世界の秘密を知りたくて   作:トサカの生えた生物

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三話

ランポスとの戦いからは特に何も無く、野営地の設営とランポスを剥ぎ取るついでに取った肉をこんがりと焼いている。

こんがり肉や携帯食料はハンターの必需品と言っても過言じゃない…とは俺に期待を寄せてくれたハンターの一人が言っていた言葉だ。

腹が減っては戦ができぬと村長が若く、ハンター事業が始まってまもない頃から伝わった名言もある…もしもの時のために携帯食料と生肉だけじゃなくて回復薬も持ってきているが、温存して他のモンスターの肉でお腹を満たしても良いだろう。

しかしランポスの肉を焼くのは中々に苦戦するなぁ…骨付き肉に出来たのは焼くのに苦労しなかったけど、他のはどうにかして骨を刺さないといけないし、刺し方だって工夫しなければ火が近すぎたり遠すぎたりで焼けている所と焼けていないところが出てきてしまう。

これもハンターとして生きる者の苦労なんだろうなぁ…普通に骨付きの生肉を焼けよって言われたらその通りだし、何も言い返せないけど、違う肉を食べたくなるものだろ?特に村や町じゃ料理人が作ったりするものを自分自身で調理するなんて中々にないし。

 

「やっと出来た…よし、それじゃあいただきます」

 

しっかりと手を合わせて言い、早速ランポスのこんがり肉を頂く。

肉食モンスター特有の鍛えられた肉の硬さがあるものの、血抜きやらをしたお掛けか臭みは無い。

また肉の硬さも硬すぎるものじゃないから歯ごたえもある…まだ焼いてないものがあるから燻製肉にして酒と飲むといいんじゃないかな?酒飲んだ事ないが親父がジャーキーと一緒に飲んだり食べたりしてるの見てるし、ジャーキーは食べた事あるから合うはずだ。

 

「ふぅ…ご馳走様でした」

 

もう一度手を合わせて言う。

この言葉が流行りだしたのは最も古い時でハンター事業が始まる前、ある料理人が腕を振るって作り上げた料理を食べようとしたとある国の王様に大して、こういった方がより美味しく感じられると言ったのが始まりなようだ。

何故なのか聞いた所、「あなたの為にこのモンスターを狩ってくれた人と、あなたの為に調理してくれた人、そして何より自分達の糧になってくれたモンスターへの感謝を込めるおまじないがこの言葉なのですよ」と答え、これに感激した王様が広めに広めまくったらしい…今じゃ俺の知ってる場所はこの言葉を言うのが決まりになっている。

 

流行ったのも村長が生まれるずっと前とのことだから、相当昔になる…この言葉を教えてくれたのは女性の料理人だそうで、母のように優しい人だったそうだから、尚のこと広めなければと当時思ったのかもしれない。

名前はユナさん。

興味があったから調べた時に東側に多い名前だったから、この言葉を広めるキッカケだったのもあって良く覚えてる。

しかも何がすごいかと言うと東側に居たであろう彼女が西の方でこの言葉を広めたことだ。

東側から西まで途方もない距離を歩く事になるし、仮に何かの乗り物に乗ってたとしてもとてもじゃないがそこまで辿り着けるとは到底思えない…アプトノスやアプケロスを使っても、アイルー達に頼んでも結果は同じだ。

それを一人で歩いたのだ…しかも一つの文化を作るという偉業も成し遂げて…人によっては神の使いとすら言われてたりするらしい。

 

まぁ一言でまとめてしまえばこういうのだろう…ユアさんマジで何者なの?

 

「ふぁぁ…眠くなってきた。なんか今日考え過ぎだな…初めてランポスを狩ったからか?」

 

考え過ぎて明日に影響をきたすのは宜しくない。

そう考えて急ぎ眠るための準備をした…

 

 

 

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翌日。

月が沈み日が上がり始めようとする時間…まだ外が青く暗い所も所々ある外をひたすら歩く。

明るい訳でもないし松明もない…だがこれぐらい光があれば問題なく進める。

出来れば朝日が上り、周りが明るい時間帯が望ましいのだが…それはモンスターと遭遇するかしないかで左右されるだろうなぁ。

モンスターと戦闘して勝てるとは言っても、目の前の事に集中しなければ殺される。

足元や周りを気にするのも大事だろうが、まだ余裕が足りないからそこまで手が回らない今を考えれば、控えめに言って迷子になるだろう。

そうなったら今日中に終わらせたいクエストが終わらない可能性が高くなって狩猟時間を過ぎてクエスト失敗になってしまう…それは避けたい。

だからこの時間にしたのだが…早計だったろうかと不安になって来るなぁ。

 

「…この辺りに夜目のモンスターって居たか?ランポスは…いや、殆ど夜でも活動するか。そう考えると焦りすぎたなぁ…いや、夜でも活動しなきゃならない時もあるんだ。今のうち慣れておこう」

 

そう自身を鼓舞して目的地までひたすら歩き続ける。

モンスターと鉢合わせしない事を願いながら歩き続けていると朝日が徐々に上に到達しようとしてる頃なのだろうか、明るさが出てきて道も分かるようになってきた。

こうなれば後は楽なもので、あっという間に森と丘のベースキャンプに到達して、武器や防具の最終点検をした後、狩猟場所として指定されている森と丘へと足を進めた。

 

「…すげぇな…」

 

道中も自然で溢れていたが、あくまでも平原…面でしか見えていなかったし、アプトノスも群れなんだろうけどどれぐらいの群れなのかを推し量ることも出来なかった…だけれど、ここから見る景色は絶景の一言。

アプトノスが遠目ながら狭い道を通る姿が確認出来るし、目の前でアプトノスが子供と共に数匹の群れで水を飲んでいる。

子供の頃は結局村周辺だけで完結していた世界も、大人になれば大きく、更に広くなっていく…それを自覚させられる。

こんなに広いものを俺は知らなかったし、知ろうとしなかったのかもしれない…何とも言えないなぁ。

 

「…綺麗だな。あっと、そろそろ行かなきゃか」

 

狩猟時間もあるのだから、あまりのんびりしていられない…勿論、焦りと油断は禁物だけれど、時間とは有限。

今回はアオキノコを10個採取するという、新米なら誰もが通るであろうクエストを受注している。

採取するという行為自体難しい訳では無いが、ブルファンゴやモスが食べてあちこち探すのは面倒だ…まだ見ていたい気持ちを押し込め、アオキノコを探しに行った。


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