鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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前回からかなり空いてしまいました。


第参拾肆話

「え……?」

 

鬼のものではない臭いを嗅ぎ付けた炭治郎は臭いの元にたどり着いた。

 

だがそこにいたのは、複数の男女だった。

 

(どういうことだ!?)

 

炭治郎は思わず立ち止まった。

 

「………………………………」

 

「………………………………」

 

「………………………………」

 

「………………………………」

 

複数の男女は目が虚ろで、誰も炭治郎のことを見向きもしなかった。

 

「あ、あのっ!」

 

炭治郎は自身から一番近い男に声をかけた。

 

「俺、竈門炭治郎という者ですっ!何かありましたかっ!」

 

「ウ、ウウウ………」

 

男は苦しみだした。

 

「だ、大丈夫ですか──」

 

【迂闊に近寄るな】

 

「っ!?」

 

突如響いてきた声に炭治郎は辺りを見回した。

 

「ウウ……ウオオオオオオオッ!!!」

 

男は大猿のような怪物へと変身した。

 

「!?!?!?」

 

炭治郎は目を見開いた。

 

(な………なに、が…………)

 

最初の男を皮切りに、残りの男女も怪物に変身を遂げた。

 

【あれが最初期の日本製獣化兵か。確かにパワーは凄いが一切の自我を無くしてしまうのが難点か】

 

【俺やガイバーⅠには造作もない相手だが、鬼殺隊の剣士ではどうかな……?】

 

ガイバーⅢは敢えて手は出さなかった。

 

 

 

(お、落ち着け!!落ち着くんだ炭治郎!!)

 

炭治郎は必死に自身を抑えようと努めた。

 

(これが晶さんの言っていた、ぞあのいどってやつなんだ!!)

 

炭治郎は日輪刀を構え、獣化兵と対峙した。

 

「グオオオオオッ!!!」

 

大猿の獣化兵が炭治郎に襲いかかった。

 

(斬る!斬るんだ!!相手は鬼と……くっ……!!)

 

鬼とは違う。

 

炭治郎の心に迷いと躊躇いが生じた。

 

その瞬間、炭治郎は獣化兵に吹っ飛ばされた。

 

【やはりダメか】

 

見切りをつけたガイバーⅢは右の掌を出し、プレッシャーカノンを撃ち出そうとした。

 

【……む?】

 

ガイバーⅢは動きを止めた。

 

ガイバーⅢの視線の先には、日輪刀を支えに立ち上がろうとする炭治郎があった。

 

(くそっ!迷うな炭治郎!晶さんも言ってただろ、ぞあのいどにされた人は二度と元には戻らないって!)

 

炭治郎は呼吸を整え、日輪刀を構えた。

 

【ふむ……そこそこ役には立ちそうだな】

 

ガイバーⅢは炭治郎の側へと降り立った。

 

「うわっ!?」

 

炭治郎は思わず日輪刀を落としそうになった。

 

【そう警戒しなくてもいい。私は君の味方だ】

 

「み、味方……(晶さんに似ている……この人もがいばぁなんだろうか……)」

 

【迷いは君を殺すことになる】

 

ガイバーⅢは諭すように言った。

 

「え……?」

 

【相手は力と引き換えに一切の自我を捨てた、獣同然の存在。我々と奴らの間には殺すか殺されるしかない】

 

「も、もう人間じゃないんですか……」

 

【人に戻れる可能性のある鬼とは違い、獣化兵はその術がない。彼らは死ぬまで暴れ続ける】

 

【このまま本能のままに身内だろうと他人だろうと容赦なく貪り続けるだろう】

 

「そんな……!」

 

ガイバーⅢは炭治郎の肩に手を置いた。

 

【せめて私たちの手で彼らを苦しみから解放してやろう】

 

「苦しみ……」

 

【そうだ。君のその刃はそのためにあるのではないのかね?】

 

「……!」

 

炭治郎は顔を上げた。

 

「ごめんなさい……」

 

炭治郎は覚悟を決め、獣化兵に斬りかかった。

 

【フ……】

 

ガイバーⅢは小さく笑った。

 

 

 

一方、ガイバーⅠと天元は妓夫太郎と堕姫を相手に苦戦を強いられていた。

 

