○タフマースブ1世
カリスマ君主・イスマーイール1世の後を継いだサファヴィー朝2代目
○タージュルー・ハーヌム
イスマーイールの妻②。タフマースブの母。オスマン帝国によるタブリーズ攻撃の際、なんとか街を脱出して助かった。タフマースブの即位後は彼のアドバイザー兼クズルバシュの抑え役を担う。
○チューハ・ソルターン・タッカルー
タフマースブ即位後すぐの権力闘争で権力を握ったディーヴ・ソルターンを追放して政権を獲得した大
○ホセイン・ハーン・シャームルー
コロコロ変わるサファヴィー朝大
○ガーズィー・ジャハーン・ガズヴィーニー
タフマースブ唯一の忠臣。権力闘争の末、幽閉されていたが国家の危機に際し、牢を脱出。タフマースブの下へ舞い戻る。
○スレイマン1世
オスマン帝国第10代
○パルガル・イブラヒム・パシャ
スレイマンの親友として異例の早さで出世したオスマン帝国大宰相。誰よりもスレイマンを知る男だが、後継者問題においては対立がある。
○オラーマ・ソルターン・タッカルー
アゼルバイジャン地方の太守であったがタフマースブとの不和からサファヴィー朝を裏切りオスマン帝国に渡る。
この章からようやく主人公タフマースブ1世が登場する。
彼の父イスマーイール1世の記述にかなり長くかかってしまった。おそらく紙面の半分程度を使ったのではなかろうか。
「筆者、バランス考えろや」
と言われたら、それまでだが、これはあえてやっている、ということを念のため主張させて頂きたい。
要するに、イスマーイール1世とはそれだけ偉大で存在感のある人物なのだ。
もうコッチが主人公で良くないか?
そう思われるかもしれない。
そうなのである。
タフマースブ1世もそう思っていた。
自分は物語の主人公になれるような人間ではない。
彼はこれ以上ないほど高貴な血統を持つ王家に生まれながら終生自分をそんな風に評価していた。
タフマースブの物語の導入として、今しばらくイスマーイール1世生前のサファヴィー朝についての記述を許されたい。
タブリーズの占領に成功したオスマン軍だが、秋には街を放棄して自領に帰って行った。これにはチャルディラーン平原での激突の前にイスマーイールが行っていた焦土作戦の影響があって、オスマン領からの食糧運搬が上手くいかず、タブリーズでの越冬が困難になった為である。
だから、街が略奪され、イスマーイールの妻までもが奪われたのは前述の通りだが、それでもサファヴィー軍はタブリーズの街そのものを取り戻すことはできた。だが、エルジンジャン、クルディスタン、ディヤルバキル地方などの領地はオスマン帝国に譲らざるを得ない。
常勝無敗のイスマーイール1世は、この初めての敗戦以降、急速に神性を失って、酒色に耽り、政治を部下に任せきりになった、と言われる。
救世主イスマーイールの神々しいまでの輝きを見てきた人々の目にはそう映ったのかもしれない。
だが、きっと、彼の心はそうではない。
信徒たちの神でならなかった彼は、チャルディラーンでの敗戦により、やっと人間になることができた。あるいは、「オレ tueeeee!」なラノベ主人公であった少年が挫折と苦労を知り、真の意味で大人になったと言い変えてもよい。
大人になったイスマーイールは夢の世界から脱して、現実と向き合わなければならない。国境付近の情勢と国内の人心に常に気を配り、神経をすり減らした。酒や女に溺れる様になったのも、ストレスからだったのだろう。
イスマーイールの師にして最大の理解者であったシャムス・アッディーン・ラヒージーもチャルディラーンの後、しばらくして死んだ。
イスマーイールはミルザー・シャー・ホセインやジャラルディーン・モハマド・タブリジなど気に入ったクズルバシュの首長たちを酒席に招いてクダを巻き、全てを忘れる為に女を漁った。
