ラブライブ!ーschool idol produce- 作:AGRS
…ども、AGRSです。
度重なる面接の練習のせいで更新がすっげぇ遅れました。スミマセン。
サブタイのアルファベットを考えてくれた方々、ありがとうございます! 次回から使わせて貰います!w
んじゃ、どーぞ!
「雨にゃ~」
能天気な声で窓の外を見ながら凛がそう呟いたのを俺は聞いた。
確かに先ほどまで曇っていただけの空から大粒の雫が降り注いでおり、絶え間なく辺り一面を濡らしていた。季節が本格的に冬に移り変わっているせいでもあるのか教室内でも少し肌寒い。
予報では昼から大雨だったはずだが、気まぐれな神様は一限目が終わったこの瞬間から降らせることにしたらしいーーーなどど考えながら俺は肩を竦める。
「……」
もう一度、窓の外を見る。その光景はさながら自分の心情を表しているかのようだった。
降りしきる雨は不安感と焦燥感……自分の生気を奈落の底に堕としていく感情を煽り立てている。雨に当たっている訳でもないのに、得たいの知れない冷たさに自分の体温が奪われていくようにも感じる。だが、その錯覚の冷たさよりも心の中が凍りきって寒気を生み続けているのが果てしなく怖かった。
恐れているーーー何に、と問われれば返答に困る。なにせ初めて向けられる感情に俺自身戸惑っているのだ。正直な所、今にも体が震えそうなくらい。
俺の気の重さを見事に表現している濃い灰色の雲は、嘲笑うかのように一向に止む気配のない雨を降らせる。
「晴人君」
ビクッ、と無意識に体を震わせる。ギ、ギ、ギと機械染みた音を奏でながら俺は首を後ろに向けた。やはりというべきか、俺が恐れている対象の一人である花陽が無邪気な笑顔で見つめていた。
「あ、ああ、どうした? 花陽」
「うん、ちょっとね……どうしたの晴人君? 何だか顔色が悪いけど…」
それは君の笑顔が怖いからだよーーーなんて言えるはずもなく、俺は花陽の疑問を曖昧に濁した。
「気にすんな。それで…何?」
「あ、そうだった。あのね、一緒にCDショップに行こうよ!」
机に両手を置いて、身を乗り出す勢いで花陽が言い放つ。……顔が近い。
「なんでまた…」
「晴人君新譜の事で悩んでるんじゃない?」
「……」
悩んでいることの見当外れさに俺は内心で苦笑を噛み殺した。
「なら、出来るだけ沢山の曲を聴いて発想を豊かにした方がいいと思うの!」
「ん……」
なるほど、一理ある。他のアイドルの曲から使えると思った部分を抜き取るというのは業界ではよくあることだ。盗むが華なら盗まれるも華。他人の技術を盗むのは褒められる事ではないが、戦略には役立つ。
それに、新譜で悩んでいる事も否定できない。それほど切羽詰まっているわけではないけど"ラブライブ!"の予選で使用する以上、半端な仕上がりにはしたくない。
「それとも花陽の家に来る? 自分で言うのも何だけど、集めたのが一杯あるから…」
「いや、それは流石に…」
花陽の家か…興味はある、けど…
「有り難い申し出だけど…遠慮させて貰うよ」
花陽の心遣いは素直に嬉しい。本来プロデューサーという立場である俺がしなければならないことを手伝おうとしてくれてるんだから。花陽自身、純粋な好意で言ってるんだろう。
けど……今は花陽と二人きりでいたく…ない。嫌っているわけじゃない。先日見た花陽の豹変ぶりが頭の中に残っていて、彼女に対する恐怖心を拭えずにいた。
「……断っちゃうの?」
花陽が心底納得いかないという表情で俺を見つめる。あまりにも重みを感じるその声に胸騒ぎがした。
「マタ、コトワッチャウノ?」
ゾ ク リ
あの光景がフラッシュバックする。俺の前に立ちつくす少女はあの時と同じ雰囲気を纏っていた。
