ラブライブ!ーschool idol produce- 作:AGRS
……うう、スコアマッチは順調でも進路関係は全然順調じゃないAGRSです。
夏休みも残り半分となりました。早い早い。課題なんも手つけてねぇOTZ
感想数が二百を突破しそうで皆この作品を読んでくれてるんだなぁとしみじみ思う今日この頃です。
こんなテンションでどうですか?
では、どぞどぞ~
ピ…ピ……
まず耳に入ってきたのはそんな電子音。何処かで聞いた事があるような気はしたが、怠惰気味な俺の脳はその奥底から答えを引っ張りだそうとする気は更々ないみたいだ。
次に感じたのは極度の気怠さと異常なまでの体の重さ。俺にだけ重力が何倍も働いているだろうと理不尽で嘆いてしまうくらいの重々しさだった。起き上がることも出来ないんじゃないか?
そして、いい加減この暗闇から解放されようと目を開けた俺の視界に入ってきたのはーー
「……知らない……天井だ……」
なんて言ってみる。子供の頃見たアニメで確かこんなのあったよね、と馬鹿な事を考えられるくらいならまだまだ俺に余裕はあるみたいだ。
「……晴人!?」
俺の名前を呼ぶ声に俺は声を発した主の方を向く。見るとたった今この部屋(というか病室だよね、これ)の入口から入ってきたと思われる一人の少女が驚愕の表情を浮かべていた。
「晴人……晴人ぉ!!」
「真……姫……ってうわっ!」
私服姿の真姫が手に持っていた荷物を放り投げて、俺に飛び付いてきた。え、待って。状況が理解出来ない……ッッ!? 何だ……!? 凄く……痛ぇ!
「晴人……良かった…無事で…!はるとぉ……!」
「ちょ、ちょっと、真姫……。分かったから少し離れてくれ。何か背中がスッゲェ痛いんだ……」
生半可ではない背中の激痛に耐えながら、俺は抱き付いている真姫に離れるよう言った。だが、いつもよろしく聞く耳持たないと言うように真姫は必死に俺にすがり付いてくる。
「ほらほら真姫ちゃん、晴人君が困ってるよー。悪化させない為にも離れようね~」
と、真姫の後ろから聞こえたと思った瞬間、真姫の体が俺から離れた。いや、剥がされた。この病室に入ってきた、もう一人の少女によって。
「穂乃、果……」
「具合はどうかな? 晴人君」
色取り取りのフルーツが目一杯詰められた籠を片手で持ちながら、穂乃果は俺に微笑みかけた。
穂乃果は俺が眠っている間の事を事細かく話してくれた。
何でもにこの説得へ向かった俺を、真姫を家に送り届けた穂乃果が後から心配になって探していたらしい。そして、にこの団地への道筋の途中、俺が倒れていたそうだ。……背中から血を流して。
慌てて穂乃果は救急車を呼び、俺は病院へと搬送された。その病院がここ、西木野総合病院だ。事情を知った真姫も親に泣き付いて俺を助けてくれと頼み込んだらしいが……ここは真姫に感謝しないと。
思ったよりも傷は深くなかったらしく、俺は一命を取り止めた。とは言え、深手を負ったのは変わりない。暫くの安静が必要、と医師が判断したみたいだ。
「俺はどれくらい寝ていたんだ?」
「んーと、三日……だね」
籠の中から取り出した林檎の皮を剥きながら、穂乃果は答えた。真姫は俺が目を覚ました事を両親に伝えに行ったので病室にはいない。
……つまり、活動再開まで後四日か……。
