鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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第拾伍話

「あれが那田蜘蛛山……」

 

晶は思わず立ち止まった。

 

「あの様子ならば相当巣くっているな」

 

「十二鬼月がいるという報告もきていますから」

 

義勇としのぶは那田蜘蛛山に満ちる気配を感じ取った。

 

「ここに……炭治郎が……」

 

カナヲは日輪刀を握る手に力を込める。

 

「すまない、カナヲさん。ちょっと持っててくれるかな」

 

「あ、はい(呼び捨てでいいのに……)」

 

カナヲは晶から木箱を受け取った。

 

「ありがとう。ガイバアァァァァッ!!」

 

晶は殖装した。

 

(これががいばぁか……)

 

先ほどまで興味がなかった義勇も目を逸らせなかった。

 

「晶さんも行かれるんですね?」

 

【はい。極力戦闘には関わらず、先遣隊と炭治郎たちの救出に努めます】

 

「わかりました。まあ、木箱を持ったままでは戦闘も出来ませんか」

 

【牽制くらいなら何とかなると思いますが、高周波ブレードを使うとなると……】

 

「高周波ぶれえど?」

 

カナヲは首を捻る。

 

【肘に付いているこれだよ】

 

ガイバーⅠはゆっくりと高周波ブレードを伸ばす。

 

「すごいですね……」

 

【ああ、触らない方がいいよ。鬼の頸はもちろん、鋼を斬り裂くくらいの切れ味があるから】

 

「それだけか?」

 

【え?】

 

「他に武器はないのか?」

 

(富岡さん……喧嘩を売るようにしか話せないんでしょうか?)

 

しのぶは義勇の言い方に呆れた。

 

【他にもありますよ。たとえば……】

 

ガイバーⅠは木の幹に向かってヘッドビームを射った。

 

「ぎゃっ!?」

 

木の陰に隠れていた鬼が倒れた。

 

「カナヲ」

 

「はい」

 

カナヲは倒れた鬼の所に向かった。

 

「全集中・花の呼吸、肆ノ型・紅花衣」

 

鬼は頸をはねられ消滅した。

 

【これが花の呼吸ですか】

 

「ええ。姉の剣を受け継いでくれて何よりです。それはそうと晶さん。飛び道具を持っていたんですね?」

 

【基本的に高周波ブレードと格闘による近接戦闘が主体になります。牽制にはヘッドビーム、状況に応じてソニック・バスターやプレッシャーカノンを使っていきます】

 

「名前を聞くだけでも凄そうですね」

 

【それともう一つ、最強の必殺技と呼ぶべき武器があるんですが、それは使わないに越したことはないですね】

 

「なぜ使わない」

 

【敵味方問わず何もかも消滅させる威力がある、とだけ言っておきます】

 

「……そうか」

 

義勇は肩透かしをくらったような顔をした。

 

「とにかく、救出に向かいましょう。ここからは四つに分かれるということでよろしいですか?」

 

「異存はない」

 

「わかりました」

 

【大丈夫です】

 

義勇、カナヲ、ガイバーⅠは頷いた。

 

「では……お気をつけて」

 

四人はそれぞれ動き出した。

 

 

 

【………………………………】

 

ガイバーⅠは一人の鬼殺隊士を見下ろしていた。

 

数分前、ガイバーⅠは欲に目が眩んで炭治郎の再三の制止を無視した挙げ句、斬り刻まれかけた鬼殺隊士を寸での所で取り押さえた。

 

鬼殺隊士はガイバーⅠを鬼として斬りかかったが、日輪刀を根元から斬られ、胸ぐらを掴まれ締め上げられた。

 

ガイバーⅠから【鬼殺隊士を辞めろ】と怒声を浴びた鬼殺隊士は恐怖にのまれて動けず、小便を漏らしていた。

 

薬は十分に効いたと判断し、ガイバーⅠは炭治郎と合流した。

 

「晶さん!」

 

【遅れて済まなかった、炭治郎】

 

「いえ……それより禰豆子が!」

 

【禰豆子ちゃんが?】

 

「あいつは禰豆子を狙っているんです!」

 

【あいつか……】

 

ガイバーⅠは禰豆子を捕らえている鬼と対峙した。

 

