鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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第弐拾弐話

「はあ~っ!?」

 

蝶屋敷を後にしてから数日後、晶たちはとある駅の構内にいた。

 

次の任務なのかと確認を取ろうとした善逸は炭治郎につっこんだ。

 

「まだ指令来てなかったってどういうことだよ!?あのまま居れば良かったじゃん!蝶屋敷に!」

 

「いや……治療も終わったし、一ヶ所に固まっているよりも……」

 

「あんな悲しい別れをしなくて良かっただろっ!」

 

善逸は炭治郎の胸ぐらを掴んだ。

 

「いや、指令が来た時に動きやすいように……。後、炎柱様にも……」

 

「このオオバカヤロォっ!!」

 

「お前ら、もう少し静かに喧嘩しろよ。他の人見てるぞ」

 

他人の目が気になり、晶は二人を窘める。

 

「オイ……」

 

「今忙しいんだよ!」

 

「オイ!オイッ!」

 

「なんだようるせーな!」

 

「うるさいのはお前だよ、善逸。それでどうしたんだ、伊之助?」

 

「なんだあの生き物はー!!」

 

伊之助は震えながら汽車を凝視した。

 

「こいつはアレだぜ……この土地の主………この土地を統べる主………この長さ、威圧感……間違いないねぇ……!今は眠ってるみたいだが油断するな!」

 

伊之助は晶たちの前で立ちはだかる。

 

「いや、汽車だよ。知らねぇの?」

 

三人の中で唯一の都会生まれの善逸は冷静だった。

 

「シッ!落ち着け!」

 

「いやお前が落ち着けよ」

 

「まず俺が一番に攻め込む!」

 

「伊之助、この土地の守り神かもしれないだろう?それにいきなり攻撃するのも良くない」

 

炭治郎は至極真面目な顔で伊之助を宥める。

 

「いや汽車だって言ってるじゃんか。列車分かる?人を運ぶ乗り物だよ。この田舎者が」

 

善逸は白い目を炭治郎に向ける。

 

(この二人に電車や新幹線、飛行機を見せたらどんな反応するんだ……?)

 

晶は密かにそう思った。

 

「晶さんはさすがに……」

 

「ああ。知ってるよ」

 

「ほら見ろ。晶さんはちゃんと理解してるぞ」

 

「列車……もしかして松衛門が言ってたのがこれか?」

 

「松衛門が?」

 

「そうなのか?」

 

「猪突猛進!!」

 

善逸と晶が目を離した合間に、伊之助が列車に突進した。

 

「止めろバカ!」

 

「何してる貴様ら!!」

 

笛を吹きながら駅員が駆けつけて来た。

 

「ゲッ!?」

 

「マズい!」

 

善逸と晶は慌てるが遅かった。

 

「刀を持ってるぞ!警官を呼べ!」

 

「ヤバいヤバいヤバい!」

 

「ひとまず逃げるぞ!」

 

「え?なんで……」

 

「いいから来いっ!」

 

善逸と晶は二人を引きずってその場から離れた。

 

 

 

「どうにか撒けましたね……」

 

「ああ。捕まるわけにはいかないしな」

 

晶たちは駅員の手を逃れ、なんとか列車に忍び込んだ。

 

「逃げる必要あったんです?」

 

「当たり前だろ………」

 

晶は頭をかかえた。

 

「政府公認の組織じゃないからな、俺たち鬼殺隊は。鬼がどうとか言っても信用しろって方が無茶だろうしな」

 

「そもそも刀剣の所持は法律違反だから。堂々と刀を持って歩いてたら捕まるに決まってるだろ」

 

「こんなに一生懸命頑張ってるのに………」

 

炭治郎は落ち込んだ。

 

「とにかく、刀を隠しておいてくれ。俺は四人分の切符買ってくるから」

 

「あ、お願いします」

 

晶は紙幣を受け取り、改札へと向かった。

 

 

 

「はい。ありがとうございます………ん?何だか騒がしいな」

 

四人分の切符を購入した晶は、外が騒がしいことに気づいた。

 

「俺たち……じゃないな」

 

「ご、ごめんなさい!通して~!」

 

