「記憶喪失の割には自信満々だな」
「実は、クラウンが、大変なことをしようとしているのです」
「人間界を支配しようとか?」
「その通りです」
「は? 馬鹿じゃね? マジで?」
それは1000年ほど時期が遅すぎるというものだ。
「クラウンは、お前というストッパーを失い、暴走してるんだよ」
「そうです、なんという非道な行い! 絶対に許してはなりません。マグルを守らなくては!」
「別に守らなくても嬉々として迎え撃つだろ。いつかは表に出るにしても、そのやり方は最悪だ。魔法使いの迫害が絶対に起きる」
「そこが、お前とクラウンの違いだ。クラウンはマグルを下に、お前は上に見るが故に魔法界をあらわにすることを目指した。やる事は同じでも、求めるものは支配か隷属か。正反対というわけだ。皮肉なものだな。お前は魔法使いの名家、向こうはマグル出だというのに」
「互いに利用しあっていたお前達だが、マグルの少女にお前が恋をした事で全てが変わった」
「マグルの少女?」
「その少女の最期の願いの為に、お前は魔法界を捨てて雲隠れしたんだ」
「願い……まあ、予想はつくが」
「惚れたマグルを……夏油 傑を助けて欲しい。全く、恋の病は身を滅ぼすというが」
「俺は、その少女を守れなかったんだな」
「クラウンに殺された。そして、お前はクラウンに罪を着せられて、指名手配された。いや、お前は自分で冤罪を被ったんだ。自分が少女を殺した。自分は今からダークオウルだと。そして、呪霊を見る目を少女から奪ってものにした」
「そう、か」
「何を思って日の当たるところは歩けないと言ったのか知らない。記憶を失っていたから、生きていくのに手を汚してしまったかもしれない。でも、叙情酌量の余地は十分にあるし、少なくとも記憶を失う前は、お前は犯罪者ではない。胸を張っていい」
だが残念ながら俺は大犯罪者である。
「クラウンの計画が、いよいよ始動しようとしています。魔獣による百鬼夜行を起こすつもりなんです」
「ひゃっきやこう?」
「そうだ。既にパーティーの招待状も奉行所に届いている」
「来る日は」
「12月24日」
遮るように言う。
「巡る因果が俺に突き刺さってきたか……。ならば、クラウンは死体も残さず燃やさないとな」
「では!」
「なんとかしよう。なんとか出来る。だが、一つ条件がある」
「なんだ」
「魔法界を隠す事はしない。むしろ、公にするよう俺は動く。だから、何があろうと記憶の錯乱や削除などの隠蔽工作は必要ない」
「わかった」
「先輩!?」
「みんな、わかってる事だよ。ずっと隠れるのは無理だ。記憶喪失なのは不安だが、それでもダークオウルはその為に人生を捧げてきた。それを信じよう。頼んだぞ、ダークオウル。いや……尾田 延永」
「誰? パチモンみたいな名前だな」
「ああもう、お前の名だ、締まらないな!」
打ち合わせをして、なんでもないように言う。
「そのマグルの写真とか名前は?」
「夢野 小鳥」
写真の中、手を振っているのは、なんの変哲もない、いかにもオタク然とした女だった。
魔法使い達が帰った後、俺は天内に抱きしめられた。
「可哀想なのじゃー! 切ないのじゃー!」
「恋人を寝とった人を守るために、うう……。夏油さんからそんな話は聞いたことがないので、一夜の恋人にされてしまったに違いありません」
「最低じゃな、夏油!」
夏油 傑に熱い風評被害が降りかかる!