鬼滅の規格外品   作:ボルトメン

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第肆話

翌日、しのぶがカナエと共に帰った後、晶は山道を駆け上がっていた。

 

「すぅーーーっ……はぁーーーっ」

 

晶は鱗滝の助言(?)に沿って、腹に力を入れつつ深く遅い呼吸を繰り返した。

 

徐々に体が慣れ、昨日よりも格段にスムーズな走りになった。

 

(この呼吸になってから息切れが減ってきたような気がする。イメージとしては、五分間吸って五分間吐き続けることなんだろうな)

 

本物の鬼殺隊士なら五分どころかそれ以上の呼吸が可能なのだが、晶がそれに気づくことはなかった。

 

 

 

(次はいよいよ殖装した状態だ)

 

晶はガイバーⅠに殖装し、走り出した。

 

【呼吸をするようなリズムで……!】

 

ガイバーⅠは緩急をつけた動きで、高くジャンプした。

 

【す、すごい……!】

 

ガイバーⅠは高い木の枝につかまった。

 

【これだけの身体能力なら、超獣化兵にだって負けやしないんじゃないか……!?】

 

ガイバーⅠは地面に降り、木の幹に狙いをつけた。

 

【ふぅーー…………はっ!】

 

ガイバーⅠは右拳を木の幹にぶち当てる。

 

木は殴られた箇所から無数にひびが入り、ゆっくりと倒れた。

 

【……腕に付いているパワーアンプと組み合わせてこの威力……なんだか自分が怖いな……】

 

ガイバーⅠは強くなったと実感すると同時に、不安を覚えた。

 

【そうじゃないだろ、晶。俺が強くなるのはみんなを守るためだろ。この時代で鬼、元の時代でクロノス。そいつらからみんなを守るために……!】

 

ガイバーⅠは拳を握りしめた。

 

 

 

「そうか。よくやった」

 

昼食後に報告を聞いた鱗滝は晶の顔を見つめた。

 

「正しい呼吸方のコツは掴めたようだな」

 

「まだまだ炭治郎や鱗滝さんには及びませんが」

 

晶は首を横に振った。

 

「そこで、これより実践に入る。晶、狭霧山から西に一里ほど行った先に洞窟がある。人々の噂では最近人食い鬼の群れが棲みついたらしい。そいつらを討伐して来い」

 

「……鬼殺隊の人と鉢合わせになりませんか?」

 

「心配は無用だ。御館様が鎹烏を使って全隊士に勅命を出した。近づくこともならないとな」

 

「前から気になっていたんですが、鎹烏って何ですか?」

 

「いずれ分かることだ。今のうちに寝ておけ」

 

鱗滝はそう言って禰豆子の様子を見に行った。

 

(それにしても勅命、か。鱗滝さんが動いてくれたんだろうな)

 

晶は湯飲みの茶を飲み、寝床へと向かった。

 

 

 

「がいばぁ、か。我々とは異なる力を持つ戦士。これは楽しみだね」

 

「父様、嬉しそう」

 

「そうだね。もしかしたら、我が一族の呪いを断つ手助けになってくれるかもしれない」

 

とある立派な屋敷の主は微笑んだ。

 

 

 

「では、行ってきます」

 

「場所は地図にあるとおりだ。くれぐれも油断するな」

 

「はいっ」

 

「ムー……」

 

「じゃあ、行って来るよ。ガイバァァァッ!」

 

晶はガイバーⅠに殖装し、西を目指して走り出した。

 

(すまん、晶)

 

鱗滝は申し訳なさそうにガイバーⅠの背中を見送った。

 

(後はお前の働きと御館様のご判断次第だ)

 

 

 

【もう少しで狭霧山を出る。ここから4キロか】

 

ガイバーⅠは夜道をひたすら走っていた。

 

【むっ!?】

 

突然、減速した。

 

ガイバーⅠのヘッド・センサーが何かの反応をキャッチした。

 

【あの荒れ果てたお寺からだ】

 

ガイバーⅠは足音に注意点しながらそっと近づく。

 

中から、ピチャピチャと音が聞こえてきた。

 

戸を開けると、そこには血溜まりの上で骨をしゃぶっていた鬼がいた。

 

「なんだぁー!?てめえここを誰の縄張りだ──」

 

【はあっ!】

 

ガイバーⅠは間髪入れず、高周波ブレードで鬼の首をはねる。

 

「と…………」

 

鬼は何が起きたか理解できないまま、消滅した。

 

辺りを見回すと、法衣のようなものが散乱していた。

 

【もう少し早く来ることができていれば……】

 

ガイバーⅠは法衣に手を合わせ、詫びた。

 

【今は先を急ぐことを許してください】

 

ガイバーⅠは鬼の住処へと急いだ。

 

 

 

【そろそろこの近くのはずだけど…………あれか?】

 

ガイバーⅠは人一人が通れそうな岩穴を見つけた。

 

