メイドラゴンの世界のモブだが、朝起きたら職場の先輩である小林さんが隣で寝ていた件について   作:風神・雷神

10 / 10
カンナカムイは遊びたい2 中編

場所・某草原

 

「ひろーい」

 

「ここ……日本?」

 

「さあ、どうなんでしょうね。適当な広い草原があったので」

 

「いや、小林さん。どう考えても日本にある草原の広さじゃないですよ。これ」

 

トールさんに連れられて俺たちは、広大な草原にいた。周りを見ると、辺り一面緑に覆われ遠くには、小高い丘が不規則に見え、俺たち以外の人の姿は見当たらない。まるで、この地球に自分たちだけしかいないと錯覚するほどだった。

 

着いてすぐにトールさんに運んでもらった荷物を受け取り、荷物が無事か軽く確認をする。

 

汚れてたり、準備した家の時と変わらなかった。

 

来る途中特に揺れたりしなかったので、まあ大丈夫だろう。

 

「いやでも、ここに来るまでが大変でしたね。荷物もそうですけど小林さんは口で掴まれて、俺はトールさんの手で握られて飛んできたんですから。俺、あのまま握りつぶされるかもって思いましたよ」

 

それを聞いたトールさんが、ため息をついて答えた。

 

「また、背中の上であなたと小林さんにくっつかれたらたまりませんからね。あと、小林さんは兎も角、あなたは手で掴んでの移動で十分です。全く、あのまま握り潰すことが出来たらどれだけ楽か……」

 

「ト~ル?」

 

「じょ、冗談ですって小林さん!私がそんなことするわけないじゃないですか!ドラゴンジョークですよ!ジョークですって!ジョーク!」

 

トールさんは、慌てて冗談だと言って弁解していた。

 

個人的には、前半はいいとして後半の所は少し何かしらの感情が籠っていたような気がしたが、これ以上触れるのはやめておこう。

 

「ところで、それなんですか?私、何にも知らないんですけど」

 

トールさんが、気になったのか不思議そうに俺が持っている物について聞いてきた。

 

「これは……。今は教えられないですね。……まああれですって。後になればわかりますよ」

 

「やけにもったいぶりますね……。まあ、いいですけど」

 

持っていた荷物を背中に隠すと、トールさんは呆れた表情でこちらを見ていた。

 

「まあ、とにかく私は、デスマの疲れをとるため寝るから。遊びたい人は、遊んでどうぞ」

 

そう言うと、小林さんはゴロリと草原に寝転んだ。

 

「しょーがないですねー。じゃあ、私達だけで遊びますか。小田原さんもやりますか?」

 

「いや、正直俺も休みたいから……。それに、ドラゴン同士じゃないと出来ないこともあるだろうし」

 

彼女たちドラゴンは、人の姿で生活している訳で、今回は、近くには人もいないから思いっ切り羽を伸ばせるだろう。そんなところに俺が混ざってしまったら彼女たちに悪い。

 

「そうですか。では、カンナ。私たちはいきましょうか」

 

「トール様、早く行こ」

 

二人は少し離れたところで遊ぶらしく、何処か適当な場所へ歩いて行った。

 

その為、自然と小林さんと二人っきりになり、小林さんが寝ている隣に座る。

 

「それにしても、凄いですね。まだ、こんな場所あったんですね」

 

小林さんは、頭の後ろに手を組み寝ながら答えた。

 

「そうだねー。私もこんな広い草原初めてだよ。なんなら、こんな見晴らしのいい場所来たの、初めてかもしれないし」

 

「ええ、俺も初めて来ましたよ。こんな広いとこ……。本当に……」

 

「……初めて来ました」

 

心から思った事が言葉として出てしまった。

 

原っぱに太陽のあたたかな日差しが満遍なく注がれ、風が心地よく流れ、踊るように草が揺れる。

 

家の辺りの風とは全く別物で、気のせいか空気もおいしく感じる。場所が違うだけでこんなにも変わるなんて知らなかった。

 

