ラブライブ!ーschool idol produce- 作:AGRS
はい、ふと日間ランキングを見てたら三位にランクインしてたAGRSです。三位なんて初めて取ったよ……読んでくれてる皆様、ほんっとうにありがとうございます!
さて、今回は晴人君のちょっとかっこいいとこが見れる……かも?
さあさあ、ではどうぞ~!
「穂乃果? 貴方から電話を掛けてくるなんて珍しい……何かあったの?」
時刻は二十二時を過ぎた頃、メールならともかく電話の通話履歴にはあまり残らない部活仲間の少女に、絵里はそう返答した。
「夜分遅くにごめんね絵里ちゃん……でも、ちょっと話したい事があって……」
申し訳なさそうに謝る穂乃果。おそらく電話の向こうでは本当に頭を下げているのが容易に想像できる。別に怒っているわけでもないのにそんな負い目を感じられては此方もいい気分にはならない。 絵里は言葉を紡ぐ。
「ああ、いえ、別に迷惑ってわけじゃないのよ……ちょっと驚いただけであって……それで? 話したい事って?」
あまり電話を長引かせることもないだろう。穂乃果の言う「話したい事」について絵里は聞き出した。
「んーとね……その、ええと」
「? 話し辛い事? もしかして……晴人の容態とか? それともアイ活関連のことかしら?」
「ううん、違うの。そういうことじゃなくて……いや、それに関連してるのかな?」
「……なら何なの?」
「えっとねー…何て言えば良いのかなぁ」
要領のはっきりしない説明に絵里は困惑する。
彼女の性格からして相談する事と言えば……十中八九スクールアイドル活動の方針……または現在入院中の晴人の容態についてだと推測できる。
仲間思いである彼女なら特に後者について有力だろう。晴人に限らず、他の皆についての相談も大いにあり得る。……
また、スクールアイドル関連の相談だとも考えられる。にこの停止宣言があるとは言え、穂乃果も現状を歯痒く思っている一人だ。出来る事はやっておきたいと考えての相談かも───。
……ただ、今の部活メンバーの団結は最悪であり、部長のにこの説得も失敗だったと既にメール済み。自分たち二人だけでどうこうできる問題ではないと分かっている。
以上な理由から穂乃果が言う話の内容が気になるのだが───
「あ~! 何か上手く説明出来ないよ~。……そうだ! 絵里ちゃん、明日の放課後って空いてる?」
「え? ……ええ、特に用事はないけど」
部活もないしね、と続けようとしたが、寸前で止めた。それを言うのはあまりにも不謹慎と思ったからだ。
「じゃあ、部室に来てくれないかな? その時にちゃんと話すよ! どうしても絵里ちゃんに聞いて貰いたいから」
「……ええと」
絵里は思考をフル回転させた。確かにこのままでは後味が悪い。穂乃果が話したい内容もそうだが何より
それと同時に───背中を襲う悪寒がある事に絵里は返答を躊躇った。彼女の記憶は奪っている。一時的とは言え、今の所記憶を取り戻すきっかけなどなかった……はず。……自分が襲われる可能性は、ない。
絵里は心の中でそう思ってしまった。大丈夫、万が一襲われたとしてももう一度これを使えば───と、絵里は鞄の中から紫色の液体が入った注射器を慎重に取り出した。
「……ええ、構わないわよ穂乃果。明日の放課後ね。授業が終わればすぐに行くわ」
焦りが混じらないように一言一句を丁寧に発してそう返答した絵里に、穂乃果は満面の笑みで声のトーンを上げた。
「よかった! えへへ、絵里ちゃんには絶対に、ぜぇーったいに聞いて欲しい事なんだ。それじゃまた明日ね! お休み~」
「お休み…」
通話が切れたのを確認すると、絵里は髪を乱雑に掻き上げて一息ついた。携帯を握っていた右手はうっすらと手汗をかいている。
……何もないと良いのだけど。
穂乃果の狙いは分からない。隙あらば私の命を狙って来るのかもしれないし、あるいは本当にただの相談なのかもしれない。しかし、どちらであろうと自分の心情は穏やかではなく、窓を震えさせる冬の風に身をすくませていた。
こんな億劫な気分になるのは後ろめたい事をしてきた自分に対する罰なのかと、できればそうであって欲しいと絵里は心の何処かでそう思いながらベッドに横になった。
────ピ…ピ……。
……もうこの音を聴くのにも随分馴れたな。実際に聴きだしてまだ二日目だと言うのに。
俺は開けっ放しにしてあった窓から流れる風を、若干肌寒く感じながら自分の置かれている状況に焦りを感じていた。
───残り、三日。
にこが言い放ったスクールアイドル活動停止宣言。その期間は一週間。今日は四日目であり、残すところ後三日となっていた。
それは、活動再開までの日数を示してもいる。そう───俺がこうやって入院してても───活動再開までの時間が止まることはない。
「……」
……結論から言って、たとえ無事活動再開となったとしても、俺が活動に復帰できるのは難しい───というか不可能だ。先程、担当医師の人にそう言われたからだ。
それほど迄に、俺のこの背中の傷は重症らしい。運び込まれた時は命の危険もあったらしいのだ。上手く治療が成功したとは言え、リハビリも兼ねて退院できるのは……甘く見ても一ヶ月、と。
……一ヶ月……。
絶望的な日数だ。ラブライブ予選開始はおよそ二週間後。今から一ヶ月後となれば本選すらとうに始まっている───そんな時に復帰しても、一体何が出来ると言うのだろうか。
誰かに頼んで練習風景を撮ってきてもらって問題点を指摘し修整する?この病室に来てもらい予選や本選のアドバイスをする? 無理だ。一時的ならなんとかなるかもしれないが、それを長期的にすれば必ずボロが出る。
ズキン! と背中の傷が痛む
「…ぐっ……! 」
そう、この傷だ。この何処の誰につけられたのかも分からない忌々しい傷さえなければ万事解決だと言うのに……!
