ラブライブ!ーschool idol produce-   作:AGRS

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へーい、AGRSです。

今日中に書いちゃいました~~。フツーに書いてたら六千字越えた……ちょっとビックリw

暑さも増してますね。皆様、水分補給はしっかりと! 倒れたくなきゃ、ね!

あー、眠い……どーぞ……ぐぅ


第26話 絶望……Q/正しき選択は?

 

 

 

 

「こ、ここまで来れば……!」

 

 

 

にこに部室を追い出された後、俺は真姫と一緒に学院を飛び出して全力疾走で逃げていた。なにせ何人か追ってくるもんだから逃げ回るしかない。

 

 

 

 

「真姫、大丈夫か?」

 

 

 

隣で息を切らせている真姫に声をかける。流石にしがみつく気力もないのか、俺から離れていた。最初は彼女に引っ張られていたはずなのにいつの間にか俺が引っ張る側になっていた。ま、鍛えるには鍛えてるからな……。

 

 

 

 

「平気。……ちょっと疲れただけ」

 

 

 

頬を伝う汗を鬱陶しいように乱暴に拭う。心無しかいつもの強気な目付きに戻ってるような気がする。が、今はそんな事を気にするような余裕はない。考える事が山積みなんだ。

 

 

 

未だに呼吸が整わない真姫に「何か飲み物買ってくる」と告げて自販機を探し出した。思いの外近くにあったので、財布から小銭を取り出して適当に購入する。

 

 

 

 

 

「……一週間、か…」

 

 

 

 

 

にこの衝撃宣言。文字通り俺のみならず、他のμ'sの面々に衝撃を与えただろう。

 

 

 

アイドルに関しては生真面目な彼女だ。真姫、絵里、花陽、ことりのいがみ合いに腹を立てての事だとは思う。だが、予選もそう遠くない時期に活動停止だなんて…

 

 

 

 

「何やってんだよ……俺は!」

 

 

 

穂乃果の体調不良の一件で思い知り、菊理さんの前で強く誓っただろう。彼女達をスクールアイドルという一つの奇跡として成り立たせると!

 

 

 

握った拳を自販機に叩きつける。じわじわと手に痛みが広がる。本来ならこんな事態にならないように務めるのがプロデューサーである俺の仕事なのに……!

 

 

 

さっきだってそうだ。流れとは言え、真姫に手を引かれて突然の出来事に逃走という選択肢を選んでしまった。あの場でにこを説得する事だって出来たんだ。出来たはずなんだ!

 

 

 

なのに俺は、スクールアイドルのプロデューサーという自覚の無さが原因で、その認識の甘さがこの現状を生んだんだ。臆病風に吹かれて!

 

 

 

 

「くそ……!」

 

 

 

 

自分に対する嫌悪感が膨らんでいく。自分で自分を殴りたい気分だ。むしろ誰かに殴って欲しい、とさえ思う。

 

 

 

 

「どうしたもんかな……」

 

 

 

一本購入して軽く口をつける。喉を潤してはくれたが、この忌々しい気分までは潤してくれなかった。当然か、と肩をすぼめる。

 

 

 

 

「大変な事になったね~。あ、穂乃果ミネラルウォーターがいいな!」

 

 

「全くだよ……ん」

 

 

 

要望のミネラルウォーターを穂乃果に手渡す。穂乃果はそれを受け取って飲み干していく。イッキ飲みはあまり控えた方がいいぞ、穂乃果……穂乃、果?

 

 

 

 

「……」

 

 

「……」ゴクゴク

 

 

「何でお前がいるーーーッ!?」

 

 

「!? ぶふぅーー!!」

 

 

 

 

穂乃果が口に含んだミネラルウォーターを吹き出す。ちょ、汚え……じゃなくて!

