ラブライブ!ーschool idol produce- 作:AGRS
今日中に投稿できて良かった…。
ではどうぞ!
夢を見ていた。そう遠くない昔の夢だ。
それは、母親に連れられてとあるスクールアイドルユニットのライブを観に行った時の事だ。
当時、まだことりは"スクールアイドル"というものが何なのかはちゃんと理解していなかった。
だからこそ、目にした光景にこれ以上ない驚愕を覚えた。
ステージには、可愛らしいフリルの付いた衣装で踊る女の子達がいた。どの子も、眩しいような輝きを放っているようだった。
軽やかにステップを刻み、聞く人全てを盛り上がらせるような歌声で歌う。
事実、会場の観客は声を張り上げて、彼女達の名前を何度も何度も叫びながらサイリウムやペンライトを振り上げていた。
そのライブこそが、南ことりが"スクールアイドル"という物に憧れを抱いた瞬間だった。
なんてキラキラした世界なんだろう。
聞くだけで、見るだけで自分の心が沸き上がるような感覚になっていくのがわかった。
ーーーーー私もあんな風になりたい。
ことりの胸の中は、その1つの気持ちで占領された。
自分もあんな綺麗な歌を歌いたい。
自分もあんな上品なダンスを踊りたい。
自分もあんな沢山のファンの声を浴びたい。
そうすればちっぽけで何もない私でも、何かを掴めるかもしれないーーーーー
その願いは正しく報われた。
数年後、彼女はあるスクールアイドルユニットの1人となって、輝きに満ちたステージに立てた。
今、目にしている女の子達ほどじゃないにしても、十分に満足いく時間だった。
なら、何故この夢を見てるんだろう。
ふいに、ステージ中央に立つ赤髪の少女に目をやる。
……そうだ、お母さんが熱心に語っていた女の子。
確か…名前はーーーーー
ことりの夢はそこで途切れた。
「海未!」
「晴人……!」
海未からの連絡を受けて、俺は真っ先にことりが運ばれた病院にたどり着いた。診たところ大きな怪我はしていないらしいのだか、意識が戻らない為、今検査をしているらしい。
「だから、この病室前で待ってるんです…」
「そっか…」
俺は自分を落ち着かせるように、廊下にある長めの椅子に座った。
無造作に指を絡ませて、ただただことりの無事を願う。やっぱり俺も一緒に行けば良かった…そんな後悔の念ばかりが頭の中に浮かんでくる。
しばらくそうしていると、突然海未が俺の隣に座ってきた。
え?隣?近くない?
そんな俺の心の中の声を無視して、海未は呟いた。
「ごめんなさい…晴人。私が一緒にいながら…」
ことりは海未と一緒に買い出しに行ってもらっていた。だからこそ海未は自分に責任を感じてるようだ。
「そんな…海未のせいなんかじゃなさ」
「いいえ、私が………!」
その時、海未の声を欠き消すように病室のドアが開かれた。
俺と海未はドアから出てきた白衣をまとった眼鏡の男性に駆け寄る。その人は俺達を安心させるようにゆっくり微笑んだ。
「ご安心下さい、意識は戻りました。命にも別状ありません。面会もできますよ」
俺と海未は安堵して、その場に座り込んだ。
「ごめんね、心配かけちゃって…」
「本当にそうですよ…もう…」
ベッドからが体を半分起き上がらせたことりが海未の言葉に苦笑する。見たところ無理してる様子もないし本当に大丈夫みたいだ。良かった…本当に。
「もう1度検査を受けて異常なかったら退院できるんだって」
「え…今日中にか?」
「うん。アイ活に響かなくて良かったよ」
「ですが、念のためにもう1日入院すべきです!」
「あはは、大丈夫だよ~」
海未は本気で心配しているみたいだ。まぁ、俺もその意見には賛成だけど。
「そうだ、皆にも連絡しないと」
海未が電話したのは俺だけみたいだから他のメンバーはことりが事故にあった事すら知らないだろう。
て言うか俺、にこの携帯持ったまんまだ…。
「いいですよ。私がしてきます」
ついでに何か飲み物も買って来ますね、と言い残して海未は病室を出て行った。
残ったのは俺とことりだけだ。えーと…
「でも、本当に良かったよ。怪我も全然なくてさ」
「軽い打ち身で済んだのは奇跡だ、ってさっきの先生も言ってたよ」
そんな会話でことりと笑い合う。うん、いつも部室で見せる自然な表情だ。
しばらく話していると、ことりが真剣な表情で語りだしてきた。
「私…夢を見てたんだ」
「夢…か?どんな夢だったんだ?」
「お母さんと一緒にスクールアイドルのライブを観に行ってる夢」
