メイドラゴンの世界のモブだが、朝起きたら職場の先輩である小林さんが隣で寝ていた件について   作:風神・雷神

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沢山の評価、お気に入り、感想ありがとうございます

なんか日間1位まで登っていてびっくりです。

みんな小林さんが好きでよかった






メイドラゴンの襲来 前編

「あの……あなたは一体……」

 

どうしても分からずに聞いてしまった。

 

「どうやらこの世界の人間には、言葉すら理解できない者がいるようですね。全く猿以下ですね。うっとおしい。いい加減にしないと……」

 

彼女に睨まれた瞬間、全身に寒気と鳥肌が立つ。

 

「ホントに殺しますよ……」

 

これは……殺気とでもいうものなのか。

 

「それに、小林さんはここに来れません。今なら見逃してあげます。さっさとどっかに行きなさい」

 

「!?貴方!小林さんに何かしたんですか!」

 

「はぁ……。下等な人間風情がドラゴンである私に怒鳴りますか。どうやら本当に死にたいようですね……」

 

睨み合い、一触即発とはまさにこのことだろう。自分の頭の中では今すぐに逃げろと警告が鳴り響いている。だが、それは出来ない。それでも逃げられない。この自分のことをドラゴンと言い、トールと名乗る彼女が、何かの目的のために小林さんに何かしようと思っているのなら、絶対に小林さんを置いて逃げたりはしない。

 

例え彼女に敵わなくても、何とかして小林さんを救い出し、殿として小林さんが逃げる時間を稼いでやろう。

 

心の底で覚悟を決めていると、トールと名乗る彼女の後ろからドアが開く音がする。

 

リビングのドアが開き、そこにはこの家の主である小林さんが、起きてすぐなのだろうか、眠そうに目をこすりながらやってきた。

 

「うるさくて眠れないんだけど……。君たち家の前で何やってんの?」

 

パジャマ姿の小林さんが出てきた。そういえば、パジャマ姿の小林さんは初めて見たが、会社とのギャップもあってとても可愛く見える。

 

「小林さん!無事ですk……」

 

「小林さん、お目覚めになられたのですね!あなたを愛するトールが恩返しに参りました!」

 

俺の言葉を遮り、さっきこちらに向けた敵意むき出しの表情とは反対に、ニコニコと笑顔で小林さんに話しかけていた。

 

恩返し?

 

小林さんと彼女に一体何があったんだ……。

 

もうこうなれば、小林さんに全てを託すしかない。

 

教えて下さい、小林さん。

 

この、自身をトールと名乗り、メイドのコスプレをした外国人は誰なんですか……。

 

小林さんは、ジッとトールさんを見つめて一言だけ言葉を発するだけだった。

 

「……誰?」

 

「「え?」」

 

まさかの本人も知らないことに、俺だけではなく隣にいたトールと名乗る彼女までもが驚いていた。

 

 

 

………………………

 

…………………

 

…………

 

 

 

 

「……どうぞ。コーヒーです」

 

「ありがと……。ごめんね。まだ眠くてさ。私の家なのにコーヒー淹れて貰っちゃって」

 

「いえいえ。このぐらいなら全然大丈夫です。いつも会社ではお世話になっているのでこれぐらいさせて下さい」

 

「あと、立ちながら話す感じになると思うけど……立ってるの辛かったら代るよ?」

 

「いや、俺は大丈夫です。むしろ小林さんが座ってて下さいよ。前腰痛がってましたよね」

 

「あ、うん。じゃあ、座らせて貰うね」

 

あのまま、あそこで話し合っていたら、ご近所様に迷惑にならないため、家に上がらせてもらい2人はリビングのテーブルに座っている。そもそも椅子が2人分しかなかったので今は、小林さんとトールさんが座っている。その為、立ちながら話を聞くことになるが、まあ大丈夫でしょう。

 

そんなことよりも、こっちの方が問題だ。

 

「どうして、私が虫以下の下等な人間が作った飲み物を飲まなければいけないんですか。それに何ですか?これ。色が黒くてまるで泥水みたいですけど。竜族の私に泥水を出すなんていい度胸してますね……。あ、でも小林さんが淹れてくれた飲み物なら私は、例え毒でも飲み切ってみせます!」

 

まあ、こんな感じでとことん俺が嫌いらしく、今淹れたコーヒー対しても貶すような言葉使いをしている。

 

俺に対してだったら構わないが、コーヒーさんには優しくして欲しい。コーヒーには罪はないのだから。一服しながらのコーヒーは格別にうまいんだ。

 

一方で、小林さんに対しては態度が一変している。何というか、もはや別人ではないのかと疑うぐらいに変わっている。

 

話の内容もそうだが、彼女の言動は何かおかしい。

 

でも、取り敢えずは話を聞いてみないと分からない。

 

「あの、トール?ちゃんは……」

 