 

 

 

「ゲホッゲホッ! うう……なんでって晴人君と真姫ちゃんの後ろを逃げてたからだよぅ…」

 

 

「そうじゃねぇ! 何でついてきたんだよ!」

 

 

「だって怖かったんだもん! 皆怒った顔で追っかけてくるし……ことりちゃんも……一人になるのが怖くて、晴人君となら安心かなって…」

 

 

 

俺は言葉を止める。……そうか、穂乃果はことりや花陽の豹変ぶりを知らないんだったな。確かに彼女達の鬼気迫る雰囲気に怯えるのは体験した身として同感できる。穂乃果が責められる謂れはないな。

 

 

 

「悪かった、怒鳴ったりして。とりあえず真姫の所に戻ろう」

 

 

 

そこで俺はーーー疑問を持った。

 

 

 

 

『このまま……しちゃおっか?』

 

 

 

 

振り返り、穂乃果を見る。……"あの時"とは違う、ただ純粋な表情の穂乃果だ。いや、あの時も何も穂乃果はいつもこんな感じだった……よな?

 

 

 

「本当に本物の穂乃果?」

 

 

「へ?」

 

 

 

きょとん、と穂乃果は首を傾げる。演技だとは思えない。というか、穂乃果に完璧な演技をやり通せるような技術はない。

 

 

 

「あ! 今失礼な事考えたでしょ!」

 

 

「まさか。いいから真姫の所に戻るぞ」

 

 

 

杞憂だなーーそう結論付け、穂乃果と共に歩く道中俺は携帯を取り出した。

 

 

 

「携帯取り出してどうするの?」

 

 

「決まってんだろ。にこの説得だ」

 

 

 

今からでも遅くはない。俺は一度もかけた事がないにこの電話番号を電話帳から見つけ出して、電話をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…駄目ね、やっぱり繋がらないわ」

 

 

 

溜め息と共にそう呟くと、絵里は希に「そっちはどう?」と視線を向ける。

 

 

 

「メールを送ってもうんともすんともない……これは本格的に由々しき事態かもねぇ」

 

 

 

 

現在、絵里、希、海未、ことり、花陽、凛は生徒会室に集まっていた。アイドル研究部部室を抑えられてしまった以上、彼女達の行動範囲も制限されてしまう。対策を練る事が出来る数少ない場所だった。

 

 

 

 

「にこちゃんが怒りっぽいのはいつもの事やけど、ああなるのは珍しい。ちょっと可愛いと思うたんよ」

 

 

「茶化さないで。何故か晴人にもかからないし…」

 

 

 

 

絵里は希をジト目で見ながら、何も出来ない事の歯がゆさに思わず舌打ちした。それ横目で確認した海未は不審に感じながらも気になった事柄を全員に聞く。

 

 

 

「そういえば…穂乃果は…?」

 

 

「さあ…? 気付いたら居なくなってたにゃ…」

 

 

 

唯一反応したのは凛だけで、他の皆は知らん顔でブツブツと何か言っていた。希は何か言いた気だったが、口を閉じて再度にこにメールを送る。

 

 

 

「穂乃果ちゃんよりも、今は晴人君だよ」

 

 

「うん、多分今でも真姫ちゃんと一緒だと思う」

 

 

 

ことりと花陽は急に顔を上げたかと思うと、鋭い眼光を絵里に向ける。二人の視線を軽く受け止め、絵里は小さく頷いた。

 

 

 

「…そうね。目下の問題は真姫よ」

 

 

 

机を叩き、絵里が椅子から立ち上がる。全員を一度見回すと有無を言わさない口調で大きく告げた。

 

 

 

 

「真姫がまだあの状態だとすれば晴人といる可能性が高いわ。今、あの子を晴人と一緒にさせていたら非常に危険よ。何をしでかすか分からない。にこの方も気掛かりだけど……ここにいる全員で晴人と及び真姫の捜索に向かうわ、異存は無いわね?」

 

 

 

ことりと花陽は瞬時に頷く。希も少し躊躇う仕草を見せるも頷いた。だが、海未と凛は納得いかないように絵里へ反論した。

 

 

 

「で、ですが無理に晴人達を探さなくても…」

 

 

「そうにゃ…まずはにこちゃんを…」

 

 

「晴人以外に優先する事なんて無いわ!」

 

 

 

