鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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第弐拾壱話

「こーして、こう。それで、こう」

 

「「…………………………………………」」

 

炭治郎に二歩も三歩も先を行かれたことに焦りを感じた善逸と伊之助は炭治郎に強くなる方法を教わっていた。

 

(炭治郎………)

 

だが、炭治郎は人に教えることが爆裂に下手だった。

 

丁寧ながらも下手くそな説明に晶も額を押さえた。

 

「「…………………………………………」」

 

そんな二人は文句一つ言わずに、励もうとした。

 

だが、元来努力が苦手な二人はなかなか覚えられず、身につかなかった。

 

「……仕方ないですね」

 

見かねたしのぶが訓練場に入った。

 

「炭治郎君が会得したのは全集中・常中という技です。全集中の呼吸を四六時中やり続けることにより、基礎体力が飛躍的に上がります」

 

しのぶは炭治郎の頭を撫でながら説明した。

 

「これはまあ、基本の技というか初歩的な技術というか。まあ出来て当然なんですけど……」

 

「会得するには相当の努力が必要ですよね」

 

「まあ出来て当然なんですけど、仕方ないです出来ないなら。仕方ない仕方ない」

 

しのぶは笑みを絶やさず言った。

 

「はあ゛ーー!?できてやるっつーの当選に!!なめんじゃねぇよ乳もぎ取るぞてめえ!!」

 

しのぶの言葉が伊之助のやる気に火をつけた。

 

「頑張ってくださいね善逸君。一番応援していますよ」

 

「ハイッ!!!!」

 

善逸のやる気にも火がついた。

 

「では頑張ってください。炭治郎君も追い抜かれてしまいますよ」

 

「は、はいっ!頑張ります!」

 

炭治郎は再び自分の修行に入った。

 

「……………………」

 

晶はしのぶの手腕に呆然となった。

 

数日後、善逸と伊之助は炭治郎よりも早いペースで全集中・常中を会得した。

 

 

 

「伊之助!伊之助!」

 

二人が常中を会得して数日経ったある日、炭治郎が忙しなく駆けつけてきた。

 

「どうしたんだ?炭治郎」

 

「あ、晶さん!松衛門から知らせが届いたんです。もうすぐ打ち直した日輪刀が戻ってくるって!」

 

「そうか!良かったな、炭治郎、伊之助!」

 

「はいっ!」

 

「ヤッフー!!」

 

炭治郎と伊之助は外に駆けて行った。

 

「あ、晶君」

 

カナエが晶を呼び止めた。

 

「どうしました、カナエさん」

 

「ちょっと心配だから見に行ってあげて」

 

「心配?」

 

「あの鋼錢塚さんのことだから──」

 

「ギャアアアアッ!!」

 

突然炭治郎の悲鳴が響いた。

 

「炭治郎!?」

 

「晶君急いで!」

 

「は、はい!」

 

晶はカナエに急かされて外へと飛び出した。

 

 

 

「よくも折ったな!俺の刀を!よくもよくもォオ!」

 

「すみません!でも本当にあのっ……俺も本当に死にそうだったし……相手も凄く強くって……!」

 

「違うな!関係あるもんか!お前が悪い!全部お前のせい!お前が貧弱だから刀が折れたんだ!そうじゃなきゃ俺の刀が折れるもんか!」

 

「(無茶苦茶だな)いやいや、鋼錢塚さん。日輪刀は折れたんじゃなくて斬られたんですよ。刃物みたいに鋭い切れ味の糸に。あの糸は岩だろうが鋼だろうが寸断するほどなんですよ。だからこの場合は炭治郎は……」

 

「うるさいうるさいうるさーい!こいつが俺の刀を粗末に扱ったからだー!」

 

(本当にめんどくさいな、この人)

 

「殺してやるーー!!」

 

鋼錢塚は涙を流しながら包丁を持って晶と炭治郎に迫る。

 

「ちっ!二手に分かれるぞ、炭治郎!」

 

「はいっ!」

 

晶と炭治郎は二手に分かれた。

 

「ん待てぇぇぇっ!!」

 

「ギャアアアアッ!!」

 

鋼錢塚は炭治郎を追いかけた。

 

「そこだっ!」

 

隠れていた晶は鋼錢塚を羽交い締めにした。

 

「殺してやるーー!!」

 

「いっ!?」

 

鋼錢塚は晶を引きずりながら炭治郎を追いかけた。

 

「伊之助!手伝え!」

 

「おおっ!」

 

晶の要請に伊之助が鋼錢塚を押さえにかかった。

 

「おおりゃあああっ!!」

 

伊之助は常中を駆使して押さえつけた。

 

「ふぬぬぬっ!!」

 

それでも鋼錢塚は進もうとしていた。

 

「止まってくださいって……!」

 

「おんどりゃあああっ!!」

 

数十分粘った甲斐があり、ようやく鋼錢塚は止まった。

 

「ぜぇ……ぜぇ……や、やったぞ………」

 