人波をかき分けながら、ピンクと緑の髪の女性が小走りで駅に向かって来ていた。

 

「ほっほー!色っぽいねぇ、あのネーちゃん!」

 

「どこぞの遊女か、ありゃあ」

 

あちこちから中年男性の声が聞こえてきた。

 

「あれは確か、恋柱の甘露寺さん……」

 

晶は見覚えのある女性だった。

 

「あれ!?深町さんじゃないですか!」

 

女性──甘露寺蜜璃も晶に気づいた。

 

「会議以来ですね」

 

「そうですね~!こんな所で会うなんて……」

 

「それより列車に乗るんですか?あと少しで出るみたいですけど」

 

「あぁっ!いっけな~い!煉獄さんと待ち合わせしてるんでした~!」

 

蜜璃は慌てて切符を買い求める。

 

「何枚です?」

 

「えとえと……女性一枚ください!」

 

「どちらまで?」

 

「ええっと……確か……」

 

「さっさとお決めになってください──」

 

「自分と同じ行き先で」

 

見かねた晶が駅員に行った。

 

「深町さん……」

 

「お、お客様……」

 

「早く出してください。こっちは急いでいるんです」

 

「わ、わかりました……」

 

駅員は手早く切符を出した。

 

「さ、行きましょう」

 

「あ、ありがとうございます。すみません、私トロくって……」

 

「あの駅員の態度が気になっただけですよ。それより、煉獄さんは………あれか」

 

晶は列車内でドカ食いしている杏寿朗を発見した。

 

「ふふ、煉獄さんいつもたくさんお召し上がりになるんです」

 

「そうなんですか。それより、甘露寺さんと煉獄さんはどうして?」

 

「はい。このところ、列車に乗った四十人以上の方が行方不明になっているそうなんです。隊士数人を派遣したのですが戻ってくる方はおらず、それで私と煉獄さんが派遣されたんです」

 

「それがこの……」

 

「はい。無限列車です」

 

「……………………」

 

晶は列車を見つめた。

 

 

 

「ハッハッハ!そうか!甘露寺が世話になったようだな!」

 

駅弁をたいらげた杏寿朗は事の次第を晶から聞いた。

 

「ごめんなさい、煉獄さん」

 

「まあ気にするな!出発にも間に合ったことだからな!」

 

杏寿朗は笑いながら蜜璃の遅刻を許した。

 

(い、生きてて良かった…………)

 

善逸は蜜璃を横目に悶えていた。

 

「それはそうと、炭治郎は?」

 

「うむ!竈門少年から質問されたが、ヒノカミ神楽とやらについてはあいにく初耳でな!話すことがなかったのだ!」

 

「そうですか……」

 

晶は落ち込む炭治郎をそっと見た。

 

「それはそうと深町!俺の継子にならないか!」

 

「俺がですか?」

 

「ああ!君なら柱になれるだろう!」

 

「……せっかくですが、辞退します」

 

「何と!」

 

「ええっ!?」

 

杏寿朗と蜜璃は同時に驚いた。

 

「「ええっ!?」」

 

炭治郎と善逸も驚いた。

 

「俺は皆さんのようには出来ないんですよ」

 

「出来ないって、呼吸がですか?」

 

「ガイバーには肺そのものがないんだ」

 

「肺そのものが!?」

 

「驚いた!では全集中の呼吸は使えないな!」

 

「あれ!?でも晶さん、鱗滝さんの課題……」

 

「あれは戦う時に緩急を体に覚えさせるためにだよ。簡単に言えば、攻撃する直前に息を吸うように、攻撃を繰り出す時には息を吐くように。常に平静な状態を保つことも出来るからって」

 

「なるほど!分かりやすい!流石は元水柱!」

 

杏寿朗は合点がいった。

 

 

 

「そういえば、がいばぁになっている時ってご飯はどうするんです?」

 

蜜璃は自身が気になることを質問した。

 

「ガイバーに殖装している間は飲食や睡眠の必要が無くなるんです。まあ、疲労は感じるのでずっと殖装したままというわけにはいきませんが」

 

「ほう!興味深いな!」

 

「ちょっと待ってください……」

 

善逸が何かに気づいた。

 

「善逸?」

 

「どうした!我妻少年!」

 

「思ったんすけど……がいばぁに殖装している間の晶さんって、止まってたりします?」

 

「あ゛あ゛ん!?何わけわかんねーこと言ってんだ悶絶」

 

「そうらしいんだ」

 

「あ、当たった。後伊之助、善逸な」

 

「どういうことなんでしょう……?」

 

「殖装時は成長とか寿命そのものが止まるらしいんだ……」

 

「それって不老不死ですか!?」

 

蜜璃が身を乗り出した。

 

「そ、そう言うんですかね……」

 

「ということは若いままですよね!?」

 

「いや、一生殖装するなんてこともないでしょうし、死ぬならちゃんと寿命で死にたいですよ」

 

「そうだな、鬼殺隊に入った日から命を落としても構わんが、畳の上で死ねれば幸福かもしれんな!」

 

杏寿朗は大きく頷いた。

 

 

 

「そうだ、煉獄さん」

 

晶は思い出したように顔を上げた。

 

「ん?何かな?」

 

「この列車に鬼が出るという話ですが」

 

「え゛!?列車に鬼が出るの!?」

 

「おお!竈門少年たちに説明するのをすっかり忘れていた!」

 

杏寿朗は炭治郎たちに説明した。

 

「俺降ります!!」

 

善逸は身支度を整え始めた。

 

「次の駅までだいぶある!覚悟を決めろ!」

 

「降ろしてえええっ!!」

 

善逸は泣き叫んだ。

 

「切符を……拝見いたします」

 

車掌が陰気そうな雰囲気を醸し出しながら、晶たちの切符を切っていく。

 

(なんだ……この臭い……)

 

炭治郎の鼻は何かの臭いを嗅ぎ取った。

 

「拝見……しました」

 

「どうも………!?」

 

晶は嫌な気配を感じた。

 

「煉獄さん!」

 

「わかっている!車掌さん!危ないから下がってくれ!火急のこと故帯刀のことは不問にしていただきたい!」

 

杏寿朗は日輪刀を手に取った。

 

「み、皆さん!落ち着いてください!お席を離れないように!」

 

蜜璃は乗客全員に聞こえるように叫んだ。

 

すると、巨躯の鬼が現れた。

 

「出た!」

 

「ヒィイイイッ!」

 

「その巨躯を!隠していたのは血鬼術か。気配も探りづらかった、しかし!罪なき人々に牙を剥こうというならば!この煉獄の赫き炎刀がお前の骨まで焼き尽くす!」

 

(これが、炎柱……!)

 

(煉獄さん……カッコいい~!!)

 

「オオ……ン!」

 

巨躯の鬼はうなり声を上げ、動き出した。

 

「全集中・炎の呼吸 壱ノ型・不知火!」

 

杏寿朗は一気に踏み込み、巨躯の鬼の頸をはねた。

 

巨躯の鬼は倒れ、消滅した。

 

「すげぇや兄貴!見事な剣術だぜ!おいらを弟子にしてくだせぇっ!」

 

炭治郎は感動のあまり涙を流し、杏寿朗に弟子入りを乞うた。

 

「いいとも!立派な剣士にしてやろう!」

 

杏寿朗は快く了承した。

 

「おいらも!」

 

「おいどんも!」

 

「あてくしも!」

 

「おれも!」

 

善逸、伊之助、蜜璃、晶も続く。

 

「みんなまとめて面倒みてやる!!」

 

杏寿朗は腕を大きく広げた。

 

「兄貴!煉獄の兄貴!!」

 

列車内は、杏寿朗を讃える声が鳴り響いた。

 

 

 

「ふふふ……」

 

所変わって、先頭車両の機関室の上に男が立っていた。

 

「鬼狩りが五人。内二人は柱相当かな……?それに下弦狩りもいる」

 

男は、眠りこける六人が視えていた。

 

「夢を見ながら死ねるなんて幸せだよね」

 

男の目には、下弦ノ壱とあった。

 




次回、晶が見たものとは……



鬼滅の規格外品こそこそ話

蜜璃さんが遅れたのは桜餅を八個も堪能していたからだぞ!
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