鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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第弐拾陸話

あの後、駆けつけた隠の手を借り、晶たちは蝶屋敷に搬送された。

 

比較的軽傷の者は安静にしているだけで良かったが、最も重傷の杏寿朗は予断を許さない状況だった。

 

それでも、持ち前の体力で見事持ち直し、最悪の事態は避けられた。

 

だが失った左目は戻ることはなかった。

 

柱たちは杏寿朗の引退を噂したが、杏寿朗本人は「責務を全うしきっておりませぬ!隻眼になったならば、隻眼に合った鍛え方をするだけのことです!」と耀哉に申し入れたことで、柱から外れるが鬼殺隊に残ることになった。

 

最近の蝶屋敷では、裏庭で杏寿朗が鍛練をしようとしてしのぶに大目玉をくらう光景が増えたという。

 

 

 

そんなある日、晶は産屋敷家に呼ばれていた。

 

「みんな、柱合会議から日が経っていないのによく集まってくれたね。特に蜜璃や晶も任務の傷が癒えてないのに申し訳なかったね」

 

「い、いえ!煉獄さんに比べれば大したことないですから!」

 

蜜璃はアワアワと慌てた。

 

「聞けば、杏寿朗は鍛練に入っているんだって?」

 

耀哉はしのぶに問いかけた。

 

「はい。まだ安静にしてなければならないのに。まったく困った方です」

 

しのぶは口調こそ丁寧だが、明らかに怒っていた。

 

(ったく、あの鍛練バカ)

 

天元は心の中でため息をついた。

 

「わかった。しのぶ、杏寿朗にしばらく安静にするよう伝えてくれ。私の名前を出して構わない」

 

(……一番の薬かもなァ)

 

(煉獄と言えど、御館様には逆らえまい)

 

実弥と小芭内はひそひそと話していた。

 

「それと炭治郎たちは?」

 

耀哉は再びしのぶに問いかけた。

 

「善逸君は変わりありませんが、炭治郎君と伊之助君は……」

 

「そんなに悪いのかい?」

 

「肉体的ではなく精神的にですね。上弦の強さを目の当たりにしたようですから」

 

「無理もない。頸を斬る寸前まで追い込んで逃げられたと聞いている。精神的にくるものはあるだろう」

 

(炭治郎……)

 

義勇は顔を伏せた。

 

「煉獄さんと深町さん、二人がかりでも倒せなかったなんて……」

 

「迂闊でした。以前、鬼舞辻無惨の面の皮を取った後に気配が一瞬で消えたことを思い出すべきでした」

 

「そうだ。お前の迂闊さがこの状況を生んだんだ」

 

小芭内は晶に視線をぶつける。

 

「まあまあ。煉獄さんも晶さんも負傷していたんですから。それほどの血鬼術ならば、他の上弦の仕業かもしれませんよ。それとも伊黒さん、あなたならば上弦二体は容易いとでも?」

 

しのぶの青筋をたてながら微笑む。

 

「………………………」

 

小芭内は視線を逸らした。

 

 

 

「だが杏寿朗に蜜璃、晶や炭治郎たちの働きによって二百人以上の乗客が誰一人死ななかった。これは誇ってもいいことだ」

 

耀哉は微笑んだ。

 

「今回の働きで鬼舞辻に決して小さくない損害を与えることができた。各地でも鬼の勢いが減っていることから、下弦壊滅は大きな意味を持っているんだと思う」

 

「確かに……」

 

「つけ入る隙ができたということですね」

 

「無論、簡単にはいかねぇだろうがなァ」

 

「その通りだ。浮き足立つことなく、任務にあたってほしい」

 

『御意!!』

 

柱たちは揃って返事をした。

 

「それと晶。君のおかげで杏寿朗が命を落とさずに済んだ。ありがとう」

 

「俺はただ、死なせたくなかっただけですよ」

 

 

 

「さて。そろそろ本題に入ろうか」

 

『っ!!』

 

産屋敷の本題という言葉に、柱たちは背筋を正した。

 

「下弦が壊滅し、鬼の勢いも削がれてきた今、我々はより強大な敵を相手にしなくてはならない」

 

(確かに……)

 

(だが総力戦を仕掛けるには……)

 

「何も無策で戦おうというわけじゃないよ」

 

「っ!?」

 

晶はギョッとなった。

 

「その下準備として、各地で展開している隊員たちを一ヶ所に集めて……」

 

耀哉は柱たちを見回す。

 

「柱主導による隊員全員の鍛練を行おうと思う」

 

『!?』

 

柱たちは一斉に顔を上げた。

 

「御館様……」

 