「塵以下の人間であるあなたが、私を『ちゃん』付けで呼んでいいと本気で思っているんですか?思っているのであれば、今すぐ身の程をわきまえなさい。あと、私はこう見えてあなたよりも、何十倍も年上です」

 

こちらを親の仇かの様に睨みながら、彼女は答えた。

 

今の言葉のキャッチボールで分かったことは、こちらがどんなにいい球を投げても、向こうは罵倒や軽蔑でできたバットでこちらに向かって打ち返してくる。

 

そのうちに、言葉のバットで直接殴りに来るかもしれないと思うほど、敵意を持っている。

 

だが、ここで怒ってしまうのは悪手だろう。今のところ何にも彼女の事を分かっていない。

 

なので、ここは慎重に進めていこう。

 

「そ、そうですか……。すみません。トールさんは一体何者なんですか……」

 

「どうしてこの私が、あなたのような人間と話をしなければいけないんですか。そもそも……」

 

まずい。これでは、話が進まない。俺は適役ではないらしいので、小林さんにアイコンタクトを送り、トールさんと話してもらうことにする。

 

「トールさんはさ。何処から来て、何者なの?」

 

「私の事は【さん】など付けずに『トール』と呼んでください!小林さんになら他の呼び方でもいいですよ!」

 

「うん。ありがとう。じゃあ、トールは一体何者なの?いろいろ教えてくれる?」

 

「小林さんの為なら、もちろんです!私は……」

 

流石小林さんだ……。俺では、会話をするどころか罵倒される始末だったのに、少し話しただけで完全にこちらのペースに持ってきている。

 

なんてかっこいいんだ……。

 

 

………………………

 

…………………

 

…………

 

 

トールさんの話をまとめると、こういうことになる。

 

彼女は此処とは別の異世界からやってきて、その世界では、人間とは敵対的な立場にある「混沌勢」の中核として戦いに従事していたが、神との戦いで背中に神剣を突き刺され重傷を負ってしまう。落ち延びた人間界の山の中で死を待つばかりだったところに、酔っぱらって迷い込んできた小林さんが勢いのままに神剣を引き抜いたおかげで命を取り留め、恩を返すべく小林さんの元に、奉仕の象徴である『メイド』としてついてきたらしい。

 

なるほど……。

 

つまりは鶴がドラゴンになって、世界が壮大になった【鶴の恩返し】だ。

 

だが、俺は話を聞いていて、とても気になったことがあった。

 

異世界やドラゴンよりもだ……。

 

それは……。

 

「小林さん!この前みたいに記憶無くすまで、またお酒飲んだんですか!しかも、話だと酔っ払った状態で、酒瓶片手に山登ったって、何してるんですか!?しかも一人で!山には危険がいっぱいなんですよ!貴方って人は!」

 

「え?まず私なの?他にもっと注目する所が……」

 

「そんなの、今はどうでもいいです!自分がどんなに危険なことをしたかわかってるんですか!山に軽装で登るなんて……。イノシシやクマに遭遇したり、戻る道が分からなくて、遭難でもしたらどうするんですか!もっと自分を大切にしてください!」

 

「あ……。うん。ごめん」

 

そう言うと小林さんは反省したのか、まるで親に叱られた子供のように身を縮こまらせる。

 

言いたいことは、分かってくれたと思うのでいいでしょう。

 

「まあ、他にも言いたいことはあるんですけど、後で言います。次は、トールさんについてなんですけど……これからどうするんです?彼女の事。『私のとこ来る?』て言っちゃったんですよね?」

 

小林さんの顔が分かりやすいぐらい、どんどん青ざめるのが分かった。

 

「悪いんだけどさ……トール……」

 

「そ、そんな。私役に立って見せます!小林さん!」

 

トールさんは自分の危うい立ち位置が分かったのか全力でアピールするが、小林さんは動じなかった。

 

「ごめん。だんだん思い出してきたんだけど。正直うっすらとしか覚えてないんだ……。そんなことも言ったのかもって。でも、やっぱりあきらめてもらうしかないよ……」

 

淡々と、彼女の望む言葉とは違い、反対の言葉ばかりが小林さんの口から零れ落ちる。

 

「守れない約束した。すまなかった……」

 

話を聞いていたトールさんは、小林さんの今の話を聞いた途端、悲しそうな表情をしながら、呟くように話し始めた。

 

「……覚えてない……そうですよね……やっぱり、無理ですよね……急にお邪魔してすいませんでした……」

 

トールさんはそう言うと、立ち上がり玄関へと足を運ぶ。

 

その姿には、ついさっきまで痛いと思うほど感じていた覇気は、どこかへ消えてしまっていた。

 

立ち上がる瞬間、見てしまった。

 

淡い飴色の琥珀ようなその瞳からは、大粒の涙が流れていた。

 

 




トールちゃんが強すぎて納得がいく感じにならない

めちゃくちゃむずい

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