ラブライブ!ーschool idol produce-   作:AGRS

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いーーやっふぅ! スコアマッチで好調のせいかテンションが上がりまくりのAGRSです。

久々の連続投稿! ……じゃないけどまぁ、土日で二本出すことが出来ました。やっぱ劇場版の影響か、うんうん。


さぁ~て、じゃ早速本編へどうぞ!


第22話 Fの共鳴/舞うは小鳥、奏でるは花

 

 

 

「はぁ…っ! はぁ……っ!」

 

 

 

真姫は学院の昇降口で激しく息を切らせていた。

 

 

 

脳裏に反芻するのは、先ほど見たアイ研部室での光景。忘れ物を取りに来たところ、その一部始終を目撃してしまった。

 

 

 

部室に残っていたのは花陽と絵里。何やら深刻な雰囲気だったので場を察して立ち去ろうと思ったのだがーーー好奇心が勝り、つい聞き耳を立ててしまったのだ。

 

 

 

 

『真姫も言っていたでしょ? スクールアイドルである以上、自分達の行動を自重すべきだと』

 

 

 

 

絵里の発した言葉は微弱ではあるが真姫を動揺させた。確かに自分が口にした言葉。雑念に気を取られない為、穂乃果に対して諭すように言った言葉だ。

 

 

 

しかし、真姫自身その考えについて迷っていた。理には敵っている。自分で言って正しいとは思う。だが、今の自分にはもう一度胸を張って言うことはーーー出来ない。

 

 

 

心の中で苦虫を噛み殺しながら思考の渦に耽っていると、更なる絵里の言葉が耳を掠める。

 

 

 

 

『ーーー穂乃果のようになりたくなければ身を引くことをオススメするわ』

 

 

 

 

え?

 

 

 

穂乃果のようにって……どういう事? それって、穂乃果が過労で倒れた事と関係が…?

 

 

 

物事に聡明な真姫でも、今の言葉の意味は分からなかった。頭の中で理解しようとするも、目にした光景に思考は直ちに遮断された。

 

 

 

尋常ではない雰囲気を纏った花陽が絵里に向けてナイフを投げつけたのだ。まさに刹那、神速とも呼べるほどの俊敏な動きだった。

 

 

 

髪をかすらせつつも、絵里は無傷で避けきった。ナイフが突き刺さった壁からこぼれ落ちる破片が酷く痛々しい。

 

 

 

 

ーーーは、花陽……!?

 

 

 

 

嘘、と真姫は絶句する。あの花陽が、温厚の塊とも言うべき彼女が、躊躇いもなく他人にナイフを投げつける、なんて……!

 

 

 

 

しかも、花陽の瞳は生気を毛ほども感じさせないくらい虚ろであった。まるでこの世をさまよう悪霊のようーーーそんな喩えが相応しい。

 

 

 

 

衝撃的な展開の連続に脳が追いつかない。既に思考の容量はキャパオーバーしている。処理しきれない情報量が次々と自分を攻め立てる。

 

 

 

ふと絵里に視線を戻す。ナイフを一瞥した彼女は一瞬ではあるがこちらの方を見やる。

 

 

 

 

ーーー当然のように、絵里と目が合う。

 

 

 

 

「…………ッッ!!」

 

 

 

真姫の身体中に激震が走る。花陽に背を向けた絵里はゆっくりとドアに向かって歩を進める。このままでは不味い。このままでは花陽にまで感付かれる……!

 

 

 

 

真姫は迷わず逃走を選択した。彼女の第六感は今すぐこの場から逃げろと告げている。誰もいない廊下を脇目もふらず走る、走る、疾走(はし)るーーー。そして気がつけばこの昇降口に辿り着いており、今に至った。

 

 

 

 

 

「な…なんで花陽と絵里が…」

 

 

 

 

未だにさっき見たことが信じられない。花陽は普通ではなかったが、絵里も異常だった。花陽が虚ろな目とするならば彼女は蔑みの目。同じスクールアイドルとしての気遣いなどとうに消え失せた哀れみの瞳だった。

 

 

 

 

「それに…穂乃果の事も……!」

 

 

 

 

ようやく理解が追いつく。憶測ではあるが、穂乃果が倒れたのは体調管理などが原因ではなく、絵里が意図的に……!?

