鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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第弐拾話

その夜

 

「二人とも、お願いね」

 

「わかりました」

 

「お任せください」

 

カナヲとアオイは頷いた。

 

「うう~~ん」

 

「眠いです~~」

 

「ふあぁ~~」

 

なほきよすみは寝ぼけ眼でカナヲとアオイに引っ付いていた。

 

「それはそうと、晶さんはどちらに?」

 

「そろそろ来ると思うけど……あ、来たわ」

 

【お待たせしました】

 

「「「え…………………」」」

 

なほきよすみは固まった。

 

「ば、化け物!!」

 

アオイはなほきよすみを守るように立った。

 

「大丈夫よ。この人は晶さんだから」

 

【カナエさん、ちゃんと伝えたんですよね?】

 

ガイバーⅠに不安がよぎる。

 

「……てへ♪」

 

カナエは誤魔化すように舌を出した。

 

【はぁ……仕方ないか】

 

ガイバーⅠは殖装を解いた。

 

「ふえっ!?」

 

「晶さん!?」

 

「本当に!?」

 

なほきよすみは目を見開いた。

 

「………………………」

 

アオイは口をパクパクさせていた。

 

 

 

「……というわけなんだよ」

 

晶はガイバーについて説明した。

 

「がいばぁ……そんなものが……」

 

「この程度で驚いちゃダメよ。晶君は下弦の鬼の大半を差し向けられるほどの実力を持ってるんだから」

 

「か、下弦!?十二鬼月!?」

 

アオイはわたわたとなった。

 

「そろそろ始めましょう。………その前に」

 

晶は歩いてきた禰豆子と目が合った。

 

「ムー……」

 

禰豆子は晶の元に駆け寄ってきた。

 

「禰豆子ちゃん、ちょっとお兄ちゃんたち借りるね」

 

「ムー?」

 

禰豆子は晶を不思議そうに見送った。

 

「これから晶君と実戦形式の特訓をするの。禰豆子ちゃんはこっち来ててね」

 

(コクリ)

 

禰豆子は大人しくカナエの側に行った。

 

「本当に鬼なんですよね?」

 

「ええ。でも人を襲わないことは実証済みよ。カナヲもこっそり遊んであげてるみたいだしね」

 

「知っていたの……?」

 

「夕べ、屋根の上で二人でシャボン玉吹いてたじゃない。カナヲも楽しそうに笑っているところ見ちゃったもの」

 

「……………………」

 

カナヲの頬が赤くなった。

 

「さあて、炭治郎君たちはどこまでやれるかしら?」

 

 

 

【起きろ!!】

 

ガイバーⅠは炭治郎、善逸、伊之助をベッドから庭に放り出した。

 

「しょ、晶さん!?」

 

「な、なんすかこんな時間に!?」

 

「鬼が来やがったのかぁっ!」

 

【これから俺と戦ってもらう】

 

「「は!?」」

 

炭治郎と善逸は驚きを隠せなかった。

 

「ひゃっはぁっ!!この時を待ってたぜぇっ!!」

 

伊之助は闘志を燃やす。

 

「ど、どうしてですか!晶さん!」

 

【質問は受け付けない。そこに普通の刀があるだろ。それを持って殺す気でかかってこい】

 

ガイバーⅠは炭治郎たちの足元にある普通の刀を指さす。

 

「仕方ない。やるぞ、善逸!伊之助!」

 

「俺の方が強えぇっ!!」

 

「いやだあぁぁぁっ!!」

 

戦いは始まった。

 

 

 

「どぅわあぁぁぁっ!!」

 

善逸はひたすら逃げまわっていた。

 

【逃げるな善逸!】

 

「待って待って待って!?俺何かしましたか!!?」

 

【訓練さぼった挙げ句、セクハラ三昧だからに決まってるだろ!】

 

「その〝せくはら〟とはいったい!?」

 

【自分の胸に聞いてみろ!】

 

ガイバーⅠは善逸の頭をむんずと掴み、放り投げた。

 

善逸は地面を跳ねるように転がった。

 

