鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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第玖話

「全集中・水の呼吸 壱ノ型・水面斬り!」

 

炭治郎は朱紗丸に斬りかかる。

 

「こっちじゃこっちじゃ!」

 

朱紗丸はかわし、毬を投げつける。

 

「くっ!」

 

炭治郎はギリギリで避けた。

 

「鬼狩り!矢印の奴から狙え!毬女は妹と俺たちに任せろ!」

 

「はいっ!」

 

炭治郎は愈史郎の言うとおり、朱紗丸から矢琶羽に狙いを変えた。

 

(晶さんが鬼舞辻無惨の面の皮を取ってきてくれたけど、まだ血が足りない。こいつらが鬼舞辻無惨の配下の鬼だというなら、必ず血を採ってみせる!)

 

(そして禰豆子を人間に戻してみせる!)

 

「汚れたガキめが。鬱陶しい!」

 

矢琶羽は炭治郎に矢印を放つ。

 

「っ!?」

 

炭治郎の体は勝手に後ろに進んで行く。

 

「これは……!」

 

そのまま炭治郎は木に打ち付けられた。

 

「まだじゃ」

 

矢琶羽の掌の眼が閉じる度に、炭治郎の体は勝手に動く。

 

「仕舞いじゃ」

 

矢琶羽の掌の眼が閉じ、炭治郎の体が上昇、そのまま落下する。

 

(まずい!技を!)

 

「捌ノ型・滝壺!」

 

炭治郎は何とか落下を回避した。

 

「チッ、しぶとい……」

 

矢琶羽は舌打ちをした。

 

「朱紗丸!」

 

矢琶羽は仲間に呼びかけた。

 

 

 

「ん~?なんじゃ。今良いところなのに」

 

「そこの鬼などさっさと片付けろ。奥におるのは〝逃れ者〟の珠世ぞ」

 

「ほう……!これは良き土産になろうぞ!」

 

朱紗丸は禰豆子に毬を投げつける。

 

「!」

 

禰豆子は毬を蹴り返そうとした。

 

「蹴ってはだめよ!」

 

珠世は止めるが手遅れだった。

 

禰豆子の右足は毬の威力に耐えきれず、吹き飛ばされた。

 

「禰豆子!転がれ!」

 

炭治郎は転がって逃げるように指示を出したが、朱紗丸に蹴飛ばされた。

 

「楽しいのう楽しいのう、蹴鞠も良いのう!して矢琶羽、こやつらの頸を四つ持ち帰れば良いのかえ?」

 

「いや……」

 

矢琶羽は念入りに着物に付いた埃を払う。

 

「必要なのはそこの鬼狩りと珠世の頸。後は要らぬ」

 

「化け物とやらは?」

 

「それは……」

 

【ここにいるぞ】

 

「っ!?」

 

矢琶羽の両腕は光線のようなもので吹き飛ばされた。

 

「矢琶羽!?」

 

【遅い!】

 

今度は朱紗丸の両足が吹き飛ばされた。

 

「ぐあっ!?」

 

両足を失った朱紗丸は無様に転がった。

 

「何者ぞ!?」

 

【お前たちが追っている化け物さ】

 

化け物──ガイバーⅠが診療所に戻ってきた。

 

 

 

「晶さん!!」

 

【済まない、遅くなった】

 

「晶さん、鬼たちは!?」

 

【大丈夫ですよ珠世さん。一体残らず倒しましたから】

 

「くっ!貴様……」

 

「我らを十二鬼月だと──」

 

【釜鵺に零下子だったか】

 

「「!?!?」」

 

ガイバーⅠの呟きに、朱紗丸と矢琶羽は動揺した。

 

【十二鬼月の条件は目に数字が浮かんでいるとのことらしいが、俺の目がおかしいのか?お前たちの目には数字なんかないが】

 

「黙れえぇぇぇっ!!」

 

朱紗丸は渾身の力で、ガイバーⅠに毬を投げつける。

 

【!】

 

ガイバーⅠは片手でワームホールを形成し、毬を削り落とす。

 

【炭治郎!】

 

「っ!は、はい!」

 

【そっちは任せていいか?】

 

「はい!任せてください!」

 

炭治郎は矢琶羽に向かって日輪刀を構える。

 

「ムー!!」

 

回復した禰豆子がガイバーⅠの隣に立つ。

 

【毬は全部叩き落とすから、禰豆子ちゃんはその都度蹴り飛ばしてくれ】

 

(コクリ)

 

決着は近い。

 

 

 

「おおおおっ!!」

 

炭治郎は矢琶羽の着物を斬った。

 

「この……ガキが!!」

 

(見えた!隙の糸!)

