ラブライブ!ーschool idol produce- 作:AGRS
明けましておめでとうございます! そして投稿めちゃめちゃ遅くなってほんっとうに申し訳ありません!
いや、色々あったんです。本当に。言い訳じゃないです! というか、この作品覚えてる人いるのかな……(遠い目)
今後は出来る限り速めに投稿したいです! デキレバ、ですが……。
何はともあれ、今年もよろしくお願いいたします! それじゃ、どうぞ!
「……何の用よ。絵里、希」
玄関から出てきて開口一番にそう悪態をつく少女───矢澤にこを見て、絵里は深い深い溜め息をついた。
「何の用とはご挨拶ね、にこ。ここ数日アイ活どころか学校にすら来ないクラスメイトを心配して来てやったというのに」
「……ああ、そう。それはわざわざありがとね。けど心配しなくても
四日後───その意味を理解している絵里はどう説得しようとも目の前の少女は考えを改めないと分かっていても、言わずにはいられなかった。
「考え直しなさい、にこ。私達が浮わついてたのは謝るわ。だけど、ラブライブも近いこの時期に活動停止なんて…」
「誰が何と言おうとにこは考えを改める気なんてない。……話しはそれだけ? ならさっさと帰って。いつまでも玄関前に居られたら迷惑だから」
話すことなどない、とでも言うようににこはドアノブを掴み玄関口を閉めようとした。……が、咄嗟に希が滑らせるように足を突き出して扉が完全に閉じるのを封じた。
顔をしかめるにこを余所に、希は真剣な表情で彼女に問い出した。
「なぁ、にこっち。一体どうしたん? スクールアイドルことには誰よりも本気なにこっちが、皆を突き放すようにこんなこと…」
希としては、心の底からの疑問だったのだろう。自分たちに非があったのは謝ろう。それが彼女の気にさわったのなら謝ろう。けど、いくらなんでもそれだけで活動停止……あまつさえ彼女も登校を拒否するまでに至るほどのことなのだろうか?まとまりがない、と言ってしまえばそれまでだが、それでも自分たちの絆が揺らぐとはどうしても思えなかった。
希の問いかけに対してにこは一瞬目を丸くしたが、すぐに表情を戻して軽く笑った。
「……はっ。
「…?」
希はあからさまに首を傾げる。にこの言っている意味が分からなかったからだ。穏健派…? 確かに自分は穏やかな方だとは思うが……それが何か関係あるのだろうか。
「自覚無しとはね…まぁ、そんなことだろうとは思ってたけど…絵里、あんたはどうなの?」
「…どう、って?」
「希がしたことを、あんたは容認してるかって聞いてんのよ」
絵里はしばしの思考を自分に許した。実の所、希には一連の出来事について話していない。穂乃果の記憶喪失、ことりや花陽の豹変……そして、自分の晴人に対する想いなど、一番の親友とも呼べる人間に何一つ伝えていないのだ。
理由としては…巻き込みたくない、とでも言えばいいのか。それでも意外に勘の鋭い希の事だ。例のカードのお告げとやらで見破っているのかもしれない。
しかし、万が一の事がない限り自分から話すつもりはなかった。自分がしてることを良くないと思っているのならば咎めてくる筈だし、何も言ってこないのなら本当に知らないか、あるいは知ってても黙って容認してるからだ。
そして現在、希から何か聞かれたことはない。これは本当に…何も知らないのだろう。何故かは分からないが、直感で絵里はそう結論付けた。だからこそにこの問いかけに絵里は首を振る。
「…悪いけど、心当たりがないわね」
「ふぅん…あんたらも一枚岩じゃないってわけね」
「……」
どういう事……? 確かに絵里が手を組んでいるのは実質ことりだけではあるが…その言葉からすると───
希も何か関係している……?
これは一度、希に問い詰めてみる必要がある…そう心の中で思う絵里だが、にこの繰り出した言葉に心臓が凍りつく。
「絵里、希。あんたたちが何をしようとも私は何も言わない。巻き込まれるのはごめんだし…第一、私には何も出来なさそうだしね」
「……なら、あなたはどうするの」
「待つことにする。あんたたちが…μ'sの皆が元に戻るのを。また皆で練習して、ライブして、全員で笑い合うのを。……晴人が、どうにかしてくれるのを」
最後の言葉は本当に掠れるほどの声量であったが、絵里の耳にはきちんと聞こえていた。なるほど、にこは晴人がどうにかしてくれると信じているらしい。
にこがそう思えるほどの信頼をどこで得たのか、と絵里は気になったが、口には出さないことにした。聞いたところで天の邪鬼なこの少女は答えないだろうし……何より、重症の晴人がどうにかできるとは思えない。足掻くだけ無駄だ。
「…じゃあね」
今度こそ扉は完全に閉じられる。短いながらもえらく濃い時間を過ごしたなと絵里は嘆息する。
「説得、失敗やなぁ」
「まあね……けれど、にこも四日後にちゃんと活動を再開するつもりみたいだし、それが聞ければ充分よ」
完全に停止するわけではない。四日という時間制限がある。にこも自分が言い出したことなのだから後から撤回しようとはしないだろう。仮令、言い出したりしても……その時こそ
「さて、帰りましょうか。色々あって疲れたわ。ゆっくり休みたい…」
そう言いながら絵里は階段を下りていく。希も続いて下りていくが、彼女の思考は別のことに引っかかっていた。
───自分がしたことも棚に上げるわけ?
