世界の秘密を知りたくて   作:トサカの生えた生物

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結構短いです


二話

早朝、チェーンメイル装備一式を身に付けて太刀を背負い、村の出入口に向かう。

クエストボートにあった依頼から現状俺でもクリア出来そうなものを選んで持ってきたつもりだが、モンスターが乱入してくることも考えれば油断は禁物だ。

足にはかなり自信があるからと言ってもそこは人基準…結局の所モンスターに勝てるのは知恵を駆使して作った道具と狩猟技術のみだ。

 

「行ってきます」

「気を付けて行ってくるのだぞナトゥア」

「勿論です。採取だけと侮って死にたくはありませんから」

 

村長にそう言うと俺は依頼された地へと出発した。

目的地は比較的ココット村に近い森と丘、そう呼ばれるエリアだ。

比較的近いとはいえ、基本的にネコタクシーと呼ばれるアイルーが目的地まで運んでくれるサービスかアプトノスの馬車に乗って移動するか、もしくは歩きで行く…比較的近いと言えど広大な大地を徒歩で行くから一日かかる。

狩猟時間もあるハンター業、皆アプトノスの馬車を使って移動すれば楽なのだからそちらを使う筈だ…と言うのはハンターになった事の無い人達の考えだ。

モンスターは俺が森と丘へと向かう道中にだって存在しているのだ。

ランボスやドスランポスを初め、肉食モンスターが数多く生息していて、アプトノスなんて近寄れば死骸に早変わり間違いなし…残る選択肢がネコタクシーか徒歩かなのだが、ネコタクシーは彼らアイルーが把握している近道を使うからものすごく早く目的地に辿り着く…が、それを入れても最悪な乗り心地で目的地に着いたらまずキャンプ地で一日寝るレベルだそうだ。

迅速に行かなきゃならなかった時に使ったらしい親父がそう言ってた。

 

必然俺は徒歩になる訳だが、そんなに苦には感じない。

緑溢れる自然を見て、モンスターの生態を知るのもハンターには必要な事だ。

アプトノスの群れが水を飲む風景も、それを草むらから伺う二頭のランポスも、自然界ではよくある光景と言える。

そのまま群れからはぐれてしまった子供のアプトノスをランボスが襲いかかり、距離が離れている上にランポスの距離が子供のアプトノスにあまりにも近すぎた為に見捨てられた哀れな子は二頭のランポスのご飯となった。

 

内臓を鋭い牙で噛みちぎって美味しそうに食べているランボスを遠目から眺めながら、こちらを獲物と認識し、油断していると思って飛びかかって来たランポスを鞘から抜いた太刀で回転しながら一刀両断する。

真っ二つにされたことで撒き散らされる鮮血と臓物を少し眺めながら血を振り払い、ランポス達を見る。

先に仕掛けた一頭の末路を見たからか、こちらが近寄らねば切る事が出来ない距離で様子を見るランポス達。

実際、あの二頭の行動はかなり有効だ…俺は2つの足で武器を持ちながら近寄り、攻撃の動作がわかり易い太刀で切らなければならないのに対し、ランポスはその鋭い爪と牙、高い身体能力でこちらを攻撃出来る。

俺の攻撃を避け、カウンターで飛びかかり、片方が太刀を持っている手を拘束している間にもう片方が眼を爪で刺し貫けば俺は死ぬし、そうでなくてもチェーンメイル程度じゃ彼らの攻撃をそう何度も受けられない。

油断ならない敵を相手にした時、まずは様子を見る…闇雲に攻撃して死ぬよりも賢いやり方だな、勉強になる。

 

「やっぱり村に居るだけじゃ味わえないものがあるなぁ…練習したかいがあった」

 

今日に至るまで、俺も身体の動かし方というものを学んで来ている。

モンスターと戦うのだから当然生態やどう動き、どのように攻撃してくるのかも先達から書類ではあるが拝見させてもらっている。

親父も太刀を扱うハンターだからどのように攻撃するのが効果的なのかを教えてくれた…モンスターと戦うのは命懸けだが、それ相応の練習をしたという自信が、ランポスと戦闘していて、殺気をぶつけられている現状であっても冷静でいさせてくれる…俺自身の性格もあるのか?いや、余計な事は考えないでおこうか。

 

「どうした?来ないのか?」

 

聞こえてもなんと言ってるのかわからないとわかっていてもそう問いかける。

だが、やはり向こうから攻めるつもりは無いようで威嚇をしながら油断無く睨みつけている。

ならこちらから行こう。

太刀を何時でも振れるように構えながら接近して、間合いに入った瞬間に太刀を縦に振るう。

当然、ランポスはその身体構造を駆使してバックジャンプする事で間合いから素早く回避し、もう一頭がその隙をついて左から素早く接近し、鋭い牙で噛み殺そうとしてくる。

実際、タイミングとしては悪くない…全力で振り抜いていれば僅かな時間動きが固まってしまう。

そこを狙えばベテランハンターだって深手を負う可能性もある…彼らの誤算はこの状況になるよう誘導したという事だけだ…全力で振り抜かず、軽く振り抜いた太刀を素早く戻してランボスの口の中に入れ、ここまで早く動かれる事を想定していなかっただろうもう一頭のランボスへと斜めに振って投げる。

動揺していたのが見て取れ、動きが固まってしまったランポスに直撃して倒れてしまう。

素早く起き上がろうとする頃には俺も接近し終わっており、気が付いたランポスも振り下ろされる太刀をただ見つめるだけだった…

 

「…ふぅ…はぁ…」

 

思った以上に疲れた…力が入りすぎていたのか、それとも初めての実戦だったからか…もしくはその両方か?考えればきりはないけれど、一番思い付くのは…

 

「…俺、モンスターを狩ったんだな…一人で…」

 

人の機能の一つにアドレナリンと呼ばれる興奮作用を促すものがあるらしい。

興奮と言えば冷静とは真逆の方と思いがちだけれど、個体によってはそうなった方が恐ろしく冷静になる者もいる…興奮状態になると疲労感や小さな痛みを感じずに動けるらしい。

ただ、それが終わると途端に力が抜けてしまうとの事だ…これもその一種って事か。

まだ太陽は登っているし、行ける所まで行って、安全な場所で野営地を立てようかな。

 

その前に剥ぎ取っておこう


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