 

炭治郎は勝利の一糸を見いだした。

 

「いい気になるな!猿めが!」

 

矢琶羽の掌の眼が閉じ、炭治郎に大量の矢印が襲いかかる。

 

(くっ!矢印が斬れない!刃が触れた瞬間に矢印の方向へと飛ばされる!)

 

「全てがわしの思うがままじゃ!腕が捻り切れるぞ、鬼狩り!」

 

矢琶羽は勝ち誇ったように声を上げる。

 

(このまま攻撃され続ければ反撃が出来ない!直接矢印に触れないように方向を変えるしかない!それには……!)

 

炭治郎は日輪刀を構える。

 

(技の応用だ。まず陸ノ型で矢印を巻き取り、参ノ型の足運びを使って距離を詰める!)

 

「ねじれ渦・流々!!」

 

炭治郎は陸ノ型の応用で矢印を捻り、巻き取った。

 

「そこっ!」

 

「猿がっ!!」

 

矢琶羽の掌の眼が閉じた。

 

その瞬間、炭治郎の日輪刀が重くなった。

 

「逃が……さない!」

 

「全集中・水の呼吸 弐ノ型改・横水車!!」

 

弐ノ型の変形技は、矢琶羽の頸を斬り落とした。

 

「くっ!!?」

 

矢琶羽は信じられないと言わんばかりの顔になった。

 

 

 

(や、やった……!水中じゃないと威力が落ちる陸の型も、相手の攻撃を利用したおかげで力が増して矢印を全て巻き取れた……!)

 

「おのれおのれおのれぇぇぇっ!!」

 

「!?」

 

矢琶羽の悪鬼のごとき形相に炭治郎は思わずたじろいだ。

 

「俺の顔に汚い土を付けおって!何よりお前の頸を持って帰ればあの方に認めていただけたのに!!許さぬ!許さぬ!許さぬ!!」

 

「っ!」

 

炭治郎はその場を離れようとした。

 

「お前も道連れじゃ!!」

 

だが遅かった。

 

炭治郎の全身から矢印が生えた。

 

(しまった!?攻撃をくらっていた!!)

 

炭治郎の体に今までで一番強い力がかかり、壁に向かって吹っ飛ばされる。

 

(肆ノ型・打ち潮!)

 

炭治郎は間一髪で壁への激突を回避した。

 

だが矢琶羽の呪いはまだ終わらなかった。

 

今度は上へと吹っ飛ばされた。

 

(刀が重い……!でも……こんな所でやられてたまるかっ!)

 

(打ち潮!水車!雫波紋突き!水面斬り!滝壺!)

 

炭治郎は次々に技を放った。

 

技の反動で全身に激痛が走る。

 

だが止めるわけにはいかなかった。

 

(打ち潮!滝壺!水車!水面斬り!ねじれ渦!)

 

最後に陸ノ型を放ち、ようやく呪いから逃れられた。

 

(禰豆子!晶さん!珠世さん!愈史郎さん……!どうか無事で……!)

 

脚と肋が折れ、呼吸も苦しかったが、炭治郎は這いながら、ガイバーⅠらの所に向かった。

 

 

 

(こ、このガキ……このガキ!)

 

朱紗丸は苛ついていた。

 

「!!」

 

朱紗丸が放った毬を禰豆子は徐々にではあるが蹴り返すようになっていた。

 

「このっ……!!」

 

朱紗丸は回転をかけた毬を禰豆子めがけて放つ。

 

【むうっ!!】

 

ガイバーⅠが毬を正面から受け止める。

 

【よし!禰豆子ちゃん!】

 

キャッチした毬を蹴りやすいように放り、禰豆子はタイミングを合わせて蹴った。

 

(くっ!こやつら……!)