「やったな……鋲」

 

「晶な。とにかく連れて行こう……」

 

「おう……」

 

晶と伊之助は鋼錢塚を連れて蝶屋敷にやっと入った。

 

 

 

「も、戻りました……」

 

「ああ、おかえりなさい。大丈夫?晶君」

 

「な、なんとか……」

 

「もう、鋼錢塚さん!」

 

「……フン」

 

鋼錢塚はだだっ子のようにそっぽを向いた。

 

「いやはや、申し訳ありませんね。いくら鋼錢塚さんが情熱的な方とはいえ」

 

鋼錢塚と同じようなひょっとこの面をつけた小男が晶に詫びる。

 

「あなたは?」

 

「申し遅れました。私は鉄穴森と申します。この度、嘴平伊之助殿の刀を打たせていただきました」

 

「へえ、伊之助の」

 

「あなたが深町晶さんですね。産屋敷様から聞いております」

 

「あ、これはどうも……」

 

鉄穴森の丁寧な態度に晶は姿勢を正した。

 

「んなことより刀寄越せよ」

 

「伊之助……」

 

「いえいえ。さあ、こちらです」

 

鉄穴森は気にする様子もなく、二振りの日輪刀を出した。

 

「……………」

 

伊之助が握ると、刀身の色が変わり始めた。

 

「ああ、綺麗ですね。藍鼠色が鈍く光って。刀らしい渋くて良い色だ」

 

「よかったな。伊之助の刀は刃こぼれがひどかったから。あいたたた」

 

恨みは消えないのか、鋼錢塚は炭治郎を殴っていた。

 

「握り心地はどうです?実は私、二刀流の方に刀を作るのは初めてでして……」

 

「やっぱり変わるものなんですか?」

 

「はい、数打ちと違いますから。敢えて左右の重さを変えるのか、刀そのものの大きさを変えるのか。そういった観点から伊之助殿とは長い付き合いを………?」

 

鉄穴森は突然庭に降りた伊之助に目をやる。

 

「伊之助殿?」

 

「……………………」

 

伊之助は庭に落ちていた石を丹念に選びだした。

 

そして迷うことなく日輪刀の刀身に打ち付け始めた。

 

『!!?』

 

その場にいた者全員が固まった。

 

「よし!」

 

そんな気も知らず、伊之助はご満悦だった。

 

「ぶっ殺してやる!!この糞餓鬼!!」

 

鉄穴森は伊之助に殴りかかろうとした。

 

「すみません!すみません!」

 

「刀の価値も人の気持ちもわからん奴なんです!」

 

炭治郎と晶は怒れる鉄穴森をなんとか押し留めようとした。

 

その後、なんとか伊之助を土下座させ、カナエが何かしらの罰則を与えるという条件で鉄穴森の怒りを減らすことに成功した。

 

それでも完全に怒りを静めることは叶わず、鉄穴森はドスドスと足音を立てながら帰って行った。

 

伊之助は庭と屋敷の掃除を命じられ、全て終わるまで屋敷を出ることは禁じられた。

 

 

 

「まだ殺せんのか……!」

 

鬼舞辻無惨の苛立ちは頂点に達しようとしていた。

 

『……………………………』

 

鬼舞辻無惨の足元で平伏する鬼たちはひたすら頭を下げていた。

 

「私は花札のような耳飾りをつけた鬼狩りと化け物の首を持ってこいといったはず。未だにその首は届かん……この体たらくはなんだ!?」

 

『……………………………』

 

「やはり下弦など早々に解体すべきだったわ……もはや残る一匹も用済み。血を与えたのが間違いだった!」

 

鬼舞辻無惨は柱をへし折りながら吼えた。

 

「……僭越ながら」

 

鬼の内の一人が顔を上げた。

 

「下弦と言えど、そこいらの鬼とは比べ物にならない力を持っています。ここは死兵として最期の任を与えてみれ──」

 

グシャリと嫌な音を立てて、鬼は鬼舞辻無惨に叩き潰された。

 

「黙れ……貴様の戯れ言など求めていない」

 

「……………………」

 

「それぞれ己が為すことを成せ。以上だ」

 

鬼舞辻無惨はそれだけ言って奥に行った。

 

 

 

「いやはや、災難でしたなぁ、焔龍殿」

 

上弦の弐・童磨は焔龍を労う。

 

「大丈夫だ。上弦ですらない私のさしでがましさに非があろう」

 

体が再生した焔龍は落ち着きを払っていた。

 

「ヒョ……されど焔龍殿の功績も忘れてはならぬからなぁ……」

 

上弦の伍・玉壺はニタニタとした。

 

「ヒィイイイイッ!恐ろしい恐ろしい。かつて鬼狩りを一網打尽にすべく術を使って江戸の町を城ごと焼き払ったという焔龍殿……ああ恐ろしや」

 

上弦の肆・半天狗はわなわなと震える。

 

「後に言う、江戸明暦の大火だよね。幕府としてもわざわざ放火する手間が省けたんじゃないかい?」

 