【うおおおおっ!】

 

ガイバーⅠは上下左右から飛んでくる鎌を掻い潜り、妓夫太郎に接近する。

 

「寄るんじゃないよ!!」

 

堕姫が横から襲いかかった。

 

「邪魔だ」

 

天元がすかさず日輪刀を振り回し、堕姫の奇襲を遮った。

 

「ギャッ!!」

 

堕姫は斬られた顔を両手で覆った。

 

「お前ぇえ、可愛い妹の顔に傷を付けやがったなぁあ……!」

 

【余所見するな!】

 

硬化させた右拳が妓夫太郎の顔面を吹っ飛ばした。

 

「くっ……!痛ってぇえなぁあ。お前どんだけ血鬼術持ってんだよぉ、羨ましいなぁあ、妬ましいなぁあ」

 

妓夫太郎は再生した顔を撫でながらガイバーⅠを睨み付けた。

 

【血鬼術じゃないって言ってるだろ……!?】

 

ガイバーⅠは追撃に撃って出ようとしたが、動きが鈍る。

 

ガイバーⅠの右腕には堕姫の帯が絡み付いていた。

 

「どっちだっていいのよ!あんたさえ死ねば!!」

 

「邪魔すんな、ブス!」

 

天元は日輪刀を振り回し、堕姫に斬りかかる。

 

だが堕姫は日輪刀の射程範囲内からギリギリ外れていた。

 

(だったら……!)

 

天元は日輪刀の刃先を摘まみ、射程距離を伸ばす。

 

結果、刃は堕姫の頸に届いた。

 

(どういう握力してやがる……!)

 

妓夫太郎は目を見張った。

 

「大丈夫か?」

 

【助かりました】

 

その隙にガイバーⅠは拘束から逃れた。

 

二人は一旦距離を取った。

 

 

 

「なぁ……」

 

妓夫太郎は天元に問いかけた。

 

「お前違うなぁ。今まで殺した柱たちと違う」

 

「お前は生まれた時から特別な奴だったんだろうなぁ。選ばれた才能だなぁ」

 

「羨ましいなぁ。一刻も早く死んでもらいてぇなぁ」

 

妓夫太郎は殺意を滾らせた。

 

「……才能?ハッ」

 

天元は鼻で笑った。

 

「俺に才能なんてモンがあるように見えるのか?俺程度でそう見えるならテメェらは人生幸せだな」

 

「何百年生きてようが、こんな所に閉じこもってりゃあ、世間知らずのままでも仕方ねぇのか……」

 

「…………」

 

「この国はな、狭いようで広いんだぜ?凄ェ奴がウヨウヨしてんだ」

 

「得体の知れねぇ奴もいる。刀を握って二月で柱になった奴もいる」

 

天元は二人の柱を思い浮かべ、怒りを露にした。

 

「俺が選ばれてる?ふざけんじゃねぇ!俺の手の平から今までどれだけの命が零れ落ちたと思ってんだ!」

 

(そう………俺は煉獄のようにはできねぇ)

 

【……………】

 

「……だったらどう説明する?」

 

妓夫太郎は再び天元に問いかけた。

 

「お前がまだ死んでない理由は何だ?俺の血鎌は猛毒があるのに、いつまで経ってもお前は死なねぇじゃねぇかオイ。なあああっ!!」

 

「俺は忍びの家系なんだよ。ガキの頃からの修練で耐性つけてるから毒は効かねぇ」

 

「はぁ!?忍びなんて江戸の頃に絶えてるでしょ!嘘つくんじゃないわよ!」

 

「嘘じゃねぇさ。忍びは存在する」

 

いきり立つ堕姫に天元は断言した。

 

【宇随さん……】

 

「そういや話したことなかったな。ま、ちと聞いてくれや」

 

天元は自身の過去を話し始めた。

 

 

 

「これで……!」

 

炭治郎は最後の獣化兵を倒した。

 

【見事だ】

 

炭治郎より先に獣化兵を倒していたガイバーⅢは賞賛した。

 

「あ、ありがとうございます……えっと……」

 

【私のことはいい。しかし……】

 

ガイバーⅢは消滅していく獣化兵の死体を見つめる。

 

【これだけの数……コイツらはいったいどこから現れた?】

 