俺が倒れていた事は直ぐにμ'sの皆にも連絡が送られたらしく、一時間後にはほぼ全員がこの病院に殺到したらしい。あまりの剣幕に看護婦さんが縮こまっていたのが傑作だった、とは穂乃果の談。
しかしやはり、と言うかにこはこの病院に足を運んでいないとの事だ。アイ活停止から既に三日。このまま行くと期限の一週間で再開するかどうかも怪しい。
それに、仮に再開するとしても俺がこの有り様では成り立つかすら危うい。やっぱりこれが早急に対処すべき問題だな……。
「……もう、アイ活の心配? 少しは自分の身を案じなよ」
穂乃果が困った顔で溜め息をつく。穂乃果が言いたい事は分かる。分かってるつもりだ。だが、俺にとってはこっちの方が死活問題なのだ。
「はぁ…。あ、そうだ。お姉さんもお見舞いに来てたみたいだよ」
そう言って穂乃果はある一点を指差す。そこにはお見舞いの品だと思われる袋がいくつか置かれていた。
……桐葉、来てたのか。
まあ、そりゃ弟が急に病院に運ばれたと聞かされたらどんな姉でも駆け付けるに決まって……いや、桐葉なら来ない可能性も有り得るな。てか、今回もお見舞いの品置いただけで直ぐに帰ったかもしれん。
「おーい、晴人くーん?」
「……ん? あ、悪い」
少し考え込んでたみたいだ。頭を軽くかいて穂乃果の言葉に耳を傾ける。
「それにしても驚いたよー。背中を刺されて倒れてたんだから……穂乃果、血の気引いちゃった」
ああ、そういや最初に発見してくれたのは穂乃果だったな。彼女がいなければ俺は出血大量であの世逝きだったかもしれない。真姫もそうだけど、穂乃果にも感謝しないと……。
「ありがとな、穂乃果……ほんと助かったよ」
「うん! どういたしまして。……それでね、晴人君。一体……何があったの?」
俺は口をつぐんだ。穂乃果の言う"何があったの?"は当然俺がどういった経緯で背中を刺されるに至ったのか、という意味だろう。
「確か……」
穂乃果と真姫と別れた後、にこを説得しようと彼女の団地へ向かって……。
それから…
……。
………。
…………。
「思い……出せない……」
何だ……これは、俺は確かににこの団地へと向かっていた。そこは覚えてる。だが、そこから先が頭の中に霧がかかっているようで思い出す事ができない。
誰かとあった?……かもしれない。誰かと話した?……かもしれない。けれど、どんな可能性を並べてもどれだけ首を捻っても自分が刺されるという
「そっかぁ……でも! 晴人君が無事で良かった!」
俺の返答に何かを期待してたみたいの穂乃果が、一瞬肩を落とすのを俺は見逃さなかった。見事な早変わりで愛くるしい笑顔に戻っている。
……心配かけてるな……情けねぇ。ま、それはそれとして……。
「穂乃果、俺の携帯はあるか?」
「ん? あるけど……なんで?」
穂乃果の疑問を無視して俺は手渡された携帯の電源を入れた。事故に遭ったわけでもないので携帯は無傷のままである。
何としても、にことだけは話をつけたい。俺がいつ復帰できるか分からない以上、スクールアイドルとしてのキャリアを持つ彼女の存在は不可欠だ。……皆の態度が改善でもされない限り、無駄に残り四日を浪費するだけでその後は空中分解確定である。
俺が携帯とにらめっこをしながら弄っているとヒョイ、と横から奪われた。
「にこちゃんに電話しようとしてるでしょ? 意味ないよ、誰がやっても出ないもん」
「でもーー」