例えるならば、昭和の上司。平成、令和ではアルハラ&セクハラ上司に認定されるところだ。彼の場合、超絶イケメンであったので、そうした印象は多少マシだったかもしれないが、それでもジ○ーラモみたいなちょい悪オヤジくらいにしかならない。
見ようによってはカッコいいのだろうが、信者たちが望む神の姿には、ほど遠い。
だが、そうした状況下でもイスマーイールが生きている間、サファヴィー朝の中で大きな反乱はなかった。
あの大敗の後でもサファヴィー朝の体制に大きな混乱がなかったという事実は、彼が大人としてのストレスを抱え、時に弱気になりながらも、随所に才覚を見せながら粘り強く国家を運営していたという事を示している。
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苦しみながらも懸命に国を引っ張ってきたイスマーイールだが、1520年を過ぎると時折、病床に伏せる様になる。
酒が祟ったのか、ストレスそのものが原因か。
何にせよ、彼の様に自身の天才性を駆使し、本能のままに突き進み成功してきた人間にとって、次々に降りかかる問題をゆっくり一つずつ解決していく作業は恐ろしく精神を消耗するモノだった。
サファヴィー朝の政治に混乱が生じ始めたのは、それからだった。
1523年、イスマーイールの側近ミルザー・シャー・ホセインがクズルバシュ内の争いによって殺された。
イスマーイールの副官兼飲み友だった彼は、かつての神童イスマーイールを崇拝する他のクズルバシュから見れば、
そして、翌年の1524年、事態の収拾がつかないままに彼は死ぬ。37歳だった。
後継者は長男のタフマースブである。僅か10歳。
母はタージュルー・ハーヌム。タブリーズ略奪の際にも命懸けで都市の脱出に成功した美しくも逞しい女性である。
ちなみに、この救出に貢献したのがミルザー・シャー・ホセインだった。彼がイスマーイールから信頼されたのは、その功績ゆえである。
タフマースブは、幼いが文武両道に優れた賢い子であった。美形で有名なイスマーイールとタージュルーの血をひくだけあって容姿も悪くない。だが、彼を見た者は皆、先代イスマーイールと比べてこう言った。
「タフマースブ様も悪くないんだけど、なんだか、こう…オーラが足りない…。なんか、この人に着いて行きたいってなる感じがないんだよなー!」
父がスゴいのはわかるが、オーラって何だよ…。
具体的に何が悪いのか教えてくれれば、コチラも直しようがあるものを…何故、そんな根拠のないもので否定されなくちゃいけないんだ…。
タフマースブはそんな劣等感を抱えながら、多感な時期を玉座で過ごすことになった。
既に何度も触れているが、サファヴィー軍の主力をなすのは騎馬軍団クズルバシュである。
サファヴィー教団を信仰するトルコ系遊牧民たちをこう呼ぶ訳だが、彼らの中にはいくつかの部族ごとに分かれた派閥があり、それぞれ仲が悪かった。
遊牧民とは元来そういうモノだが、それが教団の下で一つになり、イスマーイールがそのカリスマ性でもってまとめ上げていたのが彼らなのである。
イスマーイールが神性を失いかけた治世後半、既にその萌芽は見えつつあったが、彼の死後、クズルバシュ内での首位権争いがいよいよ激化した。
イスマーイール1世はミルザー・シャー・ホセインが死んだ後、建国時の大宰相アミール・ザカリヤの息子、ジャラルディーン・モハマド・タブリジを大
この人事には、イスマーイールの混乱した国政を安定させようという体制保守的な意図が見てとれるが、その願いとは裏腹に、彼はイスマーイールの死の直後に殺されてしまった。
犯人はクズルバシュの一派ルームルー族の男である。
この事件については、実行犯への罰はあったが、ルームルー族そのものへの処罰はなかった。国内を内戦状態にするような大規模な粛清を行えるほど、この国の体制は安定していない。
タフマースブの母、タージュルー・ハーヌムがそう判断したのだ。
この時期のタフマースブはとにかく軽視されていた。