「あぎゃああああっ!!」

 

【はあっ!】

 

ガイバーⅠは高周波ブレードを共振させた。

 

「ヒィイイイイイイッ!!耳がぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

【隙だらけだ】

 

ガイバーⅠは善逸の頭にチョップを叩き込み、善逸を失神させた。

 

 

 

「はあっ!」

 

炭治郎がガイバーⅠの頭上から斬りかかる。

 

【っと!】

 

ガイバーⅠは回避し、炭治郎に裏拳を放つ。

 

「うぐっ!?」

 

炭治郎は防御姿勢のまま後方に吹っ飛ばされた。

 

【全集中の呼吸も使わないで来るとはな。お前、舐めてるのか?】

 

「ち、違……!」

 

【集中しろよ。離れたなら……】

 

ガイバーⅠは炭治郎の足元にヘッドビームを放つ。

 

「うわっ!?」

 

炭治郎はギリギリでかわした。

 

【さあ、この距離をどうやって潰す?】

 

「それは……」

 

「近づいてブッた斬れば問題ねぇっ!!」

 

伊之助はガイバーⅠに突進した。

 

 

 

「獣の呼吸 壱ノ型・穿ち抜き!!」

 

【そんな手に乗るか】

 

ガイバーⅠは伊之助の両腕を掴んだ。

 

【そらっ!】

 

そこから巴投げの要領で伊之助を投げ飛ばした。

 

「ぐおっ!」

 

伊之助は受け身をとり、立ち上がった。

 

【猪突猛進も良いが、それじゃ通用しないぞ 】

 

「うるせーーっ!!俺は強いんだ!!負けねぇんだ!!」

 

【本当に学習しないな。なら来いよ】

 

「言われなくても行ってやらぁっ!!」

 

伊之助は壁や地面、木の幹を連続で飛び回る。

 

「ついて来れるかぁっ!!」

 

【撹乱のつもりなら通じないぞ】

 

ガイバーⅠは冷静だった。

 

「頭取ったぁぁぁっ!!」

 

【フン!】

 

ガイバーⅠは頭上から襲ってきた伊之助の腹めがけて拳を突き上げた。

 

結果的に、ガイバーⅠはカウンターを取った。

 

「げぼっ!?」

 

ガイバーⅠはそのまま伊之助を地に叩きつける。

 

【お山の大将気取りもいい加減にしとけ】

 

「お……俺は………」

 

【言わせてもらうがお前は三人の中で一番弱いよ】

 

「っ!!」

 

伊之助はガクリと膝を付いた。

 

【後はお前か、炭治郎】

 

「はい……!」

 

【見せてみろよ。訓練の成果ってやつを】

 

「いきます!!」

 

ガイバーⅠと炭治郎がぶつかり合う。

 

 

 

「さすが晶君ね」

 

カナエは満足げな笑みを浮かべる。

 

「ムー!」

 

「ふふ、すごいね」

 

ぱたぱたする禰豆子をカナヲは微笑ましげに見つめる。

 

「「「すごい……!」」」

 

なほきよすみは目を見開く。

 

「善逸さんたちがまるで相手になってないなんて……」

 

アオイは呆気にとられた。

 

「当然と言えば当然かもね。機能回復訓練は状態を元に戻すことは元より、さらに上昇させることが目的だもの」

 

「二人は元に戻っただけ。ううん、まだ戻りきってない。晶さんはもちろん、炭治郎にも勝てない」

 

カナエとカナヲは冷静に見極める。

 

「炭治郎さんは勝てますか?」

 

「晶君相手には厳しいかもしれないわね」

 

「そうですか……」

 

「でも炭治郎君は真面目に訓練に励んでいたわ。晶君が前の炭治郎君と同等と考えているなら、そこに付け入る隙があるわ」

 

「なるほど……」

 

「とにかく、見届けましょう。その前に二人を保護しないと」

 

「わかりました。行ってきます」

 

「私も行くわ」

 

カナヲとアオイは善逸と伊之助を保護しに向かった。

 