そこに立っているだけ。
そこで俺を見ているだけ。
なのに、何故だろう。
何故俺は彼女がーーー"小泉 花陽"という一人の少女がどうしようもなく怖いと思うのだろうか。
脳で、頭で、体で、全身をフルに使ってその答えを見つけようとする。ーーー見つからない。故に、俺は脅えるしかない。
目の前のーーー少女に。言い表しようのないーーー恐怖に。
「え……と……ぁ……」
言葉にもならない声で何とか言おうとしていると
「花陽」
真姫が花陽の肩を叩いて、俺達の会話の間に入っている。
「…なぁに? 真姫ちゃん」
「晴人は疲れてるみたいなの。ほら、顔色も悪いでしょ? 今日の所は早退させて新譜の事はまた後日考えましょう」
「え?」
真姫の提案に提案に俺は戸惑った。確かに気分が良い方とは言えないけど早退するほどじゃ…それに一限目だけで早退するって…。
抗議しようと思ったが、真姫がキッと俺を睨みつけた。「何も喋るな」と言っているらしい。
「なら晴人君のお家まで花陽も付き添うよ」
「男なんだから一人で帰れるでしょ。そこまでする必要ないわ」
「でもーーー」
真姫が花陽の片腕を掴んだ。いや、『掴んだ』だけでは正しく表現しきれてない。正確には掴んで"握り締めた"
「…
真姫が花陽を睨み、花陽も真姫を睨み返す。そこには普段の仲の良さなど微塵も感じられない。
「…わかったよ」
根負けしたのか花陽は真姫の手を振り払って自分の席に戻っていった。…やっぱり気のせいじゃないよな。あの感じはまるで……穂乃果みたいだ。…どうなってんだよ……!
「さて、晴人。さっさと帰りなさい」
「…ほんとに帰んの?」
「当然、担任には上手く言っておくから帰ってゆっくり休みなさい」
絵里みたいなこと言うな…。休むって言っても体は大丈夫だけど……問題は心だった。何から考えればいいのやら……
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
カバンを持ち、席を立つ。そのまま教室のドアに向かって歩いていると
「にゃにゃ? 晴人君帰っちゃうのかにゃ!?」
凛が心配そうに俺の方へ駆け寄ってくる。気力を振り絞って何ともないような笑みを浮かべる。
「悪い、気分が優れなくてな。…また明日」
「うう…わかったにゃ。早く良くなってにゃ~」
軽く手を振って教室を出る。…凛には変な心配かけちゃったかな。明日ちゃんと謝ろう。
重い足取りで長い廊下を歩く。窓の外から聞こえる雨の音が酷く耳障りに聞こえた。
「…ん?」
マンションに帰宅すると、玄関で桐葉の靴があるのを見つける。ああ、まだ昼前だからな。仕事に行く時間には余裕があるか。
「…くそ、頭痛が……」
気分の悪さが悪化したのか、先程から頭痛が酷い。この陰鬱な雨にも当てられたのだろう、ふらつきながら自分の部屋に入る。
「そういや、真姫が顔色悪いって言ってたな…」
今の俺はどんな顔をしているんだろうか? そんなとりとめない好奇心で俺は洗面所で鏡を見ようと思った。カバンをベッドの上に強引に投げつけ、部屋を出る。
腑抜けた顔をしてたら顔を洗ってしゃんとしようーーーなんて事を考えながら洗面所と浴槽のある扉を開ける。……と
一糸纏わぬ姿の桐葉がそこにいた。
「…あら、晴人。随分早いのね」
「あ……」
当然の如く、目が奪われる。今一度、自分の姉のスタイルの良さを痛感した。出るとこは出て、引っ込む所は引っ込んでいるーーー特に乳房の方は菊理さんに負けず劣らずその存在を強調していた。比べるのもどうかと思うけど。
風呂上がりでもあったのだろう。髪の毛から滴る水が肌を伝っていき、妖艶な雰囲気を醸し出している。
……って見とれてる場合じゃねぇ!
