鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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第拾肆話

【行くぞっ!】

 

ガイバーⅠは病葉の懐に飛び込む。

 

「速い!?」

 

病葉は距離を取った。

 

【チッ!】

 

ガイバーⅠはなおも突進する。

 

「くっ!」

 

病葉はガイバーⅠの接近に合わせるように距離を取る。

 

【こいつ……戦う気がないのか?】

 

ガイバーⅠは病葉の狙いが掴めず、動きを止める。

 

「おっと!後ろはお薦めしないぜ」

 

【何だと………これは!?】

 

ガイバーⅠの背後に赤黒い木の葉が舞っていた。

 

【ただの葉っぱじゃない……!】

 

ガイバーⅠは木の葉に当たらないように回避した。

 

「ワン!ワン!」

 

どこからともなく、犬が駆けて来た。

 

「こら、ハチ!勝手に行くな!」

 

その後ろから飼い主と思わしき少年が走って来た。

 

【ダメだ!来るな!】

 

ガイバーⅠは止めに入ろうとしたが、遅かった。

 

「キャン!」

 

「ヒッ!?」

 

木の葉に触れた犬と少年はもがき苦しみだした。

 

「ハッ……ハッ………………」

 

犬は涎を垂らしながら動かなくなった。

 

「た、助けて…………」

 

少年は苦しみの末、事切れた。

 

「ふっ、運のいい奴め」

 

病葉は吐き捨てた。

 

【お前、何をやった!!】

 

「見ての通りさ。血鬼術で作りだした葉に触れたものは苦しみもがいて死ぬのさ」

 

【今までで一番の外道だな……!】

 

ガイバーⅠはヘッドビームを病葉めがけて放つ。

 

「ぐおっ!」

 

病葉の体にいくつも風穴が空いた。

 

「ククク……かかった!!」

 

【!?】

 

ガイバーⅠの頭上に夥しい数の木の葉が舞い降りる。

 

「これで終いだ!!」

 

【こうなれば!】

 

ガイバーⅠはソニック・バスターで相殺を試みる。

 

バイブレーション・グロウヴから放たれる振動波は木の葉を打ち消していく。

 

「無駄無駄ぁっ!!」

 

病葉は血鬼術で木の葉をさらに増やす。

 

【数が多い!だが、ここで抑えないと近くの町にまで被害が及ぶ!】

 

ガイバーⅠは範囲を広げた。

 

そして二十分ほど経った。

 

「くそっ!くそっ!くそおっ!!」

 

先に音を上げたのは病葉だった。

 

(これ以上はこっちの力が持たない………この化け物がっ!!)

 

病葉は憎々しげにガイバーⅠを睨む。

 

【や……やっとか………】

 

ガイバーⅠは咽頭を押さえながら膝をついた。

 

【無理し過ぎたか……だが!】

 

ガイバーⅠはゆっくりと立ち上がった。

 

【消耗しているのは向こうも一緒だ!行くぞ!】

 

ガイバーⅠは力を振り絞り、病葉に特攻する。

 

「くっ、来るな!!」

 

病葉は両手で遮ろうとした。

 

【これでぇぇっ!】

 

高周波ブレードは病葉の頸と腕を断ち斬った。

 

「か……勝ったと思うな………」

 

【何……?】

 

「どうせ俺は、俺たちはもう終わりだ……」

 

【どういう意味だ……】

 

「後はやってくれ………轆轤」

 

「応!」

 

【っ!?】

 

ガイバーⅠは背後から奇襲を受けた。

 

「ふん。よくもかわしやがったな」

 

【その目……まさかお前も……!】

 

「ああそうだ」

 

病葉から轆轤と呼ばれた鬼は手をボキボキと鳴らす。

 

「十二鬼月は下弦の弐、轆轤。てめえだけは断じて許さねぇ……!」

 

下弦の弐と描かれた眼は憎悪に燃えていた。

 

 

 

一方その頃──

 

(なんてひどいことを……!鬼が糸で無理矢理体を動かしているから骨が折れようともお構い無しだ!)