「全隊員による鍛練ですか……」

 

「……そんなに驚くことなんですか?」

 

「はい………何しろ前例がないんです」

 

「今までなかったんですか……?」

 

「まあな。下弦が壊滅して鬼どもの動きが衰えたなんざ、鬼殺隊の歴史の中でもそうそうねぇ」

 

「敵が静まっている今が、絶好の機会というわけだ」

 

「なるほど……」

 

「確かに絶好の機会だなァ」

 

柱たちの印象は悪くはなかった。

 

 

 

「どうだろう、皆」

 

改めて耀哉は柱たちを見回す。

 

「派手に賛成です」

 

「私も賛成です」

 

「同じく」

 

「僕はどちらでも」

 

「異存はありませぬ」

 

「俺もです」

 

「自分も」

 

「以下同文……」

 

柱全員は了承した。

 

「杏寿朗にはしのぶから伝えてくれないか?」

 

「かしこまりました」

 

しのぶは微笑んだ。

 

「これで今回の議題は全て終わりだね。鍛練の詳細については後日烏を向かわせるね」

 

『御意』

 

「ただ、晶とは少し話があるんだ。済まないが晶、残ってくれるかな?」

 

「わかりました」

 

「では、行っておいで。私の剣士たち」

 

『はっ!!』

 

柱たちは解散した。

 

 

 

「どうぞこちらへ」

 

臨時会議の後、晶は黒髪の少女の案内で廊下を進んでいた。

 

「ありがとう。えっと……」

 

「お初にお目にかかります。産屋敷耀利哉と申します」

 

「耀利哉?もしかして君は……」

 

「少々お待ちください」

 

耀利哉は襖を開けた。

 

「あ…………」

 

晶は言葉を失った。

 

そこには布団に横たわる耀哉がいた。

 

「どうぞ……」

 

「し、失礼します……」

 

晶は耀哉の枕元に座った。

 

「すまないね。こんな姿で」

 

「い、いえ……ご病気とは思っていましたが」

 

「いや、これは病気ではないんだ。これは呪いなんだ」

 

「呪い?」

 

「そう……」

 

耀哉は晶に産屋敷家の秘密を語り始めた。

 

 

 

「ああもう!何度言ったらわかるんですか!」

 

「止めないでくれ!後少し、後少しで掴めそうなんだ!」

 

「貴方は絶対安静の身なんです!傷が開いたらどうするんですか!」

 

「頼む!後少しだけだ!終わったら大人しく戻る!」

 

「なりません!」

 

一方、蝶屋敷では新たな戦術を模索する杏寿朗とそれを止めようとするアオイが言い合いをしていた。

 

「また煉獄さん?」

 

「うん。気配だけで敵を捉える訓練だって」

 

「そんなことが出来るのか?」

 

「常中を駆使すれば可能だって………理論上は」

 

炭治郎と善逸は縁側でそれを眺めていた。

 

「それで伊之助に教わった後、実践しようとしてるみたいだ」

 

「さすがは煉獄さん。あの身振り手振りの説明で全部理解できるなんて」

 

(噛み砕いただけだろ……。つーか、お前も伊之助並みだからな、炭治郎)

 

善逸は心の中で呆れた。

 

「ごめんください」

 

入り口の方から男の声がした。

 

「ん?誰か来たみたいだ」

 

「ケッ、野郎だな」

 

「そんなこと言うなよ。カナエさんに伝えて来るよ」

 

炭治郎は奥の部屋へと向かった。

 

「俺も禰豆子ちゃんとこ行こっと」

 

善逸も禰豆子の元へと向かった。

 

 

 

「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

カナエは正装した若い男に挨拶した。

 

「ここに深町晶君がいると聞きまして」

 

若い男は笑みを浮かべながら聞いた。

 

「……失礼ながら、どなたから?」

 

「産屋敷耀哉氏に」

 

「え………」

 

若い男の出した名前にカナエは唖然となった。

 

「貴女方鬼殺隊の支援者とでも申しましょうか」

 

「……左様ですか。確かに彼ならこちらに滞在しています。ですが、今は席を外しています」

 

「そうですか。では、日を改めましょう」

 

若い男はそう言って立ち去ろうとした。

 

「あの……!」

 

「何か?」

 

「失礼ながら、貴方様は……」

 

「生徒会長」

 

「は?」

 

「そう伝えればわかるでしょう」

 

若い男は蝶屋敷を出て行った。

 

「……何なの、もう」

 

 

 

(まさか産屋敷さんにそんな事情があったなんて……)

 

産屋敷家からの帰り道、晶の足どりは重かった。

 

