「斬……った……」
【速……すぎる……】
天元の技量を目の当たりにした炭治郎とガイバーⅠは呆然となった。
「お前らボケッとしてねぇでそっちをどうにかしろ」
【そっち……?】
「そうだ!禰豆子!」
炭治郎は禰豆子に駆け寄った。
【…………………】
ガイバーⅠは禰豆子ではなく天元の隣に移動した。
「良いのか?」
【……どんな顔をして会えば良いんですか?】
「そのツラに決まってんだろ。まあいい、とりあえずこいつが先だ」
天元は堕姫を見た。
【これは……!?】
「ああ、生きてやがる。頸をはねたのにな」
「よくも……!!」
堕姫の頸はガイバーⅠと天元を睨み付ける。
「よくもアタシの頸を斬ったわね!!只じゃおかないから!!」
「まぁだギャアギャア言ってんのか。お前に用はねぇよ。地味に死にな」
「ふざけんじゃないよ!!だいたいアンタさっきアタシが上弦じゃないって言ったわよね!?」
「だってお前上弦じゃねぇじゃん」
「アタシは上弦の陸よ!!」
「だったら何で頸斬られてんだよ、弱すぎだろ。脳味噌爆発してんのか?」
「アタシまだ負けてないからね!!上弦なんだから!!」
「負けてるだろう、一目瞭然に」
「アタシ本当に強いんだからね!!今はまだ陸だけどこれからもっと強くなって……!!」
「説得力ねーー」
天元は鼻で笑った。
「うわーーーん!!!」
突然堕姫は泣き出した。
「ほんとにアタシは上弦だもん!!本当だもん!!数字だって貰ったんだから!!」
【嘘は言ってないみたいですが……】
「つーか何時まで泣いてんだ……?頸を斬ったのに体が崩れねぇぞ……」
【なら……】
ガイバーⅠは左胸を開いた。
【跡形もなく消滅させるまで……!?】
ガイバーⅠは最後まで言葉を発せられなかった。
堕姫の体から別の鬼が出てきたからだった。
「っ!!」
天元は瞬時に斬りつけたが、鬼は一瞬で天元らの後方に移動した。
「泣いてたってしょうがねぇからなぁあ。頸くらい自分でくっつけろよなぁ。おめぇは本当に頭が足りねぇなあ」
鬼は天元とガイバーⅠに一瞥すらせず、堕姫に構っていた。
(頸を斬り落としたのに死なない。背中から出てきたもう一体はなんだ!?反射速度が比じゃねぇ)
「顔は火傷かこれなぁ。顔は大事にしろなぁ。せっかく可愛い顔に生まれたんだからなぁあ」
「っ!!」
【宇随さん!!】
天元とガイバーⅠは同時に斬りかかった。
「へぇ、やるなぁあ。攻撃止めたなぁあ」
だが、斬られたのは天元とガイバーⅠだった。
「殺す気で斬ったけどなぁあ。いいなぁあお前ら、いいなぁあ」
もう一体の鬼は殺意混じりに二人を見つめる。
(コイツ……)
【間違いない……こいつこそ、本物だ……!】
天元とガイバーⅠは臨戦体勢に入った。
(遂に目覚めさせたか……)
二人の様子を外から伺っている者がいた。
(堕姫は上弦にあって上弦に非ず。確かにそこいらの鬼どもとは一線を画す。だが、真の上弦の陸──妓夫太郎には及ばず)
(下弦狩りよ……お前の命運もここまでか……?)