【後数時間もすれば空が白んでくるけど、待ってられないな。よし、行くぞ】

 

ガイバーⅠは岩穴に入った。

 

岩穴は入り口こそ狭かったが、進むにつれ広くなっていく。

 

周りには壺や箱など人工物が転がっていた。

 

【貯蔵庫だったのかな………っ!?】

 

ガイバーⅠは天井に向かってヘッド・ビームを射った。

 

「ぎゃっ!?」

 

天井から鬼が落ちてきた。

 

【まるで蜥蜴みたいな鬼だな】

 

「蜥蜴だとぉーっ!てめえ俺がムカつく呼び名をっ!!」

 

【顔立ちなんか鬼というより爬虫類じゃないか】

 

「こ、殺してやるっ!!」

 

蜥蜴鬼は牙を剥き、ガイバーⅠに襲いかかる。

 

【はっ!】

 

アーム・パワーアンプが働き、重いパンチを可能にする。

 

ガイバーⅠの重いパンチは蜥蜴鬼の腹をぶち抜いた。

 

「ぐぱっ!?て、てめえを喰い殺──」

 

【遅いっ!】

 

右腕を引き抜き、左の高周波ブレードで蜥蜴鬼の頸をはねる。

 

蜥蜴鬼は前に倒れ、消滅した。

 

「おい~~、うるせぇぞ~~。またいたぶられてぇ~~のか~~??」

 

奥から脂肪の塊のような鬼がのそのそと出てきた。

 

「あ~~?見ねぇやつが……」

 

【もらった!】

 

ガイバーⅠは脂鬼の足にローキックを叩き込む。

 

「ん~~?」

 

だがさほど効いていなかった。

 

【くっ!なら!】

 

先ほど蜥蜴の腹をぶち抜いたのと同じ重いパンチを打ち込んだ。

 

「ぐふふ~~効かねぇな~~」

 

ガイバーⅠの拳は脂鬼の厚い脂肪に取り込まれた。

 

【なっ!?】

 

脂鬼はガイバーⅠの両肩をむんずと掴み、持ち上げた。

 

「げへへ~~、人間じゃなさそうだが、腹の足しにはなりそうだな~~」

 

【くっ!】

 

ガイバーⅠは必死に首を動かした。

 

「へへ~~、いただきまぁ~~す」

 

脂鬼は大口を開けた。

 

【こおおぉぉぉぉっ!!】

 

ガイバーⅠの口元、バイブレーション・グロウヴから振動波が放出される。

 

振動波──ソニック・バスターを受けた脂鬼の体は徐々に崩れていった。

 

「な、なにこれ~~~!?」

 

【今だっ!】

 

脂鬼の拘束から解放されたガイバーⅠは頸元を高周波ブレードで断ち斬る。

 

「あばばばば……………」

 

脂鬼は苦しみながら消滅した。

 

【これで二体。まだいそうだな】

 

ガイバーⅠは心を落ち着かせ、さらに進む。

 

 

 

【おかしいな。もう行き止まりだ】

 

ガイバーⅠは岩穴の奥までやってきた。

 

【既に逃げた?いや、反応はある。それも近くに………】

 

「ひゃは~~!もらったぁ~~!」

 

【なにっ!?】

 

物陰から飛び出してきた、老人ような姿の鬼にガイバーⅠは後ろを取られた。

 

「ひひひ……あいつらを消してくれてありがとうよ。これでワシの独り占めじゃ~~!」

 

【は、離せ……!】

 

「ひひひひ~~!」

 

老鬼はガイバーⅠの首元を喰い千切る。

 

ガイバーⅠの首元から大量の血が噴き出した。

 

【………………………………】

 

ガイバーⅠは前に倒れた。

 

「ひひひ………ひぃっ!?な、なんじゃこの不味い血肉は!?」

 

老鬼は慌てて吐き出した。

 

「ぺっぺっ!まあよいわい。これからはワシの思いのまま………ひぃ~ひっひ!」

 

老鬼は歓喜の声を上げた。

 

「しっかし、なんじゃったのかのう?人間には見えんが………?」

 

突然、ゴソッという音がした。

 

「な、なんじゃっ……!?」

 

老鬼がゆっくりと振り返ると、そこには仕留めたはずのガイバーⅠが立っていた。

 

老鬼に喰い千切られた箇所は元の状態に復元されていた。

 

「あ、あ、あ……」

 

老鬼は一歩も動けなかった。

 

【………………………】

 

それを見逃さず、ガイバーⅠは老鬼の頸を断つ。

 

「ひ、ひぃ~~~!!」

 

老鬼は恐怖の感情とともにこの世から消えた。

 

【こ、これで全部……!】

 

ガイバーⅠは疲労から膝をついた。

 

【ま、まずはここを出よう】

 

ガイバーⅠは体を引きずるように岩穴の出口へと向かった。

 