 

朱紗丸は徐々に不利に傾いていく。

 

【おい、お前】

 

ガイバーⅠは見計らって朱紗丸に問いかける。

 

【さっきも聞いたが、お前十二鬼月じゃないだろ】

 

「だ、黙れっ!!」

 

朱紗丸は狼狽える。

 

【大方、鬼舞辻無惨に言いくるめられて俺たちを追って来たんじゃないのか?】

 

「黙らぬかっ!!」

 

【まったく、鬼舞辻無惨ってのは人任せにしか出来ない臆病者なんだな】

 

「晶さんのおっしゃる通りです。あの男はただの臆病者です。いつも何かに怯えている」

 

見かねた珠世も加わった。

 

「やめろっ!やめぬかっ!!」

 

「晶さん、鬼が群れを成しているところを見たことがありますか?」

 

【ありますが、力のある鬼が支配しているように見えました】

 

「それは鬼たちが群れをなして自分に襲いかかってくるのを防ぐためです。一致団結されるくらいなら、鬼同士で上下間を作ってもらえれば都合がいい」

 

「朱紗丸さんとやら、あなたもそういう風に操作されているのですよ」

 

「黙れーっ!黙れ黙れ黙れ!!逃れ者のくせにわかった風な口を利くなーっ!!」

 

朱紗丸の怒りが爆発した。

 

「あの方はそのような小者ではない!あの方の能力は恐ろしいのじゃ!!」

 

【……?なんだこの感じは】

 

ガイバーⅠは辺りに漂う何かを感知した。

 

「鬼舞辻様は───」

 

朱紗丸は遂に、言ってはならない言葉を口にした。

 

 

 

「ッ!?!?!?」

 

朱紗丸は口を押さえるが、手遅れだった。

 

「その名を口にしましたね。まもなく呪いが発動するでしょう。可哀想ですが………さようなら」

 

珠世は最後通告を出した。

 

「ギャアアアッ!!!」

 

朱紗丸は半狂乱になった。

 

「お許しください!!お許しください!!どうか、どうか!!許し………グゲァァ………!!」

 

朱紗丸の口から太い腕がせりだし、朱紗丸の頭を掴む。

 

そして握り潰した。

 

「「………………………」」

 

その光景に、炭治郎と愈史郎は言葉を失う。

 

【さっきの鬼と同じ………珠世さん、これはいったい……!?】

 

「これが呪いです。その正体は体内に残留する鬼舞辻の細胞に肉体を破壊されること」

 

【細胞に食われる………まるでガイバーじゃないか!】

 

ガイバーⅠはうすら寒い何かを感じた。

 

「し、死んでしまったんですか……?」

 

「まもなく死にます」

 

珠世は淡々と告げた。

 

「それと炭治郎さん。この鬼は十二鬼月ではありません」

 

「えっ!?」

 

「晶さんは知っているようですが、十二鬼月には眼球に数字がありますが、この鬼にはありません」

 

「そしてもう一方も十二鬼月ではありません。弱すぎる」

 

(弱すぎる!?あれで……?)

 

「……………………」

 

珠世は朱紗丸の脳から血を採った。

 

「私は禰豆子さんを診ます。薬を使い、術まで吸わせてしまいましたから。悪く思わないで」

 

珠世はうとうとする禰豆子の手を引いて、診療所に入って行った。

 

「…………むぐっ!?」

 

呆然とする炭治郎の口に愈史郎が布をあてる。

 

「吸い込むなよ。珠世様の術は人間など簡単に殺せるからな。そっちのお前は?」

 

【ガイバーには五感と呼ばれるものがいくつかない。どうやら大丈夫のようだ】

 

「ならこの鬼狩りはお前が何とかしろっ!」

 

愈史郎は炭治郎を放って診療所に戻って行った。

 

【炭治郎、肩貸すよ】

 

「あ、ありがとうございます……」

 

炭治郎はガイバーⅠの肩を借り、立ち上がった。

 

その時、炭治郎の足元に毬が転がっていた。

 

「ま……り……ま……り…………」

 

朱紗丸の手が毬を探していた。

 

「晶さん」

 

【ああ……】

 

炭治郎は毬を拾い、朱紗丸の手に渡した。

 

「…………毬だよ」

 

「あそぼ…………あそ………ぼ………………」

 

炭治郎と殖装を解いた晶の耳には、小さな子どもの声に聞こえた。

 

十数分後には朝日が登り、朱紗丸の死骸は完全に消滅した。

 

「この二人は、十二鬼月だとおだてられ騙され戦わされ、鬼舞辻の呪いで殺された」

 

「人を散々殺した報いとはいえ、救いがないな……」

 

「あいつこそ……本物の鬼だ」

 

「そうだな」

 

晶と炭治郎は診療所へと向かった。

 

 

 

診療所に入ると、地下に通じる階段を見つけた。

 

下りてみると、禰豆子が珠世に抱きつき、愈史郎の頭を撫でていた。

 

「これは………」

 

「先程から禰豆子さんがこのような状態で……大丈夫なのでしょうか……?」

 

「大丈夫です。多分、二人のことを家族の誰かだと思っているんですよ」

 

「? しかし禰豆子さんにかかっている暗示は、人間が家族に見えるはず。私たちは鬼ですが……」

 

「きっと、禰豆子ちゃんには人間に見えたんですよ。だから守ろうとしたんじゃないでしょうか」

 

「…………………………」

 

珠世の目から涙が流れた。

 

「すみませんっ!!」

 

炭治郎は叫んだ。

 

「禰豆子っ!!離れるんだ!!失礼だから!!」

 

(別に失礼じゃないだろ。というか炭治郎が原因だからな?)