【お前が十二鬼月の?】

 

「そうだよ。僕は累、下弦の伍さ」

 

【下弦の伍……】

 

「君、あれでしょ?下弦狩り」

 

【そんな二つ名はいらないんだけどな。それより、元下弦の間違いじゃないのか?】

 

「はぁ……?」

 

「元下弦!?どういうことですか、晶さん」

 

【下弦の弐って奴が言ってたんだが……】

 

ガイバーⅠは轆轤から聞かされたことを話した。

 

「へえ?」

 

予想に反して累は平然としていた。

 

【狼狽えたりしないんだな?】

 

「まあ、思うところがないわけじゃない。でも僕には家族さえいればいいんだ」

 

【家族?】

 

「晶さん、こいつ……他の鬼を無理矢理自分の家族にしているんです」

 

【鬼は群れを成すこともあるが、それは力の強い鬼による支配でしかない。こいつも例外じゃないんだろう】

 

「ひどいなぁ、支配だなんて」

 

累は唇を尖らせる。

 

「そしたらこいつ、禰豆子を寄越せって……!」

 

「さっきも言った通り、僕は感動したんだよ。君と妹の家族の絆に」

 

累は訴えかけるように言った。

 

【家族の絆……】

 

「そうだよ。だからこの子が欲しいんだ。ああ、安心していいよ。絆は繋ぐから」

 

【……どういう風に?】

 

「僕は強いからね。恐怖の絆を作るんだ。僕に逆らうとどうなるか、ちゃんと教えるから」

 

【……逆らうとどうなるんだ?】

 

「言うこと聞かないなら殺すしかないでしょ?」

 

【っ!!】

 

ガイバーⅠはヘッドビームを累めがけて射った。

 

「っ!?」

 

累は頭部を射ち抜かれた。

 

その隙に禰豆子は逃れた。

 

【ふざけるな……!】

 

ガイバーⅠは怒りを露にした。

 

【お前のはただのごっこ遊びだ!家族ってのは、そんな風に接していいものじゃないだろ!】

 

「そうです……!」

 

炭治郎は折れた日輪刀を構える。

 

「お前なんかに禰豆子は渡さない!」

 

「ふーん?」

 

累は糸を出して禰豆子を再び捕らえた。

 

「っ!」

 

禰豆子は累の顔をおもいっきり引っ掻いた。

 

「……………………」

 

累は禰豆子を上に投げ飛ばす。

 

「っ!!」

 

禰豆子が引っ掛かった蜘蛛の糸がくいこみ、血が流れる。

 

「禰豆子!!」

 

【落ち着け!】

 

駆け出そうとする炭治郎をガイバーⅠが押さえる。

 

【あいつは間違っても禰豆子ちゃんを殺すはずがない。短期決戦で仕留めるぞ!】

 

「わかりました!!」

 

炭治郎は平静さを取り戻し、累の頸に狙いを定める。

 

「そっちの相手はこいつらでいいか……」

 

累が合図をすると、多数の大型の鬼がどこからか現れた。

 

「こいつらは……!」

 

【糸のようなものが見える。操られているみたいだな】

 

「晶さん、そっちはお任せします!俺はこいつを!」

 

【無茶はするなよ!さあ、こっちだ!】

 

ガイバーⅠは大型の鬼たちの横を通りすぎる。

 

「さっさと殺してこい」

 

「ぐっ……!」

 

大型の鬼たちは無理矢理ガイバーⅠを追跡させられる。

 

「行くぞ!」

 

炭治郎は意識を集中させる。

 

 

 

【これでよし】

 

ガイバーⅠはプレッシャーカノンで木の根元に穴を掘り、木箱を隠した。

 

さらに木にバツ印を彫った。

 

【後は方角だけだな。松衛門!】

 

ガイバーⅠは飛んでいた松衛門を呼び寄せた。

 

「カアッ!呼ンダカ、晶!」

 

「これから十分後に北東の方角に向けて技を放つ。この射線上に鬼殺隊士や鎹烏がいたら避難を呼び掛けてくれ!】

 

「ワカッタ!任セテオケ!!」

 

松衛門は北東の方角に飛び去る。

 

