「……静かなんは、嫌いや」
騎馬隊には部署があり、【総大将】率いる大多数のウマ娘は何もつかない”騎馬隊”に所属する
「ギャーギャー騒いで、バカすんのが好きやってん」
しかし、秀でた能力をさらに特化したウマ娘は特別な部隊へと配属されることが多々ある
【白雷】の称を持つタマモクロスも、その1人だ
「……ほんま、静かやな」
飴を咥えたタマモクロスは、蒼の勝負服を悪鬼の返り血に染め、ボヤく
最初は土が盛り上がった程度だった
次第に山となり
最後は塔になった悪鬼の残骸
その上に、タマモクロスは座り込んでいた
「タマちゃ〜ん」
夕日が沈みかけた頃に、同じ蒼の勝負服のスーパークリークが塔の下から声を出した
「なんやー?」
「帰らないのぉ?」
「もーちぃと、ボンヤリさせてくれへんかぁ」
「夜は危険だから────……」
トッ、とタマモクロスの背後に飛び降りたスーパークリーク
胡座をかいたままのタマモクロスの脇に手を入れ、持ち上げる
「────帰りましょ?」
「んー……せやな」
【魔王】スーパークリークはタマモクロスを抱えて『寮』と呼ばれる避難地帯を目指したのだった
が、帰りの道中に問題が起きた
スーパークリークの様子が変化した
「タマちゃん、今日も可愛いでちゅね〜」
「何言うてんねんアホンダラ!離しいや!」
スーパークリークは、辺りが真っ暗になり、満月の光だけがタマモクロスを認識できる世界で、タマモクロスを赤ちゃんに擬似させ、プレイを始めた
普段見せることの有る蕩けた目をしたスーパークリークに、タマモクロスの悪寒は加速する
「なんやおどれ!なんかに寄生されたんか!?」
「こーら、赤ちゃんがそんなこと言ってはいけませんよ!」
「誰が赤ん坊かいな!……チッ、相変らすの怪力やなぁ!」
スーパークリークによって地面に倒されたタマモクロス
両手首を片手で掴み、もう片方の手で器用に服を脱がしていく
これ以上はまずいと判断したタマモクロスは、苦虫を噛み潰した顔をしながら苦渋の選択をする
「悪う思うなや!」
タマモクロスは空いた両脚でスーパークリークの腹を蹴っ飛ばした
「っ、あらあら」
スーパークリークは宙で反転しながら体勢を整え、廃墟のビルの壁に着地する
「おいたする子は────」
「おい、おいおい!マジかいな!」
「お仕置ですよ♪」
ドンッッ!
音が響き、ビルが崩れ、タマモクロスはスーパークリークに再度首を掴まれ、倒れる
「カッ、ハッ!」
「なぜこの”子”は、言うことを聞かないのでしょうか?」
スーパークリークは記憶障害も起こし始めていた
目の前にいるタマモクロスをただの子と認識しておる
「自我戻ったら、こんこと忘れてないやろなぁ?!」
「よしよし、いい子でちゅね〜……あ、そうだ!」
バッグから取り出したものに、タマモクロスは顔を青ざめる
取り出したるは、紙おむつ
「な、はぁ!?クソっ、ええ加減にせぇよ!!」
藻掻くも、スピード特化のタマモクロスとパワー特化のスーパークリークでは力量の差は歴然だ
《こちら、本部です!タマモクロスさん!何かありましたか!!》
藻掻いている途中、ウマ耳に着けていた無線機『ウマホ』が起動したのだろう本部が通信を始めた
「……何でしょう、これは?」
スーパークリークは音の鳴る方に目を向けた瞬間、タマモクロスは拘束から脱し、ウマホからの声を拾いながら後退する
「タマモクロスや!スーパークリークの様子がおかしいねん!」
《どう言った具合ですか!?》
「”でちゅね遊び”やりよるわ!何かに寄生されとる可能性が────」
《……いつも通りでは?》
「巫山戯とる場合ちゃうで!!会話記録ログ見ぃや!記憶障害も起き始めとる!!!」
《確認しま────……っ!スーパークリークさんが寄生されています!!》
「ほれ言うたやろ!!」
「逃がしませんよ♪」
目の前に来たスーパークリークの掴まえる手が、タマモクロスに迫るも、流石スピード特化と言うべきか、ヒラリと避ける
「はよ寄生部位言いや!」
《寄生虫型悪鬼はランクCで……胸の谷間に……クソッ!》
「うちも悔しいわ!!あんなでかい乳に挟まれおって!!」
タマモクロスは暗闇の中、目を凝らしスーパークリークの胸元を凝視する
そこには先端だけチロチロと黒い先端の異物が谷間に挟まっていた
「ブチ切れそうやわ!」
《私もですよ!》
「おどれはうちよりあるやろがい!」
《あ…………》
「黙んなや!っ、あぶなっ!」
スーパークリークから瓦礫を投げつけられたタマモクロスは、体を反らすことで避ける
「ねぇ、あなたは何故私に背くの?」
それは子が親から離れていき、寂しそうな目をする、そんな目付き
「……親は子から卒業するもんやで」
だがこの[[rb:親 > スーパークリーク]]は子離れすることを受け入れない
「嘘よ、嘘……嘘嘘嘘嘘、嘘っ!!親あっての子が!私の信念!」
「アホ言うなや!それは信念ちゃう!!それは────」
スーパークリークは再度瓦礫を投擲する
タマモクロスは目を白く光らせ、足首までを白い雷で纏い、素早く横へ移動する
