつ、増える

 

「応援に来た、無線を切ってくれたおかげで探すのに手間が掛かったがな」

 

ドン!と対物ライフルの音が響くと、ウィニングチケットと拳を合わせていた悪鬼の顔が吹き飛ぶ

 

「なんでって言うなら答える!!あたし達3人揃ってBNWだから!!」

 

「そういうことだ、タイシン。私とチケット、タイシンが揃わないと──……この最強のトライアングルは成立しないのだ」

 

バカみたいな話だけど、チームBNWで動き、悪鬼殲滅の任務は……多少ランクの高い悪鬼相手でも簡単にこなせていたのだ

 

 

だけど、大半はタイシンのトドメにより……Nが居てこそBWが映えるという評価がナリタタイシンを歪ませた

 

BWが居てこそ最強のトライアングルなのに

 

評価が、タイシンを堕としたのだ

 

『待ってよタイシン!!それはっ……!』

 

ナリタタイシンは、別れ際のウィニングチケットの声を思い出した

 

ウィニングチケットは、次の悪鬼を殴り殺しながら叫ぶ

 

「あの時の続き言わせて!!それはっ!!タイシンのっ!!自惚れだァーっ!!」

 

地面とキスするタイシンは、目を見開く

 

『自惚れ』────?

 

「ち、が……」

 

倒れてるタイシンの頭から、即効性のある”治癒再生液体”がかけられた

 

「わ、ぷ」

 

「チケット、10秒だ」

 

「分かった!!」

 

「タイシン、違わないな。お前さんのうぬぼれに変わりない」

 

「なん、で……」

 

傷が癒えてくると、タイシンは立ち上がる

 

「とどめを刺してきたと思っていたか?」

 

「……」

 

「だがその全てが、私とチケットが殺しきった後だとしたら、どうする?」

 

「そんな、わけ……」

 

「手柄をぶんどった事になるな」

 

「違……そんなつもりは」

 

ビワハヤヒデはナリタタイシンの頭を撫でる

 

「私はそんなことで恨んだり羨んだりしないさ。私がタイシンとチケットと組んでた理由は複数あるが、ひとつだけ確信を持てることがある」

 

「何、それ」

 

「ハヤヒデ!もう過ぎてるよ!!」

 

「チケット!【winning】!!」

 

「っ!あれやるんだね!」

 

「ぶっつけ本番だ!!」

 

「な、何?」

 

ウィニングチケットが持つ脚で、一体の悪鬼をジャンプ台にして踏み潰し、一本道へと誘う

 

ビワハヤヒデとナリタタイシンもウィニングチケットに続き、一本道の先へと進む

 

程なくして距離が開けると、ビワハヤヒデは対物ライフルのアンカーをセットする

 

「タイシン、【Νέμεσις】を」

 

「なんで私より、発音いいのよ────【ネメシス】」

 

タイシンの体力が回復したとしても、ウマソウルの磨耗が回復する訳でもない

 

故に使える回数は残り1回か

 

 

ビワハヤヒデは手で片目を覆い隠す

 

「【win Q.E.D】────視えたぞ、2人とも構えろ」

 

ビワハヤヒデの【win QED】で1000もの悪鬼の殲滅を導き出し

ナリタタイシンの【Νέμεσις】を

ウィニングチケットの破壊行動不能技【winning】に被せる

 

「タイミングは!!」

 

「あと2秒!!」

 

「1!」

 

「「「行けぇぇえええ!!」」」

 

 

3人の叫びがウィニングチケットの拳から出される固有技と共に、ドンッ!!と音と地鳴りを響かせた

 

 

 

 

 

 

 

衝撃波が3人に来る頃には、そこは跡形もなく消滅していた

 

「ハー……!ハー……!」

 

「凄いぞ!やはり私に間違いはなかった!」

 

「固有技を重ねるって……出来たの……」

 

「タイシンの【ねめしす】とハヤヒデの【うぃんきゅーいーでー】の賜物だね!」

 

「発音悪いしうるさい!」

 

「えへへー!」

 

「褒めてないから、バカ」

 

「この合体技名を【Wienners】と名付けようと思う」

 

「良いんじゃない?」

「最高だよ!!」

 

 

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