天才イスマーイール1世ならともかく、10歳のタフマースブに政治的判断など任せられるはずがない。
部下の多くはそう思っていた。それは事実として決して間違いではないのだが、それでもカタチの上では幼君に対しても臣下の礼をとるのが普通の国だ。
だが、それすらしないのがこの時期のサファヴィー朝だった。
これにはカリスマ・イスマーイール1世を亡くした悲しみから、新しい君主を受け入れられないクズルバシュたちの心理が影響していたのであろう。
それを亡き君主の妻であり、彼の生前から国内の尊敬を得ていたタージュルー・ハーヌムがなんとか宥めて、国政を維持しているのがタフマースブ即位直後の状況だった。
タフマースブが幼少の為、国家の主導権は内政部門の第一人者である大
クズルバシュの有力首長たちはその座を求めて相争った。
タブリジが死んだ後は、彼の殺害によって力をつけたルムル族の大
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さて、タフマースブ在位時、最初の危機が訪れたのは、1528年である。シャイバーニー朝の軍がサファヴィー領内に侵入し、ヘラートを包囲したのである。
シャイバーニー朝は1510年メルヴの戦いでシャイバーニー・ハンを失ったが、優秀な親族が後を引き継ぎ、強力であり続けた。この時の君主はアブー・サイードだが、実権を握るのは後の名君ウバイドゥッラーだ。
このシャイバーニー・ハンの甥は、1512年にサマルカンドのバーブルを攻撃して旧領を奪還すると、混乱するサファヴィー朝の情勢を見て、満を持し再戦を仕掛けてきたのである。
ヘラート救出戦の指揮をとるのは勿論、大将軍チューハ・ソルターンだが、彼は苦戦していた。
チンギスの系譜を継ぐシャイバーニー朝の騎馬軍団は強力だ。それに対してサファヴィー朝のクズルバシュは統率を失っている。それぞれが自部族のプライドと利益のみを追い求め、バラバラに行動している有り様で、いくら救援を送っても各個撃破されている状況だった。
「ヘラートの戦況はどうなっていますか?」
タブリーズの宮殿で、タフマースブがチューハ・ソルターンに尋ねると彼は
「うーん、まあまあっすね」
と頬をかぶった。
「負けてますよね」
「負けっつーか…、苦戦?」
即位から4年経ち、タフマースブは14歳になっている。最早、腹が立つこともない。
相変わらず舐められてるなあ、とタフマースブは自分に対する嘲笑すら浮かべた。
「苦戦ってこのまま行ったら負けるってことですよね?」
「でも、苦戦からの逆転ってあるじゃん?」
「ほう、じゃあここから巻き返す為の策があると?」
「…なんか、その。国がピンチに陥ることでみんなの心が一つになって奇跡が起きる的な…。」
「へぇ。では、あなた方、お互い協力する気があるんですね」
即位時、10歳で母や首長たちがやることを黙って見ていることしかできなかった少年も、14歳になり、彼らしていることの意味や意図がわかるようになってきた。
それと同時に、大人たちが抱える柵や社会の矛盾がバカバカしく思えてくるのも、この年代だ。大人たちは、それを反抗期と呼ぶ。
チューハ・ソルターンもタフマースブの発言や態度をその種のものだと捉えていた。
生意気な王である。
チューハ・ソルターンは中学生に対する生徒指導の様な気分で言った。
「ま、イスマーイール様がご健在であれば、王が一言言うだけで、皆の心がまとまったんでしょうな。でも、今はあのような素晴らしい君主がいないから、将軍は大変なのです。早くタフマースブ様にも立派な王になって頂きたいもんですわ。」
「僕は、イスマーイール1世にはなれない。」
「あきらめんな、信じれば必ずできる! できる、できる、できる!」
チューハ・ソルターンは夢をあきらめようとした生徒に対する熱血教師のテンションで言ったが、タフマースブの返答は実にドライだった。