───お前はプロデューサーだ。彼女らμ'sのプロデューサーだ。そのお前が彼女のプロデュースを怠ってどうする?
分かってる。
───彼女らにはお前の助けが必要だ。だが、肝心のお前がこんな所で寝ていてはどうしようもないではないか。
分かっている……!
わかってる。分かってる。
だけど、だけど、頭で、脳で、心で分かってても───体がそれに応えてくれない。立ち上がる時には必ず誰かに支えて貰わなければ、上体を起こすこともままならないこんな体じゃ、どうしようもないじゃないか……!
手詰まりだ。完全に王手だ。まともに動くのは精々この思考回路だけ。考えるだけ考えて、それを行動に移せる事は絶対にない。
……もうじき真姫が来る。どうやら凛と海未も一緒らしい。助かる。これから立てる
俺も───体が動けば一緒に戦う事が出来るのに……。またも俺は自分の不甲斐なさに顔をしかめた。不可能だ、そう……分かっているのに。だけど、でも、それでも……!
嗚呼、何て自分は───無力なんだろうか。
何処からか俺を馬鹿にする声が聞こえた。そちらに目を向けると、それは俺に対する罵倒などではなく、中庭で遊ぶ子供たちの声だった。
子供は自由だ。好きに遊び、好きに学び、夢を見て──その夢を叶えるために走って行くのだ。穢れも淀みもない、純粋さに満ちた象徴。
俺には───それがただ眩しく見える。少なくとも今の俺には、空を自由に飛び回るようなその両足がとてつもなく羨ましい。
しばらくその子供たちを見ていると───
コンコン。
病室のドアをノックする音が聞こえた。
……誰だ?
そしてすぐに気付く。ああ、真姫か。随分速いな。学校からここまで結構あるのに……俺は一人で納得してどうぞ、と返事をした。
扉が開くと共に響く足音。速かったな、と俺は真姫に話し掛けようとして───絶句した。
そこに居たのは真姫ではなかった。真姫の深紅の髪より目を惹く、桃色の髪。退廃的な雰囲気を身に纏わせたその女性は見間違えるわけもなく───
「菊理さん……?」
希咲菊理が、そこに居た。
「ごきげんよう、晴人さん。……入院していたというのは本当だったみたいですね」
俺は、無意識に身構えた。何故か、今目の前にいるこの人が、どこか、恐ろしく感じた。おかしい。そんな事ない筈だ。この人はただの桐葉の友人で、俺の相談にも乗ってくれる、いい人───
頬を伝る冷や汗を無視し、俺はこの恐怖が勝手な思い込みのせいだと言い聞かせるように菊理さんに尋ねた。
「菊理さん…何故、ここに?」
「ふふ、友人の弟君へお見舞いに行くのは変ですか? 最も急だったのでお見舞いの品を用意する事はできませんでしたが…」
「変ではないですけど…」
確かに、お見舞いの品はないと言ってるように彼女の持ち物は左腕に掛けてあるいかにも女性が好みそうなバッグだけだった。いや、別に期待したわけではないが…。
「申し訳ありません。……それより晴人さん。背中を刺されて重症だとか」
「……はい」
「宜しければ見せて下さいませんか?」
「え……? は、はぁ…」
俺の曖昧な返事を了承と受け取ったのか、菊理さんは俺に背中を見せるように指示して傷痕を手のひらで軽く撫で回した。少し痛んだが耐えられないほどじゃない。
「なるほど……確かにこれは酷いですね」
「……みたいですね」
俺は苦笑して傷痕を擦る。分かってる事だ。この傷は今すぐどうこう出来るものではなく───
「かと言って、どうにか出来ないわけでもない」
「…………え?」
今……彼女は何と言った? どうにか出来る? この傷を? 医師にも完治に一ヶ月かかると言われたこの傷を?思わず俺はごくり、と生唾を呑み込んだ。
「菊理、さん。それ、本当に───」
「ええ、出来ますよ。但し、条件が」
「条件……?」
菊理さんはそこで言葉を止め───
「夢神晴人。今一度問います。貴方はこれから自分に降り起こるあらゆる困難に立ち向かえると───ここで断言できますか? 未来に絶望し、過去に後悔する事は決してないと、言い切る事ができますか?」
俺を真っ直ぐ見据える彼女の大きな瞳。さながら至近距離で弓に弓矢を番えて俺を狙っているかのよう。遊びの色も、嘲笑の色も混じっていない、俺の
俺は耐えられず目を逸らす───馬鹿が。逸らす理由が何処にある。答えはただ一つの筈。本能で決めた、たった一つの答えが、胸の内にあるだろう?