 

炭治郎たちは那田蜘蛛山に先に来ていた鬼殺隊士たちと斬り結んでいた。

 

(技は使いたくない。でも糸を斬ってもまたすぐに繋がる……!)

 

(かといってこのままにしてたら体がバラバラになって死んでしまう!)

 

(何か、何か動きを止める方法はないのか……そうだ!!)

 

炭治郎は操られている鬼殺隊士を誘き寄せる。

 

「な~にやってんだ!!」

 

伊之助の怒号が飛ぶが、炭治郎には気にする余裕がなかった。

 

(今だ!!)

 

炭治郎は鬼殺隊士に飛びかかる。

 

(全集中の呼吸!!)

 

呼吸を発動させ、鬼殺隊士を木の上に投げ飛ばす。

 

投げ飛ばされた鬼殺隊士の糸は枝に絡まり、動きが止まった。

 

「よし!」

 

炭治郎は思わず笑みがこぼれる。

 

「よっしゃあああっ!俺も!」

 

触発された伊之助は次々に鬼殺隊士を木の上に投げ飛ばす。

 

(これで大丈夫だ。後は本体を叩かないと!)

 

炭治郎は呼吸を整え、日輪刀を抜く。

 

(晶さんも今戦っているはずだ。俺も負けてられない……!)

 

炭治郎は気合いを入れた。

 

 

 

 

【冗談じゃないぜ………さっきの奴より格上の相手なんて……】

 

ガイバーⅠは揺らぐ闘志を必死で奮い立たせる。

 

「陸、肆、参………てめえ調子に乗りすぎてんじゃねぇのか……?」

 

【調子に乗った覚えはないんだがな。それより……】

 

ガイバーⅠは轆轤の眼を見る。

 

【病葉とかいう奴が言っていた、俺たちはもう終わりとはどういうことだ?】

 

「そのままの意味さ……!!」

 

轆轤は拳から嫌な音がするほど握りしめた。

 

「俺はもう下弦じゃ、十二鬼月じゃなくなったからさ!!」

 

【十二鬼月じゃなくなった?】

 

「てめえのせいでなあっ!!」

 

轆轤はショルダータックルの体勢でガイバーⅠに突進した。

 

【っ!】

 

ガイバーⅠは両手を交差させて防御した。

 

【!?】

 

轆轤の突進は今のガイバーⅠのフィジカルを上回っていた。

 

ガイバーⅠは寺の残骸があるところにまで吹っ飛ばされた。

 

【ぐぐぐ……!!】

 

ガイバーⅠは痛みに耐えながら顔を上げた。

 

「釜鵺と零余子がてめえに討たれて、あの方は俺たち下弦を無能の役立たずだとして瓦解させるとおっしゃられた!分かるか?俺がどれだけ血肉を喰らって築き上げてきたものをてめえが台無しにしやがったんだ!!」

 

轆轤は吼えた。

 

【なんだよ……】

 

「あ?」

 

【どんな理由かと思ったら……ただの逆恨みか】

 

「なんだと!!」

 

【まあ、鬼舞辻無惨についた時点でこうなることが分かってたんじゃないか?】

 

「口を閉じやがれ!!」

 

轆轤はガイバーⅠに殴りかかる。

 

【お前……頭悪いだろ】

 

ガイバーⅠはクロスカウンターの要領で、轆轤の顔面に右ストレートを叩き込んだ。

 

【!?】

 

だが、困惑したのはガイバーⅠだった。

 

ガイバーⅠの拳は確かに轆轤の顔面に命中した。

 

だがダメージを受けたのはガイバーⅠだった。

 

【これは……!?】

 

「やるじゃねぇか。もう右手は使えねぇだろうが」

 

轆轤の指摘通り、ガイバーⅠの右拳は血まみれになっていた。

 

【……まさか、皮膚を硬質化させたのか】

 

「まあな。俺の体は矛にして鎧よ。さあ、とっとと死ね」

 

轆轤は両腕を振り上げた。

 

【やっぱり頭悪いだろ】

 

