鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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鱗滝さんと禰豆子だけでなく、あの人たちも登場します。


第弐話

「ええっと、地図だとこっちか」

 

藤襲山を下りた晶は女の子から地図と僅かばかりの食糧と路銀をもらい、狭霧山を目指していた。

 

(徒歩だけってのがこんなにキツいなんて。昔の日本人は逞しいというのはホントのことだったんだな)

 

晶は現代人ゆえの疲労感におそわれながらも、一歩一歩踏みしめていた。

 

(炭治郎、今頃どうしてるだろうな)

 

晶は大正時代に来て初めて出来た友のことを想った。

 

 

 

一方、炭治郎は──

 

「くっ!肆の型・打ち潮!」

 

襲ってきた鬼を順当に退治していた。

 

「…………………」

 

だが炭治郎の顔を晴れなかった。

 

(まただ。ろくに話も出来ないまま終わってしまった。禰豆子を人間に戻す方法を知らなくちゃいけないのに)

 

(いや、まだ最終選抜は終わっていない。諦めてたまるか!)

 

「晶さんだって言ってたじゃないか。諦めるなって」

 

炭治郎は刀を納め、歩き出した。

 

 

 

【はああっ!】

 

晶はガイバーⅠに殖装し、鬼と戦っていた。

 

ガイバーⅠは組んだ鬼の腕をへし折った。

 

「こ、こいつ……!」

 

【止めだ!】

 

ガイバーⅠの高周波ブレードが鬼の頸をはねる。

 

「…………!!」

 

鬼は炭化し、消滅した。

 

【ふう……】

 

ガイバーⅠは一息つき、念のために辺りを探る。

 

【鬼はいないか。それにしても】

 

ガイバーⅠは頭部のヘッド・センサーに触れる。

 

【獣化兵以上に鬼の気配を感じやすい。鬼とガイバーはそれほど密接なんだろうか】

 

しかしいくら考えても答えは浮かばなかった。

 

【……火を起こすか】

 

ガイバーⅠはヘッドビームのパワーを調整し、集めた薪に火をつけた。

 

【村上さん曰く、殖装状態は飲食を取らなくて良いらしいけど、鬼に間違われたんじゃたまったものじゃないからな】

 

ガイバーⅠは殖装を解いた。

 

「少しだけ休んだら出発しよう。後少しで狭霧山に着く」

 

晶はもらった干し飯を口に含んだ。

 

「おや?珍しい方ですね」

 

「!?」

 

突然聞こえてきた声に、晶は身構える。

 

「ああ、ごめんなさい。脅かすつもりはなかったんです」

 

木の陰から蝶の髪飾りをつけた女性が姿を現した。

 

「あ、あなたは……?」

 

「私は胡蝶しのぶ。故あって旅をしている者です」

 

「俺は深町晶(小刀ってことはこの人も……)」

 

晶は少しだけ警戒を緩めた。

 

「しのぶさん、でしたか。俺は狭霧山を目指しているんです」

 

「狭霧山ですか?」

 

「ええ、そうなんです」

 

「ふむ……」

 

しのぶは思案顔になった。晶は敢えて踏み込んでみることにした。

 

「しのぶさん、あなたは鬼狩りですね?」

 

「……なぜわかったんです?」

 

「背中の文字で。藤襲山で知り合った人に教えてもらったんです」

 

「藤襲山?晶さん、あなたは……」

 

「隠し事をしていても仕方ありません。情報交換といきませんか?」

 

しのぶはフッと笑った。

 

「わかりました。私も知りたいことがあったので」

 

晶は藤襲山での出来事を、しのぶは鬼殺隊についてを話した。

 

「そうだったんですか。それで晶さん」

 

「はい?」

 

「女の子を見かけませんでした?最終選抜に参加しているんですが」

 

「申し訳ないんですが、見てないですね」

 

「そうですか」

 

しのぶは息を吐いた。

 

「しのぶさんは俺を本部とやらまで連れて行くわけではないんですね」

 

「はい。そもそもそんな指令は受けてませんし」

 

「すみません。こう言ってはなんですが、ちょっと疑ってる部分もあるので」

 

「無理もないでしょう。鬼殺隊は政府非公認の組織です。民間の方におとぎ話のような形で伝わっているのが現状です」

 

「なるほど……」

 

「あら、夜が明けてきたようです」

 

しのぶが空を見上げると、東の空が白くなっていた。

 

「もう鬼も出ないでしょうから、そろそろ出発します」

 

「大丈夫ですか?」

 

「ええ。貴重なお話、ありがとうございました」

 

「では、これをお持ちください」

 

しのぶは懐から和紙で包まれたものを取り出した。

 

「それは?」

 

「薬です。実は私は医師でもあるんです」

 

「そうなんですか。ありがとうございます」

 

「ここから北に進めば狭霧山。山を二合ほど登れば鱗滝さんの住まいです」

 

「何から何まですみません。ではこれで」

 

晶はしのぶと別れ、北に進路を取った。

 

(深町晶さん。なかなか面白い方でしたね)

 

しのぶは晶を見送り、先を急ぐ。

 

(それにしても姉さん、どこに行ったのかしら)

 

 

 

「こ、ここか……」

 

狭霧山に到達した晶は、疲労の体にむち打ち、山道を登った。

 

そして小さな一軒家を見つけた。

 

「誰かいませんか?」

 