「ムー……?」

 

「大丈夫よ。万が一怪我しても治すからね」

 

「ムー」

 

禰豆子は二人の勝負を見つめる。

 

 

 

「全集中・水の呼吸 壱ノ型・水面斬り!」

 

炭治郎は強い踏み込みから、横薙ぎに斬る。

 

【っ!】

 

ガイバーⅠはしゃがんで回避し炭治郎の顔面を狙う。

 

「ぐっ!」

 

炭治郎はギリギリで避けた。

 

【遅い!】

 

ガイバーⅠは足払いで炭治郎を転がす。

 

「くっ!まだだっ!」

 

炭治郎は後ろに転がり、体を起こした。

 

(迷っている暇もない!行くぞ!!)

 

炭治郎はガイバーⅠに斬りかかった。

 

【っ!】

 

ガイバーⅠはかわして炭治郎の後ろを取る。

 

「(後ろだ!)漆ノ型・雫波紋突き!」

 

炭治郎は素早く、最速の突きを放つ。

 

【くっ!】

 

ガイバーⅠはギリギリで避けて、一旦下がった。

 

(ここで距離を詰める!)

 

炭治郎は強く踏み込み、ガイバーⅠを追う。

 

【動きがまるで違う……!本当に常中を習得したらどこまで強くなるんだ!?】

 

ガイバーⅠは炭治郎の成長に驚きつつ、構えた。

 

【行くぞ、炭治郎!】

 

ガイバーⅠは炭治郎に右ストレートを放つ。

 

「ここだっ!!」

 

【!?】

 

ガイバーⅠの視界から炭治郎が消えた。

 

炭治郎は視覚で追い難い、斜めに体を移動させて、ガイバーⅠの後ろを取った。

 

「陸ノ型・流々舞い!」

 

炭治郎は回転しながら斬りかかる、

 

【っ!】

 

ガイバーⅠはカウンターで裏拳を放つ。

 

「ん゛ん゛っ……!」

 

炭治郎は回転しながら跳躍した。

 

【上か!】

 

「捌ノ型・滝壺!!」

 

炭治郎は落下の勢いで刀を振り下ろす。

 

【はあっ!】

 

ガイバーⅠも高周波ブレードで応戦する。

 

【「……………………」】

 

二人は動かなかった。

 

【っ!】

 

ガイバーⅠの右手の甲は削ぎ落とされ、血が滴り落ちる。

 

「……っ!」

 

炭治郎の刀は根元から斬られていた。

 

「ま………参りました!!」

 

炭治郎は正座をし、頭を下げた。

 

ガイバーⅠと炭治郎の勝負は決した。

 

 

 

「終わったわね……」

 

カナエは大きく息を吐いた。

 

「さあ!皆は怪我人をベッドに連れてって。晶君は大丈夫だと思うけど、包帯の用意を忘れないで。禰豆子ちゃんはもうそろそろ夜が明けるから箱に戻ってね。それじゃ、ぱっぱと動いて」

 

『はい!』

 

なほきよすみは善逸と伊之助を連れてベッドへと向かった。

 

「ムー…………」

 

禰豆子はカナエに連れられてフラフラと戻って行った。

 

アオイとカナヲは炭治郎と晶を連れていくことにした。

 

「信じられない………斬られた跡がほとんどない………」

 

「ガイバーの持つ再生力さ。カナヲさんにも言ったけど、俺は人間じゃない。アオイさんの言うとおり化け物さ」

 

「………………」

 

カナヲは黙って炭治郎の手当てをする。

 

「それにしても、炭治郎は強くなったよ。手の甲とはいえ、俺を斬ったんだから」

 

「す、すみません……無我夢中で……」

 

「気にするなよ。あの二人も少しは応えてくれればいいし」

 

「そういえば、どうして真夜中に特訓を?しかも実戦形式の」

 

「ああ。そもそもこれはな……」

 

晶は炭治郎に事の経緯を説明した。

 

「まったく、善逸も伊之助も……」

 