「鬼舞辻無惨の仕業じゃないんですか……?」

 

【それはあり得ない。獣化兵は鬼とは違う。首魁にして生みの親である鬼舞辻無惨であれば尚更だ】

 

「そうなんですか……」

 

【……待てよ?】

 

ガイバーⅢは何か思いついたように顔を上げた。

 

【そうか……そういう見方もあるか】

 

「あ、あの……?」

 

【済まないがここでお別れだ。君はガイバーⅠのいる所に行くといい】

 

ガイバーⅢはグラビティ・コントロールを起動させ、どこかへ飛行して行った。

 

「………………………………」

 

炭治郎はポカンとしていたが、すぐに正気に戻った。

 

「急ごう!」

 

炭治郎は走り出した。

 

 

 

「全集中・雷の呼吸 壱ノ型・霹靂一閃!」

 

「我流・獣の呼吸 伍ノ型・狂い裂き!」

 

炭治郎がガイバーⅠと天元と合流すべく走る最中、善逸と伊之助は突如湧いたように出てきた鬼の群れと戦っていた。

 

「チッキショー!!キリがねぇ!!」

 

実力では二人の方が勝っていたが、数の差はいかんともし難かった。

 

「zzz……」

 

伊之助の後ろで善逸は日輪刀を納め、構えた。

 

「霹靂一閃・四連!」

 

善逸は四連続で霹靂一閃を放った。

 

鬼たちの頸は瞬時に胴体と別れた。

 

「お、お前ぇいつの間に……」

 

伊之助は目を見張った。

 

「zzz……」

 

たとえ眠っていても、師から叩き込まれた刃と技は忘れていなかった。

 

「こうなりゃ競争だぜ!!どっちが多くブッ殺せるのかよぉ!!」

 

伊之助は嬉々として鬼の群れに立ち向かった。

 

 

 

【そんなことが……】

 

話を聞き終えたガイバーⅠは嘆息した。

 

「ひひっ、ひひひっ」

 

妓夫太郎は可笑しそうに嗤った。

 

【何がおかしい?】

 

「さっきから見てたけどよぉ、やっぱり毒が効いてるじゃねぇかじわじわと。効かねぇなんて虚勢張ってみっともねぇなぁああ。ひひひっ」

 

【貴様……】

 

「いちいち相手にすんな。全然効いてないね。踊ってやろうか。絶好調で天丼百杯食えるわ、派手にな!」

 

天元は妓夫太郎に斬りかかる。

 

【っ!俺も!】

 

ガイバーⅠは妓夫太郎の側面に回り込んだ。

 

「!!」

 

天元は日輪刀を振り抜くと同時に、火薬玉を撒く。

 

「っ!!」

 

「っ!?」

 

妓夫太郎はギリギリで鎌を止めたが、堕姫の帯は火薬玉を掠り、爆ぜた。

 

【僅かな摩擦で引火するのか……気づかなければこっちも爆風を食らってた】

 

ガイバーⅠはタイミングをずらして妓夫太郎に斬りかかった。

 

「ああ、面倒くせぇなぁあ。さっさと死んじまえよなぁ」

 

妓夫太郎は鎌を飛ばして応戦する。

 

【なら……!】

 

ガイバーⅠはソニック・バスターを放った。

 

「おお!なかなか派手な咆哮だな。なら……!」

 

天元は妓夫太郎と振動波の間に火薬玉をばら撒いた。

 

「ちぃっ!」

 

妓夫太郎は下がったが、堕姫が遅れた。

 

「ギャアッ!?」

 

衝撃と爆撃が同時に堕姫を襲った。

 

【ここだ!】

 

ガイバーⅠの高周波ブレードが堕姫の頸を斬った。

 

【宇随さん!】

 

「応よ!!」

 

天元は妓夫太郎に狙いを定め、斬りかかる。

 

「いくらのろまだからってよぉ、妹の頸を何度も斬んじゃねぇよ……!」

 

妓夫太郎は即座に血鎌を飛ばし反撃に出た。

 

「っ!」

 

天元の頬を血鎌が掠めたが、天元は意に介さず突進した。

 

「くらえや!!」

 

天元は再び斬りかかった。

 

「…………………」

 

