ラブライブ!ーschool idol produce- 作:AGRS
そして夏休み初日から学校に行っているのだ!(泣
どうなってる、夏休みなのに全然休める余裕ないスケジュールだぞ! 受験生だからってこんなのないよ!
……もう書く気力が……くっ!
それでは……どーぞ…
「ん? 真姫だけかしら?」
部室内に足を踏み入れた真姫の視線の先には、生徒会の仕事を持ち込んだのか書類をまとめている絵里と新しい衣装を刺繍していることりの姿があった。
「…ええ、凛と花陽は少し遅れるって」
「そう」
絵里は再び書類に目を落とす。真姫は熱心に衣装を製作していることりを一瞥した。
ーーー絵里と花陽は間違いないけど…もしかしたら…ことりも……。
決定付ける証拠はない。しかし、最近ではことりも晴人への過剰な接触が増えているように思う。自分の勘違いという事も考えられるが今の真姫には物事を正常に判断できるほどの思考回路を持ち合わせていなかった。
…何にせよ、ここですべて終わらせる。
強く、拳を握り絞める。大丈夫、万が一の為に自分を守る武器は鞄の中にある……!
「絵里、ことり、話があるんだけど」
「何?」
「ことりも?」
二人はそれぞれ作業していた手を止める。彼女から自分達に話があるとは珍しい、そう思ったのだろう。真姫に視線を集中させた。
「……」
真姫は心の中で深呼吸した。ここから先、一つでも言葉を間違えばすぐさま自分は食い殺されるだろう。だから覚悟を決める。"自分の仲間"と戦う覚悟を。そして誓う。
彼女達を倒し、晴人を守る……!
真姫の目は闘志に燃えていた。何が起ころうと怯まず、脅えず、戦い抜くーーーそんな意志が見て取れる。力強い口調で真姫は告げた。
「ーーーもう、晴人に近づかないで」
「……」
「……」
しばしの間静寂が訪れる。かすかに窓ガラスに当たる雨粒の音が聞こえるが、別段気にする必要のない些細な音だった。
「…と言うと?」
真意は理解している。ことりも同様だろう。ただ完全に予想外の言葉に心の中で動揺しつつも表情には出さず、極めて冷静な態度で聞き返した。
「言葉通りの意味よ」
僅かに目付きが変わった二人に真姫は少し身をすくませるが、確固たる意志を再確認して言葉を続ける。
「…今、晴人はとても苦しんでる。肉体的にも、精神的にも…。そしてその原因は絵里と花陽……そしてことり、おそらく貴方もよ」
「……」
沈黙で返したのを肯定と取ったのか真姫はことりから絵里へと視線を切り替える。
「穂乃果が倒れた件……あれは体調不良なんかじゃなくて絵里、貴方の仕業なんでしょう…?」
「あら、そんな事まで知ってるのね」
認めた……! 衝撃にも似た痺れが彼女の脊髄を駆け抜けていった。絵里の笑みには愉悦の色が浮かんでおり、それを見た真姫の背中が不快感と嫌悪感で粟立つ。
「お察しの通り、穂乃果の記憶を奪ったのは私よ。…あの子の行動は非常に目障りだったからねぇ……"殺さなかった"だけ感謝して欲しいわ」
額の汗が滲む。それはつまり、やろうと思えば"穂乃果を殺す事も出来た"と言う事。邪魔だからという理由で自分の仲間に手をかける事も出来たのだ。
……にわかには信じられない。だが信じるしかない。何故なら信じざるを得ないほどに目の前の少女の瞳は淀んでいるのだから。
「それで? 近付くなとは具体的にどういう意味でなの?」
あくまで穏やかな口調で絵里は問い返す。
「…金輪際、晴人に関わらないで。学院でも、プライベートでも、メールや電話のやり取りでも、晴人と直接関わるような事をしないで」
真姫の主張に反応したのはことりだった。
「うーん……。あのね真姫ちゃん、気を悪くしないで欲しいんだけどそれは無理じゃないかなぁ?」
真姫の鋭い目付きがことりを睨み据える。ことりはおどけたように手を上げながらも、朗らかに笑って告げた。
「極端な話、晴人君はμ'sのプロデューサーなんだよ?私達から彼に関わらないようにしたとしても、きっと彼は不審がって自分から接触しようとしてくる。これから先二度と関わらないなんてできっこないよ」