【随分とご執心のようだな?】
「む?」
様子を伺っていた者は背後からの声に振り向く。
「お前は……!?」
様子を伺っていた者は驚愕した。
【フフ……】
声をかけた者は月の光を受けて黒く光っていた。
「お前いいなぁあ」
妓夫太郎は羨望の目で天元を見つめる。
「その顔いいなぁあ。肌もいいなぁ、シミも痣も傷もねぇんだなあ」
「肉付きもいいんだなぁあ。俺は太れねぇんだよなぁあ」
「上背もあるなぁあ。縦寸が六尺は優に越えてるなぁあ。女にもさぞかし持て囃されているんだろうなぁあ」
「妬ましいなああ、妬ましいなああ。死んでくれねぇかなぁあ。そりゃもう苦しい死に方でなぁあ。生きたまま生皮剥がれたり腹を掻っ捌かれたりそれからなぁあ」
妓夫太郎は血が流れるのも構わず顔を引っ掻き続けた。
「それからお前……」
次に妓夫太郎はガイバーⅠを見た。
「お前あれだよなぁあ。無惨様が言ってた下弦狩りだよなぁあ。血鬼術みてぇなのをたくさん持ってて
いいよなぁあ。使い勝手良さそうだよなぁあ。羨ましいなぁあ。お前も死んでくれねぇかなぁあ」
妓夫太郎は羨望の入り混じった目でガイバーⅠを見つめる。
【コイツ……!】
(頭が相当フッ飛んでやがる)
「お兄ちゃんコイツらだけじゃないのよ!!まだいるの!!」
部屋の隅に蹲っていた堕姫が金切り声を上げた。
「ん?」
「アタシ一生懸命やってるのに……凄く頑張ってたのよ一人で……!!」
「それなのにねぇ皆で邪魔してアタシをいじめたの!!よってたかっていじめたのよぉ!!」
【っ!勝手なことを言うな!!】
堕姫の言い分にガイバーⅠは憤慨した。
「そうだなぁあ……」
妓夫太郎は憤怒の視線をぶつけた。
「そうだなぁあ、そうだなぁあ。そりゃあ許せねぇなぁあ。俺の可愛い妹が足りねぇ頭で一生懸命やってるのになぁあ。それをいじめるような奴らは皆殺しだ」
【来る……!】
「……………」
「取り立てるぜ俺はなぁ……やられた分は必ず取り立てる」
「死ぬ時ぐるぐる巡らせろ。俺の名は妓夫太郎だからなぁあ」
妓夫太郎は両手の鎌を振り回した。
【「!?」】
戦いが始まった。
「血鬼術・飛び血鎌!!」
妓夫太郎は自らの血を刃へと形状を変化させ、天元とガイバーⅠに放った。
(チッ、受けきれねぇ……)
天元は両手の日輪刀を振り上げた。
【ここは俺が!】
ガイバーⅠはプレッシャーカノンを形成し、血の刃を防御した。
「助かったぜ」
【どういたしまして】
「むかつくなぁあ」
妓夫太郎はガイバーⅠをギロリと睨んだ。
「手の中になんだか分からねぇモン作ってよぉ、俺の飛び血鎌防いでよぉ、さぞかしいい気分なんだろうなぁあ」
【……悪いがこっちも命懸けなんでね。いい気分にはなれないんだ】
「むかつくなぁあ。臆面もなく抜かしやがってよぉ!!」
妓夫太郎はさらに多くの血の刃を放った。
【数が多い!】
「深町下がれ!ここは一旦引く!!」
天元はそう叫んで日輪刀を振り下ろした。
同時に畳が爆ぜた。
(何だ?爆ぜたぞ。一階に落ちたなぁ)
【これは……火薬!?】
一階へと逃れたガイバーⅠは硝煙の臭いを感じた。
「逃がさねぇからなぁ。曲がれ、飛び血鎌」
血の刃は軌道を変えて襲いかかった。
【くっ!?】
(斬撃自体操れるのか。敵に当たってはじけるまで動く血の斬撃!)
ガイバーⅠと天元は背中合わせで血の刃を防御し続ける。
(あの兄妹……妹の方は頸を斬っても死ななかった。あり得ねぇ事態だ。兄貴の方の頸を斬れば諸とも消滅するのか?だとしたら兄貴の方が本体なのか?)
血の刃を粗方叩き落とした天元は懐から黒い丸薬を取り出した。
「(どの道やるしかねぇ!)退いてろ深町!!」
【っ!】
ガイバーⅠは天元の指示通り、店の外へと逃れた。
「おらぁっ!!」
天元は黒い丸薬を上に放り投げ、日輪刀で斬り裂いた。
その瞬間、大爆発を起こした。
【凄いな……これが宇随さんの戦い方なのか………?】
ガイバーⅠのヘッド・センサーは妙な反応をキャッチした。
「お?」
「あ!」
そこには伊之助と耳を押さえる善逸がいた。
「晶さん!」
【二人とも無事だったか!】
「……………………」
伊之助はなぜか不機嫌だった。
【どうかしたのか?】
「実はここに来るまで……」
善逸は伊之助を尻目に説明を始めた。
「チキショーッ!!」
伊之助は爆走していた。
「いででで!!」
善逸は伊之助に引きずられていた。
ガイバーⅠと炭治郎が堕姫と戦っている頃、伊之助は天元の妻である須磨、まきを、雛鶴と共に堕姫の帯に囚われていた人々の救助にあたっていた。
途中天元が合流し、八割方救助が済むと天元はさっさとガイバーⅠらの方へと向かった。
追いかけようとした伊之助は完全に終わっていないからと三人に取り押さえられ、さらに時間を要した。
何とか終わらせた伊之助は善逸の襟をひっつかみ、天元の後を追いかけた。
「あっちには晶さんがいるんだからわざわざ行かなくてもいいだろっ!!」
「うるせーっ!!俺は親分だ!!子分に任せられるか!!」
「なんでまだ晶さんより上だなんて言えるんだよ!いい加減認めろよっ!!」
善逸と伊之助は道のど真ん中で言い争いを始めた。
すると──
「いたぞおおお、鬼狩りだあああ!」
「喰っちまえ喰っちまえ!」
二人組の大柄の鬼が現れた。
「なんでこんな時に現れるんだよっ!?」
「どいてろ弱味噌!」
伊之助は日輪刀を抜いた。
「いい加減ムシャクシャしてっからよ、俺の糧になりやが──」
【遅い】
伊之助が言い終わる前に、黒い何かが一瞬で鬼の頸を斬った。
「なあああああっ!?」
伊之助は仰天した。
(晶さん!?いや、似てるけど違う!)