【頼むぞ、松衛門。俺はその間……】

 

ガイバーⅠは追いついて来た鬼たちを見つめる。

 

【少しでも射線上に集めないとな!】

 

ガイバーⅠは拳を握りしめ、鬼たちに突っ込んだ。

 

 

 

「全集中・水の呼吸 拾ノ型・生生流転!」

 

炭治郎は水の呼吸の最大の技を仕掛けた。

 

回転を止めない限り威力の上がる技は累の糸をまとめて斬り裂く。

 

「無駄なことを。これが一番硬いなんて誰が言ったの?」

 

累は血鬼術の糸で炭治郎の行く手を阻む。

 

(だめだ!回転が足りない!これじゃ斬れない!)

 

(絶対に負けちゃいけないのに……このままじゃ死ぬ!)

 

(死…………)

 

この時、炭治郎の脳裏にこれまでの出来事が走馬灯のように廻った。

 

(父さん……!)

 

炭治郎の意識は記憶の中の父と再会した。

 

(炭治郎、呼吸だ。息を整えてヒノカミ様になりきるんだ)

 

「ヒノカミ……様………?」

 

炭治郎は幼少の頃見た、父の神楽を思い出した。

 

「ヒノカミ神楽・円舞!!」

 

炭治郎の一刀は、累の糸を断ち切った。

 

(思い出した!父さんと交わした約束を!)

 

炭治郎は決着をつけるべく、斬りかかる。

 

 

 

【くらえ!】

 

ガイバーⅠは大型の鬼たちを少しずつ、確実に地に伏せていった。

 

「カアッ!」

 

頃合いをみて、松衛門が飛んできた。

 

「終ワッタ!終ワッタ!避難ハオワッタゾ!!」

 

【よし!離れろ!!】

 

松衛門が離れたのを確認し、ガイバーⅠは胸部を観音開きにこじ開ける。

 

『!?』

 

大型の鬼たちは呆気にとられた。

 

【これで……終わりだあああっ!!】

 

ガイバーⅠは最強の必殺技──メガスマッシャーを放った。

 

100メガワットを超える破壊光線は大型の鬼はおろか、那田蜘蛛山の木々もろとも飲み込んだ。

 

松衛門の避難指示により、巻き込まれた鬼殺隊士や鎹烏は一人もいなかった。

 

 

 

「「「………………………」」」

 

義勇としのぶとカナヲはメガスマッシャーの跡に言葉を失った。

 

「しのぶ姉さん……」

 

「おそらく晶さんがおっしゃっていた最強の必殺技でしょう。これは使用を控える必要があるわね……」

 

(鬼が塵一つ残さず消滅した。まるで日の光を直接浴びたかのようだ。炭治郎は……)

 

(な………なんじゃありゃああああああっ!?!?)

 

(これ………晶さんがやったの…………?)

 

しのぶと義勇に保護された伊之助と善逸は開いた口が塞がらなかった。

 

「とにかく、保護した隊士たちをなんとかしないと。富岡さんは…………??」

 

しのぶは義勇を呼ぶが、いなかった。

 

「カナヲ、富岡さんは?」

 

「山の上に向かいました」

 

「本当にもう~~。しょうがない人ですね~~?」

 

しのぶは微笑むが額に青筋が浮かんでいた。

 

(こ、怖えぇぇぇっ!!)

 

善逸はしのぶから発する激怒の音にビビっていた。

 

 

 

(今のは!?)

 

累は遠くで発せられた強い光に動きが鈍った。

 

「これで……決める!」

 

炭治郎は累だけを見ていた。

 

「チッ!」

 

累は糸を張り巡らせる。

 

「くっ!」

 

炭治郎は直感的に腕を伸ばす。

 

(ごめん、父さん!たとえ相討ちになっても……!)

 

「!!」

 

その時、禰豆子の意識が戻った。

 

禰豆子は糸をさらに食い込ませ、血を集める。

 

(血鬼術・爆血!!)

 

その瞬間、糸は燃え上がった。

 

禰豆子は異能の力に目覚めた。

 

(馬鹿な……!)

 

予想すらしていなかった累に焦りが生じた。

 

(だが、僕の頸は斬れない!)