 

 

 

 

「ああもう…! どうなってんのよ……!」

 

 

 

本当に、どうしようもなく、訳が分からない。積み重なる疑問は幾度も幾度頭の中で右往左往する。耐えきれず膝をつき、体は吐き気を催した。

 

 

 

 

そんな中、一瞬だけ頭を過ったのは一人の少年だった。冴えない顔をした、けれども自分が最も信頼していると言っても良いクラスメイト。

 

 

 

 

「晴、人……」

 

 

 

 

無常にも、名前を呼びかけられた少年は今この場には居なかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の放課後。

 

 

 

俺は学院の外に出て、買い物袋を両手に持っていた。その理由というのも新しい衣装の材料と部室の備品の買い出しに行っていたからだ。既に買い物は終了し、学院に向かっている。が…

 

 

 

 

「~~♪」

 

 

「……」

 

 

 

 

左右にいることりと花陽に俺は少し困惑していた。

 

 

 

元々この買い出しはことりの用事であり、一人で行かせたら万が一でもあの時のように事故が起こる危険があるため、俺はことりに付き添った。

 

 

 

そこに、二人だと大変だろうからという事で花陽が手伝いを申し出てきたのだ。ここ最近、花陽の自己主張も増えてきたような気がして俺としては喜ばしい事だった。

 

 

 

で、三人で買い出しに行ったのはいいけど今現在、ことりは俺の右腕に自分の両腕を絡め、寄り添うように歩いている。一方花陽は、ことりほど過激ではないものの左腕の服の裾を小さく摘まんでいた。

 

 

 

つまり、何が言いたいのかと言うと二人の手伝いがまったく役に立っていない。ことりに至っては負担でしかない。長時間ではなくとも、ずっとこの状態が続いているのだ。右腕がプルプル震えてるの分かってる? ねぇ、ことりさん?

 

 

 

 

「は、晴人君…大丈夫? 少し持とうか?」

 

 

 

 

左から花陽が気遣うように声をかけてくる。

 

 

 

 

「お、おう。伊達に鍛えてないからな。このくらい余裕余裕!」

 

 

 

馬鹿な強がりだ、と内心自分を舌打ちする。余計な見栄を張る必要などないのだが、ここで手伝って貰ったらなんだか負けだと思ってしまうので厚意を受け取らないでいた。

 

 

 

 

「重かったら言ってね~。ことりも手伝うよ」

 

 

 

 

…手伝う気がこれっぽっちも感じられないのは気のせいだろうか?

 

 

 

 

「まったく…事故の心配なんかないじゃんか…」

 

 

 

嘆息、空を仰ぐ。一度は事故に遭ったことり。細心の注意を払っても同じ目に遭わない可能性が皆無という訳ではない。というか、交通事故は日常生活のすぐ隣に潜んでいる。誰であろうとその危険性は平等だ。

 

 

 

 

「んー、でもほら。穂乃果ちゃんみたいに急に倒れるかも?」

 

 

 

 

…それについては同意する。俺としてもそっちの可能性の方を重要視してるしな。

 

 

 

 

「穂乃果ちゃん…大変だったみたいだね」

 

 

 

花陽の表情が暗くなる。μ'sの皆には穂乃果の容態は伝えられてあったが、あまり話すべき話題ではないだろう。バツの悪い顔を浮かべた俺は「ああ…」と呟いて別の話題に変えようとしたのだがーーー

 

 

 

 

 

 

「でも、仕方のない事だよね」

 

 

 

 

 

俺は自分の耳を疑った。

 

 

 

 

「結局は自分の体調管理が徹底してなかったのが原因なんだから、可哀想だけど穂乃果ちゃんが悪いと言うしかないかな」

 

 

「こ……と……り……?」

 

 

 

 

何だ? ことりは何を言っている? 仕方がない? 穂乃果が悪い? 確かにそうかもしれない。しかし、彼女の良き理解者であることりがそんな簡単に口にしていい言葉ではないはずだ。いや、それ以前に。彼女がそんなことを言うはずがないーーー!

 

 

 

 

 

「ねぇ、花陽ちゃんもそう思うよね?」

 

 

 

 

俺の心情を知ってか知らずか、ことりは花陽に話を振る。花陽は慌てる様子もなく、静かに返答した。

 

 

 

 

「…そうだね」

 

 

 

 

俺は再び自分の耳を疑わざるを得なかった。

 

 

 

「仕方がないの一言で済ませていいことじゃないと思うけど……ちょっと擁護できないかな」

 

 

 

 

花陽まで何を言い出すんだ? 擁護できないって……そういう問題じゃないだろ!

 

 

 

 

「待て待て待て! 二人共ちょっとおかしいぞ!」

 

 

 

歩みを止め、二人と向き合う。周りの人達をお構い無しに俺は声を張り上げた。

 

 

 

「……おかしい?」

 

 

「えっと…そうかな?」

 

 

 

ことりと花陽は心底理解出来ない、とでも言うように首を傾げる。その行為が俺の焦燥を悪化させた。

 

 

 

 

「だって…だってさ…! 友達が倒れてそれを"仕方がない"なんて……おかしいに決まってる!」

 

 

 

悲痛な叫びが周囲に響く。何事か、と通行人からの注目を浴びるが気にしている場合ではなかった。

 

 

 

 

「…やだな~晴人君は」

 