「僕は父の様にはなれないけど、そんなことはどうでもいい。僕には策があるからだ。カタチはどうあれ、この国を救えれば、それでいい。」
「策ぅ? タフマースブ様がぁ?」
「ええ。少なくとも、性懲りもなく援軍を出して兵を浪費するより、ずっとマシな策が僕にはあります。」
そうして、タフマースブはチューハ・ソルターンを宮殿の地下倉庫に案内した。
倉庫の扉は固く鍵がかけられて三重に閉ざされている。
「タフマースブ様、いけません。ここは…イスマーイール様が決して開けるなと、言い残されていた開かずの倉庫のはず…。」
チューハ・ソルターンは先代への敬意を示して、先程までとは、打って変わって緊張感のある声で言った。タフマースブは頷いた。
「ええ。そして、後を引き継いだ王だけが、国難の際にのみ、扉を開けることを許されました。」
そう言い、タフマースブは鍵を開けて、倉庫の扉を開いた。そこにあったのは大量の大砲や銃である。
「これは…」
チューハ・ソルターンは圧倒されている。
「父が生前、あなた方クズルバシュには秘密でイラン人官僚たちに揃えさせた物です。今こそ、これを使いシャイバーニー軍を倒しましょう」
「しかし…」
チューハ・ソルターンは迷っている様だった。
クズルバシュは騎馬軍団である。オスマン帝国でも銃火器の導入以来、騎兵隊スィパーヒーの権限が削られて、銃火器歩兵イェニチェリが戦場で力を持つようになった。
それと同じことになるのをチューハ・ソルターンは恐れていた。
「タフマースブ様…あのね、これ、スゴいんだけど、今は止めときましょ、ね!」
「どうして?」
「それは…だって、ほら、私はいいんですけどー、他のクズルバシュの首長たちが反対するかもしれないし。」
「父の意向に反しますよ」
「えっ!」
タフマースブがイスマーイールの名を出すとチューハ・ソルターンは急にビシッと背筋を伸ばした。
「父は、オスマン帝国に敗れた後もずっと国のことを考えていた。自分を慕う者に酬いる為には何をしたら良いのかと。その為には、まず勝たなくてはならない。騎兵の時代は終わろうとしている。勝つには、火器だ。銃がいる。大砲がいる。父はそう考えた。」
「なら、イスマーイール様は何故今まで、ここにある武器を隠していたのですか。」
「自信がなかったんでしょうね。チャルディラーンの敗戦がなければ、あなた方は無条件に父に従ったでしょう。だが、不敗伝説が破れて、なお、あなた方の反発を招く様なことをして、信認が得られるか。それが不安だったのでしょう。」
「イスマーイール様が…不安…?」
チューハ・ソルターンの中ではイスマーイールと不安という二つの単語がどうも上手く結びつかなかった。
「だから父は待った。あなた方が追い込まれ、藁にでもすがり付きたくなる時を。」
「イスマーイール様がそのような事を…」
「さて、どうします? これ、使いますよね?」
「しかし…」
「じゃあ、このまま遊牧民族の誇りと共に玉砕でもしますか? それとも、そうだな。使わないのなら勿体ないし、あなたではない他の部族長にでも渡してしまおうか?」
「いや、それは! 使う、使います!」
タフマースブは笑った。
「喜んでください、チューハ・ソルターン。やはり、あなたは優秀だ。あなたの見立て通り、ピンチで皆が一つになりますよ。」
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タフマースブとチューハ・ソルターンがイスマーイールの遺した銃火砲を持って前線まで赴くと、現場は2人が認識していたよりも、更に切迫した状況であり、将たちは反発するどころか次々、新兵器に飛びついた。
そして、サファヴィー軍は砲撃を仕掛けてヘラートの攻囲陣を解くと、1528年9月。現在のアフガニスタン、ジャムで会戦に挑むことになった。