 

 

絵里の怒鳴り声に海未と凛は身をすくませる。希がすぐに二人の後ろに回って「大丈夫や」となんとか落ち着かせた。

 

 

 

「えりちも突然の事の連続で混乱してるんよ…」

 

 

 

他の三人には聞き取れないほどの小声で海未と凛に耳打ちする。二人は何も言わず小さく頷いた。混乱している……か、それは自分もだと言うのに。

 

 

 

(えりち……)

 

 

 

 

東條 希は困惑していた。アイ活が禁止されたこの状況にもだが、自分の友人の変わりようが大部分を占めていた。常に冷静な絵里が、ここまで取り乱している。それもにこの事なら分かる。何だかんだ言いながらも同級生としてそれなりに付き合いは長い。少なくとも、晴人よりはーー

 

 

 

(……これが、えりちが危惧してた"最悪の事態"って事なんか……?)

 

 

 

自分の胸に問いかける。自分に問い出したのだから自分で答え出すしかないーー真っ暗な洞窟の中を手探りで歩くような感覚に希は陥っていた。

 

 

 

 

また、心の中の葛藤は希だけではなく、海未と凛も同様だった。

 

 

 

 

(ことり……)

 

 

 

 

園田 海未は躊躇っていた。このまま晴人達を探すという考えに乗るべきかを。それよりもにこの説得が優先されるべきではないか? 事情はどうあれ私達のまとまりの無さが原因なのは間違いないのだ。ならば、きちんと彼女と話をつけて早急な活動再開に尽力すべきでは……?

 

 

 

それに、ことりの態度も気になる。勘違いだとは思いたいが先程の彼女の様子は以前の穂乃果の"おぞましさ"を垣間見せた。自分の幼馴染みが変わっていくーーその恐怖を再び痛感させられたのだ。

 

 

 

(私は……どうすれば……)

 

 

 

考え悩む海未の隣で、凛も難しい顔付きで唸っていた。

 

 

 

 

(何だか……かよちんが怖いにゃ……)

 

 

 

 

星空 凛は動揺していた。彼女が目にした花陽の挙動、あれは凛の一生の中で疑う余地もなく初めて見るものだった。引っ込み思案で容易く折れそうな風貌ながらも、心の奥では鉄の意志を秘めているーー"そんなもの"ではない。

 

 

 

あれは、自分の怒りを思いきり吐露したものだ。真姫に対する不満を、憎悪を、目に見えざる感情をぶちまけた結果があの豹変ぶりーーそれだけの事だった……けど、それでも。

 

 

 

(にゃ…)

 

 

 

花陽にかける言葉が見つからない。伸ばしかけた手は気持ちの脆さが表れるようにすぐに引っ込められた。口を閉じてただただ下を見落とすだけだ。

 

 

 

「それじゃ、晴人か真姫を発見したら私に連絡を。……ああ、ついでに穂乃果もね。皆、頼むわよ」

 

 

 

それぞれの思惑が交錯する中、音ノ木坂学院のスクールアイドル達は急ぎ足で生徒会室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、穂乃果。真姫を頼むな」

 

 

 

真姫の所に戻った後も、俺はにこに何度か電話とメールを繰り返したのだが、あちらからは何の音沙汰もなかった。そこで、直接にこの家に行って説得しようと考えたのだ。

 

 

 

絵里達にも力を貸して貰おうと考えたのだが……いや、今回の事は俺一人で片を付けたい。それが俺なりの責任の取り方であり、けじめだった。

 

 

 

「そんな! 晴人ぉ!」

 

 

「はいはい、真姫ちゃんは穂乃果と一緒にお家に帰ろうねー!」

 

 

 

駄々をこねている真姫を穂乃果が後ろから羽交い締めにする。この二人にも帰ってもらう事にした。

 

 

 

真姫の方は心配だけど……ま、穂乃果なら何とかしてくれるだろう。根拠はないけど。

 

 

 

「じゃあな二人共。明日から活動再開出来るように頑張るよ」

 

 

「うん! 晴人君も気を付けてね~」

 