 

累は自身の頸の強度が糸よりも硬いことに自信があった。

 

だが累は見落としていた。

 

炭治郎の日輪刀に禰豆子の血が付着していたことに。

 

付着していた血が爆ぜ、炭治郎の日輪刀の勢いを加速させた。

 

「俺と禰豆子の絆は……誰にも引き裂けない!!」

 

炭治郎は遂に累の頸をはねた。

 

 

 

【やったな、炭治郎!】

 

ガイバーⅠが見たのは、炭治郎が累の頸をはねた瞬間だった。

 

【炭治郎!しっかりしろ!】

 

ガイバーⅠは倒れこむ炭治郎を抱き止める。

 

「晶……さん………」

 

【すごいよ。まさか炭治郎が下弦の鬼を……!?】

 

ガイバーⅠは愕然となった。

 

頸を斬られたはずの累が歩いてきたからだった。

 

「お別れは済んだ?」

 

「ど、どうして……!?」

 

「切ったんだよ。お前の刃が届く前に」

 

【蜥蜴の尻尾じゃあるまいし……】

 

ガイバーⅠは炭治郎の前に立つ。

 

「もう逃がさない。お前も妹も下弦狩りも。みんな、みんな殺してやる」

 

累はガイバーⅠと炭治郎の周りに篭状に糸を張った。

 

【くっ!?】

 

「血鬼術・殺目篭」

 

糸が収縮する。

 

【炭治郎だけでも!】

 

ガイバーⅠは高周波ブレードを伸ばす。

 

「っ!」

 

その直後、糸は全て斬られた。

 

【あなたは……富岡さん……】

 

(どう……して………)

 

「邪魔をするなっ!」

 

累は糸を義勇めがけて放つ。

 

「全集中・水の呼吸 拾壱ノ型・凪」

 

放たれた糸は全て斬られた。

 

(な、なぜ………)

 

呆然となった累は、再び構える。

 

だが既に頸をはねられた。

 

累の体は炭治郎らの近くで倒れた。

 

「晶さん……お願いが……」

 

「ああ……」

 

殖装を解いた晶は炭治郎の意思を汲んだ。

 

炭治郎は累の体にそっと触れた。

 

(父さん……母さん………)

 

暖かさに触れた累はいまわの際に両親と再会し、地獄に落ちて行った。

 

 

 

その後、晶たちは那田蜘蛛山の麓に降りた。

 

「しのぶさん、あの黒頭巾の人たちは?」

 

「あれは隠と呼ばれる人たちです。鬼との戦いの後始末を担当しています」

 

「事後処理係ということですか」

 

「そういうことですね。それより富岡さん?なんで勝手に動くんです?」

 

「…………………………」

 

しのぶは義勇に問いかけるが、義勇はどこ吹く風だった。

 

「…………………………」

 

(炭治郎……)

 

カナヲは気絶した炭治郎を心配そうに見つめる。

 

「炭治郎が心配かい?」

 

「はい」

 

見かねた晶の言葉にカナヲは肯定した。

 

「私、コインを投げて表が出たんです」

 

「うん」

 

「そうしたら炭治郎が、心のままに生きろって……」

 

「そうか……」

 

晶はカナヲが変わった原因を突き止めた。

 

「伝令!伝令!」

 

「「っ!」」

 

晶とカナヲは上を見た。

 

「伝令アリ!炭治郎ト禰豆子ヲ拘束!本部ヘ連レ帰ルベシ!」

 

「遂に来たか」

 

義勇は鎹烏の伝令に耳を傾ける。

 

「尚、晶ハ丁重ニオ連レスベシ!」

 

「丁重に、か」

 

「晶さんの場合、立場は異なりますから。お疲れの所を恐縮ですが……」

 

「わかっています。行きましょう」

 

晶は炭治郎らと共に、鬼殺隊本部に向かった。

 




次回、柱裁判です。



鬼滅の規格外品こそこそ話

サイコロステーキ先輩は一度は炭治郎の頭突きを腹に受けて引き下がったけど懲りずに狙おうとしたぞ!

その後ガイバーⅠの殺気に近い気迫を受けて鬼殺隊士を辞める決断をしたぞ!
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