文句なしに合理的な理屈だった。そもそも真姫は"晴人と関わるな"という主張の範囲を限定していない。この場合、"μ'sの活動以外で関わるな"と言うべきであり、金輪際関わるなという事が既に間違っているし不可能に近い。が……
「……私の言いたい事は変わらない」
そう言って真姫が鞄から取り出したのはーーーバチバチと音を立てたスタンガンだった。出力は最低にしてあるが、それでもまともに食らえば気絶は免れない。
「二度は言わないわ。絵里、ことり、お願いだから晴人をこれ以上苦しめないで……!」
きっと分かってくれるーーーそんな儚い希望にすがるように真姫は震えた声で必死に懇願する。だが、彼女の希望を打ち砕くかのように絵里は鼻で笑った。
「苦しめないで……ね」
どこか達観した表情で絵里は天井を見た。突きつけられている凶器には脅えもしない。脅える必要などない。彼女には真姫など簡単に打ち負かせる自信があったからだ。
「違うでしょう? 真姫」
「……?」
「要するに貴方は晴人に他の女を近付けたくないだけで、苦しめているとかの理由で私達を遠ざけようとしているだけよ」
「……ッ!」
「その気持ちはよく分かるわ。穂乃果がいい例ね。…妬ましいでしょ? 憎らしいでしょ? この世から消し去りたいと思うでしょう…?」
「そんな、ことーーー!」
スタンガンを持つ手が震える。絵里の言葉一つ一つが自分の体に突き刺さるように感じた。
「素直になりなさい、真姫。……晴人の事、好きなんでしょ?」
その言葉と同時、ことりがクスクスと笑い出す。
「なぁんだ…真姫ちゃんも私達と同じなんだ…」
椅子から立ち上がり、ゆっくりと真姫に歩み寄っていく。普段通りの緩やかな顔でも、この状況では不気味さを一層際立たせていた。
「なら大丈夫。私達は真姫ちゃんの味方だよ」
味方……? 違う。あんた達は晴人を苦しめる、諸悪の根源よ……!
キッと真姫はことりをもう一度睨み付けた。それを見た絵里はやれやれと溜め息をつく。
「まぁ、貴方がどうしようと勝手だけど……果たして晴人は貴方の行動に感謝するのかしら」
ぐにゃり
真姫の視界が歪む。
馬鹿な、感謝するに決まってる。自分の恐怖の対象がいなくなればそれを取り除いた人物に誰だって感謝するだろう。……いや、待て。
どうして私はこんなに必死になっているの?
ーーー晴人を、守るため。
どうして守る?
ーーー晴人が好き、だから。
そうだ、私は晴人の事が好き。彼の事を考えると頭が熱くなる。彼の姿を見ると胸が痛む。これが世間一般で言う"恋"と言うものなのだろう。私は晴人にーーー恋をしてる。
けれど、けれどけれどけれどーーー
"晴人は私をどんな存在として認識しているのか"
仲のいいクラスメイト? 担当しているスクールアイドルの内の一人? そこに友達以上の、異性としての意識はーーーなかったのだろうか?
考えたくない。認めたくない。ああ、脳が張り裂けそうだ、何か考えるだけで痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いーーー!!
「う…あああああああッッ!!」
真姫は無我夢中で手に持っていたスタンガンを絵里に狙いを定めて押し付けようとした。小さな火花を出しているスタンガンは絵里の意識を奪うーーー筈だった。
「…馬鹿な子」
絵里は冷静な動きでそれを軽くいなし、真姫の腕を掴んで床に叩きつけた。真姫の体に鈍い痛みが走る。精神的なものではなく、正真正銘肉で感じる痛みだった。
「どうにかできると思ってたの? そんな玩具で……ほんと救いようがないわね。なんなら真姫、貴方も穂乃果のようになってみる?」
戦慄ーーー真姫の脳内に浮かんだのは晴人を忘れた自分。二ヶ月ちょっとではあるが、互いに言い争いながらも楽しく過ごした日々。かけがえのない
嫌……!嫌嫌嫌嫌……っ!