自然に睡眠欲が掻き立てられ、思うままに寝転がり、景色を見ていた視線が、所々に綿あめのような雲が浮かぶ空に移る。

 

こんなところにいたら、眠くなるのは当然かもしれない。

 

更に、デスマの疲れをため込んでいる体の為か、うとうとして瞼が閉じそうになる。

 

「ねぇ?」

 

急に話しかけられ、閉じかけていた瞼を開き、隣に寝ている小林さんへ顔を向けた。

 

「本当に、良かったの?こんなことに付き合って。行こうと思えば私だけついてったし。疲れてるんじゃないの?」

 

「全然大丈夫ですよ。疲れてないですし来たかったまでありますよ。むしろ働きだす前に戻ったように元気ですよ」

 

「なにそれ?へんなの」

 

そう言って小林さんはクスクスと笑い、寝ながら体をずらしたりして、俺の横に移動してきた。

 

急な小林さんの行動に思わず聞いてしまった。

 

「急に、ど、どうしたんですか?小林さん。いきなり」

 

「いやさ、そんなに元気なら、腕枕でもして貰おうかなって」

 

小林さんは、俺の右腕を掴んで枕替わりにする。

 

腕枕と言ったが、小林さんは俺の右肩のあたりに頭を乗せ、体をピッタリとくっついてきた。

 

「もしかして、嫌だった?」

 

「とんでもないです。むしろ光栄と言いますか。ええっと……」

 

「じゃあいいじゃん。ごめん。ちょっとだけこのままでいさせて。ちょっとだけだからさ」

 

「……分かりました」

 

「……ありがと」

 

小林さんは、静かに目を閉じてスヤスヤと寝息をたてていた。

 

今思えば、こんなこと少し前まで夢にも思っていなかった。

 

これも、小林さんやトールさん達のおかげだろう。

 

彼女たちには、大きな借りが出来てしまった。

 

こんな俺だが、少しずつこの借りを返していけたらいいと思う。

 

そんなことを考え、俺も瞼を閉じゆっくりと意識が沈んでいく。

 

 

 

…………………

 

…………

 

……

 

だが、突然周囲に爆発音が響き、俺と小林さんは慌てて飛び起きてしまった。

 

「な、なに!」

 

急な、爆発音にびっくりしたのか、小林さんが腕を抱きしめているが、今はそれよりも音の原因である。

 

辺りを見回すと、まるでアクション映画のド派手な戦闘シーンのような戦いをトールさんとカンナちゃんが繰り広げていた。

 

その戦いは正に、命を懸けた戦いのような緊張感があり、とても遊んでいるようには思えなかった。

 

「待て待て待て待て待て」

 

小林さんは、慌てて二人がいる場所へ走って向かって行った。

 

付いて行こうと思ったが、トールさんも無意味にこんなことはしないだろうから、ここは小林さんに任せても問題ないだろう。

 

だが、付いて行かなかったのはそれだけが理由ではなかった。

 

「……いきなり過ぎますよ。小林さん……」

 

思い返すと、心臓の鼓動が早まり、顔に熱が集中する。

 

手で顔を覆って平常心を取り戻す為、深く深呼吸をする。

 

他の人が思えばそんなことだが、そんなことで心を乱されている自分が恥ずかしくて、小林さん達には見せられなかった……。

 

 

 

 

小林さんが、戻ってきてどうしてこんなことになったのか教えてもらったが、さっきの一連の戦いは、どうやらトールさんカンナちゃんドラゴンにとって、ただ遊んでいただけだったらしい。

 

ドラゴンのスケールの大きさに驚いてしまった。

 

小林さん曰く、『ドラゴン基準の遊びではなく人間基準の遊びをしろ』と言ったらしいのだが、戻ってきたトールさん達は、まるで映画などで出てくる腐りかけのゾンビのような歩き方をしていた。

 

話を聞くと、どうやら小林さんの真似をしていたらしく、何とも言えない気持ちになってしまった。

 

すみません。小林さん……。

 

悔しながら、ゾンビのようだと思ってしまいました。

 