シャイバーニー軍はそれまで情報になかったサファヴィー軍の銃撃、砲撃に対しても果敢に攻めた。危険を犯しながらも騎馬軍団の機動性を生かして一気に接近戦に持ち込む事で対抗しようとしたが、タフマースブは大砲に車輪を付けて馬で牽引し機動力についても一定を確保。常に相手に対して一定の間隔を保ち、シャイバーニー軍を撃破した。
この後もシャイバーニー軍はサファヴィー朝との国境付近に度々現れて都市の略奪などを働くが、その度、サファヴィー軍は撃退に成功し、両国の力の差が覆ることは遂になかった。
そして、1530年、タフマースブは13歳の弟、バイラム・ミルザーをホラーサーン地方の太守に任命する。
「兄上、本当に大丈夫なのでしょうか?」
とバイラムは心配した。
先代のイスマーイールが兵士たちへの報酬を寛大に与えたのは、前述した通りである。
その為、これまでのサファヴィー朝では大きな戦いの後、奪った都市の太守になるのは前線で戦った将軍たちであることが多かった。
王族はあくまで王族。
バイラムがホラーサーンの太守になるということは、身体を張って戦った将軍たちの手柄を奪ってしまうカタチになる。
国の慣習と違った事をして、クズルバシュたちの反発を受けないだろうか、ということをバイラムは案じていた。
「大丈夫さ。」
とタフマースブは何食わぬ顔で言う。
「しかし、父上ならこうはしない。王から与えられた恩に報いようとするクズルバシュの死をも恐れぬ突進…。それが我が軍の強さであったはずです。」
「これからは銃や大砲を使う。離れて戦うから突進なんてしなくていいよ。」
「それはそうですが…」
「…というか、領地を与えてクズルバシュの首長たちが力を持ちすぎる事こそ恐れるべきだよ。彼らは僕を舐めているからね。」
「父上ならば、その様なこともなかったのでしょうか…」
「そうかもね。でも、まぁ、他の国では当たり前のこと…この国が特殊だったのさ。カリスマはもういない。サファヴィー朝は、普通の国に生まれ変わるんだ。」
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クズルバシュたちの争いは続いている。
ジャムの戦いの後、すぐに大将軍チューハ・ソルターンが死んだ。彼の出身であるタッカルー族との長年に渡る対立で知られるシャームルー族のホセイン・ハーンによる闇討ちに逢ったのである。
これは、明らかに違法なクーデターであったが、タフマースブはホセインが作った流れに乗った。
タッカルー族の有力将軍、太守たちに次々、罪を着せて処刑すると、無実を訴えて投降してきた一族に対しては
「お前たちには悪魔が憑いている」
などという根拠のない理由をつけて、これも処刑した。
しかも、女子供に至るまでである。
本来であれば、いくら
王朝内の実権がタフマースブには無く、力を持ったクズルバシュの首長にあることは、この国の中枢にいる人間なら誰もが知っている。
タッカルー族の粛清自体はタフマースブが自発的に行ったことだが、実験を握ったホセイン・ハーン・シャームルーはそれを止めなかった。
「
ホセイン・ハーンはその様に解釈していたし、他のクズルバシュたちもそうだった。タフマースブは部下たちに、またしてもナメられてしまったのである。
だが、それ故にいくら残虐なことをしても、恨まれるのは"黒幕"と目されたホセイン・ハーンであり、"傀儡"のタフマースブはバカにされようが、哀れに思われようが、人から恨まれる事はなかった。
タフマースブが厳しい粛清と処罰を繰り返す度に、ホセイン・ハーンにヘイトが集まった。
そして、1533年。
19歳になり、国内の不穏分子を軒並み片付けたタフマースブが満を持してホセイン・ハーンの討伐を口にすると、それに反対する者はいなかった。
ホセイン・ハーンを排除すると、いよいよ国内にタフマースブを押さえつけるモノはなくなった。
これにより即位以来、タフマースブは初めて政治の主導権を握ることになった。