ラブライブ!ーschool idol produce- 作:AGRS
とりまここで一区切りって感じです。
μ'sがこれからどう変わっていくのか…
目が離せない。
それでは、どうぞッ!!
ワー… ワー…
舞台裏からでもわかる、沢山の観客の声。
μ'sはついに講堂ライブの日を迎えていた。
ライブ開始まで既に10分前を切っており、皆緊張した顔つきでその時を待っている。
思えばこの講堂ライブに至るまでに、色んな事があった。俺自身、女子校に転入になったり、プロデューサーをやらされたり、μ'sの皆と出会ったり……驚きと戸惑いの連続だったが、決して悪いものではなかった。
けど、この講堂ライブはあくまで通過点。ゴール地点はスクールアイドルの夢の舞台ーー"ラブライブ!"
俺と穂乃果達μ'sはそこに至るまで突き進むのをやめないーーやめるつもりはない。
「Aパートで…あの動きで…歌詞の方は…」
花陽がブツブツとそんなことを呟いている。端から見てもガチガチに緊張してるのがまるわかりだ。
「かよちん、落ち着くにゃ~」
「そうだぞ。何度も練習したろ? 落ち着いてやれば大丈夫だよ」
「ふ、2人共…でも、心配で心配で……」
逆効果か、と思ってしまうほど花陽はさらに暗い表情になる。確かに人前に出るのが得意じゃない彼女に緊張するなと言うのが無理かもしれない。
「花陽、緊張してるのは皆同じ。だからこそ、それをバネにするの。スクールアイドルはあなたの憧れの存在でしょ? 胸を張りなさい」
真姫が花陽の不安を取り除くように力強く勇気づける。昨日、保健室に行った所、真姫はただの貧血と言うだけでライブには支障はなかった。俺は安堵したが、それから今日まで目も合わせてくれない。…嫌われたか?
「真姫ちゃん…うん、私、頑張らなきゃ。私は今、スクールアイドルなんだ…変わらなきゃ…!」
花陽の目に自身の光が宿る。不安や弱々しさは完全に消え失せていた。
「ありがとな、真姫」
ボソッと真姫に感謝の言葉を送る。
「別に…」
真姫はやはり目を合わせない。けど、僅かに微笑んでいるのは見てとれた。ともあれ、これで皆大丈夫そう…
「大丈夫よ…! にこにーは何だって出来るんだから…! 大丈夫、大丈夫…」
…あ、もう1人いた。
「あー…、にこ、そんな緊張すんなよ?」
「な……! してないわよ!にこにーはこれくらい…」
足をガクガクさせながら言われても説得力皆無だ。
なんとか不安を取り除きたいけど…
「今日のライブが成功したら晴人が何でも奢ってくれるんやって~ 」
希が唐突にそんな事を言う。にこの緊張をほぐす為でもあるんだろうけど、俺の事も考えて欲しい。
「…何でも?」
「えー!? それなら凛、ラーメン一杯食べたいにゃ~!」
「そう言えば、駅前に美味しいって評判のケーキ屋さんが出来たよね。ことりはそれがいいな~ 」
「あら、それなら私は行きつけのレストランでも奢って貰おうかしら」
絵里まで希の悪乗りに便乗する。待ってくれ、1日でそんな回り切れるか!
「なら、日を変えて1人ずつ行けばいいんよ」
……奢らされるのは確定事項なんですね。
「はぁ…分かったよ、検討しとく」
皆から喜びの声が上がる。にこもいつの間にか普段の余裕ある表情に戻っていた。
「晴人君」
自分を呼ぶ声に振り向くと、穂乃果が無垢な笑顔で俺を見つめてきた。
「いよいよ、だね」
「ああ、皆の頑張りが証明される時だ」
「私…頑張るから」
……? なんか…いつもと様子が違う? 緊張してるのか?
