ぶっ飛び!!自殺しまぁぁぁぁす!!!   作:Desire(善い人)

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初投稿です


笑顔で死ぬ

 誰もが心に抱えている終わりにしたいという欲求がある。どれほど幸福であっても現実は耐え難く、どこまで行っても自分は醜い。他人の悪意も好意も信じられず、疑いの中で擦り切れていく自我。凍りつく善性と反比例して溢れ出すどす黒い汚泥。もはや、もはや、この世界で生きていくには俺はあまりにも手遅れだった。

 

「ここなら誰にも気付かれないはずだ」

 

 噂程度の信憑性に欠ける情報だったが果物のように垂れ下がる数多の人間たちを見てほっと息をする。これを"自殺の名所"という。社会に居場所を無くした壊れてる人間たちの行き着く先、腐った肉と虫たちの楽園。いくら太陽が照らしても浄化できないほど濃厚な瘴気が蔓延しているこの地には正常な精神構造をしている者は足を踏み入れるどころか近づくことすらできない。

 

 素晴らしいと、勝手に声が漏れた。死損なう事のないように前々から準備していたのだ。劇物を使えれば楽だったのだが、この場所で死ぬ時のルールのようなものがあり首吊りでなくてはいけなかった。どうせ死ぬのだし、とも考えたがトラブルに発展したら殺してしまいそうなので素直に従うことにした。

 

 少し進むと湖があった。中心に生える巨大な木から伸びる枝が全域を覆っていて、それにはかつて死体を支えていたであろう腐敗したロープが何本も括り付けてあった。一体どれほどの死体を飲み込めば湖が人間由来の泥で満たされるのだろうか。そして一体いつからこの湖は人間の絶望を喰らってきたのだろうか。考えるまでもなく死ぬならここだと直感した。ここまで汚れに満ちていれば、首を括らずとも長くは持たないだろう。

 

 中心に向けて進もうと湖に足を踏み入れるも、固形に近い泥に足を取られて上手く進めない。底無しとも思ったが腰のあたりで足がついたのでそれは大丈夫だったが、これでは何時間かかるかわからない。おかしな話だが、いつの間にかあの木で首を括らなくてはという使命感が俺を支配していた。

 

「あ」

 

 足を取られた。というよりこれは……足の感覚がない。

 

「ああああああ」

 

 一瞬遅れて生じた痛みで気がついた。泥の中に何かいる。生きたまま食われている。

 

「あ……なんだ? 虫、虫ぃ!? なんで痛みが、というか足食われて!?」

 

 20センチほどの灼熱が体内を食い散らかす。血管が裂け、筋肉に穴が開き、骨が削れた。これは虫だ。人の味を覚えた虫が新鮮な餌に群がっている。問答無用の捕食行為。正気じゃいられない不快感、嗚呼気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!

 

「このままじゃ動けなくなる! 速く中心にいかないと死ぬ!!」

 

 なぜだろうか、結局自分を待っているのは死だというのに一度決めたからにはこれを達成しなくてはいけないという気がするのは。ここで食われて死ぬことと、あの木に首を吊るのでは意味合いが全く変わってくるような気がするのはなぜなのか。それはわからないが、とにかく食い尽くされる前にこの虫を何とかしなければならない。

 

 息を大きく吸ってスカスカになってしまった右足に何度も手を突っ込み、這いずり回る虫どもを引きずり出した。

 

「クソがぁぁぁぁ!!!」

 

 男が1人、おぞましい泥の中でのたうち回っている。”俺はあの場所で死ぬんだ!!”と。馬鹿げた話だがそれは男にとって初めての目的だった。どのみち死を選ぶのだとしても、腐り落ちた死体が虫に食われるのだとしても今ここで虫に食われて泥の中で死ぬのは嫌だった。

 

 命からがら泥から抜け出すことに成功した。右足の太ももから先をほとんどを食い尽くされたが、左足は食われる前に虫を引き摺り出すことに成功したので無事だった。幸か不幸か、虫には神経毒のようなものがあったようで損傷の規模にしては痛みが少なく済んでいる。そうやって気付かれることもなく幾つもの命を食らってきたのだろうか……?

 

 出血が著しい。このままでは自殺する前にショック死するだろうが、策がない訳ではない。体外への出血の対策は大体の場合圧迫することで何とかなる。そこで予備のロープを止血に使う。すでにかなりの血液が流れ出していて腕に力が上手く入れられなかったが、気合いできつく縛った。

 

 危機を脱したとはいえ、痛みが虫の毒で中和されている間に素早くことを済ませなくてはならない。毒が切れて仕舞えば痛みに悶え苦しむことになる自殺どころではなくなるだろう。それにこのような雑な処置では延命にはなっても救命にはならない。早急に命を落とさなくては

 

「……この枝でいいか」

 

 無数の枝の中から一際しっかりとした枝に目をつけると何度も練習した手順でロープをセットアップする。

 

「準備完了!!」

 

 枝に引っ掛けた腕を離すと全体重が一気に首にかかる。すると簡単に首の骨は限界を迎えて外れ、苦しみ悶える体の力に耐えかねて折れた。気道は圧迫されて呼吸ができずに思考がまとまらない。靄がかかったように視界が白む。自分という一存在が怒涛の勢いで破壊されていくごとに圧倒的快楽が洪水を起こす。あらゆる天変地異が我が肉体に起こっているのだ!!死ぬ!死ぬ!死に絶える!召される!きっと地獄行きだ!!!!息が吸えないので笑えないが、笑いたいので口をかっ開く。笑いたいが、笑いたいが、笑いたいが、笑いたいが、笑いたいが、笑いたいが、笑いたいが、笑いたいが、笑いたいが、

 

 

 

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