「放火?」

 

上弦の陸・妓夫太郎は眉をひそめる。

 

「妓夫太郎と堕姫は生まれてもいないから無理もない。江戸の町を作り替えるのに幕府が放火を計画してたらしいのさ」

 

「ヒィイイイイ!恐ろしい……真の魔物とは人間どもよ……」

 

「ヒョッヒョッ……それを減らしてやってるのが鬼だと言うのに」

 

半天狗と玉壺は意気投合する。

 

「……当時の鬼狩りどもは愚劣極まる者ばかりだった」

 

上弦の壱・黒死牟の表情に怒りが宿る。

 

「ヒョッ……鬼を討つために無関係の者もろとも葬る外道だったか」

 

「アハハ、鬼に外道って言われるって相当なんじゃねぇ?」

 

童磨はケラケラと嗤った。

 

「だから焼いた。結局のところ、無用の者まで焼いたことには変わらないが」

 

「お、お兄ちゃん……」

 

「おい焔龍。堕姫の前で焼いたとか言うんじゃねぇ」

 

もう一人の上弦の陸・堕姫が怯え、妓夫太郎が焔龍を睨む。

 

「……済まぬ」

 

焔龍にとっては日常茶飯事なのか、頭を下げた。

 

「焔龍よ、そなたの力は不可欠。いずれ無惨様もわかってくださるだろう」

 

黒死牟は思うところがあるのか、声をかけた。

 

「うむ」

 

「それはそうと、奇怪な人間どもとは……」

 

上弦の参・婀窩座は話題を変えた。

 

「我らとは異質の者どもがみつかった件か」

 

「無惨様のご命令だ。背くわけにはいくまい」

 

「適当な鬼を差し向けて調べさせてみよう」

 

「件の者どもは?」

 

「下弦の壱が動いている。そちらは静観の立場を取っても差し支えなかろう」

 

「ならもう行くぜ……」

 

妓夫太郎と堕姫は話は終わったとばかりに去って行った。

 

「………………………」

 

婀窩座も去って行った。

 

『……………………………』

 

他の上弦の鬼たちも去って行き、三味線を持つ鬼と焔龍が残された。

 

「鳴女殿……何か弾いてくださらぬか?」

 

「…………………………」

 

鳴女は頷き、三味線を弾き始めた。

 

焔龍はじっくりと耳を傾けた。

 

 

 

「「「わぁぁぁぁぁん!!」」」

 

傷が完全に癒えた炭治郎たちが蝶屋敷を去る日がやってきた。

 

屋敷の者全員が見送るために集まり、なほきよすみは泣きじゃくっていた。

 

「ありがとう……本当に世話になったよ」

 

「うんうん!」

 

「………………」

 

炭治郎たちも別れを惜しんでいた。

 

「晶君もありがとね。ホントに助かっちゃったわ」

 

「お役に立てたなら何よりです」

 

「晶さんもお達者で」

 

「ありがとうございました」

 

アオイとカナヲは頭を下げた。

 

「そろそろ行きましょうか」

 

「そうだな。しのぶさん、お世話になりました」

 

「はい。こちらこそ。晶さんもお元気で」

 

しのぶは微笑んだ。

 

「カナヲはいいの?」

 

「う、うん……」

 

カナヲは炭治郎と距離を詰めた。

 

「あ、あのね……炭治郎………」

 

「カナヲもありがとう。カナヲがいたから常中を会得できたんだ。本当にありがとう」

 

炭治郎は笑顔でカナヲの手を握った。

 

「はわ………」

 

「はわ?」

 

「な、なんでもない……」

 

カナヲは顔を背けた。

 

(も、もしかして嫌だったのか!?こ、こういう時は……)

 

(とんでもねぇ炭治郎だ……)

 

善逸は敵意の目を向ける。

 

「行くぞ、炭治郎」

 

晶は炭治郎を促す。

 

「じゃーな」

 

「はい。さようなら」

 

アオイはやや素っ気なく言った。

 

「なほちゃんきよちゃんすみちゃんもまたね」

 

「はい~~!」

 

「晶さ~~ん!」

 

「ありがとうございまじだ~~!」

 

なほきよすみは晶に抱きついた。

 

「炭治郎君」

 

しのぶは炭治郎に向き直る。

 

「ヒノカミ神楽については私の方では存じ上げません。ですが、炎柱の煉獄さんを訪ねてみるといいかもしれません。この手紙を渡せば助けになってくれるはずです」

 

「はい。ありがとうございます」

 

炭治郎は手紙を大事にしまった。

 

「それじゃ……」

 

「はい」

 

炭治郎たちは蝶屋敷を出た。

 

後ろからの声が聞こえなくなるまで、誰一人振り返らなかった。

 




次回、無限列車に乗り込みます



鬼滅の規格外品こそこそ話

炭治郎たちが去ってからしのぶとカナヲはボーっとすることが多くなったぞ!
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