「わ、悪い! 桐葉!」
すぐさまその場で回れ右。説教は後でいくらでも食らう覚悟をして、とにかく今はこの場から逃げようーーー
「待ちなさい」
……が、不意に呼び止められた声に俺は動く事ができず、極力桐葉の体に目がいかないようにしながら振り向いた。
「何をそんなに慌てているの。…子供の頃は一緒にお風呂に入った仲じゃない」
何時の話を蒸し返してるんだろうか。あの時とは全然異性への認識が違っているだろうに。それがたとえ姉弟であったとしても。
というか桐葉。頼むから恥じらいというのを持ってくれ。それが駄目なら服を着るかせめてタオルを巻いてくれ。目のやり場が非常に困る。
「昔と今じゃ全然違うよ…俺も、桐葉も…」
「私にとっては晴人は晴人のままよ…それとも」
唐突に、桐葉はその豊満な乳房に手をのせた。お、おおおい!?
「私には…晴人が惹かれる魅力がないのかしら?」
あろうことか、そのまま自分の胸を揉みだした。ぼんやりとだが、某スピリチュアルガールの顔が頭の中に浮かび上がった。
「どう、かしら?」
どうってなんだ。眼福です、とでも言えば良いのか。そういやアイツも他のメンバーの胸を揉んだり、自分の胸を揉んだりしてたな。これ見よがしに見せつけて「晴人もわしわししてみいひん~?」とか言ってくるのにはうんざりした。やった瞬間、セクハラで訴えられるというのに。
「ねぇ、晴人。私の体は魅力的かしら?」
馬鹿な事を考えてたら桐葉が距離を詰めてきており、素っ裸のままでそんな事を聞いてくる。
「じゅ、十分魅力的だって。だから離れて…」
「ふぅん、なら…襲いたいくらいに?」
硬直、背筋が凍る。…桐葉は分かって言ってるのか? だとしたら
「晴人は……私をどうしたい?」
……ッッ!!
「俺……部屋に戻る!」
耐えきれず、桐葉を突き放して俺はその場から逃げた。答えたくない事から逃げたとも言える。ただ、今は心を落ち着かせる場所が欲しかった。
「どうして……逃げるの?」
後ろからそんな桐葉の声が聞こえた気がした。
音ノ木坂学院、放課後。
西木野 真姫はアイドル研究部部室前に立っていた。その表情は明るいと呼べるものではなく、どこか深刻な問題を抱えているように見える。
まぁ、実際その通りなのだが。
(今のままじゃ晴人はいずれ壊れる…)
今日一日ーーーと言っても精々二時間程度だが、晴人の様子を見ていて大丈夫そうには見えなかった。心ここにあらず、と言った感じで何かに脅えているようだった。
(やはり……花陽)
晴人と花陽の会話を真姫は聞いていた。途中までは何の変哲もない会話であったが、花陽の提案が断られた辺りから風向きが怪しくなっていた。
(何とかしないと……私が)
根拠はないが分かる。晴人は今凄く苦しんでいる。目に見えぬ恐怖に。その恐怖を纏う彼女達に。
「……大丈夫よ、晴人。あんたの不安は私が全部取り除いてあげるわ」
晴人が自分に見せた、あの脅えた表情。もう晴人にあんな顔はさせない。私が晴人の役に立ってみせる……!
だから、お願い。
私を……見て。
多くは望まない。ただ私の傍にいてくれるだけで良いから……私を、見捨てないで。
それだけで、私はいくらでも戦えるから。
晴人が望む結果へ導くから。
だから、だからーーー
「……守ってみせるからね、晴人…」
少女は覚悟を決め、愛しの人を苦しめる者達のいる部屋に、勇猛果敢に入って行った…。
SRのんたん、何とか手に入りそうです。