「いいから、晴人君は寝て安静にしてて。大丈夫、説得役が既に行ってるから」
林檎を剥き終え、盛り付けた皿を差し出してくる穂乃果の左手にはいつの間にか彼女の携帯が握られていた。
「晴人が目を覚ましたですって?」
音ノ木坂学院の制服で、首にマフラーを巻いた絵里が隣で携帯画面を見つめている希に言葉を投げた。
「うん、やっぱり命に別状はないみたいや。晴人も見た目元気そうらしいんよ?」
送られてきたメールに返信しながら希は晴人の容態を簡潔に伝える。
絵里は心の中で安堵の溜め息をついた。
晴人が病院に運ばれた、と連絡を受けた時は焦るに焦ったものだ。しかも刺殺……殺人未遂の大事だ。晴人が搬送された病院に向かうまで、自分はどんな顔をしていたのだろうか? 気になるが過ぎた事なのでさっさと忘れよう。
正直、最初に発見したのが穂乃果で良かったと思う。万が一、一般人が見つけていたら警察沙汰になっていた事だろう。彼の治療を担当した真姫の両親も、真姫が必死になって頼み込んだことにより、世間に公表するのは伏せたそうだ。
それは非常に有り難かった。今、問題を起こすのは不味い。世間体としても、"ラブライブ"を控えている彼女達としても。
「それで希、襲われた時の事を晴人は話してくれたの?」
「それがなぁ、晴人も覚えてないらしいんよ。刺されたショックで忘れたのかも? って穂乃果ちゃんは言ってるけど……」
絵里は顔をしかめた。実際に襲われた晴人の話が聞けないのなら犯人を特定する事などできはしない。何人か心当たりはあるが、あくまで憶測だ。"自分と同じ"彼女達が彼を襲うのは……考えにくい。
(それにしても……)
最初に発見したのは穂乃果……というが気になる。彼女の記憶は奪っている為、晴人を襲うとは思えない。もしや、何らかのきっかけで取り戻している可能性もあるが……それでも、晴人を刺殺しようとは彼女も考えないだろう。
(……なんだか……釈然としないわね…)
そう、まるで……あらかじめこうなると分かっていたような……決められたレールを走っているような気分だった。
「えりち、そろそろなんよ」
希の声に絵里は我に返る。目前には古びた住宅団地が佇んでいる。それを見た絵里は、軽く頬を叩いて正面を見据えた。
「……ええ、私達は私達の出来る範囲の事からやっていきましょう」
首肯する希と共に、眼前の団地に住んでいる小柄なスクールアイドルに会うべく絵里は歩く速度を速めるのだった。
「うん、できた~」
晴人が目を覚ましたと先程穂乃果から連絡を受けたことりは、早速彼のお見舞いに向かうため差し入れのクッキーを作っていた。
今しがた完成し、焼き上がったクッキーから甘くも香ばしい匂いが漂ってくる。
「見た目は~大丈夫だね。味の方は~…」
一つ手に取って口の中に運ぶ。咀嚼して飲み込むと、ことりはたちまち暗い表情へと変わった。
「……ちょっと、味が薄いかな……」
そう結論付けたことりは台所から包丁を取り出した。右手に持ったそれで自分の左腕を軽く切る。
傷口から滴る赤色の液体を、ことりは躊躇いもなく並べられたクッキーへと染み込ませていく。
ポトッ、ポトッっと一滴ずつ順に垂らしていき、最後の一つに垂らし終えた後、ことりは傷の手当もせずに真に完成した"それ"を小さな箱に詰めていく。
「隠し味だよ……なんちゃって」
晴人くん喜んでくれるかな。
喜んでくれるよね?