ことりのお母さんと言うとウチの学院の理事長か。そう言えば、俺にプロデューサーを頼んで来たくらいだし理事長もスクールアイドルに対してかなり入れ込んでるみたいだな。
内心納得する。だが、彼女が言った次の言葉に俺は動揺を隠せなかった。
「もしかして…夢神 桐葉さんって…晴人君のお姉さん…なのかな?」
………………………。
「な、何でそう思うんだ?」
「2年くらい前にお母さんが熱心に応援してたスクールアイドルがいたの。名前を聞いて、もしかしたらと思って」
なるほどな…だから桐葉の名前も知れたのか…。
「じゃあ、やっぱりそうなんだ?」
「ああ、夢神 桐葉は俺の姉だよ」
最早隠す気もなく、俺は打ち明けた。それにしてもまさか花陽や真姫でもなく、ことりに最初に気付かれるとはな…。
「どうして音ノ木坂に?お姉さんは確かUTX学院の生徒だったよね」
「特に理由はないよ。音ノ木坂が共学化を考えてた時だったし…それだけだ」
アイ活の手伝いをさせられるのは予想外だったけどな。
「ふふ…」
「どうした?」
「良かったなぁと思って。晴人君みたいな格好よくて頭のいい人が音ノ木坂に来てくれて」
そう言ってことりはクスクス笑う。頭いいって言ってもアイドル関係以外のことはからきしだけど…。
「俺も音ノ木坂に来て良かったと思うよ。…μ'sに出会えたんだからな」
それを聞いたことりは俺の目を見つめてきた。
「人の出会いは一期一会。どんなきっかけで出会うかは誰にも分からない。だから、この出会いには感謝しないとな」
俺はμ'sに出会えたことは本当に感謝してる。毎日の活動は充実してるし…メンバーの皆もいい奴ばかりだ。
何よりみんな一生懸命だから俺も頑張ろうって思えるんだ。それだけでもこの出会いは無駄なんかじゃない。
「私と出会えたことにも…感謝してるってこと?」
「勿論」
「それは私がμ'sのメンバーだから?」
「違うよ」
俺はきっぱり断言した。
「ことりだからだよ。表立つことはしないし、皆に強く発言するわけじゃないけど、ちゃんと皆の心配をしてて人を思いやる心を持ってる。そんなことりだから俺は応援するし、心配もする」
「………………」
「何にしても、ことりとの出会いは無駄じゃないってこと」
言っててなんか恥ずかしくなってきた俺は、右手をことりに差し出す。
「あー…と、とにかく!改めてよろしくな、ことり」
握手を求めようと思って差し出した右手がことりに掴まれることはなかった。
いや、右手は掴まれなかったが"右腕"が掴まれた。
ことりは掴んだ右腕を自分の方に引き寄せた。
うおっ……!?と声を出す間もなく、ことりに寄りかかったと思ったらーー右の頬に柔らかい感触。
すぐさま体を離し、少し顔が赤いことりに尋ねた。
「こ、ことり…今…何して…」
「うん…唇にする勇気はまだないから…」
いやいやいや、しなくていいよ!
俺が心の中でドギマキしていると
「私なりの感謝の気持ちだよ?」
そう言って、ことりは見た目通りのゆるい笑顔を見せた。
「ことりちゃーん!ホントに良かったにゃ~!」
翌日。
結局ことりは検査を受けた後異常がなかった為、その日の内の退院となった。
海未が何度も念を押していたが、「大丈夫だから」の一点張りなので、こうして放課後の部室にいる。
「けど、本当に無事そうで良かったわ」
「ごめんね、絵里ちゃん。心配かけて」
そう言ってことりは絵里に笑いかける。
「晴人もありがとう。…心なしかすっきりした顔ね。どうしたの?」
俺の表情を見て、絵里が聞いてくる。
「まぁ、俺も元気を貰えた…ってことかな」
それを聞いたことりはたちまち顔を赤らめて、とんでもない事を口にした。
「は、晴人君!キスのことは…」
「え?」
「え?」
「え?」
「にゃ?」
「え?」
「え?」
「ん?」
「にこ?」
あ…あああああああ………!!!
「こ、ことりちゃん?き、キスってどどどど、どーゆうこと!?」
「あらまぁ…晴人ったら早速手を出して…」
「弱ってるとこをつけこんで…!この変態!」
誤解だああああああああああああ!!!
それぞれの反応にすぐさま否定する。一部、蔑むような視線を感じるが気のせいだと思いたい。
結局、その日の誤解を解くのに陽が暮れるまでかかってしまい、アイ活を進められる事は出来なかった。
なんか話数を重ねるごとに内容がすっかすかになってるように思えてならない…(泣
サブタイのSは"sink"
『沈む』となります。
………あってるよね。
次回は小休止かな。