ガイバーⅠは轆轤の眼を狙ってヘッドビームを発射した。

 

「ぎゃああああっ!?」

 

思わぬ反撃に轆轤はのたうちまわる。

 

【これが精一杯だ………足と左腕さえ回復すれば……!】

 

ガイバーⅠは決着の準備に入ろうとした。

 

だが連戦の疲労とダメージは抜けきっておらず、回復が遅れていた。

 

「よくも……やってくれたな……!」

 

轆轤は怒りを露にして、ガイバーⅠを見下ろす。

 

そしてガイバーⅠの頭を両手で掴んだ。

 

「このまま殺してやる……!!」

 

【くっ……!!】

 

ガイバーⅠは覚悟を決めた。

 

「壱の型・水面斬り」

 

突然、轆轤の頸が斬られた。

 

【え………】

 

ガイバーⅠは呆気にとられた。

 

「なに……が………?」

 

轆轤は何が何だかわからないまま消滅した。

 

「晶さん、大丈夫ですか?」

 

【え……しのぶさんにカナヲさん!?】

 

「私たちだけではなく、水柱様もいらっしゃいます」

 

「…………………………………」

 

殖装を解いた晶は無口な男を見た。

 

「もしかして、あなたが炭治郎の言っていた富岡義勇さん?」

 

「そうだ。お前は?」

 

「俺は深町晶と申します」

 

晶は義勇と邂逅した。

 

「私言いましたよね?がいばぁという戦士と晶さんのことを報告した際、富岡さんその場にいたはずですよねって」

 

笑みを浮かべるしのぶの額に青筋が浮かびあがる。

 

 

 

「おかげで助かりました」

 

晶は義勇たちに礼を言った。

 

「気にするな」

 

「間に合ってよかったです」

 

「カナヲさんも一緒にきてたんですね」

 

「はい。この子、一緒に行くと言ってついて来たんです」

 

「そうだったんですか」

 

「炭治郎を………助けたいので」

 

「炭治郎を?」

 

「言ってくれたん……です。私は心のままに生きた方がいいって………」

 

「この間の時に?」

 

「………………………」

 

カナヲはコクリと頷く。

 

「ふふ……」

 

しのぶは微笑んだ。

 

「……………………………」

 

義勇は興味が無いのか、そっぽを向いた。

 

「烏からの報告を聞きました。下弦の陸、肆に続いて参まで討伐してしまうなんて……」

 

「まるで、晶さんだけを狙っていたかのようですね……」

 

「……………………………」

 

晶の顔が暗くなった。

 

「……隠していることがあるなら吐け」

 

「富岡さん、とりあえず黙っててください」

 

「…………………………………」

 

義勇は下がった。

 

「狙われているのは確かですね」

 

「なぜですか?」

 

「ちょっと待っててください」

 

晶は寺の瓦礫の中から木箱を掘り出す。

 

「……うん。箱は壊れていないな」

 

「それは?」

 

「炭治郎と禰豆子ちゃんを助けるための材料ですよ」

 

「そのような物が……いったいそれは?」

 

「言ってもいいですが、その前に言っておかなくてはならないことがあります」

 

「それは?」

 

「まず、俺はこの品物を使って鬼殺隊本部の人と交渉します。ある情報と引き換えに炭治郎と禰豆子ちゃんの身分と安全を保証するように、と」

 

「その条件に合うものなのか?お前の持つ情報とやらは」

 

「そうです」

 

晶は頷く。

 

「あなた方が本部の人との間に相当な忠誠心があることは知っています。ですが、交渉するにあたって俺の心証が悪く映るのは明白です。下手をすればしのぶさんや義勇さん、鱗滝さんと敵対する可能性だってあります」

 

「………わかりました」

 

「胡蝶……」

 

「しのぶ姉さん……」

 

義勇とカナヲはしのぶを見つめる。

 

「私としても、稀有な例である禰豆子さんを始末されることは避けたいのです。それに交渉ともなれば、晶さんも相当な覚悟を持っていることでしょう」

 