それはにこが放った言葉。それだけが妙に自分の胸に残っていたのだ。
ウチがしたこと……?
別にμ'sの皆に迷惑をかけるような事をした覚えはないのだが。あるとすれば、あの晴人もどきをナイフで刺した事くらいだけど……あんなのは普通だろう? だって、晴人に化けてたのだから、それだけで殺すに充分な理由だろう?
うーん、やっぱり心当たりないわぁ…
結局、希は自分がしたことの重大さに気付くことが出来なかった。……他の皆に知られれば、間違いなく命を狙われるほどの重大な事に……
ゴールデン・レトリバーという犬をご存知だろうか。
賢さと忠誠心を兼ね備え、温厚であるためペットとして幅広く愛好されているイギリス原産の大型犬である。
性格として、飼い主の願っている事を瞬時に察知し、気に入られたいと努力を惜しまない。また非常に孤独を嫌い、主人の傍にいることが世界一幸せだと言われている。
揺るぎない信頼と愛情。それを体現したような犬、それがゴールデン・レトリバーである。
なるほど、そのように献身的に接してくれる動物ならばペットとして愛好する者がいてもおかしくはない。飼い主として愛されているのは満更でもないだろう。
しかし、それが『人間』ならば話は別だ。
つまり何が言いたいのかと言うと。
「はい、晴人。あーん」
輝くほどの笑顔で自分の世話をしてくれるこの少女、西木野真姫をどうにかしてほしいのである。
「どうしたの? 食べないの晴人?」
時刻は昼過ぎ。彼女と一緒に来ていた穂乃果は既におらず、真姫だけが身の回りの世話をするとの事で残っていた。
それはいい。それはいいのだが───その身の回りの世話とやらが問題だ。
まず、体を拭いて包帯を変えようとした看護婦さんを追い出した。厳重に病室の扉に鍵をかけ、許可を出すまで絶対に入ってくるなと言い渡して俺の体を拭き始めた。
ゆっくりと、傷口に触れないように滑らかな手付きで拭く真姫。両親が医者をやっているだけあってこういう事にはなれているのだろうか。
で、無事包帯も巻き終えてベッドに横になろうとすると───突如俺に乗っかってきた。
勿論、全力で抵抗した俺だが何分傷が深いこともあり、最終的には抱き付かれる形で収まってしまった。まぁ…暖かったけどさ……。
そして、看護婦さんが運んできた病院食を食べようしたらスプーンを奪われた。というか、病院食そのものを奪われて捨てた。自分で弁当を作ってきたらしい。だとしてもわざわざ捨てる必要は……。
そして今に至る、というわけだ。
「う…ん。なんか喉を通らないんだ」
「そう…でもちゃんと食べないと駄目よ。元気になるにはとにかく食べることよ」
「ああ、分かってるよ。でも今は───」
「そうだ! 私が食べやすいように噛み砕いてあげる。そうしたら喉も通りやすいでしょ?」
「……」
恥ずかしがる様子もなく、平然と言ってのける真姫。その表情はただ単に俺を心配してるからだと窺える。
その思いやりは嬉しいし、ありがたく感じる。だけど───それは何か違う、と思った。
「なぁ、真姫。真姫はμ'sの皆は大切か?」
「え…? も、勿論よ。当たり前じゃない。何言ってんのよ」
「じゃあ、俺の事をどう思ってる?」
俺はこの問いに対しての真姫の言動を頭の中でシミュレートしていた。俺が知っている
そして、目の前の真姫はその予想を裏切った。
「大好き! 晴人は私が世界で一番好きな人で、私の王子様なの! 晴人はいつでも私のことを見ててくれて、私を幸せにしてくれる。私を愛してくれる! そんな晴人が大大だーい好き!」
「……そっか」
疑惑が確信に変わる。認めたくないけど、それでも俺は言わずにはいられなかった。
「お前は、真姫じゃない」
その言葉を聞いた瞬間、無邪気に笑っていた真姫はピタリと動きを止め、唖然とした顔で俺の方を向く。俺がこんな事を言うなど完全に予想外、と一目で分かった。
「……え? な、に、言ってるの? 私は私よ? 正真正銘西木野真姫よ?」
「じゃあ何で俺がμ'sの皆が大切かって聞いた時に言い淀んだ?」
俺の知ってる真姫ならば、多少は考え込むだろうが、おそらく、いや、絶対にこう言う筈だ。
───そうね。騒がしくはあるけど、それでもμ'sの皆は私みたいな奴でも頼ってくれて、仲良くしてくれて、私が一生に一度得る事ができたかけがえのない大切な友達で、仲間───。
「そ、それは……! は、晴人がそんな事を聞いてくるなんて思わなかったから……! だから……!」
「……そして、もう一つある」
狼狽してる目の前の西木野真姫に俺は休ませる暇もなく、言葉を紡ぐ。確実に、とどめを刺すために…。
「俺の知ってる真姫は───俺が好きだなんて絶対に言わない」
「──────え?」
呆けた表情で俺を見つめる真姫。負けじと俺も見つめ返す。ここで目を逸らしてはいけない。本当の真姫を取り戻す為にも、ここで目を背けては…!