晶は戸を叩いた。

 

「………入れ」

 

中からしゃがれた声が響く。

 

「あら、お客さん?」

 

女性の声も聞こえてきた。

 

「お、おじゃまします」

 

晶が戸をゆっくりと開けるとそこには──

 

「………………………」

 

天狗の面をつけた初老の男と、竹を猿轡のように口に当てた女の子を抱きしめている蝶の髪飾りをつけた女性がいた。

 

その光景に晶は呆気にとられた。

 

「……気持ちはわからんでもない。とにかく入って来い、深町晶」

 

「は、はい……」

 

晶は一軒家の中に入った。

 

 

 

「儂は鱗滝左近時。ここで鬼殺隊士の育手をしている」

 

「はあ、どうも。あの、鱗滝さん」

 

「ん?」

 

「その子はもしかして……」

 

「この子は禰豆子。炭治郎の妹だ。訳あって、鬼になってしまった」

 

「その割には大人しいですね」

 

「気休めではあるが、禰豆子には暗示をかけてある。人間は全て家族の姿に見え、鬼は倒すべき敵であるようにな」

 

「ムー………」

 

「そうですか……」

 

「最後は私ね。胡蝶カナエ。元柱で今は鱗滝さんと同じく育手をしてるわ」

 

「胡蝶?しのぶさんと同じ?」

 

「あら、晶君しのぶを知ってるの?妹なのよ」

 

「ええ。狭霧山に来る途中でお会いしました」

 

「しのぶってば、わざわざ探しに来たのかしら?」

 

「いい加減蝶屋敷に戻ったらどうだ」

 

「そんな!禰豆子ちゃんに会えなくなるなんて!鱗滝さん!この子を蝶屋敷で保護しても良いですか!?」

 

「禰豆子のことは炭治郎が決めることだ。もっとも、許可するとは思えんが」

 

「うう……禰豆子ちゃんを離したくないよ~」

 

カナエはぼーっとしている禰豆子に抱きつく。

 

(な、なかなか強烈な人だな)

 

晶は苦笑した。

 

 

 

「さて、深町晶」

 

鱗滝は晶と顔を見合わせた。

 

「炭治郎に会ったそうだな」

 

「はい」

 

「………やつは出たのか?」

 

「手鬼、ですね?」

 

「ああ……」

 

面越しだが、鱗滝の表情が暗くなる。

 

「手鬼は言っていました。これまで鱗滝さんの弟子を十三人喰い殺したと」

 

「……………………」

 

「そして………あなたが与えた狐の面が目印になっていたと」

 

「そうか………」

 

「鱗滝さん……」

 

禰豆子を寝かしつけたカナエは心配そうに鱗滝の隣に座る。

 

「ですが、手鬼は討たれました。炭治郎の一刀で」

 

「っ!」

 

鱗滝は顔を上げた。

 

「間違い……ないのか………?」

 

「この目ではっきりと見ました」

 

晶の顔に笑みが浮かぶ。

 

「そうか………」

 

鱗滝の体が小刻みに震える。

 

「ずっと……辛い思いをされてきたのですね」

 

「……………………」

 

鱗滝はコクリと頷いた。

 

「ムー………」

 

禰豆子は不思議そうに鱗滝を見つめた。

 

(少し出てようか……)

 

「……………」

 

気を遣った晶が家の外に出ると、禰豆子もついて行った。

 

 

 

「……………………」

 

「……………………」

 

外に出た晶は禰豆子にジッと見られていた。

 

「えっと……何か用かい?」

 

「ムー、ムー」

 

禰豆子は身振り手振りで何かを伝えようとしたが、晶には通じていなかった。

 

「うーん、いったい何を伝えようとしてるんだ……?」

 

晶は腕組みをした。

 

『きっと炭治郎の匂いを感じたんだよ』

 

「っ!」

 

晶が振り向くと、花柄の着物を着た女の子が立っていた。

 

「君は……?」

 

『真菰』

 

「真菰……いや、それよりその格好は手鬼が言っていた………」

 

『そう。私も錆兎も今までの継子はみんなあの鬼に喰い殺された。でもやっと解放された。炭治郎とあなたが倒してくれたから』

 

「鬼を倒したのは炭治郎だ。俺は手助けをしただけさ」

 

『ふふ、偉ぶらないのね』

 

「そういうのは似合わないんだ」

 

真菰と晶は微笑んだ。

 

『じゃあ、そろそろ行くね』

 

「せめて炭治郎に会ってかないのか?」

 

『大丈夫。炭治郎はちゃんと分かってる』

 

「そうか」

 

「………………」

 

禰豆子は目を逸らさずに真菰を見つめる。

 

『じゃあね。人間に戻れるといいね………』

 

真菰は笑顔で禰豆子に手を振り、姿を消した。

 

「(炭治郎にはちゃんと伝えるよ)禰豆子ちゃん、そろそろ行こう」

 

「………(コクン)」

 

晶と禰豆子は家へと戻った。

 

これまで蓄積された疲労がピークに達した晶は、話もそこそこにカナエが敷いた布団の中でぐっすりと眠った。

 




次回、鱗滝さんから修行が課されます。また、なぜカナエが生きているのか、その理由が明かされます。



鬼滅の規格外品こそこそ話

禰豆子はカナエに抱きつかれた時、無抵抗を決め込んだ方が良いと気づいたぞ!
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