 

 

「た、ただいま戻りました……」

 

晶は倒れこむように鱗滝の家に入った。

 

「その様子では討伐に成功したようだな」

 

「は、はい……」

 

晶は首を動かすのがやっとだった。

 

「ひとまず休め」

 

「そ、そうさせてもらいます……」

 

晶は転びそうになりながら、布団が敷いてある部屋に向かった。

 

「…………………………」

 

鱗滝は囲炉裏の火を見つめていた。

 

(古より伝わる鬼人伝説。あの晶がそうなのだろうか)

 

鱗滝は机に向かい、筆をとった。

 

 

 

「「あ…………」」

 

翌日、食料調達から戻った晶は家の前で最終選抜を終えた炭治郎と出会った。

 

「た、炭治郎……!」

 

「晶……さん……!」

 

「生きて、いたんだな……」

 

「はいっ!晶さんもお元気そうで何よりですっ!」

 

二人は再会を喜んだ。

 

すると、家の戸が吹っ飛び、禰豆子が出てきた。

 

「禰豆子……」

 

炭治郎は禰豆子に詫びるような目を向ける。

 

「…………………」

 

禰豆子は炭治郎を優しく抱き締める。

 

「炭治郎……」

 

禰豆子に続いて鱗滝が出てきた。

 

「よく戻った」

 

鱗滝も炭治郎を抱き締める。

 

「お前は……やはりすごい子だ……!」

 

面の縁を伝う涙が全てを物語っていた。

 

(鱗滝さん……)

 

晶は先に家の中に入った。

 

 

 

「そうか。禰豆子ちゃんを人間に戻す方法は見つからなかったか……」

 

「はい……」

 

夕飯の後、晶と炭治郎は六日間の出来事を話し合っていた。

 

「それにしても、禰豆子を鬼殺隊の本部に連れて行かなくてはならないなんて……」

 

「カナエさんやしのぶさんの言うとおり、禰豆子ちゃんが人間の血肉を摂取しないことを証明出来れば何とかなるんだろうけどな」

 

「禰豆子はそんなことしません!!」

 

「落ち着けよ。肝心の炭治郎が熱くなってどうするんだよ」

 

「で、でも……!」

 

「身内の危機に焦る気持ちは分かるよ。でも、だからこそ平静でなくちゃいけないんだ」

 

「晶さん……(家族の話をすると、晶さんから決まって哀しみの匂いがする。いったい晶さんの過去に何があったんだろう……?)」

 

炭治郎は晶から発する匂いを感じた。

 

「ん?どうかしたか?」

 

晶は呆然とする炭治郎に問いかけた。

 

「い、いえ。何でもないですよ」

 

「そうか」

 

「それより鱗滝さんから聞きましたよ。鬼を四体も退治したって」

 

「ああ。だが……」

 

「晶さん?」

 

「いやな、鬼の住処に向かう途中に集落があったんだが、別の鬼に襲われたお坊さんは別として、他の住民に一人も会わなかったんだ」

 

「確かに妙ですね」

 

炭治郎はうんうんと頷く。

 

「鬼殺隊が動いたんだろうな」

 

「でも、何のために?」

 

「試していたんだと思う。俺が、ガイバーが敵か味方かを」

 

「でも晶さんは俺を藤襲山で助けてくれたじゃないですか。味方じゃないですか」

 

「それは炭治郎から見てだろ。他の人も同じとは限らないだろ」

 

「そういうことだ」

 

鱗滝が入ってきた。

 

「鱗滝さん……」

 

「晶の言うとおり、この度の働きはがいばぁの見極めの意味が大きい。複数の鬼を物ともしない戦闘力、日の下でも活動できる利点。それが牙を剥いたらどう思う?」

 

「それは……」

 

「晶、鬼殺隊士が束になってかかってきたとして、どうなる?」

 

「……自惚れているわけではありませんが、苦戦はしても負けることはないかもしれません」

 

「だろうな」

 

鱗滝は首を縦に振る。

 

「だからこそ、お前を試すことになったのだ」

 

「そんな……。そ、それで、晶さんはどうなるんですか!?」

 

「まだわからん。だが儂も数日間共に過ごして晶の人となりは知っている。それに元花柱のカナエや現役の蟲柱のしのぶも動いてくれていることも聞いている。それほど悪くはならんだろう」

 

「良かった~~!」

 

炭治郎は安堵した。

 

「とにかく、もう寝ろ。明日にも届くはずだ」

 

鱗滝はそう言って部屋を出た。

 

「鱗滝さんの言うとおり、もう寝たほうがいいな」

 

「そうですね。おやすみなさい」

 

晶と炭治郎は布団に入った。

 




次回、炭治郎と初任務です。



鬼滅の規格外品こそこそ話

岩穴にいた鬼のヒエラルキーは上から老鬼、脂鬼、蜥蜴鬼の順番だぞ!
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