善逸は声を上げそうになりながら黒い何かを観察した。
「てめえ何さらしてくれとんじゃあああああっ!!」
伊之助は怒号と共に敵意を向けた。
【獲物と認定したならば即座に討て。手柄を譲ってやるようなものだ】
「ならてめえが死ねっ!!」
伊之助は黒い何かに斬りかかった。
【フ……】
黒い何かは流れるように伊之助の背後を取り、そのまま前蹴りを放った。
「ぶっ!?」
伊之助は勢いそのままに商家の壁に激突した。
「い、伊之助!?うわぁ……」
伊之助はすっかりのびており、善逸の耳はこれまで聞いたこともないぐちゃぐちゃな音を捉えた。
【さて、この街に近づく招かれざる者共の様子を見に行くとしよう】
黒い何かはいかなる力を使ったのか、宙に浮きそのまま飛んで行った。
「……………………………………」
善逸は伊之助を介抱しながらポカンとした。
「ということがありまして……」
【………………………】
ガイバーⅠは黙って話を聞いた。
「おい業」
【晶だって。なんだよ】
「あの野郎のこと知ってんだろ、教えろ」
【……知ってどうする?】
「決まってんだろ!叩き潰すんだよ!」
【無理だ】
ガイバーⅠは断言した。
【俺が言えることは、俺でも勝てるかどうかわからない。そんなところだな】
「晶さんでもですか!?」
「そんなのやってみなきゃ分からねぇだろがっ!!」
【分かるよ。もし本気なら、お前はとっくに殺されてる】
「っ!?」
ガイバーⅠの言葉にさすがの伊之助もビクリとなった。
「そ、そんなのが……もう終わりだ………」
善逸は両膝から落ちた。
【いや、そこまで悲観することはないよ。たぶん、味方だ】
ガイバーⅠは落ち込む二人を慰めるように言った。
【それにしても、ガイバーⅢ──巻島さんはどうしてこの街に来ているんだ?それに善逸が聞いた招かれざる者共って一体………】
ガイバーⅠが思案していると──
「「【!?】」」
再び爆発が起こった。
「ヒィッ!?」
「またドンドンボムボム始めやがった!」
【宇随さん!!】
ガイバーⅠは高周波ブレードを伸ばし、飛び込んだ。
一方、炭治郎は眠りについた禰豆子を背負い箱に入れ、ガイバーⅠの元へと向かおうとしていた。
(晶さんは大丈夫だろうか……)
未だ呼吸は戻っていなかったが、炭治郎を動かすのはひとえに鬼殺隊員の義務感と晶との友情だった。
(晶さん……きっと気にしているんだろうな。禰豆子を斬ったこと……)
(それが平気だなんて口が裂けても言えない。けど、晶さんは責められるのを覚悟で止めてくれた。もし、禰豆子が人を襲っていたら……)
炭治郎の背中に冷たいものが流れる。
(本当は俺が止めなくちゃいけないのに、晶さんにばっかり背負わせてしまってる……俺は長男なのに……!)
(だから禰豆子……二人で謝ろう。何度でも何度でも頭を………!?)
炭治郎は立ち止まった。
(何だ!?この臭い!?いくつもの臭いが一つに混ざったような臭いがする!!)
炭治郎の鼻は鬼のものではない臭いを捉えた。
(まだ遠くに感じるけど、こうしちゃいられない!)
炭治郎は日輪刀を抜き、臭いの元へと走り出した。
次回、さらなる混戦になります。
鬼滅の規格外品こそこそ話
目が覚めた伊之助はさっそく善逸に八つ当たりしたぞ!