真姫は重い体に鞭を打ちながら逃げるように部室を出ていく。絵里とことりは特に追うような動作を見せず、静かにその姿を見送った。
二人だけになった部室でことりが絵里に訊ねた。
「…よかったの? 記憶を奪わなくて」
「ええ、いいのよ。これであの子も自分の矮小さを思い知ったでしょう」
それに、と付け足して絵里は言葉を続けた。
「あの子にはもう…何も出来ないわよ」
絵里が笑い、ことりも笑う。未だ止まない外の雨を背景に、狂気の表情に満ちた二人の悪魔は歓喜に身を震わせていた。
「……」
騒然と降り続ける雨の中、俺は傘も差さずに近所の周りを歩いていた。
理由は特にない。あるとすれば何から考えればいいのか分からない頭を冷やすためでというのが理由だ。水が染み込んだ服が肌にまとわりついてとてつもなく鬱陶しい。
「…何やってんだ俺は」
早々に学院を早退して、姉の裸姿に動揺して、挙げ句にはこうして雨に打たれているーーー他人から見たら呆れ反すところだろう。だけど俺自身訳がわからないんだから仕方がないーーーと言い訳するしかない。
「……止んできたな」
少しずつではあるが雨音が弱くなっている。この調子だとじき完全に止むだろう。
「……帰るか」
丁度頭も冷えた事だしーーーそう内心で呟いて踵を返そうとしたら
「は……る……と……」
か細い少女の声。だが、聞き間違えるはずがない。この声はまさしくーーー
「真姫っ!」
俺と同じようにずぶ濡れの姿で真姫が倒れていた。俺は慌てて彼女に駆け寄り頭を抱えて表情を伺う。いつもの強気な態度はなく、弱々しい表情で俺を見つめていた。
「真姫、お前アイ活は……傘も差さないで……いや、そんな事より何があったんだ!?」
一度に沢山の事が頭に浮かんで顔をしかめる。折角冷めかけた頭がまたもや熱くなった。ああ、もう。この脳ミソを何とかしてくれーーー!
「はる、と……」
かろうじて声を出している真姫の目には雨ではない、別の雫が溢れ出ていた。
「ごめ……な……さい……わた、し……何も出来なかっ……た……守る、って決めた、のに……で、も……嫌わない、で……見捨てないで……私、を……忘れ……ないで……!」
答えにならない答えを返され、戸惑う。けれど、彼女の表情と発した言葉から感じ取れる確かな事、それだけは分かる。
ーーー真姫はきっと何かを成そうとしてくれた。
自分なりに、自分のやり方で。そしておそらくーーー俺の為に。
なら俺に出来る事は彼女を元気付ける事だ。…真姫は慰めなんか求めてないかもしれない。それでも俺に出来る事はこれしかないのだからーーー彼女に視線を合わせて真っ直ぐ見つめる。
「真姫、何があったかは聞かない。けどこれだけは言える。この先何があっても俺はお前を嫌うことはないし、見捨てることもない。忘れるなんてもっての他だ」
安心させる為じゃない。俺の本心を包み隠さず言った直後、真姫は頬を緩ませた。
「ほん、と……?」
「ああ…」
「嘘じゃ、ない……?」
「勿論」
「……やっぱり晴人は優しい……」
そして知る。"彼女の瞳が全く笑っていない"事に。
「晴人ーーー」
「真、姫……ッッ!?」
気づいた時には遅い。彼女の顔は目の前まで近付いておりーーー
俺は自分の唇に重なった真姫の冷えきった唇の感触を感じていた。
「……落ち着いたか?」
「うん……」
そう言いながらも真姫は俺の服を掴んで離さない。
あの後、そのまま真姫を家に帰すわけにはいかないので近かった俺ん家のマンションに連れてきていた。適当にタオルで体を拭いて、風邪を引く危険もあったので風呂に入らせようと思ったのだがーーー「晴人と離れたくない」の一点張りで言うことを聞いてくれなかった。
時刻は既に六時。雨も止んでるから帰る分には問題ないんだけど……
「とりあえず親の人に連絡しよう。心配してるかもしれないしな」
こくん、と頷いて真姫は携帯を取り出す。…最悪泊まる事になるかもな。桐葉になんと言えばいいのやら…なんて事を考えていた時だった。
ガチャ
玄関の開く音。鍵は掛けていたーーーとすれば開ける事が出来るのは必然的に一人。
ズン、ズン、と足音は近くなり、やがてリビングのドアが開かれる。そこに居たのは予想通りの人物だった。
「…お、おう桐葉。今日は速かったな」
「……まあね」
俺を軽く一瞥して、俺の服を掴んでしがみついている真姫に目を向ける。いつか見たおぞましい瞳がそこにあった。
「ところで晴人。その子は誰かしら? 見ず知らずの女を家に招くなんて聞いていないんだけど?」
妙に覇気の篭った口調で桐葉は俺に聞いてくる。そんなに怒る事なのか……どう言い訳しようか頭を悩ませているとーーー
「……誰って」
服を掴む手に力をこめて唐突に真姫が口を開いた。鋭い眼光が桐葉を睨み付けている。そしてーーー
「ーーー恋人ですけど?」
超ド級の爆弾を落として真姫は俺に抱き付いた。
サブタイのRは"rain"、『雨』ですね。
無性に使いたくなった。後悔はしていない! キリッ
前書きであんな事言ってましたが作者は元気です。皆様の応援があればもっと元気になるだろうな~チラッチラッ
次回こそは…今週で出せるように……!