妓夫太郎は天元の日輪刀を弾き、品定めするような目を向けた。

 

「お前、もしかして気づいてるなぁ?」

 

「……………何に?」

 

「……気づいた所で意味ねぇけどなぁ。お前は段々と死んでいくだろうしなぁあ」

 

【そういえばさっきから宇随さんの呼吸が荒いような………まさか宇随さん……】

 

「余計な気を回すな。効かねぇったら効かねぇんだ」

 

ガイバーⅠの視線に気づいた天元はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「そんなこと抜かしてもよぉ、こうしている間にもジワジワ勝っているんだよなぁあ」

 

「それはどうかな!?」

 

妓夫太郎と堕姫の後ろから伊之助が躍り出た。

 

「俺を忘れちゃいけねぇぜ。この伊之助様と手下がいるんだからな!!」

 

「何だ?コイツら……」

 

【空気の読めない奴……】

 

伊之助と眠りに入っている善逸の登場に場の空気が良くも悪くも変わった。

 

「っ!!」

 

そして炭治郎が天元の目の前に飛び降りた。

 

 

 

「カァッ!カァッ!緊急報告!!緊急報告!!」

 

「ええいまたか!いったいどうなっているんだ!!」

 

一方、鬼殺隊本部は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

 

鎹烏たちからひっきりなしに届く報告に隠たちは必死に対応していた。

 

「……………………」

 

耀哉の妻のあまねは心配そうに外の様子を窺っていた。

 

「心配することはないよ。天元たちが十二鬼月と対峙したのだろう………ゴホッ、ゴホッ……」

 

「あなた……」

 

「大丈夫……いつもの発作だよ。それはともかく、天元たちが心配だ」

 

「親方様……」

 

警護役の行冥が口を開く。

 

「如何に天元やがいばぁと言えど、苦戦は必至かと思われます。ここは私が──」

 

「親方様、悲鳴嶼さん、俺に行かせてください」

 

「「!?」」

 

耀哉と行冥が声のする方を向くと、炎を象った眼帯を着けた杏寿朗がひかえていた。

 

「杏寿朗……」

 

「もう傷は癒えたのか?」

 

「ええ、いつでも出陣できます」

 

「煉獄様……その眼帯は……」

 

耀哉の枕元にひかえていた輝利哉が杏寿朗に問いかけた。

 

「はい、蝶屋敷の方たちに作っていただきました。なかなかどうして良いものですぞ」

 

杏寿朗は笑みを浮かべ、すぐさま真顔に戻った。

 

「杏寿朗。気持ちは嬉しいが、相手は十二鬼月。それも上弦の鬼だ。今の君では……」

 

「親方様」

 

杏寿朗は顔を上げた。

 

「本来、死んでいたであろう私を深町は身を呈して救ってくれました。ならばこの恩義、宇随さんや竈門隊員たちと共に窮地から救いだすことで返したい!」

 

「どうかお願いいたします。出動の許可を!」

 

杏寿朗は頭を下げた。

 

「煉獄………」

 

(杏寿朗にここまでさせるとは……やはり凄い子だよ。晶は)

 

耀哉は微笑んだ。

 

「これより杏寿朗を救援隊の先発として出動することを許可しよう」

 

「ありがとうございます!」

 

「だけど杏寿朗……」

 

布団から体を起こした耀哉は杏寿朗を見つめる。

 

「君にはまだまだやるべきことがある。生きて再び私の前に現れること。出来るね?」

 

「かしこまりました!!」

 

「では行っておいで」

 

「ははっ!」

 

杏寿朗は駆け足で本部を出て行った。

 

「…………………」

 

行冥は耀哉を見つめる。

 

「これは異な仰せですな」

 

「別に異というわけではないさ。ただ、見たいだけだよ」

 

「何をですか……?」

 

「フフ……」

 

耀哉は夜空に浮かぶ月を見上げる。

 

「私の剣士たち全員と晶が力を合わせて鬼舞辻を歴史から葬り去る瞬間をね………ゴホッ、ゴホッ」

 

「………………………」

 

行冥は耀哉の言葉を噛みしめた。

 




次回、敵味方集結します。



鬼滅の規格外品こそこそ話

善逸の霹靂一閃・六連完成までもうちょっとかかるぞ!
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