いきなり現れた男に場が静寂に包まれる。
そんななか何事もなかったかの様に辺りを見渡していた男が辺りに聞こえない程の大きさで口を開く。
「とりあえず、あいつの思い通りにさせたかねぇし、こいつ殺るか。」
男、刀璽は自身の腰に下げていた二振りの内の一振りの斬魄刀を抜き、燬鷇王を斬りつける。
ほんの一瞬だった。
殆どの者が刀璽が斬りつける瞬間を見る事は出来なかった。刀璽が斬魄刀を振り上げた所まではわかった。
しかし気が付けば刀璽は地上におり、斬魄刀は腰に収められていたのだ。
そしてゆっくりと近付いて来る刀璽の背後で首を落とされ、燬鷇王としての姿を保てずに矛へと戻り、崩れ落ちて来る双極に皆が目を見開く。
「相変わらず恐い
顔を引き攣らせながら隣にいる持病か、目の前の光景からか顔色を悪くした浮竹へと声を掛ける京楽。
「…はは。比べられる気がしないな。元柳斎先生と卯ノ花
この二人、護廷十三隊総隊長 山本元柳斎重国が設立した真央霊術院を卒業しており当時より元柳斎を先生と呼び慕っていた。
また刀璽も一時期講師として霊術院に籍を置いていた事もあり二人の事は、知っていた。
しかしお互いの付き合いがより濃くなったのは二人が護廷に入隊し、刀璽の部下となってからだった。この三人、斬魄刀が二刀一対という共通点があり、その修行等の理由から元柳斎の命に依り、二人は刀璽が隊長を務める十番隊へ入隊する事となり、以後師弟関係となっていた。
この事で元柳斎の雑務が増え、元柳斎が頭を抱える事となったのは余談である。
こちらに歩いて来ながら刀璽は口を開く
「やっぱあの鳥、双極か。普通に切れたけどアレで良いのか?極刑の執行人?執行刀?どう思うよ山本。」
なんの気無しに総隊長を呼び捨てにする刀璽に彼の存在を知らぬ者が息を飲み、刀璽を知る者もその言葉に再度場が静寂に包まれる。
「尸魂界を追放された身で大層な口を聞くのぉ。」
刀璽を睨み付けながらもそう返答する元柳斎。
出来る限り普段の口調で話すが内心、剣八として暴れていた頃の卯ノ花と同程度の実力を持つ刀璽の登場に薄らと汗が背につたう元柳斎。
「(このタイミングで何故彼奴がここにいるんじゃ?あの動きからして春水と十四郎は朽木ルキアの解放を狙っているのがわかる。するとあの双極の一撃を防いだ旅禍に加え、彼奴の相手までするのはこの顔ぶれではちと厳しいか。)」
そう考え元柳斎が口を開こうとするが先に護廷十三隊隊四番隊隊長であり、乱入者刀璽の姉である卯ノ花烈が口を開いていた。
「自分がいったい何をしたのかわかっているのですか?」
「ん?あぁ、わかってるさ。あいつの思い通りにしたくなかったからな。それより元気そうじゃねぇか姉貴。」
微笑みながら卯ノ花に対し口を開く刀璽。
刀璽の姉貴と言う単語を聞き知っている者はスッと卯ノ花を見。知らない者は目を見開き卯ノ花と刀璽の間で視線が行き来する。
知らない者の心の内は、結果的ではあるが旅禍の手助けをしたのが卯ノ花の弟と知り混乱状態であった。
そんななか渦中の卯ノ花の副官であり、護廷十三隊四番隊副隊長である虎徹勇音は吃りながら自身の隊長へ声を掛ける。
「あ、あの、卯ノ花隊長。そ、その、あの人はいったい?」
その声に反応し、卯ノ花は視線は刀璽から逸らさず自身の副官からの質問に答える。
「こんな事となり大変申し上げにくいですがあれは、確かに私の愚弟です。百二十年程前に問題を起こし現在追放中の身ではありますが。」
卯ノ花の言葉を聞き、勇音は自分の耳が聞いた言葉が勘違いでなかった事を再確認し、息を飲む。
勇音は隊長に姉弟がいた事、更にはその弟が何故追放されているのか、また何故今ここにいるのか、と情報量がありすぎて混乱していた。
「久しぶりに会ったのにそりゃねぇよ、姉貴。一応助っ人で来たんだ。味方だぜ。」
そう口にする刀璽だか、食ってかかる者もいた。
「何を言うか貴様!追放されている者など信用できるものか!本当の目的を言う事だ!これだけの隊長格がいる中で逃げ果せる事が出来ると思っているのか!大人しくしろ!」
砕蜂の言葉に首を傾げながら口を開く刀璽。
「ん?お前、夜一の所の奴か?その羽織を見るに昇進したのか。成長は見られないみたいだけどな。どこのとは、言わないが。」
と笑いを堪えながらそう口にする。
それを聞いた者の心が一つになる。
「「成長とか言っちゃダメだから。」」
案の定、砕蜂はプルプルと震えながら刀璽を睨み付け、口を開こうとするがそれを刀璽が邪魔をする。
「それにこれだけ?これしか、の間違いじゃないか?経験や霊圧からして注意しなきゃいけねぇのは姉貴に山本と馬鹿弟子達くらいのもんだろ。それに俺だけじゃねぇしな。」
刀璽の「俺だけじゃない」の言葉に皆の米神に冷や汗が流れる。
そんな事など構うかと刀璽が振り返りながら磔架に固定されたルキアとその隣にいるオレンジ頭の死神、黒崎一護を見ながら口を開く。
「なーにしてんだ。さっさとその子連れて行きな。こっちはやっといてやるから。」
と笑いながら話す刀璽に一護もルキアもポカンと訳が分からないといった表情をしてしまうが更に下から聞こえた声に意識を覚醒させる。
「あぁ、でもその磔架が邪魔か。今そっち行って壊すからちと待っとけ。」
刀璽のその言葉に一気に刀璽から発せられる霊圧が増大し、隊長格とはいえ息を乱す者、更に冷や汗をかく者が増える。
一護もその霊圧の重さに米神に汗がつたうが口を開く。
「誰かわからねぇけど、これくらいどうにか出来る。」
そう言うとなんと磔架を破壊してしまった。
これにより、完全に自由となったルキアを自身の腰の位置に抱える一護が逃走経路を考えようとしたその時
「ルキア!!!」
ルキアの名を呼ぶ大きな声が丘に響き渡る。
ルキアの名を呼んだのは、ルキアの幼馴染でありこれまでの戦闘で一護と好敵手的な位置にいた六番隊副隊長 阿散井 恋次の声だった。