 

晶は心の中で呆れた。

 

「ありがとう、禰豆子さん……!」

 

珠世は禰豆子をいとおしそうに抱きしめた。

 

「……………………」

 

隣にいた愈史郎は禰豆子から目を離せなかった。

 

 

 

「私たちはここから去ります」

 

禰豆子が炭治郎と晶の元に戻ったところで、珠世は二人に告げた。

 

「やはり鬼舞辻無惨のことで?」

 

「はい。今回のことで多かれ少なかれ、私たちのことは知られたでしょう。普通の人間を診ていても気づかれることもあるでしょう」

 

「珠世さん……」

 

「それで提案なのですが、私たちが禰豆子さんをお預かりしましょうか?」

 

「!?」

 

珠世の提案に炭治郎は迷った。

 

(確かに炭治郎の立場と禰豆子ちゃんの安全を考えればその方が良いかもしれないが……)

 

晶は炭治郎を見つめる。

 

「…………………」

 

禰豆子は炭治郎の手を握った。

 

「禰豆子……」

 

炭治郎の迷いは消えた。

 

「ありがとうございます。でも、俺たちは一緒に行きます」

 

「離ればなれにはなりません。もう二度と……」

 

「炭治郎……」

 

「……分かりました。せめて、あなた方の武運長久を祈っています。それと晶さん、お約束の品は必ず完成させます。五日後、こちらに来ていただけますか?」

 

珠世は小さな紙を手渡した。

 

「必ずお伺いします」

 

「では、私たちはこれで」

 

「俺たちは痕跡を消して行く。さっさと行け」

 

愈史郎は背を向けた。

 

「……炭治郎」

 

「え?」

 

「お前の妹は美人だよ」

 

「愈史郎さん……」

 

炭治郎は笑顔で応えた。

 

 

 

「それじゃ、十二鬼月を二人も倒したんですか!?」

 

「厳密に言えば、下弦の陸をな。下弦の肆は倒したとは言えないよ」

 

珠世たちと別れ、炭治郎は晶から戦った相手のことを聞いていた。

 

「本当に、がいばぁが下弦の肆を喰ったと……?」

 

「正確に言えば取り込んだんだと思う。人間が食べた物を胃袋の中で消化して、その栄養素を人体が吸収するように」

 

「晶さん……」

 

「軽蔑したろ?俺は──」

 

「違いますよ」

 

「え?」

 

「晶さんは化け物なんかじゃないですよ」

 

「炭治郎」

 

晶は少しだけ心が晴れた気がした。

 

「それより、次は──」

 

「カアァァッ!」

 

松衛門が飛んで来た。

 

「南南東!南南東!南南東!次ノォ任務地ハア、ココカラ南南東ォ!!」

 

「わかった。わかったから耳元で叫ぶなよ」

 

「カアァァッ!」

 

「ハハ……」

 

晶は笑みをこぼす。

 

「頼むよおおおおっ!!」

 

「「「ッ!?」」」

 

突然響いた叫び声に、二人と一羽は驚く。

 

「晶さん!?」

 

「あれか?」

 

二人は声のする方向に駆けつけた。

 

そこでは──

 

「頼む頼む頼む!!結婚してくれぇぇっ!!」

 

この時代では珍しい金髪の男が女性にしがみついていた。

 

「何だ?」

 

「いつ死ぬかわからないんだ!!だから結婚させてくれってことで!!頼むよおおおっ!!」

 

女性は明らかに嫌がっていた。

 

「……この時代の結婚の申し込みってああなのか?」

 

「……そんなわけないでしょう」

 

炭治郎はげんなりした。

 




次回、鼓屋敷に乗り込みます。



鬼滅の規格外品こそこそ話

鬼舞辻無惨のデスマスク製作中の珠世さんは妖しげな笑みを浮かべているそうだぞ!
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