 

 

暴れる真姫を抑え込みながら穂乃果が手を振って見送ってくれた。

 

 

 

「えーと、確かこっちだったよな…」

 

 

 

にこの家ならば部活帰りに送って行った事がある。とある団地だ。あれからあまり時間も経ってないので帰宅しているかどうかは望み薄だが、じっとしているよりはマシだ。

 

 

 

最悪の場合は迷惑だろうけど家で待たせて貰おう……とにかく一刻も速くにこと話がしたかった。

 

 

 

夕暮れと呼ぶには些か早い。沈みきってない太陽を軽く見上げて嘆息する。……世の中の無常さとやるせなさを実感しているようだ。

 

 

 

何でこうなったんだろう。何がいけなかったんだろう。どこで間違ったんだろう。

 

 

 

 

ーー"どこで間違ったんだろう?"

 

 

 

 

そうだ、俺は、どこで選択肢を誤ったんだ? 人生はゲームではない。故に目の前に選択肢なんか浮かんではこない。けど、それでも選ばなければならない。生きている限り、選ぶ事の連続だ。

 

 

 

なら俺は選んだはずだ。何処かで。"現在(ここ)に至るまでの選択肢を" 。

 

 

 

 

 

「ーー見つけた」

 

 

 

 

俺の思考がゆっくりと疑問の渦に傾いていった時、聞き慣れた声が後ろから聞こえた。俺は咄嗟に振り向き、その正体を確認した。

 

 

 

 

「……希……」

 

 

「晴人、一人は危ないんよ?」

 

 

「ん……分かってるけど……」

 

 

 

 

一度朗らかに笑うと、希はそのまま俺に歩み寄ってくる。そして、懐から携帯を取り出す。……絵里達に連絡するつもりか?

 

 

 

「……何だか難しい顔しとるね」

 

 

 

希は取り出した携帯を開こうとしてーーやめた。再び携帯をしまうと俺の顔色を伺うように下から覗きこむ。

 

 

 

 

「ふむ、……ねぇ晴人、ちょっと話さんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「晴人も薄々勘づいとると思うけど……ウチらμ'sの何人かは"異常"や」

 

 

「ああ」

 

 

「真姫ちゃんはさて置いて……花陽ちゃんにことりちゃん……それに、えりち」

 

 

「……ああ」

 

 

 

分かってはいた。部室での絵里はことりと花陽と同じくらいの恐怖を醸し出していた。殺意を含んだ眼光で真姫を睨みつけていた……信じたくはないが。

 

 

 

 

「……原因は分かる?」

 

 

「真姫が恋愛なんかにかまけると思ったからだろ…」

 

 

 

 

自分達がこんなに頑張っているというのに、一人メンバーが恋愛に現を抜かしてるようじゃ本末転倒だ。絵里が怒るのも納得できる。

 

 

 

俺の返答に希は呆れが混じっているような溜め息をついていた。

 

 

 

「まぁ、間違ってはいないんやけど……そこで一つ提案があるんや」

 

 

「提案?」

 

 

 

希の言葉に興味を引かれて、俺はつい身を乗り出す。希は目を静かに閉じると二秒もせず開いて告げた。

 

 

 

 

 

「晴人は逃げるべきや」

 

 

 

 

…………。

 

 

 

 

 

「逃げ、る……?」

 

 

「そうや。学院も、μ'sもほっぽかしてこの町から逃げるんや。以前の高校に戻るのもいい。もうあの子達に会う事がなければ何でもいいんや」

 

 

 

希の言っている事を理解する為には少しばかりの時間を要した。つまり、全てを投げ棄てて、普通の生活に戻れ、という事……か? 俺の解釈を口にすると希は頷いた。

 

 

 

 

「晴人はなんも気に病む必要ない。……はっきり言っておくわ、これから先は晴人の命に関わってくるかもしれないんや」

 

 

 

命ーー冗談だろ? と俺は乾いた笑みを浮かべた。けれど、希の瞳は冗談を言っているようには見えないほど真剣に俺を見据えていた。

 

