ラブライブ!ーschool idol produce- 作:AGRS
今回も先に1話投稿します!
2話連続投稿は何処にいったのか…
8話はもう少し待って下さいね!
では、どうぞ!
例えるならば、そこは輝きに包まれた世界だった。
まばゆきスポットライト、見渡す限りのファンの数、自分達を呼ぶ声、そのどれもがこの会場だけを別次元から切り離したような世界を見せていた。
ステージに立つ3人の少女達は、今まさにスクールアイドルとしての最高潮を迎えていた。
最後の曲のサビを終え、興奮が覚める様子もないファン達に、ステージの少女達は大きく感謝の手を振る。
その中でステージ中央に立つ、スポットライトを受けて眩しく輝く、ウェーブのかかった赤髪の少女は1つの思考に囚われていた。
ーーーああ、これは夢ね。
自分がここに立っているはずがないのだから。
これは2年前、自分がスクールアイドルとしての高校人生を最期として飾ったライブだ。
"ラブライブ!"で優勝し、最期を飾ったーーー
天才は大きく分けて2つある。
1つはあらゆる分野において幅広く、煌めくような才能を持つ者。
もう1つはある特定の分野において、凄まじい才能を秘めた者。
その少女においては後者である。
生半可な知識から始めた、このスクールアイドル生活も気がつけばここまで登りつめていた。
曲を作り、歌詞を覚え、振り付けを考え、チラシを配り続けた日々…。悪くない時間ばかりだった。
その集大成こそ、このライブだった。
輝きがあった。笑顔があった。今までのライブとは比べ物にならないほどの心地よさを与えてくれたその時間も、光の速さで終わりを告げた。
ファン達の惜しむような声に、他の2人にならって、その少女も手を振る。
自分達のスクールアイドルとしての時間は、ここで終わるんだーーーー
そう思うのは当然だろう。
少なくとも、その2人にとっては。
だが。
ステージ中央に立つ少女は、その満足感とは真逆の気持ちに囚われていた。
ーーーーーこれじゃない。
スクールアイドルとしての日々は悪くなかった。
むしろ、最高の日々だった。大勢の前に出て、自分の歌を歌うのはとても楽しかった。
何より、それで得られる沢山の笑顔には、他の事にはない達成感があった。
しかし、頂点に立ち、見た光景で、改めて自分の求めていた物に疑問を持った。
ーーーーーこれが、私の求めたもの?
少女は自分の胸の中に空いた空洞を、埋められないでいた。
どれだけ綺麗な歌を歌っても満たされない。
どれだけ上品なダンスを踊っても満たされない。
自分達を讃えるファンの声を聞いても満たされない。
2年経った今でも、その虚しさとも言える感情は鮮明に思い出される。
少女は、自分が夢見てきたものがすべて裏切られたような感覚だった。
やがて、自分達を照らしていたスポットライトが消えていき、観客の声も小さくなっていく。
それは、少女のスクールアイドル生活の終わりを告げると共に、夢の終わりも告げていた。
他の2人は満足したようにステージを後にする。
少女は立ち尽くしていた。
首にかけた鍵状のペンダントが鈍く光る。
私が…欲しかったものは……
少女が見ていた世界は、『灰色』だったーーー
PPPPPPPP……
携帯のアラーム音が鳴る。
本来ならばそのアラームが鳴る前に目を覚ましている女性はそのやかましい音を止めるべく、タッチパネルを操作した。
「………………」
夢神 桐葉は自分でもいい目覚めとは思わなかった。
それもこれもさっき見た夢のせいだろう。
(………また…あの夢……)
桐葉は最近よく見る夢に頭を痛めるように手をおく。
そう…自分の弟である晴人が音ノ木坂に転入し、スクールアイドルの手伝いをすると言い出した日から見る夢に…。
「………………」
気を取り直すように桐葉はベッドから降り、洗面所に向かう。新品同様の輝きをみせる洗面台に水を溜めて、顔を洗った。
自分の部屋に戻り、クローゼットを開けて、仕事に行く準備にかかる。
現在の時刻は11時。
起きる時間としては明らかに遅い方だが、仕事の関係上帰宅時間が夜遅くなる彼女にとってはこれが起床時刻だった。
一通り身支度を整えた桐葉は、軽い朝食を作ろうと冷蔵庫を開ける。
けれど作る必要はなかった。
ラップフィルムで包まれたオムレツとサラダが冷蔵庫に入っていたからだ。
ご丁寧に「ちゃんと食べなよ」と書き置きまでしてあって。
「………まったく………」
余計なお世話よ、と内心呟く桐葉だが、その表情は優しい笑みに満ちていた。
普段、笑みなど誰にも見せることのない桐葉だが、"晴人だけ"は別だった。
自分でもわかっている、この気持ち。
晴人に気付かれまいと必死に隠し通している気持ち。
桐葉はどれだけ仕事場のイケメンに声もかけられようとも、いとも返さない。気に留めない。
他の異性など目にも留めない。
彼女にとってはそれがごく当然のような考えに至っていた。
桐葉は朝食をテーブルに置き、「いただきます」と呟いて、オムレツを口にした。
質は落ちているが温かく、それでいて美味しい。
噛み締めるように味わいながら、桐葉は最後の一口まで綺麗に食べ切った。
食器を洗い、時計を見た。11時45分。
「…まだ授業中ね」
桐葉は静かに呟き、仕事に向かうべく靴を履く。
「………念の為、あと何個か必要ね」
何のことかも分からない言葉を口にして桐葉はマンションの扉を開けた。
「おっそいなぁ…ことり」
俺はアイ研の部室で待ち尽くしていた。
現在、放課後のアイドル研究部部室。
μ'sの本拠地とも言える場所で俺とにこと真姫、…と凛はことりの帰りを待っていた。
元々、今日は衣装について相談があるという事でことりと話すはずだったのだが、「部室のお菓子がなくなったにゃ~…」と落ち込む凛を見てことりが買い出しに行ったのだ。
待て。何でなにもしてないお前じゃなくてことり先輩が…と突っ込んだのだが、海未とさっさと行ってしまった。いい人過ぎる、あの人。
「暇ね…なんか話しなさいよ」
横に座っている真姫がそんな事を言ってくる。
「生憎だけど、俺に人を笑わせる話題なんかないんだなこれが」
「つまんないわね…なんかあるでしょ、なんか」
「俺としては真姫の話題に興味あるんだけど」
「却下よ」
「あ、それは笑わせる程の話題がないと取っていいってことか?」
「…なによ」
「なんだよ」
真姫と睨み合う。何かこんな事も日常化してきた。
すると突然にこの携帯が鳴った。
相手は…海未みたいだな。
「もしもし…にこですか!?そこに晴人はいますか!?」
「いるけど…どうしたの?」
「説明するので晴人に変わって下さい!」
携帯越しからでもわかる、海未の焦った声。
にこは首を捻りつつも携帯を俺に渡す。
「もしもし?どうしたんだ、海未」
「晴人!大変なんです!ことりが………!」
ことり…?
「ことりが交通事故に………!!」
それを聞いた瞬間、俺は部室を飛び出した。