確信めいた想いを胸に、ことりは淡々と"それ"を一つ一つ丁寧に箱の中に詰めていく……
「…………」
花陽は自室の机で、一心不乱にメモ帳に何かを書き込んでいた。
晴人が目を覚ました事は既に穂乃果からメールが送られており、お見舞いに行きたいという衝動を抑えて狂気染みた目でただただシャーペンを動かす。
「……っ……ぅ……」
花陽が何か呟く。引っ込み思案な性格から、普段の声の聞き取りにくさに定評がある花陽だが、それよりも何倍もか細い声に、もはや完璧に聞き取るのは至難の業だろう。
彼女が現在進行形で書き込んでいるメモ帳は、驚くほどに女の子が使用しているとは思えないものだった。
まず、文字。女子特有の丸っこく可愛いらしい文字ではあるものの、それが上から何重も重ねて書かれており、ゴツゴツした野太い文字へと変わっていた。
そして内容。書かれているのは今後のスケジュールでも、授業の要点でも、ましてや人の名前でもない。
そこにはーーー
『絞殺刺殺射殺銃殺薬殺毒殺圧殺扼殺殴殺撲殺斬殺轢殺……』
書かれていたのは有りとあらゆる殺し方。書くのに満足した花陽はシャーペンを置いて、うっとりとした表情で羅列した文字を眺める。
「抹殺……抹消……」
まるで呪詛でも言うかのように花陽は口元を歪ませる。幼い顔付きが魔性の美貌へと変わっていく。
「皆……邪魔……邪魔……」
花陽はぷるぷる震えだしたかと思えば、その場で笑い出す。甲高い笑い声が部屋の中で木霊した……
『これは"予想の範囲内"だったの? きりきり』
「……」
携帯から発せられる冗談めかした旧友の声に、桐葉は無言で返す。
彼女の声は煮えたぎるほどに苛ついている桐葉の心を妙に逆撫でし、いつもならば真っ先に注意する一方的につけられた変なあだ名を指摘する気力さえ失せさせていた。
『弟君、無事に目を覚ましたみたいだね、……ってわざわざ言わなくても分かるか……』
「……」
やはり無言。いい加減つまらないと感じた結月は、桐葉には分かるはずもないが、頬を膨らまして不満の文句を垂れる。
『んもう! 反応してくれたっていいじゃん!……あ、そうだ。ちょっと気になる事があるんだった』
「……何?」
ようやく口を開いた桐葉は、結月の"気になる事"に興味を持ったらしく、続きを促す。そこには反応するのか、とまたもや結月は頬を膨らますが、黙って言葉を続けた。
『どうもね、今回の一件……だけとは限らないけど、くくりんも関わってるっぽいよ』
「……あの子、が?」
桐葉は僅かに片眉を跳ね上げた。
くくりんいうのはおそらく希咲 菊理の事だろう。高校時代、共にスクールアイドルの栄光へと駆け上がった仲間。常に純粋無垢な笑顔を振り撒いて、多くのファンを築いた旧友。その彼女が……?
疑問に思ったのは一瞬で、あり得ないという可能性は瞬時に断ち切った。桐葉も結月も、菊理の本性をとっくに熟知している。
『ま、面白い事ならなんでも首を突っ込みたがる
薬剤師を希望していた菊理は、ライブの休憩中によく独自の研究成果を二人に話していた。身体構造に干渉して肉体の活性化を謀る薬、脳に刺激を与えて思考力を倍加させる薬……など、とても人体にいい影響をもたらすとは思えない効果に、何度も顔を青ざめたものだ。
また、彼女は面白い話題にも敏感で、自分が晴人と桐葉をおちょくるのに便乗して二人の関係を根掘り葉掘り聞いてたな、と結月は今更にして思った。
「……結構なことじゃない」
『へ?』
桐葉の言葉の意味が分からず、ついマヌケな声を漏らした結月だが、桐葉はそれには反応せず通話を切る。
……菊理が一連の出来事に関わっている。
理由は何となく分かる。晴人の今の人間関係だろう。乙女の園に放り込まれ、そこでスクールアイドルのプロデューサーとして活動している……そして、桐葉の晴人に対する想いを知っているならば彼女が興味を持たないはずがない。……が、それは別に大した問題ではない。
晴人はまだ生きている。
生きているのならいい。
生きているのならいいのだ。
生きてさえいれば彼女が臨む"理想"に然したる支障はない。
これから先、菊理が晴人を含め音乃木坂のスクールアイドル達に災厄をもたらそうとも、晴人が死にさえしなければ寛容に受け止めよう。
だから、これは結構なことなのだ。
追記:
最近、風が涼しくて夏の暑さを感じない。不思議w