「言える筈がないんだ。自分にとって大事なことは胸の中にしまう真姫が。他人に知られる事を嫌う真姫が。だからお前は───真姫じゃない」
真姫だけど
「なん…でよ…私は……西木野、真姫。音ノ木坂学院で、あんたと同じクラスの……」
「真姫じゃない」
「スクールアイドル……μ'sの……一人で……何度もあんたと作曲について話し合った……!」
「真姫じゃない」
「あ……ああああああァァァァァァァァ!!」
錯乱した真姫が俺の首を絞めてくる。物凄い腕力だ。とても女の子の力とは思えない。けれど、首が締め上げられる苦しみよりも悲愴な表情の彼女を見る方が遥かに苦しかった。
「どうして? どうしてそんな事言うの? 私は私! 西木野真姫なの! それのどこが違うと言うの? 何も変わってないのにおかしいと言うの? 間違ってるのはあんたよ晴人! 私の晴人はそんな事言わない! 偽者め、殺してやる! 死ね死ね死ね死ね……!」
「ぐっ…! 真、姫……!」
「うるさい! 消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ……!」
──────いいえ。
「……は?」
気付けば
いや、一人ではない───。
「
『人の体を好き勝手に使ってくれて………その態度とはね。まあ、もう返して貰うけど』
「何ですって………!?」
『………ふふ。私が晴人の事を好き? あは、あはは! 滑稽ね、真姫』
いきなり腹を抱えて笑い出す。何がおかしい。
『まさか。大好きに決まってるじゃない。ただね……そんな顔から火が出るほど恥ずかしい事を、
ぐらり、と
「あ………ああああ! 嘘? 消える?
夢だ。これは酷い悪夢だ。だって、
『私の中から────』
目の前にいる赤毛の少女が何か言っている。何? 何を言ってるの?それより助けてよ。このままじゃわたし、消えちゃう───
『───消え失せろ、
次の瞬間、わたしの視界は真っ黒に染まった。
「………真姫! おい、真姫!」
「ん………あ」
床に倒れ付した真姫の体を揺すっていると、目を覚ました。良かった…このまま目を覚まさないようならナースコールしようとまで思った所だ。
とりあえずひと安心だ、と一息つこうとしたら───真姫が抱き付いてきた。
「痛ぇ──!?」
背中の傷を無視して抱き付いてくる真姫。……だけど、さっきの首を絞められた時ほどの力ではなく、平均的な女子の力に思えた。
なんとなくではあるが、俺の知ってる真姫が戻ってきたんだな、と直感した。
「ねぇ、晴人」
「ん?」
「あんたから見た私は、どんな奴?」
「………高飛車で、諦めが悪くて、女子っぽくなくて、意地っ張りで、それでもムカつくぐらい頭がよくて………」
驚いたことに、スラスラと自分の口から彼女の印象について話す。止まらない。今は無性に、ただ彼女に対して思ったことを喋りたかった。
「作曲もすごくて、仲間思いで、友達思いで、優しさと強さを兼ね備えた───魅力的な女の子かな」
そう俺は言い終えた。うん、嘘は言ってない。嘘を言う必要なんかないから。これは、自分の心が確かにそう思ったことだから。
「……後半は嬉しいけど前半は余計ね」
「お前が言えって言ったんだろ」
「そうね。……うん、そうね。そうよね。悔しいけど、それが
真姫はそう言って笑う。何故笑ってるのか俺には分からない。だけど、彼女の屈託ない笑顔を見ていたら俺も自然と笑みがこぼれた。
窓の外を見ると、日が沈みかけていた。マズイ、面会時間ももうすぐ終わる。いや、彼女の両親が経営している病院なのだから多少は大丈夫だとは思うが……。
「真姫、もうすぐ日が暮れる。帰った方が──」
「ええ、分かってるわ。でももう少し。あと少しだけは、私だけの晴人で、いて───」
しばらくすると彼女が寝息を立て始めた。おいおい、と俺は溜め息を付きながらも、彼女の頭を優しく撫でた。
「おかえり、真姫」
赤毛の少女は、幸せそうに頬を緩ませていた。
Lは"light"、『光』ですね。
と言うわけで、真姫ちゃんが元に戻ったわけですが、ちょっと勇み足だったかな…? ほんとはもうちょいゆっくりやりたかったんですけど、なんとかこの回で納めました。
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