が、投擲した瓦礫はタマモクロスの視覚を妨害する遮蔽物だった
瓦礫を投げたあとのスーパークリークを視認できなかったタマモクロスは、移動した先にいたスーパークリークの掴む手を免れなかった
「瓦礫は、そのためかいな……ぅっ、ぐっ!なんで……先読みされっ……オゴッ!」
胸ぐらを捕まれ、スーパークリークの膝による腹への打撃に意識を飛かける
「おいたするから!罰を与えなきゃいけないんですよ!?分かりますか!?」
「分から、へんなぁ……くっ!」
2度目の膝蹴りは空いた両手で防ぐ
「なぜ分からないのです!悪い子は痛みを与えて────」
「ならあんたも、スーパークリークも悪い子やなぁッ!!」
放電────白い雷がタマモクロスから放たれる
「つうっ!」
「……なんや?いつものクリークならただの静電気言うて、笑うで」
「…………あは、はは!アハハハ!!そうか、そうですか!!」
「オペちゃん!スーパークリークの侵攻度は?」
《大脳の50%は既に支配下に置かれています。小脳は完了しており、脳幹は5%です》
つまり脳のほとんどが寄生虫に侵され、今のスーパークリークは寄生虫の性格が上書きされていると言っても過言ではない
「何秒で終わるかいな」
《……1分、です》
「60秒、1秒120フレームで動いたら7200フレームや」
スーパークリークは首をゴキゴキと動かし、舌舐めずりする
「……チビ、貴様の脳はイカれてるのか?」
言語能力は寄生虫に侵されているようだが、そんなことお構い無しに白い放電を圧縮させるタマモクロス
「うちは……それくらい動けるっちゅうことやっ!!」
タマモクロスには癖があり、敵なら武器を取り出し、味方には武器を向けない
『寮』で行われる訓練でも自身の得物は使わず、徒手空拳のみで相手をしてきた
今、その得物を────振動するギザギザの刀を抜いた
「放電が足元に……むっ?」
腕を組む寄生スーパークリークは足を上げ、靴底で姿勢を低くして突進してきたタマモクロスの刀を止める
「相っ、変わらず!かったいのぉ!!」
「今のが120フレームか?笑えるな」
「何言うてんねんアホ、今のは60フレームや」
1秒の間に、通常のヒトが視認できるのは30フレーム
ウマ娘ですら60フレームで、限界は240フレームだ
限界の半分、120フレームをたたき出すには今のタマモクロスでは不可能だった
「遅い」
切り上げた刀を瞬時に避けられたタマモクロスの喉に、蹴りを食らわせた寄生スーパークリーク
「ゴッ、バッ!」
「やはり先の放電で120をたたき出せるのか?それとも何か…………補助装置か?」
寄生スーパークリークの頭がゴリゴリと動き出し、導き出された答えにタマモクロスは嗤う
「それは、スーパークリークでも知らへん事やで」
「では今、知れるか?それとも死に乞うた時に知れるか?」
「おどれの死に際に知れることや!!」
《残り30秒!!》
「【白雷】の名に恥じん、散り際を見せたらぁ!!」
瞬間────
地面に雷だけを残してタマモクロスは消える
「…………逃げおったか」
そう、タマモクロスの気配がない
寄生スーパークリークは溜息をつき、歩き出す
「この体であれば『寮』とやらに潜入し、破壊尽くせるだろうな……クハハっ!」
ふと、寄生スーパークリークは見上げる
そこには満月が雷雲で朧げ、溜まり、今にも雨が降りそうだった
「先は晴天だった……なんだあの雲は?」
ゴッ、ゴッと雷雲に稲妻が走る
”雷の速度ってのは、3種あるんや”
突如聞こえた声に、寄生スーパークリークは目を見開く
「まさか……あの雷雲にっ!?」
”あんたに見せんのは、光の3分の1や”
「ふ、ふふ、フハハ!!それで!なんだァ!?この体ごと炭にでもするかぁ!?」
”ひよったな、3流”
【return stroke】
ドンッッ!!
光が発し、音が轟くのとは別に、スーパークリークの前で刀を地面に刺して跪くタマモクロス
『ピギーッ!ギイーッ!』
刺した刀の先には寄生虫型悪鬼が蠢いており、生命を乞うていた
「おどれ、事前にスーパークリークから離れたやろ」
『ピギッ!』
「びびった証拠や、宿主が死ねばおどれも死ぬの分かってて離脱したんやな」
『ピーッ!』
「まぁ、ウマ娘は悪鬼討伐直前に遺書、書くやつもおるし、スーパークリークもここにおるってことは死ぬことを前提で戦っとる」
タマモクロスは雷を刀の柄に集める
『ピーッ!ピーッ!』
「びびった時点でおどれは3流や、去ね」
寄生虫に白い雷が流れ、弾けた
「信じてましたよ♪タマちゃん」
「へーへー、帰りまっせ」
「あの電気マッサージ、またお願いしますね」
「うちの【return stroke】を電気マッサージ言うの、魔王だけやで……てかなんで喰らいたいねん」
「最近肩こりがまた……」
「……あかん、キレそうやわ」
ネタが古く、滑ってます
貴重な時間を割いていただき感謝の気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいです