鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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第弐拾参話

「え………」

 

気がつくと晶は自分の部屋のベッドの上にいた。

 

「な、なんでここに!?列車に乗ってたはずなのに……!」

 

晶は何度も見回すが、景色は変わらなかった。

 

「これは何かの………え?」

 

晶は無意識に背中に触れた。

 

だが、本来あるべきはずの感触がなかった。

 

「ど、どうしてないんだ……………いやそもそも、何があるんだ……?」

 

晶は平静さを取り戻す。

 

「全部……夢………?」

 

「晶、どうかしたのか?」

 

突如、部屋のドアが開いた。

 

「え………」

 

「どうした?」

 

「と、父さん……だよね?」

 

「寝ぼけてたのか?今日は学校だろう?」

 

「う、うん……」

 

「悪いが父さんは先に行くからな。戸締まりはよろしくな」

 

晶の父、は階段を降りて行った。

 

「……そろそろ着替えよう。父さんが死ぬ夢なんて縁起でもない………」

 

 

 

「言われた通り切符を切って眠らせました。どうか私も早く眠らせてください。死んだ妻と娘に会わせてください」

 

「お願いします……お願いします……」

 

晶たちが眠る横で車掌は、夢と刻まれた手に懇願していた。

 

「いいとも。よくやってくれたね。お眠り、家族に会える良い夢を………」

 

手が言い終わらない内に、車掌に眠りについた。

 

「あの……私たちは…………」

 

手の後ろには、六人の男女が控えていた。

 

「もう少ししたら眠りが深くなる。それまではここで待ってて。勘のいい鬼狩りは殺気や鬼の気配で目を覚ます時がある。近づいて縄を繋ぐ時も体に触らないように気をつけること」

 

「俺はしばらく先頭車両から動けない。準備が整うまで頑張ってね。良い夢を見るために」

 

『はい………』

 

六人の男女は返事をした。

 

その目には、狂気すら孕んでいた。

 

 

 

「おはよう!晶」

 

ボブカットの女子高生が晶に声をかけた。

 

「ん?ああ、瑞紀か」

 

晶は振り返り、瑞紀を見た。

 

「朝から元気だな」

 

「こんなにいいお天気だもの。それより晶、今日は生徒会の集まりがあるからちゃんと来るのよ?」

 

「わかってるよ。そういえば瑞紀、哲朗さんは?」

 

「お~い!待ってくれ~!」

 

晶たちが振り返ると、哲朗が走ってきた。

 

「兄貴、遅い!」

 

「瑞紀が早すぎるんだよ……」

 

「おはようございます、哲朗さん」

 

「おう晶、おはよう。今日は生徒会か?」

 

「ええ。そんなとこです」

 

「兄貴こそ、今日は遅くなるの?」

 

「いや、そんなには遅くはならないさ」

 

「そうですか。じゃあ、行きましょうか」

 

「そうね」

 

晶たちは学校に向けて歩き出した。

 

 

 

「何なの……ここ………」

 

校門の近くで、現代にはおよそ似つかわしくない服装の女性が様子を伺っていた。

 

(どうやら精神の核はあの建物の中ね。早く見つけて破壊しないと。じゃなきゃ、良い夢が見られない……!)

 

女性は誰もいなくなったのを確認し、校舎の中に駆け込んだ。

 

(本体はなぜか動かない……!今のうちに!)

 

女性は空き教室の扉を開けた。

 

「あった!」

 

空き教室の中にはガラス細工のような球体が浮いていた。

 

「後はこれを壊せば……!」

 

女性はガラス細工のような球体に錐のようなものを突き立てようとした。

 

「!?」

 

その腕は何かによって遮られた。

 

 

 

「!?」

 

晶の体はビクンと反応した。

 

「これは……!」

 

「ん?どうした深町」

 

「行かなきゃ……」

 

「深町?」

 

「………………………」

 

晶は一目散に教室を飛び出した。

 

「晶!?」

 

瑞紀は後を追った。

 

(そうだ……この感じは……!)

 

晶は空き教室の扉を開けた。

 

「!?」

 

そこには、ガイバーⅠが女性を片手で締め上げていた。

 

「……あ……ぁ……………」

 

女性の顔は青くなっており、今にも絞殺されかけていた。

 

「やめろ!」

 

晶は真っ先に飛びかかり、ガイバーⅠを羽交い締めにした。

 

バランスを崩したガイバーⅠは女性を離した。

 

「……ひゅ………ひゅう…………」

 

女性は酷く呼吸がみだれていた。

 

「そうだよな………」

 

晶は女性を庇うように、ガイバーⅠと対峙した。

 

「父さんはもういない……俺たちにもう平和な日常なんてない……」

 

【……………………】

 

「端からみたら幸せな夢かもしれないけど………俺にとっては悪夢でしかないんだよな……」

 

【……………………】

 

「それにしても、夢を餌にこんな真似をするなんてな。許せないな」

 

【……………………】

 

ガイバーⅠは何もせず、動かなかった。

 

「さて、と……」

 

晶は女性の方を向いた。

 

「この悪夢から覚めるにはどうすればいいんですか?」

 

「ひっ……!!」

 

女性は恐怖に怯えきっていた。

 

「俺はこんな所で止まっているわけにはいかないんです。どうすれば悪夢から覚めるんです?」

 

「そ、そんなことしたら……!」

 

「悪夢とはいえ人の中に土足で入り込んで来て、今さら保身ですか」

 

晶はガイバーⅠに視線を送る。

 

「ま、待って!言います!夢から覚めるには死ぬしかないんです!」

 

「……どういうことです?」

 

「死ぬことは全部終わるということです!夢の中で死ねば夢も終わりということです!」

 

「そうですか……」

 

晶は女性に背を向けた。

 

「ならさっさと出て行ってくれませんか?」

 

「そ、それは出来ないんです……」

 

「俺の夢の中だからですか?」

 

「は、はい……」

 

「なら大人しくしててください。その代わり、動いたら責任は持ちませんから」

 

「は、はい………」

 

女性には晶の言うことを聞くことしか選択肢は残されていなかった。

 

 

 

「………………………」

 

【………………………】

 

晶は再びガイバーⅠと対峙した。

 

「なら早速──」

 

「晶!」

 

瑞紀が駆け込んで来た。

 

「何……してるの………?」

 

「瑞紀……」

 

晶は振り返らなかった。

 

「ごめん。俺、行かなきゃ」

 

「何言ってるの………」

 

「でも、ちゃんと帰る。鬼舞辻無惨を倒してちゃんと帰るから」

 

「晶……」

 

「だから、またな」

 

晶はガイバーⅠの顔を見た。

 

【…………………………】

 

ガイバーⅠは高周波ブレードを伸ばした。

 

(そういえば……)

 

晶はあることに気づいた。

 

(初めて見るな。ガイバーⅠの顔……)

 

ガイバーⅠは構えた。

 

(こんな顔を、こんな目をしてたんだな……)

 

ガイバーⅠは晶に接近した。

 

(何となく……寂しそうな…………)

 

晶はガイバーⅠに首をはねられた。

 

 

 

「はっ!!」

 

晶は飛び起きた。

 

「……どうやら戻れたみたいだな」

 

「ムー!」

 

「え………禰豆子ちゃん!?」

 

「ムー!ムー!」

 

「大丈夫だよ。それより炭治郎は……」

 

「晶さん!」

 

炭治郎は安堵した。

 

「炭治郎も起きたんだな」

 

「はい!禰豆子が縄を燃やしてくれたので血鬼術が解けたみたいです。晶さんは自力で起きたみたいですけど」

 

「たぶん、ガイバーが首をはねたからだと思う。それより、俺と繋がっていた人は?」

 

「えっと……この人ですか?」

 

「ああ」

 

晶は女性の首を見た。

 

首には手の形の痣が出来ていた。

 

「これは!?」

 

「夢の中でこの人の首をガイバーが締め上げていた。夢の中で起きたことは現実にも影響するみたいだな」

 

「晶さん……」

 

「それより、早く起こそう。ぼやぼやしてる時間はなさそうだ」

 

「そうですね!」

 

 

 

晶と炭治郎は杏寿朗たちを起こそうと体を揺さぶった。

 

だが誰一人起きなかった。

 

「くっ、だめか」

 

「こっちもです……!?」

 

突如、杏寿朗と繋がっていた女性が炭治郎を刺そうと錐のようなものを持って襲いかかった。

 

炭治郎はすんでのところでかわした。

 

「邪魔しないでよ!あんたたちが起きたせいで夢を見せてもらえないじゃない!」

 

「!?」

 

炭治郎は自らの意志で襲ってきた女性に戸惑った。

 

「っ!」

 

晶たちの周りを男女が囲んだ。

 

「何してんのよあんたも!起きたんなら加勢しなさいよ!」

 

「………………」

 

炭治郎は顔色の悪い男性に目をやった。

 

「結核だかなんだか知らないけど、ちゃんと働かないならあの人に言って夢を見せてもらえないようにするからね!」

 

(結核……!?この人、病気だったのか……)

 

「夢を見せてもらえない?それが嫌でこんな真似を?」

 

「それの何が悪いの!?あんたたちさえ死ねば全部丸く収まるのよ!」

 

「……くだらない」

 

晶はせせら笑うように言った。

 

「なんですって?」

 

「夢なんて所詮幻だろ。幻にすがって何の価値があるんだよ」

 

「だ、黙りなさい!」

 

「その挙げ句、他人を陥れて自分たちだけがおいしい思いが出来ればいいというのか」

 

「だ、黙れ……」

 

「哀れだな」

 

「黙れ黙れ黙れーっ!!」

 

女性は錐のようなもので晶を刺そうとした。

 

「深町さんの言うとおりよ」

 

「っ!?」

 

女性は蜜璃によって取り押さえられた。

 

「甘露寺さん……!」

 

「目が覚めたんですね!」

 

「うん。完全にね」

 

蜜璃は晶と炭治郎に笑顔を見せた後、女性に真顔を向けた。

 

「夢っていうのはね、自分がどうしたいかっていう道標なの。私は素敵な殿方と添い遂げるっていう夢があるから頑張れるの」

 

「甘露寺さん……」

 

(自分がどうしたいか、か……)

 

晶は蜜璃の言葉を深く受け止めた。

 

「叶わないと思ったなら、辛くても現実の中で努力して叶えるの。あなたたちはそれを放棄しただけ」

 

「う、うう………」

 

「くっ……」

 

男女に迷いが生じた。

 

「深町さんはともかく、炭治郎君はどうしたい?」

 

蜜璃は炭治郎に問いかけた。

 

「俺は………」

 

炭治郎は暫し目を伏せ、ゆっくり顔を上げた。

 

「俺は、現実の中で努力します。どんなに辛くても、苦しくても」

 

「炭治郎……」

 

「だから……ごめんなさい」

 

炭治郎は素早く動いて、自分と繋がっていた男性以外を気絶させた。

 

 

 

「大丈夫?」

 

「はい……」

 

蜜璃に声をかけられた炭治郎は寂しそうな顔をした。

 

(本当なら……俺も夢のままでいたかった。でも……)

 

炭治郎は晶を見た。

 

「晶さん」

 

「?」

 

「俺、努力します。これ以上俺と同じ悲しみを増やさないために……!」

 

炭治郎は禰豆子の頭を撫でた。

 

「そうだな、炭治郎」

 

晶は笑みを浮かべた。

 

「あの……」

 

炭治郎と繋がっていた男性が声をかけた。

 

「本当に……申し訳ない………」

 

「あなたもお辛かったでしょう。でももう大丈夫です」

 

「はい……」

 

「あなたに夢を見せた人とはどこに?」

 

「先頭車両にいると言ってました」

 

「先頭車両か……」

 

炭治郎の鼻は嫌な臭いを捉えていた。

 

「あと……その……」

 

男性は躊躇いつつも、炭治郎と目を合わせる。

 

「気をつけてね」

 

「はい。あなたもお気をつけて」

 

炭治郎は笑みを浮かべた。

 

「では深町さん、がいばぁに」

 

「はい………ガイバァァァッ!!」

 

晶はガイバーⅠに殖装した。

 

【準備はできた】

 

「では行きましょう!」

 

炭治郎たちは先頭車両を目指して走り出した。




次回、厭夢と決着。そして……



鬼滅の規格外品こそこそ話

炭治郎、善逸、伊之助、杏寿朗さんの見た夢は原作と同じで、蜜璃さんは美化された晶たち四人としのぶを除く柱全員から求婚される夢を見たぞ!
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