『産屋敷君の男子は代々、三十歳を迎える前にこの世を去る。それは鬼舞辻を倒さなくては解かれない呪いによるものなんだ』

 

『元々は今よりも短かったが、巫女の一族と婚姻することで何とか長らえてきたらしい』

 

『また、一定の年齢までは女の子として育てる。かくいう私もそうだった』

 

『晶の時代に産屋敷の名前が残っているかどうかはわからない。それでも、君に伝えておきたかった』

 

晶は耀哉の話を思い返す。

 

(そんなこと聞かされたら、余計に気にするじゃないか。産屋敷さん、まさかこれを見越して教えたんだろうか……)

 

「よう……」

 

晶の背後から実弥が声をかけた。

 

「あ、不死川さん」

 

「ずいぶんと暗ェ顔してたなァ。御館様から何か言われたのかァ?」

 

「まあ、そうですね」

 

「フン……」

 

実弥は鼻を鳴らす。

 

「お前も聞かされたか?」

 

「……産屋敷さんの秘密、ですか?」

 

「ああ……やっぱなァ」

 

「不死川さんにも覚えが?」

 

「まあな。それはそうとお前、蝶屋敷に厄介になってるんだってな」

 

「……禰豆子ちゃんに手を出すなら相応の覚悟がいりますよ?」

 

「チッ、あのガキはともかくてめぇと敵対する気はねぇよ。これでも、仕方なく、てめぇを認めてやってんだからよ」

 

「それはどうも」

 

晶は素直に軽く頭を下げた。

 

 

 

「それとお前……」

 

実弥の表情が暗くなった。

 

「?」

 

「俺と似た奴が蝶屋敷に来たことねぇか?」

 

「ええ。先日に」

 

晶には覚えがあった。

 

「そうか……」

 

「お知り合いですか?」

 

「……そいつにあったら言っとけ。さっさと出ていけってな」

 

「不死川さん?」

 

「言っとけ」

 

実弥は去って行った。

 

(不死川さん……怒っていた。いや、悲しんでいた)

 

晶は気になりつつも、蝶屋敷へと向かった。

 

 

 

「ただいま戻りました」

 

「あら、おかえりなさい」

 

先に戻っていたしのぶが出迎えた。

 

「遅かったようですが、何かあったんですか?」

 

「不死川さんと会って、少し立ち話を」

 

「不死川さん?珍しいですね」

 

「これでも、仕方なく、認めてやっているんだそうです」

 

晶は微笑みながら言った。

 

「まったく。不死川さんは」

 

しのぶは腰に手を当てた。

 

「それはそうと晶さん。あなたを探している人が来たそうですよ」

 

「俺を?」

 

「対応した姉さんによると、生徒会長と伝えればわかると」

 

「生徒会長………?」

 

晶は暫し思案した。

 

「まさかっ!!」

 

晶は結論にたどり着いた。

 

「カナエさんは!?」

 

「ね、姉さんなら奥の部屋に……」

 

「失礼します!」

 

晶は靴を脱ぎ、一目散に向かった。

 

「ちょ、ちょっと晶さん!?」

 

しのぶは慌てて後を追った。

 

 

 

「……それは本当なの………?」

 

カナエは呆然となった。

 

「そんな………」

 

隣で聞いていたしのぶも言葉を失う。

 

「はい。巻島さん……ガイバーⅢは俺が通っていた学校の生徒会長でした。巻島さんもこの時代に来てたのか……」

 

「あの時の人だったなんて……」

 

カナエはかつてガイバーⅢに命を救われたことを思い出した。

 

「姉さんを助けていただいた方……一度お会いしてお礼を申し上げたいと思っていたんです」

 

「晶君を探しているならいつかまた来てくれるかもしれないわね」

 

「そうかも、しれませんね」

 

晶は数少ない同志を思い浮かべた。

 

 

 

「すみませんすみません!!本当にごめんなさい!!」

 

「っ!?」

 

突如聞こえてきた炭治郎の悲鳴に晶は仰天した。

 

「な、なんだ!?」

 

「そういえば、鋼錢塚さんがいらしていたんでした」

 

「鋼錢塚さん?………あ」

 

晶は炭治郎が日輪刀を婀窩座に投げつけたことを思い出した。

 

「夜中くらいに止めに行きますね……」

 

「お願いね」

 

「念のために夜食を作っておきますね」

 

結局、ガイバーに殖装した晶が鋼錢塚を止められたのは夜明け前だった。

 




次回、晶は任務でとある人物に会いに行きます。



鬼滅の規格外品こそこそ話

煉獄さんはカナエさんと違って、鬼殺隊を引退してないので現階級は甲だぞ!
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