「だから終わったら…褒めて欲しい。…頭を撫でて欲しいな」
少し顔を赤らめて穂乃果が小さく言う。頭を撫でる…か。それくらいなら…。
「そんなことだったら今までも」
穂乃果の頭に優しく手をおく。うん…誰も見てない。
「頑張れ、穂乃果。お前なら大丈夫だ 」
「あっ…えへへ」
穂乃果は蕩けたような顔で目を細める。…ヤバイ、可愛すぎる。
「皆、そろそろ始まりますよ」
海未の言葉に時間を確認する。ジャスト1分前、穂乃果は名残惜しそうしながらも皆のところに戻る。
穂乃果、海未、ことり、凛、花陽、真姫、絵里、希、にこは円陣を組み、右手を重ねる。
「ほら、晴人も早く来なさいよ! 」
「分かってるよ」
正確にはμ'sじゃないけど…ま、心意気は皆と同じだ。
「さぁ…行くよ、みんな!」
「いち! 」
「にい!」
「さん!」
「よん!」
「ご!」
「ろく!」
「なな!」
「はち!」
「きゅう!」
「……じゅう!」
そして穂乃果は叫ぶ
その一言を
「μ's ミュージック……」
『『『『スタート!!!』』』』
「皆ーー!今日は集まってくれてありがとーー!」
赤と白を強調した可愛らしいフリルの付いた衣装を身に纏った穂乃果が講堂に鳴り響かんばかりに叫ぶ。
「冬の"ラブライブ!"に向けて、私達μ'sはまた走り出します!」
μ'sを代表して、力強く宣言する。
「私達を支えてくれる…プロデューサーと共に!」
躊躇いや恥ずかしさをまったく見せることなく、穂乃果は観客全員に屈託ない笑顔を向けた。
「聞いて下さい! μ'sで『それは僕たちの奇跡』!」
その言葉と同時に講堂は歓声に包まれた。
かくして9人の女神は舞う。
その優雅さや華麗さ、そして苛烈さを見せつけるように。
夢の時間がーーー始まる。
……素晴らしい。
どう見てもそう言うしかないだろう。それほどまでにステージで踊る9人の少女達は輝きに満ち溢れていた。
流れる曲に合わせて歌い、ステップを刻んで踊る。ただそれだけの事が、この講堂にいるすべての人間の目を釘付けにしていた。
無論、俺も見惚れているし興奮している。当然だ、男なのだから。圧倒的な魅力を持つ女の子達が自分のプロデュースの元、踊っているのだ。興奮するなと言われる方が極めて無理に近い。
曲が最後のサビに入る。同時に皆もラストスパートを
かけているようだった。動きにいっそう磨きがかかる。
耳に流れてくる声が心地よい、と感じる。聞く人に安らぎを与えるようだ。
曲が終わり、講堂はまたもや大歓声に包まれる。
ある人は彼女達に向かって叫び、ある人は千切れんばかりに腕を振り、ある人は感動したのか涙ぐんだ。
それらすべてに答えるように、穂乃果は今日1番のとびきりの笑顔を見せた。
夢の時間は終わる。
けれど、それは"思い出"という形で観客の記憶に残り続ける。
俺は思う。彼女達のプロデュースを請け負ったのはーー間違いなんかではない、と。
こうして講堂ライブは拍手喝采の元、幕を閉じた…。
「すっっっごく楽しかったよ~」
穂乃果がジュースを片手に満足げに言う。
ライブ終了後、着替えてお菓子や飲み物を買って全員でアイドル研究部部室に集まっていた。
「ほんとね…何だかまだ実感がないわ」
「久しぶりに気持ちよく踊れた気がするにゃ!」
「花陽も…不思議な感じだよ」
「曲の余韻が残ってて…興奮が収まりません」
「観客の皆も喜んでくれてたみたいだしね~」
「まぁ、このスーパーアイドルにこちゃんがいたんだから当然ね!」
「はいはい、そういうことにしとくから」
疲れた様子など微塵も感じさせず、皆それぞれ今日のライブの感想を呟く。
「さぁて、早速晴人に奢って貰おうかな~?」
意地の悪い笑みを浮かべて希が近づいてくる。こ、こいつ覚えてやがった…!
「はいはーい! ラーメン食べに行くにゃ晴人君!」
「凛には悪いけど甘いものがいいわ…」
何を食べるか皆ギャーギャー言い争う。今の内に帰ろうかな…などと思っていると
「晴人君」
ライブ開始前のように穂乃果が話しかけてくる。
「おお、穂乃果。何か食べたいならちゃんと奢ってやるからまた後日な」
「ううん、それはいいの。…それよりも、別のご褒美が欲しいなぁ」
別の…? あぁ。
「よく頑張ったな、穂乃果」
穂乃果の頭を撫でる。今日は特大の頑張りを見せたんだ、これくらいお安いご用だ。
「ん…晴人君のおかげだよ…」
穂乃果は気持ち良さそうに目を閉じている。男にして貰って嬉しいものなのか…?
しばらくそうしていると、撫でている手を掴まれて穂乃果の頬に擦りよせられた。
「ちょっ…穂乃果?」
流石にこれは…俺も少し恥ずかしいし皆の視線が集まりつつある。
「晴人君…あったかい…えへへ」
しかし、穂乃果は聞く耳を持たずひたすら俺の手の感触を楽しんでいるようだった。まるで幸せそうな表情で…。
「この感じ……好きだなぁ」
ゾ ク リ
…………ッ!!
瞬間、体に激震が走る。ライブの大成功に酔いしれていたのが、一瞬で消し飛んだ。
感じるのは……言い表しようのない恐怖と、背中に突き刺さるーー悪寒。
晴人はようやく実感する。
それは絵里が以前危惧していた事態であり、海未が感じた恐怖と同じだった。
安寧と堕落の日々は過ぎ去り、何もかも淀んで見える。
彼を、彼女達を覆う恐怖という"悪夢"は
ーーーまだ、覚めそうにない。
サブタイのWは"world"
『世界』というわけです。
さぁ、ここからが延長戦。
甘くも苦い、恐怖の一時を…
皆さま是非次回もご覧下さいね!