 

 

俺の体に衝撃が走る。ーーこれが、選択肢。今、俺は枝分かれした道の前に立っている。

 

 

 

片や俺が以前暮らしていた町。多くの友人がおり、別段特別な事があるわけではないが、平穏に包まれたありふれた日常がそこにあった。

 

 

 

片や俺が今暮らしている町。スクールアイドルという存在が闊歩しており、俺もプロデューサーとしてμ'sというスクールアイドルの活躍につとめている。が、現時点でその存在そのものが危うい状態だ。

 

 

 

安寧の道か、茨の道か。俺は頭を抱え、悩みに悩む。悩んで、悩んで、悩んでーー

 

 

 

 

「どうする?」

 

 

 

希の声が耳を過る。俺はどうしたい? 希の言うことが事実なら迷わず逃げる事を採択すべきだ。責められても知った事じゃない。命が危険だと分かっているのなら妥当な判断だ。

 

 

 

……俺は。俺は、俺は、俺はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでも俺は、あいつらを"ラブライブ"の頂点に導きたい」

 

 

 

 

強がりじゃない。これは、俺が一度決めたことなんだ。それを簡単にはーー曲げたくない。たとえ死ぬ危険があるとしても。

 

 

 

 

「約束したんだ。スクールアイドルの頂点を見せてやるって。それを成すまでーー俺は逃げないよ」

 

 

 

俺の言葉を聞いて、希は何度か目をパチパチさせるが、やれやれと笑みを浮かべる。

 

 

 

「…そっかぁ。晴人は戦う事を選んだんやね」

 

 

 

うんうんと頷いたかと思えば今度はケラケラと笑い出す。忙しい奴だな……ま、希らしいか。

 

 

 

「悪いな、助言無駄にしちゃって」

 

 

「いいんよいいんよ、聞きたい事は聞けたし。……行くところあったんやろ? 呼び止めてごめんなぁ」

 

 

 

あ、そうだった。速くにこの家に行かないと!流石にもう家についてるだろう。希の話も聞けたし、活動禁止の撤回をしてもらわないと。

 

 

 

俺がその場を駆け出そうとするとーー

 

 

 

「あ、晴人。最後にもう一つ」

 

 

 

と、希が何か聞くことがあるみたいなので後ろを振り返ってーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君 は い つ 入 れ 替 わ っ た の か な ?」

 

 

 

 

ザクッ!

 

 

 

冷たい感触。背中に突き立てられたナイフ、流れ落ちる赤色の液体、薄れていく意識。痛みを感じる為の感覚が無くなっていく。

 

 

 

「……晴人なら迷わず"逃げる"事を選択したはずや。なのに……晴人に化けるなんてとんでもない畜生野郎やなぁ」

 

 

 

希が何か言っているようだが聞こえない。いや、聞こえてはいる。けれど、理解しようにも突如起こった事に脳が追い付かない。俺は力なく地面に崩れ落ちる。

 

 

 

「えりちに連絡せんで正解やったね。偽物を発見してもなんもならん。……やっぱりカードのお告げは正しいんよ」

 

 

 

視界がぶれる。最早希の声も届かない。右、左、上、下と世界が揺れ動くように感じられ、俺は必死にーー手を伸ばした。

 

 

 

「の……ぞ……み……」

 

 

 

無意識に俺はその名前を口にした。いや、果たしてこれは名前だったのだろうか? 分からない、何も考えたくーーない。

 

 

 

 

「さーて、本物の晴人を探しに行かんとなぁ……じゃあね、"偽物さん"」

 

 

 

 

その言葉が最後。人影は足音と共に遠ざかっていく。瞬間、俺の意識は限界を告げるように消失(フェードアウト)した。

 

 

 

深い深い、無限の闇に沈んで(堕ちて)いくーー。

 

 

 

 





Qは"quartet"、『四重奏』です。

…ほんと内容がグロくなってくなぁ……大丈夫か、これw
寛大な心の方々は最期までお付き合い下さい。

沢山の評価とご感想、お待ちしております!
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