連休の少し前。
硝子と悟、傑を前に俺は演説していた。
「思うに、俺は幸せな記憶が少ないと思うんだ」
「俺らとの思い出は?」
ショックな顔をされたので、慌てて付け加える。
「魔法使いにとって幸せな記憶は消耗品兼盾だから、たくさん必要なんだ」
「ディメンター?」
「それもあるけど、守護霊呪文もある。守護霊呪文とは、幸せな記憶を動物型の霧にしてディメンターから身を守る呪文だ。それのためには、とびっきりの幸せな記憶がなければならない。つまり」
ゴクリ、と3人は息を呑む。
「超ハイパーデラックス楽しい5日間(前後の1日は休憩用)の旅にするぞ、皆!!」
「「「わあああああああ!」」」
バンっと事前に用意したパンフレットを並べる。
「さあ! 好きなコースを選ぶんだ! 3人で多数決な」
「そうだね。これとこれは飽きたし、ゆっくり景観の良い場所を……なんでもないです」
「傑は良いよな! やっぱり俺らも事務所に……」
「やめて」
「トランクもまだ全部は見てないし、クィディッチ見たいし、遊園地もまだ遊びきれてないし」
「俺もクィディッチ見たい!」
うんうん。俺もクィディッチは好きよ。
と言うことで、予定を立てていざ連休へ!
あ、魔法界、ミミナナ達は順番に連れて行ってあるよ。
なので今回は我慢……我慢……
ミミナナがワっと突っ伏し、津美紀が目薬を目にさしてスカートを握りしめてプルプルし、恵が俺のズボンにピトッと顔をくっつけた。我慢できないみたいですね。こいつら、泣き真似を覚えやがったんだよな。
「子供達は私と灰原で見ますよ」
「だいぶ慣れてきたし、待っている間、目立たず観光することなどおやすい御用じゃ!」
「そう言うことでございます」
「俺は絨毯レースに行く。この時期だったら事務所閉めても行けるだろ」
はぁ……。
「じゃ、ちょっと足を伸ばして皆で本場イギリスのクィディッチと箒レース見にいく? それなら傑も楽しめるだろ。2人とも、パンフレット作り直すから回収な」
皆は歓声をあげた。
なお、英語は重点的に教えたので、子供組含め全員ペラッペラである。
その後、二泊三日でイギリスで遊び、1日は日本の魔法界でショッピング。残りは遊園地。
教師と生徒が学校を休む暴挙で楽しい思い出を作りまくった。
甚爾さんは箒レースを堪能したし、傑と灰原はイギリスの触れ合い魔法動物園で楽しんだし、悟は怪しげな道具、硝子は怪しげな薬を買ったし、子供達は魔法のお菓子や悪戯グッズをしこたま買い込んだし、黒井さんと理子ちゃんは服を色々買っていた。七海は本屋さんに釘付けだ。日本の魔法界の本屋にも後で連れて行ってあげた。皆とても楽しそうだった。
もちろん、トランクの中での宿泊も硝子と悟は堪能した。
「梟、結婚して!」
「はいはい、目にはドラゴンしか映ってないのわかるから」
そして、帰ったら、怪我をした魔法使い2人が部屋で治療をしていた。
「お前達は、あの時の闇祓い」
「闇祓いって?」
「奉行所で働く人をそういうの。犯罪者は闇の魔法使いで、それを祓うから闇祓い」
「ダークオウル……! クラウンと並ぶ天才魔法使い! どうか力を貸してくれ!」
「あー。話は聞くだけ聞くよ。一回は助ける約束だしね」
「俺も聞く」
「悟は仕事がめちゃくちゃ溜まってるだろ。他のみんなも、これは俺の領分だから、散った散った」
なにせ、この業界はブラックなのである。
わあっと散って、黒井さんと理子ちゃんだけが残った。
黒井さんが美味しい紅茶を淹れてくれる。
俺は自分が思う格好いい座り方でキメ顔をしてきいた。
「さて、要件を聞こうかな?」