「……後悔は、もうしてます。俺は結局、何も分かってなかった。穂乃果の事も、真姫の事も、そして───にこの事も。彼女達の事はちゃんと理解してるつもりだった。けど、それは俺の馬鹿な思い込みで───」
そう、だから────
「……だから、もう間違えたくないんです。このまま何も出来ないなんて、真っ平御免だ!俺は、もう一度、あいつらと、μ'sの皆と一緒に!思い描いた夢を叶えるんだ! それが出来るなら、俺、死んでもいい!」
力強く、俺は言い放った。目を背けない。後ろは振り返らない。振り返るのは
俺の怒号に近い台詞を聞いて、菊理さんは軽く頷くと───不敵に笑う。
「まあ、及第点と言ったところですね。けれど、そう来なくては───面白くない」
静かにそう言うと菊理さんは左腕に掲げていたバッグから小さな小瓶を取り出した。中には何やら水色の液体。それを小柄な手で俺の左手に握らせた。
「それを飲み干して下さい。……その程度の傷ならば数時間で完治するでしょう」
「……え?」
おそらく呆けているであろう俺の顔をクスリと一笑いすると菊理さんは扉の方へと歩いて行く。
「晴人さん。これから貴方が歩いて行く道には希望か絶望───いえ、間違いなく絶望が待つでしょう。逃れようのない未来、貴方を奈落の底へ突き落とす、ただひたすらな闇───」
言葉は淡々と、進める歩は迅速に、脳裏に響くは───確実に。
「しかし、分かって進むのも───また一興。願わくば、貴方の意志が絶望を打ち破り、希望を花咲かせるのを───楽しみにしております」
もう一度俺を振り返り、やはり彼女はクスリと笑った。魅力的だ。こんな状況でもそう思ってしまう。待て。待ってくれ。貴方にはまだ聞きたい事が───
「さて───そろそろ
「待っ……!」
「きゃあっ!?」
菊理さんを呼び止めようとした手を伸ばして───俺は激痛に悶えた。
「……痛ぇ!」
痛い痛い痛い! 体に響き渡る痛みに俺は涙目になった。真姫はそんな俺を見て、呆れたように溜め息をつく。
「ああ、もう! 急に起きるからそうなんのよ。ほら、ジッとしてなさい」
真姫に言われた通り、俺はどうにか痛みを堪え、もう一度ベッドにゆっくりと寝かせてもらった。真姫の後ろを見ると、今まで気付かなかったが見知った顔が二人いた。
「急に起きるからびっくりしたにゃ~」
「だ、大丈夫ですか? 晴人」
凛と海未だ。凛は手にペットボトル、海未は(おそらく)お見舞いの品の花を持っておろおろしていた。そんな二人を見て、俺はようやく現状を理解した。
……夢、か。
随分リアルな夢だったな、と俺は自嘲気味に薄く笑う。背中の痛みは未だ健在。そうだよな、よく考えればそんな簡単に重症の傷が治るわけがない。
右手で額の汗を拭い一息付こうとした俺は───凍りついた。
…
「……晴人?」
真姫の心配そうな声も意に介さず、俺はゆっくりと、ゆっくりと自分の視線を左手に向けた。
───ああ、間違いない。あれは───
「……夢じゃ、なかったんだな……」
Kは"key"、『鍵』です。
復活の手段は手に入った! ご都合主義万歳!
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