炭治郎は呆れ果てた。

 

「途中で投げ出したあの二人を発奮させるには強くなった炭治郎の姿を見せることが有効だからな。たぶん、目論見通りだと思う」

 

「そうだったんですか……」

 

「もちろん、今の炭治郎と戦ってみたかったっていうのもあるけどさ」

 

「晶さん、どうでしたか?今の俺は」

 

「強いよ。十二鬼月に準ずる強さの鬼には苦労せず勝てると思う。もちろん戦い方次第っていうのもあるけど」

 

「そうですか……」

 

炭治郎はホッとした。

 

「鬼舞辻無惨を倒したいのは誰だって同じだよ。だからこそ、もっと修行しよう。俺も鱗滝さんからの課題もあるからさ」

 

「は、はいっ!強くなりましょう!」

 

(私も………)

 

カナヲは羨ましく思った。

 

「そうだ!カナヲも一緒にやろうよ」

 

「わ、私も……?」

 

「うん。一緒に強くなろうよ」

 

「い、いいの……?迷惑なんじゃ……」

 

「迷惑なんかじゃないよ。カナヲと一緒の方がいいよ」

 

「そ……そう………」

 

カナヲの頬は赤くなった。

 

「どうかしたの?」

 

「な……なんでもない………」

 

(炭治郎………)

 

(ある意味一番危険かも……)

 

晶とアオイは呆れた。

 

 

 

それから数日後──

 

「いよいよカナヲさんと同じ大きさ……」

 

「頑張って、炭治郎さん」

 

「う、うん……」

 

炭治郎は一抱えほどの瓢箪の吹き口を咥える。

 

「っ!!」

 

炭治郎は息を吸い込み、一気に瓢箪を吹く。

 

「!!!!」

 

炭治郎の顔は真っ赤になった。

 

「がんばれ!」

 

「がんばれ!」

 

「がんばれ!」

 

なほきよすみは必死で応援した。

 

(頑張れ、炭治郎!)

 

掃除の合間を縫って、晶も応援した。

 

そして数分後……

 

「!!」

 

バン!!という音を立てて、瓢箪は割れた。

 

「キャアーッ!」

 

「割れたーっ!!

 

「わーっ!」

 

炭治郎となほきよすみは泣いて喜んだ。

 

「よしっ!」

 

晶はガッツポーズをした。

 

「どうやら割れたようですね」

 

「あ、しのぶさん。ええ、やりましたよ、炭治郎は」

 

「では続いて、カナヲとの全身訓練ですね」

 

「頑張れよ、炭治郎」

 

晶は掃除に戻った。

 

 

 

炭治郎はカナヲとの全身訓練に臨んだ。

 

これまでカナヲに連戦連敗とあって、炭治郎はやる気に満ちていた。

 

カナヲも、訓練の時は別と割りきり、集中した。

 

全身訓練は数十分のおいかけっこの末、炭治郎がカナヲの手首を掴んだ。

 

これにより、炭治郎の勝利が決まった。

 

最後に、炭治郎はカナヲとの反射訓練に臨んだ。

 

炭治郎は、なほきよすみと晶だけでなく、カナエ、しのぶ、アオイも見つめるほどのいい勝負をこなしていた。

 

そして勝負の末、炭治郎はカナヲより先に湯飲みを取った。

 

ここで薬湯をかければ炭治郎の勝ちは決まるのだが、ここで炭治郎の理性が働いた。

 

一瞬迷った挙げ句、炭治郎は湯飲みをカナヲの頭の上に置いた。

 

かけるも置くのも同じだとして、満場一致で炭治郎の勝利が決まった。

 

炭治郎は全集中・常中を会得した。

 

これを以て、炭治郎は機能回復訓練を全て終えた。

 

 

 

((やばい……………))

 

その様子を見ていた善逸と伊之助は立ち尽くしていた。

 




次回、鋼錢塚さんらと一悶着起こります



鬼滅の規格外品こそこそ話

全身訓練の直後、カナヲは手首を見てこっそり微笑んでいたぞ!

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