声には出さず、心の中で小林さんに謝った。

 

そんな中、戻ってきたカンナちゃんが、丁度腹の虫を鳴かせていた。

 

「おなかすいたー」

 

「確かに、もういい時間ですね。お昼、どうしますか。小林さん」

 

「どうしよっか。来たばっかりだけど、流石にお昼ご飯食べたいしなー」

 

悩んでいる3人へ、この瞬間を待っていたと言わんばかりに、用意していたアレを原っぱへ置く。

 

「悩む必要なんてありませんよ皆さん!この小田原、この時の為に準備してきました」

 

話を聞いた3人が、意外そうに聞いてきた。

 

「え?お弁当作ってきてくれたの?」

 

「……意外ですね。小田原さん料理できたんですね」

 

「……」

 

「まあ、特別手が込んでいる物ではないですけどね。皆さん座って下さい。では、開けますね」

 

他の全員が座って、風呂敷に包まれていた重箱に注目する。

 

中に入っていた物を見て、様々な反応を見せてくれた中で、3人の中で一番なじみがある小林さんが一番に口を開いた。

 

「これって……おにぎり?」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

成り代わりレグルスは強キャラムーブがしたい(作者:地獄楽)(原作:Re:ゼロから始める異世界生活)

▼普通に生きて普通に死んだ普通な男が転生した先はまさかのリゼロ?!▼これは全てが普通だった男が、前世からの夢である強キャラロールプレイを楽しみながら歩む、原作とはかけ離れた"強欲"の絶対にありえない可能性である。▼「さあ始めよう、僕による僕のためだけの最高の物語を!」▼※4話までの文章を整えたり、書き直しました。


総合評価:5257/評価:8.15/連載:6話/更新日時:2026年01月12日(月) 13:02 小説情報

『雪女』のヒーローアカデミア(作者:鯖ジャム)(原作:僕のヒーローアカデミア)

私の名前は雪柳氷雨(ゆきやなぎひさめ)。▼個性は『雪女』。▼この個性、氷や雪を自在に操れて……身体が女性のそれになってしまうという、ちょっと変わったものなんです。▼ええ、そうです元男ですよ。がっかりさせてしまいましたか? ▼……え? むしろいい? そ、そうですか……。▼……まぁでも、そういうことなら。▼私がいっぱしのヒーローになるまでの、波乱に満ちた軌跡を見…


総合評価:20201/評価:8.82/連載:69話/更新日時:2025年05月24日(土) 18:00 小説情報

TS受けポケ使いが崩されるまで(作者:ヤキブタアゴニスト)(原作:ポケットモンスター)

TS転生娘が相棒のハピナスやヌオー、ポリゴン2たちと一緒に楽しくガラル地方を中心にポケモンバトルするお話。なお、バトルがエンタメになっているガラルでは受けが良くない模様。▼鉄壁の受け使いを崩せるのは無敵のチャンピオンか最強の主人公かそれとも?


総合評価:16489/評価:8.72/連載:52話/更新日時:2026年03月19日(木) 20:00 小説情報

ブルアカにTS転生してメス堕ちする話(作者:アウロラの魔王)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカにTS転生した元男が過酷な目に会う。ただそれだけ。▼これは、男の中の男を目指した元男が、なぜかメス堕ちする話。▼直接表現はしてないからセーフ!なはず。▼※エ駄死!な方は静かにブラウザバック。▼3/20▼※非ログインでも感想書けるようにした!▼5/8▼※R-18版投稿!↓▼https://syosetu.org/novel/315837/▼↓ぴょー様よ…


総合評価:10535/評価:8.64/連載:62話/更新日時:2026年08月01日(土) 11:37 小説情報

正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる(作者:黒岩)(原作:ONE PIECE)

変な果物食べて、見知った正体不明の妖怪になりました。色々あって絶望したけどメンヘラ龍のお供として彼と愉快な仲間たちと楽しくやっていこうと思います。▼※晒し禁止


総合評価:46909/評価:8.97/連載:176話/更新日時:2025年08月12日(火) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>