「しのぶさん……」

 

「ですから晶さん………教えていただけますか?」

 

しのぶは頭を下げた。

 

「私からも」

 

「……………………………」

 

カナヲはしのぶの横で頭を下げ、義勇も晶を見つめる。

 

「わかりました。とりあえずどこか人目のつかない場所で」

 

晶たちは移動した。

 

 

 

「どうぞ、ご覧下さい」

 

晶たちは一軒の空き家を見つけ、入った。

 

そして晶は木箱を開けた。

 

「これは……?」

 

「西洋の史書にあった、デスマスクというものですね」

 

「デスマスク……?」

 

「亡くなった方の顔を石膏や蝋で型を取って作った物よ。日本では馴染みのない風習だから無理もないけれど」

 

「これがお前の言う情報か?」

 

「はい」

 

「……そうか」

 

義勇はため息をついた。

 

「……なんだか、怖いくらいに引き込まれる」

 

「ええ。まるで人の上に立つ何かを持っているような………晶さん、この人物は?」

 

「これは、鬼舞辻無惨のデスマスクです」

 

「「「!?」」」

 

三人はビクリと反応した。

 

「しょ、晶さん………今、何て…………?」

 

「鬼舞辻無惨の顔です」

 

「嘘…………………」

 

(これが………鬼舞辻無惨だと…………!?)

 

「ほ、本当に………?」

 

「ええ、本当です。実は──」

 

晶は浅草であったことを三人に話した。

 

「鬼舞辻無惨は人間の姿で過ごしている!?」

 

「最初は炭治郎が匂いで探り当て、その後に俺が奇襲をかけて面の皮を手に入れたんです。ちなみにその面の皮はこの油紙に」

 

晶はデスマスクの下にある油紙を指さす。

 

「なんてくっきりした顔……」

 

「この顔で市井にいると?」

 

「おそらく。炭治郎が言うには、既婚かつ子どももいるようですが、間違いなく偽装でしょう」

 

「世間や鬼殺隊を欺くためにか」

 

義勇も顎に手をやる。

 

「じゃあ、晶さんが十二鬼月から狙われるのは……」

 

「たぶん口を封じるためだろう。とはいえ、もう鬼舞辻無惨の狙いは破綻してしまったけど」

 

「そうですね。私たちに話してくださったことで情報は共有されましたから」

 

「とはいえ、楽観は出来ませんが」

 

「そうだな」

 

四人は鬼舞辻無惨のデスマスクを見つめる。

 

 

 

「お話はよくわかりました。確かにこの情報は値千金の価値があるものです。ですが……」

 

「ですが?」

 

「御館様は晶さんを鬼殺隊の客分として迎えたいとのことなんです」

 

「客分、ですか?」

 

「実を言うと、御館様は晶さんの活躍を鎹烏からの報告を通してある程度お知りになっています。その晶さんを正隊員とまでいかずとも、客分としてお呼びしたいと」

 

「なら、このデスマスクは……」

 

「鬼舞辻無惨の手がかりを手に入れられる晶さんならば、反対する声も少ないかと」

 

「そうですか……」

 

晶は拍子抜けしたような気分になった。

 

「なら禰豆子はどうする?」

 

「富岡さん、横槍は……」

 

「……一つ策があります」

 

「策?」

 

「はい。この方法ならなんとかなると思います」

 

「それはいったい……?」

 

「すみませんが今はまだ……」

 

「……まあいいでしょう。そろそろ那田蜘蛛山に出発しましょう」

 

「そうだな」

 

「晶さんは……」

 

「もちろん行きます。炭治郎たちと約束したので」

 

「約束?」

 

「生きて、四人で飯を食おうって」

 

(私も……一緒に………)

 

「わかりました。では参りましょう」

 

四人は那田蜘蛛山に急いだ。

 




次回、炭治郎たちに加勢します。



鬼滅の規格外品こそこそ話

下弦の参と弐が倒された無惨様の怒りは残る下弦の壱はおろか、上弦の鬼たちも本気で怯えさせたぞ!
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