 

「花陽達がおかしいなんて…」

 

 

 

 

 

ーーーすぐ目の前に映ったのは

 

 

 

 

「ことりは」

 

 

「花陽は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「正常(まとも) だ よ ? 」」

 

 

 

漆黒と言えるほどに瞳の光彩が無くなった二人のスクールアイドルの姿だった。

 

 

 

次の瞬間、俺は買い物袋を放り投げて走り出した。自分を呼び止める声が聞こえた気がしたが知ったことではない。今はただ、この場所から一刻も速く立ち去りたかった。行き先も分からず、通行人の中をくぐり抜けてひたすら走るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

 

 

真姫は重々しいため息をついた。今日のアイ活は気分が悪いという事で早引けさせて貰っている。

 

 

 

本音は絵里に顔を会わせづらかっただけなのだがーーー言えるはずもない。

 

 

 

特に宛もなくブラブラと歩き回る。CDショップで新譜でも見ようかと思っていると。

 

 

 

 

「……晴人?」

 

 

 

数メートル先、地面に倒れこんでいる自分達のプロデューサーの姿を見つけた。

 

 

 

「ちょっと…ど、どうしたの!?」

 

 

「……真……姫……」

 

 

 

今にも意識を失いそうな声で、晴人は真姫の呼びかけに応じる。

 

 

 

「あんた…顔真っ青じゃない! 一体何が…」

 

 

 

真姫は言葉を止める。晴人が彼女の服を強く握ったからだ。何かを訴えるような、助けを求めるようなその行為に真姫はたじろぐ。

 

 

 

 

「真姫……俺……俺……!」

 

 

 

 

真姫は無意識に晴人を抱き締めた。何故かは分からない。ただ、こうしないと目の前の少年は儚く消えてしまいそうだったからだ。

 

 

 

 

沈黙の間が続く。刻一刻と時間だけが進んでいく。

 

 

 

 

ーーー晴人。

 

 

 

 

ーーー何があんたをそんなに苦しめるの?

 

 

 

 

ーーー穂乃果? 絵里? 花陽? A-RISE? あんたのお姉さん? ……それとも、μ'sの皆?

 

 

 

 

ーーーそれなら

 

 

 

 

ーーー私は……

 

 

 

 

真姫の瞳から光が消えていく。心の中を一つの感情が蝕んでいく。西木野 真姫という存在が、別の在り方へと変わっていくーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その部屋は研究室(ラポ)と呼べるべき場所だった。

 

 

 

何に使うかも分からない機器の数々。得体の知れない薬品の山。ケースに入っている小動物。どれもが科学者ならば興味をそそられるに違いない。

 

 

 

その女性はケースからネズミを取り出した。栄養失調のせいだろう、通常より痩せ干せたネズミは衰弱しているようだった。

 

 

 

しかし、与えられた自由に身を浸らせ思いのままに机の上から飛び下りた。そのままトコトコと駆けていくーーー筈であった。

 

 

 

女性がメスでそのネズミの首元を掻き切ったのだ。瞬間、視界を鮮血が彩る。赤い液体は服を、髪を、肌を汚したが鬱陶しく思うどころか、その表情は恍惚を極めた。

 

 

 

 

ーーー綺麗だ。

 

 

 

 

とてつもなく美しく思う。彼女が普段目にしている日常よりも遥かに美しい。

 

 

 

常識というものに縛られた色褪せない世界など、生きていて何が楽しい。百年も生きられない人生ならば退屈で終わるよりも愉悦で終わる方が良いに決まっている。

 

 

 

そうーーーその女性が求めていたのは人生における"面白さ"だった。彼女は世界をどこか物語を読むように生きている。だとすればその物語における中身を追究するのは当然の事。

 

 

 

 

そして、その物語は現在進行形で混沌さを増していた。この混沌(カオス)をもたらした原因は自分にもある。あの金髪の少女ーーーに、試作品(プロトタイプ)の薬を渡したからだ。だが、それが何だと言うのか。

 

 

 

 

私は、私が求めるものの為ならば何だってする。資産も、技術も、命だって惜しむ事なく捧げよう。

 

 

 

だからーーーどうか見せて欲しい。この物語の結末を。この物語の結末を見届ける傍観者でありたい。否、傍観者でなければならない…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ……もっと見せて下さい。最高で最上で、尚且つ甘美な物語を……!」

 

 

 

 

白衣を身に付けた女性ーーー希咲 菊理は赴くままの狂気に身を任せ、高らかに嘲笑した……。

 

 

 

 

 





Fは"fear"、『恐怖』という訳です。

やっと折り返しって所まで書けました! 完結目指して頑張りますので皆様どうぞご贔屓に!

あ、活動報告の方にも目を通してくれると嬉しいです。


沢山のご感想&評価お待ちしてお待ちしてます!
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